
Yさん夫妻は夫婦でペアローンを組み横浜市にあるタワーマンションを購入しました。約5年後に離婚することになり、しばらく妻が1人でマンションに住んでいましたが、ペアローンを解消するためにもと売却を決意しました。事情を理解してくれる不動産仲介会社に買い取ってもらい、売却代金を2人で分けてお互いのローンを返済。現在は都内に中古マンションを買って快適に暮らしています。
| 不動産区分 | マンション |
|---|---|
| 所在地 | 神奈川県横浜市 |
| 築年数 | 築17年 |
| 間取り・面積 | 2LDK+S(約73m2) |
| ローン残高 | 妻…2500万円 ※元夫の残債額は不明 |
| 査定価格 | 仲介なら9000万円、買取なら6200万円 |
| 成約価格 | 6200万円 |
夫婦名義のマンション。離婚して妻が住んでもペアローンは各々が払い続ける
2013年、横浜市の高層マンションを夫と共有名義で購入したYさん(30代)。物件価格6050万円のおよそ半分ずつを、夫婦でペアローンを組んで借り入れました。
2018年、夫との離婚が決まり、元夫はマンションを出て行ったため、しばらく1人で住んでいました。ペアローンは妻名義で一本化することができず、それぞれ自分が借りたロ―ンは払い続けていました。
ペアローンは契約が2本で、それぞれがローンの契約者になっていますが、お互いが相手の連帯保証人になり、万が一返済できない場合は責任を負います。Yさんは、ペアローンを払っている限り元夫と連絡を取り合わなければならないことを負担に感じ、売却を決意したのです。

マンションは駅からすぐで、周辺には官公庁や金融機関、買い物施設もそろい、平日は静かで落ち着いたオフィス街。再開発による都心の風景と歴史ある観光地、遠くに富士山まで見渡せる眺望の良い高層階の角部屋と好条件がそろっていました。
チラシの会社に査定を依頼。仲介のほかに買取も提案してもらう
以前から「このマンションを購入したい方がいます」と書かれたチラシがポストに投げ込まれているのを見ていたYさん。中古物件も高い価格で取引されているのも知っていました。チラシを配布している不動産仲介会社2社に電話をかけました。「一括査定サービスを利用すると、たくさんの会社とやり取りをしなければいけない気がして、それなら、会社が近くて地元や物件のことをよくわかっている会社に査定をしてもらいたいと思いました」
Z社とX社、査定額はいずれも9000万円で、チラシを見てなんとなくつかんでいた相場観と一致していました。ただしZ社は「仲介なら9000万円ですが、うちが買い取る場合は6200万円になります」と、仲介と買取の2つの方法を提案してくれたのです。
「買取という方法があることは知りませんでしたが、Z社は買い取ってリノベーションをして再販したいと考えていて、入居時から使っていた古いエアコンなどもそのままでいいと言ってくれて。また、仲介契約の方が高く売れても、買取は仲介手数料を払う必要がなく、約5万円の諸経費を払うだけでいいのもシンプルでいいと思いました」とYさんの気持ちは買取に傾いていました。
■仲介と買取の違い
不動産を売却する場合、不動産会社が間に入って物件の買い手を探してもらう「仲介」と、不動産会社に直接買い取ってもらう「買取」の2つの方法があります。「仲介」は、買い手が見つかるまでは、いつ・いくらで売却できるかはわかりませんが、できるだけ高く売りたい場合に向いています。一方「買取」は、直接交渉で明確な価格がわかり、すぐに確実に売れます。売却価格は「買取」の場合、「仲介」の7~8割程度ですが、仲介手数料がかからず、内覧の必要がない、資金計画が立てやすいなどのメリットがあります。
内覧のストレスがなく早く確実に引っ越せる買取を希望
Yさんは元夫にもマンションの売却について報告していました。最初は「好きにしていいよ」と売却に賛成していた元夫ですが、急に気が変わって売りたくないと反対するように。
Z社に相談すると、社長が「よくあることだから」と間に入って元夫と話をして、結果売却について納得してもらうことができました。一方、X社に相談した時は「自分たちで解決して連絡ください」と事務的な対応だったこともあり、熱心にサポートしてくれるZ社に依頼を決めました。
仲介の方が高く売れても、Yさんにとって重要だったのは価格よりも期間でした。早くマンションを出たい気持ちが強かったのです。
「価格も私はマンションを買ったときの価格より高く売れればいい、6200万円なら住宅ローンも返せるのでいいと思いました。また、犬を飼っていたので物件の内覧で人が出入りするストレスがないこと、引越しの時期が確定することも大きかったですね」
マンションの売却価格でペアローンを完済。心機一転、新しい生活がスタート
マンションをZ社に売却し、受け取った6200万円は元夫と半分ずつ平等に分けて、お互いペアローンを完済し、数百万円の現金も手元に残りました。登録抹消の手続きなども不動産仲介会社が同行してくれました。
「売却活動で困ったことは特にありません。元夫ともZ社が間に入ってくれてスムーズに交渉できましたし、満足しています。マンションを購入した時は、それぞれに住宅ローン控除が適用になることもあってペアローンを組みましたが、離婚が決まってからはあの時ペアローンを組まなければ良かったと思いましたね」
マンションの売買契約が成立した日、Yさんはポータルサイトで住み替え先を探し、ペットと暮らせる賃貸マンションを契約。けれども、狭くて家賃が高かったこともあり、半年後には、住宅ローンを組んで中古マンションを購入しました。
「女性が単身でマンションを買う場合、住宅ローンの審査は厳しくなる気がしました。それでも、買うなら健康で若いうちの方がいいですね。早めに決断して良かったと思います。売却したマンションは気に入っていましたが、あのまま住み続けるよりも新しい生活を始めることができて、気持ちもスッキリしています」とにこやかに語ってくれました。
| 2018年10月 | ・離婚が成立 |
|---|---|
| 2020年12月 | ・売却を決意 ・ポスティングチラシを見て不動産仲介会社に電話 ・2社に訪問査定をしてもらう |
| 2021年1月 | ・Z社に買い取ってもらうことを決める ・住み替え先の賃貸物件を探し、契約を結ぶ ・Z社と買取契約を結ぶ |
| 2021年2月 | ・Z社にマンションを引き渡す ・売却金額でペアローンを完済 ・住み替え先の賃貸マンションに引っ越す |
| 2021年7月 | ・新たに住宅ローンを組んで中古マンションを購入 |
まとめ
- 離婚してペアローンを一本化できない場合は、契約者がローンを払い続ける義務がある
- 販売活動をスタートする前に、所有するマンションの相場観をつかんでおくと良い
- 訪問査定は複数の会社に依頼。提案の幅が広く、柔軟に対応してくれる会社を選ぼう
取材・文/佐藤由紀子 イラスト/斎藤ひろ子


