不動産売却の基礎知識や知っておきたいコツを分かりやすく解説します。売却の体験談もご紹介。

神奈川県茅ケ崎市Jさん(50代)/「売りにくい立地の実家」を相続。反響を見ながらの値下げ戦略で、1年半後に無事成約

神奈川県茅ケ崎市Jさん(50代)/共有名義で相続した実家を売却。売りにくい条件でも、反響を見ながら値下げして1年半で成約

妹と共有名義で相続した実家は駐車場の間口が狭く売りにくい立地。不動産仲介会社の定期的なレポートで反響を細かくチェックして当初の3500万円から徐々に値下げ。1年半後に2850万円で売却できました。

不動産区分 一戸建て
所在地 神奈川県茅ヶ崎市
築年数 約39年
間取り・面積 家:4LDK(110m2) 土地:100m2
ローン残高 なし
査定価格 1600万~3780万円
売り出し価格 3500万円
成約価格 2850万円

きょうだいで相続した実家、納得できる売却をしたい

両親を相次いで亡くし、実家を妹と相続したJさん。県内で家族と暮らしていた二人に住む予定はありませんでした。

「母が亡くなってから、妹とこれから実家をどうするかの話し合いをしました。どちらも管理ができないので売却することを決め、妹と共有名義ですが、私がメインの窓口になって売却を進めることになりました」

物件は茅ヶ崎市にある4LDKの一戸建てで、1975年に建築されたものでした。当初妹とJさんが希望していた売却価格は3000万円でした。

「ぼくたちが住んでいたころは、工場が多いエリアで買い物などが不便でした。数年前に駅の北口側に大型のショッピングモールができたんです。区画整理されて街がきれいになったので、若い夫婦やファミリー層の需要があるだろうと考えました」

査定額の最高は3780万円だが立地がネック。3500万円から売り出すことに

不動産仲介会社探しを開始した二人は、まずインターネットで一括査定を依頼してみました。不動産仲介会社5社から1600万~3540万円の査定額の提示がありました。そこで、高値をつけた不動産仲介会社に訪問査定を依頼しました。

「内装の状態が良かったため、訪問査定の結果は、簡易査定より高い3780万円でした。その不動産仲介会社と専属専任媒介契約を結びましたが、高い査定額に浮かれる気持ちはなくて。妹とは、値下げなどで最終的に5社が出した査定価格の中間値である2500万円程度になるかもしれないと話していました」

反響が少なく不動産仲介会社のレポートを活用し、手応えを見ながら徐々に値下げ

売り出し価格は、不動産仲介会社の担当者と二人で相談して決めました。担当者がネックと考えたのは、車で物件の出入りがしにくいこと。行き違いのできない私道のいちばん奥にあり、駐車場の間口も狭かったためです。そこで、査定で出た最高額の3780万円ではなく、3500万円から売り出すことに決めました。

2017年9月から販売活動を開始しました。チラシのポスティングや不動産情報サイトへ掲載しましたが、いっこうに反響がありません。

「担当者は一生懸命広告してくれ、定期的にレポートを提出してくれました。物件のページの閲覧数やクリックした人数の報告があり、中々件数が増えていないことがよく理解できました。妹とレポートを共有して、反響を見ながら徐々に価格を下げていきました」

反響がないまま、3500万円から3400万円、3200万円まで値下げをしました。妹とは事前に話し合い「値下げは3000万円までにしよう」と決めていましたが、2018年秋ころには、販売活動をはじめて一年以上が経ち、このまま売れないのではという気持ちも募っていました。

担当者から2018年10月に「2850万円で購入したいという希望者がいる」と連絡があり、妹と相談の上、先方から提示された額で売却することにしました。

値下げを受け入れて売却成立

■共有名義の不動産の売却について

不動産の権利のすべてを1人で所有する単独名義に対し、共有名義とは、1つの不動産を複数人で共有して所有している状態のことです。単独名義は、個人の自由に売却ができますが、共有名義の場合、名義人全員の同意がないと売却をすることはできません。売却するには、共有者全員の了承を得て共有名義のまま売却する・それぞれの持ち分を買い取るか譲渡を受けるかして単独名義にして売却する方法があります。土地の場合なら、自分の持ち分だけを売却したり、分筆して単独名義にした上で売却したりする方法もあります。

購入希望者の提案した2850万円で売却。妹と相談しながらの販売活動に後悔なし

「希望者が現れるまでの内見も2件だけ。元々二人とも忙しいなかでの売却活動で、早く売ってすっきりしたい気持ちでした。2年3年と待ち続けるのは厳しいと判断。父が3250万円で購入した中古の家が2850万円になったのだから、十分元は取れていると思うことにしたんです」

売却に関わる特例については、担当者から教えてもらった上で、自分たちでもインターネットなどで調べて、必要書類を用意しました。活用したのは、不動産を譲渡して得た譲渡所得から3000万円を控除する3000万円特別控除です。確定申告時期に、特例を受ける旨の申告をして、売却に関する全ての手続きを終えました。二人とも納得できる売却活動でした。

「不動産を売却するのはおそらく最初で最後。後悔したくなかったので、満足できる結果に二人とも納得しています」とJさん。担当者にもお礼のメールで感謝を伝え、一年以上に及ぶ売却活動を気持ちよく終えることができました。

2017年7月 ・売却を意識し始める
・簡易査定を依頼する
・訪問査定を依頼する
2017年9月 ・不動産会社と専属専任媒介契約を結ぶ
・3500万円から販売活動の開始
2018年10月 ・購入者が現れる
2018年11月 ・2850万円で売買契約を結ぶ
2019年2月 ・物件の引き渡し

まとめ

  • 相続した不動産を売却する場合は、共有名義者のなかで代表を決め、窓口を一本化すると混乱しない
  • 共有名義者で情報を共有し、売り出し価格や値引きなど、合意をしながら進める
  • 事前に共有名義者で話し合い、売却期限と希望する価格を決めておく

取材・文/内田優子 イラスト/いぢちひろゆき

ページトップへ戻る