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まずは「実家の今後」を決める! 高齢の親が住む実家を片付けた人に、年末年始でできることを聞いた

高齢の親が住む実家を片付けた人に、年末年始でできることを聞いた


親が高齢になるにつれ、気になる「実家の片付け問題」。

でも、実家と離れて暮らす人にとって帰省は多くて年に数回。実家の片付けに着手するのは難しいのが実情ではないでしょうか。

時間が足りないだけでなく、親や兄弟姉妹とのコミュニケーションの取り方、具体的な片付けの進め方……何から始めればいいのか分からないことばかりです。

そこで今回は、実家の片付けの著書もある整理収納アドバイザー・coyukiさんに「年末年始でできること」をテーマにお話をお聞きしました。

実体験に基づくアドバイスを参考にして、帰省のタイミングに「実家の今後」を考えてみませんか?

まずは「実家を今後どうするか」決める

――coyukiさんが実家の片付けを始めたきっかけを教えてください。

coyukiさん(以下、coyuki):きっかけは母の病気です。在宅療養することになったので、母が快適に過ごせるように寝室周辺から片付け始めました。

母は小物や雑貨類を集めるのが趣味で部屋が物であふれていたので、「仲良しの方がお見舞いに来やすいように」と話をしたことで、前向きに取り組んでもらえた気がします。片付けた先の楽しみをイメージできたのかなと。

体はしんどかったと思いますが、物を手に取って説明してくれている間は楽しそうでした。

その後、母が亡くなってからしばらく中断していたのですが、家族で相談して、その後も実家の片付けを継続することにしました。高齢の父が一人で片付けるのは難しかったので、近所に住んでいる私が実家に通って本格的に進めることにしたんです。

――具体的にはどのような手順で進めていきましたか?

coyuki:まず、父、私、妹の3人で「実家を今後どうするか」話し合いました。

父は「最後までこの家で過ごしたい」、私と妹は「将来実家に帰ることはなく、土地や建物は必要ない」という意向でした。「父が住んで終わりの家」ですね。だったら「父が元気な間は快適に過ごせるようにしよう」「お金はかけ過ぎずにゆっくり片付けよう」と決めたんです。

――なるほど。まずは「実家の今後」を決める、と。

coyuki:仕事のプロジェクトと同じで、実家の片付けをするのにも何か目的があるはずなんです。

わが家の場合、最初の片付けは「母が快適に療養できる家」が目的でしたが、母が亡くなった後は「父が元気な間快適に過ごせる家」に変わりました。特に将来的に実家を手放すか・手放さないかでその後の段取りが大きく変わるので、まずはそこからです。

目的が決まったら、今度は家族間での役割分担。私は片付けが得意で、妹は周りに声をかけて物を譲り受けてくれる人を探すのが得意だったので、私たちはそのように分担しました。

――お互いの得意分野があると分担しやすそうですね。

coyuki:役割分担だけでなく、兄弟姉妹での相談はすごく大切です。

私たちの場合は円滑に進みましたが、きょうだいに相談せずに片付けを進めて「高価な物を独り占めするつもり?」と受け止められて、家族間でトラブルになることもあると聞いています。後でもめないためにも事前確認や情報共有は必須だと思います。

――お母さまの死後、片付けの目的が変わったことで心境の変化はありましたか?

coyuki:母と一緒に片付けているときは、思い出話や冗談を言いながら前向きに取り組めたんです。

今でも思い出すのは、母の物は3部屋分ぎっしり詰まっていたのに、1畳分の片付けを終えたくらいで「私の片付けはもう終わった」と宣言されたこと。そのときは驚きを通り越して笑いが出ましたね。あんなにたくさんの物は健康だからこそ管理できていたのだと思います。

母が亡くなってからは、一人で膨大な物と向き合うことも多くなって。終わりが見えず、気分の下がる日も多かったです。

帰省のタイミングで実家の片付けを切り出すには

片付けで処分した本棚などの家具 ▲片付けで処分した本棚などの家具

――ここからは年末年始に帰省する方を想定してお聞きしたいです。親がまだ元気だと「実家の今後」の話は切り出しにくい気も。どんなコミュニケーションを取ればスムーズに進むでしょう?

