不動産売却の基礎知識や知っておきたいコツを分かりやすく解説します。売却の体験談もご紹介。

利便性の良い新築マンションに住み替えるため、郊外ニュータウンの一戸建てを売却/神奈川県横浜市Oさん(60代)

神奈川県横浜市Oさん(60代)/利便性の良い新築マンションに住み替えるため、郊外ニュータウンの一戸建てを売却

長年住んだ横浜市郊外の一戸建てを売却し、利便性の良い駅近の新築マンションに住み替えたOさん。
売り出し開始後の反響が少なかった上、法定点検で不具合が発覚するなど、想定外の事態に見舞われましたが、仲介会社を変更し、価格を引き下げるなどの対応で、無事、新築マンションの決済日に間に合うよう売却することができました。

不動産区分 一戸建て
所在地 神奈川県横浜市
築年数 約30年
間取り・面積 延床面積…240m2、敷地面積…330m2
ローン残高 なし
査定価格 4800万円
売り出し価格 5200万円
成約価格 3600万円

新築マンションの資金調達のため、自然環境に恵まれたニュータウンの一戸建ての売却を決意

横浜市郊外で、敷地330m2の広い一戸建てに住んでいたOさん家族。子育てを終え、「投資用にしてもいいし、ゆくゆくは自分たちが住んでもいい」と、2019年に同じ横浜市内の新築マンションを購入しました。

「住んでいたのは40年ぐらい前に開発されたニュータウン。周囲に山はあるし公園は多いし、環境はとてもいいところです。でも駅まで歩いて15分かかり、坂道も多いので、年を取ってくると住むのがなかなか大変です。見学したマンションは、駅に近く、東京へのアクセスも格段に便利で、住んでいるところより圧倒的に楽。ひと目で気に入り、とにかく買おうと、即、契約しました」

当初は投資用にと考えていたOさんですが、マンションの利便性の良さに引かれ、自分たちで住むことにしました。

「一戸建ての方は解体してアパートを建て、家賃収入を得ることも考えました。しかし、自治会にそのことを伝えると、集合住宅はNGなどの自治会規約があるため、いい顔をされませんでした。そこで、売却を決心しました」

信頼できる不動産会社を求め、契約解除、再契約を繰り返す

新築マンションの決済日が2020年の2月。それまでに売却しなければなりません。
Oさんはまず大手不動産仲介会社に売却の相談をしました。

「査定額は5000万円程度を予想していましたが、意外に安く4800万円でした。一戸建てを購入したのは約30年前。約100坪の敷地に立つ築5年の中古住宅で、購入価格は1億円でした。新築当時は1億8千万円だったそうです」

査定額は予想より少し安めでしたが、不動産仲介会社自体は大手なので信頼できると考え、専属専任媒介契約を結びました。そして「売り出し価格はもう少し高く設定したい」と希望し、まず5200万円で売り出すことになりました。

ところが反響はいまひとつ。問い合わせがあったのは2件、見学はわずか1件でした。

「その後、不動産仲介会社から『反響が少ないので売り出し価格を下げてほしい』という話がくるようになりました。私自身は5000万円の価値はあると思っていたので、どうしても同意はできませんでした」

5200万円で売り出しをかけ続けましたが、4カ月たっても進展がありません。そこで、同年秋、これまでの不動産仲介会社と一旦契約を解除。売却について相談した銀行から紹介された別の不動産仲介会社と新たに専属専任媒介契約を結ぶことにしました。

新たな不動産仲介会社では、4800万円から売り出しをスタートしました。
「5000万円を切った売り出し価格で納得したのは、決済日が近づいてきたため、早く売りたいという気持ちが強くなったからです」
しかし、この価格でも問い合わせが何件かありましたが、実際に見学にきたのは1組だけ。契約には結びつきませんでした。

新居の決済日が近くなり焦っているイメージ

「当時、現地からすぐ近くに35坪ぐらいの敷地の一戸建てがたくさん建ちましたが、ほとんど売れていませんでした。これを見てまずいなと思いました。次第に2件目の仲介会社も、価格を下げてほしいという話一辺倒になってきました」

そこで、Oさんは最初に契約した不動産仲介会社と再度、専属専任媒介契約を結びました。今度は最初の査定額である4800万円で売り出し、その後、さらに4600万円へと価格を下げました。
買い手がつかないまま、季節も秋から冬に変わり、決済日が迫ってきました。
焦りを感じたOさんは、さらに別の不動産仲介会社に相談。3件目の不動産仲介会社と専属専任媒介契約を結びました。
「もう少し早く売れると思ったのですが…。決済日が迫ってきたことから、3件目の不動産仲介会社から4200万円〜4300万円での売り出しを提案されました。決済日に間に合わせるために、それも仕方ありません。とにかく4000万円は切らないでほしいと伝えました」

