不動産売却の基礎知識や知っておきたいコツを分かりやすく解説します。売却の体験談もご紹介。

老後に備えてマンション売却。管理費・修繕積立金のいらない一戸建ての暮らしを選択/東京都江戸川区Oさん(50代)

東京都江戸川区Oさん(50代)/老後に備えてマンション売却。管理費・修繕積立金のいらない一戸建ての暮らしを選択

大学生の息子が独立し夫婦二人暮らしになると、住んでいた3LDKのマンションでは広すぎると考えたOさん。月々5万円の管理費・修繕積立金が永遠にかかり続けるのも、将来の不安材料だったといいます。そこで狭くてもいいので一戸建てに住み替えようと計画。堅実派のOさんは「売れたら買う」という手堅い買い換えプランを実行しました。

不動産区分 マンション
所在地 東京都江戸川区
築年数 築19年
間取り・面積 3LDK(約75m2
ローン残高 1200万円
査定価格 2957万円〜3367万円
売り出し価格 3180万円
成約価格 2780万円

安心して住み続けるために、管理費のかからない一戸建てへの買い換えを検討

Oさんが住んでいたマンションは江戸川区の3LDK。
商店街の中にあり、スーパーやコンビニも近く、買い物に便利です。南向きの部屋なので日当たりが良く、バス停まで徒歩1、2分。最寄駅から新宿まで40分程度の恵まれた住環境だったそうです。
しかし、子どもが独立し、将来夫婦二人暮らしになることを考え、小さな一戸建てへの住み替えを考えるようになりました。

「便利でいいところなのですが、管理費・修繕積立金が毎月5万円かかるんです。周囲のマンションより少し高めですね。世帯数30戸程度の小規模マンションなので一戸あたりの負担が大きいのでしょう。一度修繕積立金が値上がりしましたが、今後また値上がりすることが想定されます。永遠に毎月5万円以上払い続けるのは大変です。小さくてもいいから一戸建てを購入したほうがいいと考えるようになりました」

Oさんがこのマンションを買ったのは2002年の新築時で、価格は3570万円でした。
売却を決めたときのローン残債は1200万円。売却で得た資金でローンを一括返済し、残りの資金を頭金に一戸建てを購入しようと計画しました。

ダブルローンを避けるための堅実な売却計画をたてる

「売れたら一戸建てを買おう、売れなかったら買わない。この姿勢はしっかり貫こうと妻と話しました」とOさんはいいます。
そこでまず、不動産仲介会社2社に査定を依頼。1社目はたまたま妻に電話がかかってきた大手不動産仲介会社でした。訪問査定を依頼したところ査定額は2957万円〜3367万円だったといいます。
2社目は、2005年に気軽な気持ちでWeb検索し査定を依頼した不動産仲介会社。売却を考え始めたとき、ちょうどその会社から担当者が変わりましたと電話があり、訪問査定をしてもらったそうです。その会社の査定額は2780万円でした。

「結局、最初に電話がかかってきてやりとりした会社と専属専任媒介契約を結びました。担当者は若いけれど、対応が丁寧で、こちらのニーズをしっかりと聞いてくれました。住み替えを希望しているのでできれば売り買いを両方やりたいこと、ダブルローンは絶対にできないので、マンションが売れたら一戸建てを購入するが、売れなければ買わない、という私たち夫婦の考え方を伝えました」

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売却をあきらめかけたときに購入希望者が現れる

「ダブルローンはできないから、できるだけ早く売って資金を得てから購入したい」
そんな思いで売却活動をスタートしたOさん。
査定額より300万円高い3180万円に売り出し価格を設定し、物件のサイトに情報を載せたり広告を配ったりして内見者を募りました。
内見日の前日は家族で窓拭きなどをし、当日はOさんも内見に立ち会い、丁寧に部屋の説明をしたといいます。
ところが、2週間に1組程度は内見者があるのですが、なかなか成約に結びつきません。

売り出し開始から3カ月が過ぎたころ、担当者から、更新のタイミングで価格を下げようと提案がありました。
そこで、4月の更新時に売り出し価格を200万円引き下げ、2980万円に変更しました。
価格変更の直後は反響がありましたが、やはり成約には至りませんでした。