coyuki:久しぶりに実家に帰ってきた子どもたちに、いきなり「片付けよう」「物を捨てよう」と言われると、おそらく親の立場からすると嫌ですよね。当たり前に過ごせている日常を否定されたように感じるでしょうし、悪気はなくても「親の死後」を意識しているようにも聞こえる。

そのような言い方ではなく、「家の中で困っていることはない?」「不便を感じていることはない?」と切り出してみる

親に抵抗感を持たれてしまうのが一番良くないので、少しでも片付けに前向きになってもらうように親と会話するのが大切です。私自身も最初に失敗したからこそ、そう思っています。

――coyukiさんも失敗した経験があるのですか?

coyuki:実を言うと、母が病気になる前は一切、片付けの手伝いをさせてもらえませんでした。

母は物が増え過ぎて手に負えなくなっていたみたいで。それを整理収納アドバイザーの私に見られたら「絶対に怒られる」「無理やり捨てられる」と思っていたようで、母のスペースには立ち入り禁止でした。そういう印象を私が与えてしまっていたのかもしれないですね。

母の病気を機に、伝え方を変えて「部屋がすっきりしたら気分もいいかもね」「けがしないように物をちょっと動かしてみない?」と声かけしたのが効果的でした。最初からこんなふうに伝えられていたら、もっと早く実家の状況を確認できたのかなと。

――言葉選びに配慮すると印象も大きく変わりますね。ちなみにお父さまとはどのような会話をしましたか?

coyuki:実は片付けを始めるまで、父とはほとんど会話をしない関係でした。だから最初はお互いよそよそしかったんですけど、とにかく父がどこをどう片付けたいのかを聞いて進めていきました。結局のところ、聞いてみないと分からない部分も多くて。

――お父さまは、実家が片付いていく様子を見てどんな反応でしたか?

coyuki:父は物が減って、広い空間ができて喜びました。今も片付けた状態のまま維持していますね。

生前の母から聞いた話では、結婚する前の父の部屋はいつも整理整頓されていたそうです。もともときれい好きだったので片付けに対してネガティブな反応はありませんでした。

父の場合は、物が減っていく寂しさはというよりは、母がいなくなった喪失感を常に抱えているようです。

――子どもの立場としては、「親が片付けないと将来自分が片付けることになる」と気持ちが先走って、あれこれ言ってしまいそうです。たまにしか帰省しないと余計に気になってしまいそう。伝え方のほかに親とのやり取りで気を付けるポイントはありますか?

coyuki:整理収納アドバイザーの資格を取るときに「住む人の最適を探すのが仕事」と教わりました。

それを踏まえると、「実家に住んでいる親にとって最適な空間にする」、「最適かどうか決める主導権は親にある」と認識するのが重要なのかなと思っています。

私もついつい「こうするといいよ」と口を出したくなるタイプなのですが、やっぱり親子でも考えは違うので、様子をうかがって父の好みを探るようにしました。

例えば、父の意見を聞きながら整理収納をしても、しばらくして実家に行くと父が使いやすいように少し手直しされている(笑)。そういうのを見て「父はこっちの方が便利なんだな」と理解していきました。

――自分のやり方で進めたくなりますが、相手の様子を探りながら進めるんですね。

coyuki:上から目線で親にものを言いたくなる場面もあるかもしれませんが、それは絶対にやめたほうがいいです。

自分よりも人生の先輩だという思いで接しないと、どこかで必ずトラブルが生じてしまいます。

父が生活する実家の居間▲coyukiさんの父が生活する居間はすっきり片付いた

実家が遠くてあまり帰れない人は何をすればいい?