不動産仲介会社に一括査定を依頼せず、1社ずつ反響を見ては専属専任媒介契約を結びなおす方法を取った理由を尋ねました。
「大きな金額のことなので、信頼できる会社だけに相談したかったからです。こちらが全く知らない会社に事情を知られるのは抵抗がありました」と話します。
また、信頼できる不動産仲介会社を求めて、契約解除、再契約を繰り返したのも、Oさん自身が納得しながら次の段階へ進むために必要だった方法といえそうです。

法定点検で家のゆがみが発覚。さらに価格を引き下げて期間内に売却

なかなか思い通りの価格で売れなかった理由をOさんはこう分析します。

「一戸建ての和風住宅ですが、階段の幅などサイズが広く、収納もたくさんあり、ゆったりした住まいです。ところが、広すぎるとか、掃除が大変などという理由で断る人が多いと仲介会社から聞きました。広い家はかえって敬遠され、狭くても利便性の良い家が今のニーズなのでしょうね。それに、新築マンションの入居が2020年の春なので、それまで私が住み続けなければならず、買い手に春まで引き渡しできないのもデメリットだったと思います」

12月になり、ついに購入希望者が現れたと不動産仲介会社から連絡がありました。
4100万円で交渉を進めていましたが、思いもよらない問題が起こりました。
不動産仲介会社からの申し出で法定点検を実施したところ、法定限度以上の家のゆがみがあることがわかったのです。
ゆがみの処理費用が発生するため、売却価格は3600万円に引き下げざるを得ませんでした。
「これから新たな買い手を探すとなると、春以降になってしまい、決済に間に合いません。新築に建て替えて自分で住もうかとも考えましたが、高齢になったときのことを考えると、利便性の良い場所に住みたい。その思いを優先し、3600万円で手を打つことにしました。買い手は子育て中の若い夫婦で、広い家が欲しいそうです。そんな人にはぴったりの住まいなので、いい買い手がついたと思っています」

2020年1月、3600万円で売買契約が成立しました。

■不動産価格の相場推移

不動産価格は時代によって変化します。
ケースバイケースですが、不動産の売却は、購入した時の値段にこだわらず、現在の相場にあった価格設定が大切です。
特に1986年から1990年ごろのバブル期に買った不動産は、購入価格と現在の相場が大幅に乖離(かいり)していることもあります。
不動産情報サイトで近隣の物件相場を見たり、仲介会社に類似物件の価格状況を聞いたりして、相場観をつけておくことが、売却期間を長引かせないポイントといえます。

一戸建て売却は終活の一つ。無事乗り切って、新しい生活をスタート

今回の売却活動を振り返り、Oさんは「思ったよりも時間がかかりましたね。法定点検でゆがみが分かったり、査定額でも売れにくかったりと、想定外の問題は起こりましたが、その時々で対処できたと思っています」と言います。

「郊外の広い家は子育てには最適な環境でした。近所の方ともお付き合いができ、犬も飼えた。思い出のつまった家を売却するのに寂しさはありましたが、今後のことを考えると便利な場所に住み替えざるを得ません。私にとって売却は終活の一つです」

現在、夫婦で便利なマンションライフを満喫しているOさん。
「売却活動は、想定通りのスケジュールで進まないと思ったほうがいいですね。必ず何か起こります。そのことを含めた上でスケジュールを組むことをオススメします」と、アドバイスしてくれました。

2019年4月 ・売却価格査定
・不動産会社と専属専任媒介契約を結ぶ
・5200万円で売り出し
2019年8月〜 ・不動産会社を3回変更
・売却価格を4800万円、4600万円と段階的に引き下げる
2019年12月 ・売却価格を4100万円に変更
・購入検討者が現れる
・不動産会社の依頼で法定点検を実施。不具合が発覚
・売却価格を3600万円に引き下げ
2020年1月 ・売買契約を結ぶ

まとめ

  • 売り出し後の反響が少なければ、売り出し価格を見直すことも必要
  • 売り出し価格など不動産会社の進め方に納得がいかなければ会社を変更するのも可能
  • 売却活動は不測の問題が起こる可能性もあることも想定しておこう
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取材・文/浅野真由美 イラスト/斎藤ひろこ

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