「成約に結びつかない理由のひとつに、駐車場の天井高があったと思います。今、車高の高いSUV車が流行っていますが、うちの駐車場では天井高が足りないんです。駐車場に車が入らないから購入をやめた方が何組かいました。それと、月々5万円の管理費・修繕積立金は少し高めだったからかもしれません」とOさん。

7月に入り、一旦契約打ち切りにしたいと担当者に伝えると「あと1カ月だけやらせてほしいと」の答えが帰ってきたそうです。そこで、2回目の契約更新をし、そのタイミングで売り出し価格を2780万円に変更しました。

「もうこれ以上下げられないという価格です。買い手がつかない以上、今回の住み替えはあきらめようと考え、お盆前には契約を打ち切ることを決めました。すると、契約終了直前の土日に2組の内見者が現れ、どちらも購入を希望していると伝えてきました。あきらめかけたときに急に買い手が現れ、正直驚きました」

2組のうちの1組は売り出し価格から100万円下げた2680万円を提示してきました。もう1組は売り出し価格そのままで購入するとの返事だったため、後者に売却することを決めました。
「その方も子どもさんが3人いて、大きい車を持っておられましたが、車を買い換えてもこの家が欲しいと言われて、とてもうれしかったですね」

■マンション住まいでかかる費用

マンションに住む場合、管理費・修繕積立金、駐車場代など一戸建てではかからない費用が発生します。
まず管理費は、共用部分の清掃費用や電気・水道代、管理員の人件費、エレベーターなどの定期点検やメンテナンス費用など日常的な維持コストをまかなうために毎月支払う費用で、管理組合が集めます。
さらに12〜18年ごとに実施される大規模修繕にかかる費用にあてる修繕積立金があります。これは管理費と一緒に毎月、管理組合が集め、大規模修繕工事の時期まで積み立てておきます。
車や自転車を所有していれば駐車場代、駐輪場代が必要となり、これらも一戸建てではかからない費用です。
管理費や修繕積立金はマンションを所有している限り老後になってからもかかるので、退職後の年収で維持費が払えるか試算し、払い続けられそうなマンションを選ぶことが大切です。

マンションのローン残債を返済し、一戸建てを購入。「堅実な買い換えができて、心から安心しました」

「2、3カ月で売れると思っていましたが、予想以上に長くかかりました。内見者は全部で14組ありましたが、成約に結びつけるのは大変でした。最終的な売却価格の2780万円はぎりぎりの線。この価格で売れなければ、残債もあったし、買い換えをトータルで考え直していたと思います」と振り返ります。

しかし、担当者から「あと1カ月やってみたい」という言葉で契約を延長し、売却活動をスタートして約半年で売買契約が成立。ローンの残債を返し、一戸建てに住み替えができて「心から安心した」と言います。

無理のない将来設計を描き、堅実な買い換えを成功させたOさん。
「新しい家は駐車場のある一戸建て。今後は管理費・修繕積立金や駐車場代の負担がなくなります。築2年の中古ですが、ほぼ新築同様で、妻も私もとても気に入っています」と笑顔で語ってくれました。

マンション売却後に一戸建てでの暮らしを楽しむ

2020年12月 ・訪問査定(2社)
2021年1月 ・不動産仲介会社と専属専任媒介契約を結ぶ
・3180万円で売り出し
2021年4月 ・契約を更新。2980万円に売り出し価格を引き下げる
2021年7月 ・2回目の契約更新。2780万円に売り出し価格を引き下げる
2021年8月 ・購入希望者が現れる
・2780万円で売買契約を結ぶ

まとめ

  • 反響が少なくなってきたら、価格設定の見直しを検討しよう。
  • 住みながらの売却は内見前に室内を美しく整理整頓して生活感を感じさせないよう工夫しよう。
  • 内見時に立ち会う場合、質問にはできる限り正直に丁寧に話すことで信頼感を得られる結果に。

取材・文/浅野真由美 イラスト/いぢちひろゆき

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