――実家が遠方にあってあまり帰れない・頻繁に通えない場合は、片付けを進めていく上で何がポイントになりますか?

coyuki:近くに住んでいても遠くに住んでいても、家族とのコミュニケーションが実家の片付けを進める上で重要なポイントだと考えています。

なので、帰省時に「実家の今後」について話しやすい関係を築いておくのが第1ステップ。全ての土台ですね。

そこをクリアした上で、第2ステップは時間・労力・お金のどれを使えるか考えること。実家の片付けはこれらの掛け合わせなので、自分には何ができるかと考えると計画を立てやすいです。時間を使えるならお金をあまり使わなくて済むし、お金を使えるなら時間と労力を省けます。

――使えるリソースを明確にすることで、現実的にどう片付けを進めていったらいいのかが見えてきそうですね。

coyuki:はい。それに、親類やご近所の方、友人ら周囲の人たちに助けを求めることも必要です。困っていることを具体的に話すと「これなら手伝える」とサポートしてくれますし、情報も集まってきます。

私の場合、家具の処分に困っている話をしたら、友人が軽トラで一緒に運び出してくれてすごく助かりました。一人で全部やるのは大変なので、抱え込みすぎないことも大切ですよ。

年末年始の帰省時に片付けるなら自分の部屋から

――帰省して「実家を少しでも片付けたい」人もいそうです。年末年始や大型連休、お盆休みなどの限られた時間で片付けをするなら、どこから着手するといいでしょうか?

coyuki:親のスペースの前にまずかつての自分の部屋を片付けましょう。誰も住んでいない空き部屋に不用品を温存したまま、住んでいる親に「片付けよう」と言っても説得力がないと思うので。自分の部屋をきれいにして、親に「ここを使っていいから、普段生活しているところを片付けよう」と声かけするといいです。

――物を捨てる・手放すのに抵抗が強い親の場合、片付けを進める上でのコツはありますか?

coyuki:家のどこかに「捨て部屋」というか、1カ所だけ使わないスペースをつくるといいです。先ほどお伝えした、自分の部屋を片付けて使ってもらうのでもいいです。そこに使わない物を押し込んで、リビングなど生活している場には普段使う物だけを持ってきます。

そうすると、スペースに今までとは違う「余白」ができているはずです。そこで生活してもらうと、「物が少ないとこんなに生活が楽になるのか……」と体感できて、今まで執着していた物に対しての感覚が変わってくる。だから、まずは家の中の1カ所を片付けることを目標にするといいかもしれません。

親の収集品、ベランダの土……片付けで苦労したこと

――coyukiさんは「週2回、1日5時間、計3年」もの年月をかけて実家を片付けられました。かなり長期間ですが、特に苦労したのはどういったところですか?

coyuki:私は実家に通えたのでお金をかけず、少しずつ自力で片付けることを選択したんです。その結果、3年もかかってしまいましたが。

すごく悩んだのは、母が趣味で集めていた物の処分ですね。とにかく古道具みたいな物がたくさんあったんですけど、本物のアンティークなのか、それっぽく見せているだけなのか、私には価値が分からなかった。

実際、「すごく高価なのでは」と思って査定してもらったら、「お値段付けられませんけど、わざわざ来ていただいたので100円で」とか(笑)。器にしても作家さんの手づくりか、100円ショップで買った物か分からない。

――大変そうです……。普段のお仕事とは全く違う経験でしたか?

coyuki:整理収納アドバイザーのお仕事でお宅にお邪魔する場合は、必ず誰かが判断してくれるんです。「この箱の物はいらない」「それは旅行で買った思い出の品」「これは確か高価だったはず」と、次々と分類されていく。母の収集品は家族の誰も判断できなかったので難しかったですね。

最終的には同じ種類の小物に分類して、きれいに飾って収納しました。小さなショップのような感覚です。その上で雑貨好きな人にお譲りすることにしました。

ここは役割分担をした妹が興味のありそうな方々に声をかけてくれて。雑談程度でも話題を出しておくことが近道だったようで、思わぬところで興味を示していただけることもありましたね。

いつどこにその機会があるか分からないので、写真を撮っておいて見せられる状態にしておくのは必須。言葉だけで伝えるより数倍、チャンスが広がります。

coyukiさんの母親が集めていた収集品 ▲coyukiさんの母親が集めていた収集品

――ほかに特に苦労した場所はどこですか。

coyuki:スペースが狭い割に一番時間と労力とお金を使ったのがベランダです。

植木と土の処分が大変で、土は普通のゴミでは捨てられないんですよね。実家がある地域では、有料の埋め立てゴミとして回収日は2カ月に1回、一度に出せる量も45リットルのゴミ袋で3袋まで。費用はかかるし、すぐ処分できないし、本当に苦労しましたね。

ベランダは3階にあって土を下ろすのにも労力がかかるので、少しでも水分を減らして軽くするために、いったん広げて乾燥させてから袋に詰めてゴミ出ししました。

ベランダの土 ▲処分したベランダの土や鉢の一部

――大量のゴミ出しも苦労するポイントですよね。分別が分からないとか、ゴミ出しの日に親が出せないとか。

coyuki:地域ごとにルールがあるので、それを頭に入れるしかありません。年配の方にとって、冊子や自治体サイトの文章を読んで確認するのは煩わしい作業だと思うので、把握して親に伝えるのがコツです。

地域によっては分別が分かりづらいこともありますよね。なので、私たちの場合は、分別が分からない物は一つの袋にまとめておいてもらい後で分別するようにしました。

――いい解決法ですね!

coyuki:最初から完璧にしようとすると手が止まってしまうので。「捨て部屋」もそうですが、いったん1カ所にまとめるのはおすすめです。

実家の片付け、年末年始で何もできなかったら

――年に1、2回の帰省では、「決めた目標に対して進捗はほんのわずか」ということになりそうです。長期にわたる実家の片付けで、モチベーションを維持する方法はありますか?

coyuki:ゴミ袋1袋でも、部屋1カ所でも、片付けられたことに対して「良かったね」と言える空気をつくっていく

一つ片付けたのに「まだこれだけしか進んでいない」と言われるより、「少しだけどきれいになったね」と言ってもらえる方が「次もやろう!」と前向きになれますよね。

家族が遠方にいる場合は、写真を送って「ここをきれいにしたよ」とLINEで報告したりして、肯定し合えるようなコミュニケーションが取れるといいですね。

――やっぱり実家の片付けって、着手するのは早ければ早い方がいいんでしょうか?

coyuki:最近、実家の片付けや「実家じまい」はよく取り沙汰されていますが、そもそも「本当に実家を片付ける必要があるのか」を一度考えてみるのはどうでしょうか。

親は親で実家で平和に暮らしていて、何も困っていなくて、変わらない日常がある。「実家の今後」が気になっているのは自分だけ、というケースもあります。

親の存命中に片付けなければ、将来的に子どもが実家じまいすることになるのは確かですが、そのときの選択肢は子ども自身で決められます。

――そう考えると、遠方に住んでいて手伝いが難しい場合はお金で解決する方法もありですね。

coyuki:そうですね。遠方だと帰省するだけで時間もお金もかかりますし……。実家の片付けを業者に依頼した場合の相場を調べておくといいと思います。

その上で自分の時間と労力を省くための必要経費と考えて、業者に依頼する資金をためて備えておく。もちろん親が資金を用意していてくれたら、それでもいいですし。お墓やお葬式代よりも実家じまいの方が費用がかかることもありますし、選択肢を持っておくのは現実的かもしれませんね。

今は何もしないで親が亡くなってから着手するのでもいいし、専門の業者に全て任す手だってある。それでも今から片付けていきたいと思うなら、やっぱり家族と相談するところからスタートしてほしいですね。

――今回の年末年始が過ぎてから「実家の片付け、何も考えられなかったな」「結局、親と話せなかったな」と反省する人もいると思います。最後にそうした方にメッセージをお願いしたいです。

coyuki:繰り返しますが、実家の片付けは本当に義務感ですることではありません。何もできなかったとしても、そこまで実家が差し迫っている状況ではないのかもしれないですし。それでも反省するほど気になっているのであれば、次に帰省する時の目標を考える

私だったら、「自分の部屋のここから片付けよう」とか、「あの場所に物が多くて危険だから話をしてみよう」とか、家中を眺めながら計画をメモして帰ります。少しずつでもできることを進めてみることですね。

▲スペースが生まれると実家の活用法も変わってくる


【お話を聞いた人】coyukiさん

coyukiさん

ブロガー、整理収納アドバイザー。著書に『大丈夫! 実家は片付けられます』(主婦の友社)。2011年からスタートしたコンパクトな自身の暮らしをつづったブログが人気。現在は整理収納アドバイザーとしてセミナーや個人宅へのアドバイスを行っている。

ブログ:*LittleHome*
Instagram:@coy_uki

取材・文/横田ちえ
編集/はてな編集部


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