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遊休地(ゆうきゅうち)とは?活用方法や売却するかの判断基準も紹介

遊休地(ゆうきゅうち)とは?活用方法や売却するかの判断基準も紹介

遊休地(ゆうきゅうち)とは、活用されていない土地を意味します。住宅街でよく見かける遊休地としては、建物が何も立っていない「空き地」や「更地」などが当てはまります。

土地を所有していると、毎年、固定資産税や都市計画税を納めたり、相続時には相続税を納めたりしなければなりません。そのため遊休地を活用しないまま税金を納めるよりは、土地を他人に貸したり、賃貸アパートや駐車場を建設して収入を得たり、売却したりすることを検討してもいいでしょう。

この記事では、遊休地の概要やその種類、さらに遊休地を所有するメリットやデメリット、活用例を9つ紹介します。最後に遊休地を活用するか売却するかの判断ポイントを解説します。

記事の目次

遊休地(ゆうきゅうち)とは?

遊休地(ゆうきゅうち)とは?

(画像/PIXTA)

遊休地(ゆうきゅうち)とは、「遊ばせている」「休ませている」という文字からなるとおり、活用されていない土地を意味します。住宅街でよく見かける遊休地の典型的な例としては、建物が何も立たずに放置されている「空き地」や「更地」などが当てはまります。一方、住宅が立っているのに長期間にわたって人が住んでいなかったり、建物が利用されていなかったりする場合は「空き家」といいます。

遊休地を所有する理由や事情はさまざまです。例えば、両親から相続した土地をきょうだいで将来分筆するために放置している。道路付けが悪かったり、不整形地など土地の条件が悪かったりして活用や売却しづらくて放置している。遊休地の所有者が高齢だったり、遠方に住んでいたりして管理が難しく放置しているなどです。

「遊休地」と「遊休土地」は別物

遊休地と似た言葉で「遊休土地(ゆうきゅうとち)」がありますが、意味は異なります。遊休土地とは国土利用計画法の遊休土地制度で定められた用語で、面積が1000m2以上など所定の条件を満たす土地を2年以上利用しておらず、都道府県知事から活用や売却を通知された土地のことです。都道府県知事から通知を受けた場合、遊休土地の所有者は6週間以内に活用または売却の計画書を届け出る必要があります。

遊休地は3種類に分けられる

遊休地の種類は土地の用途によって主に3つに分けられます。具体的には「宅地」「農地」「商業地・工業地」です。遊休地の活用を検討するに当たって、まずは遊休地がどのような用途で利用できるかを把握することが大切です。

宅地

宅地とは、住居などの建物を建設する敷地として活用できる土地です。一戸建て、アパートやマンションなどの集合住宅はもちろん、病院や学校、駐車場なども建設できます。残りの2つと比べて、宅地の遊休地は最も活用方法が多いでしょう。

とはいえ同じ宅地でも、例えば第一種低層住居専用地域ではコンビニエンスストアを建てられませんが、第二種低層住居専用地域では建てられるなど、用途地域※ごとに建設可能な建物は変わってきます。そのため遊休地の活用を検討する際は、まず用途地域を確認することが大切です。

※国土交通省「用途地域

農地

農地とは、田畑を耕して穀物や野菜などを耕作するための土地です。農地法によって、生産性が高い優良な農地はそれ以外の用途への転用を禁止しています。一方、市街地にある生産性が低い農地はそれ以外の用途への転用が可能です。ただ、その際は都道府県知事もしくは農林水産大臣が指定する市区町村の長に届けを提出し、許可を受ける必要があります。

農地の遊休地の活用例としては、他の農家に農地を貸したり、一般から広く利用者を募る「市民農園」として活用したりするケースがあるようです。また、住宅や商業施設などを建設して街として整備することを優先する市街化区域にある農地の遊休地の場合は、住宅などへの活用も可能です。

遊休農地

なお、似た言葉として「遊休農地」があります。遊休農地とは、農地法の定義で「かつて農地だったが現在は耕作されておらず、かつ、今後も耕作される見込みがない」もしくは「周辺地域の農地と比較して、利用の程度が著しく劣っている 」土地を指します。自治体の農業委員会が毎年行っている利用意向調査によって決められます。

商業地・工業地

商業地は店舗や事務所などの商業活動を主に行う土地で、用途地域は「近隣商業地域」「商業地域」が該当します。一方、工業地は工場などで生産活動を主に行う土地で、用途地域は「準工業地域」「工業地域」「工業専用地域」が該当します。「工業専用地域」以外は住宅を建てることへの規制はありません。中高層や超高層マンションが建設される例もあります。

遊休地の活用例としては、商業地ではコンビニエンスストアや飲食店や駐車場、工業地では資材置き場などがあります。

遊休地のメリット・デメリット

遊休地のメリット・デメリット

(画像/PIXTA)

遊休地所有のメリット

遊休地を所有するメリットとしてまず挙げられるのは、更地であるがゆえ、そのまま貸したり、アパートや駐車場を建設したりできるなど活用しやすいことです。それによって土地の所有者は借地代、賃料、駐車場代などの収入と節税効果が期待できます。

例えば、更地に賃貸住宅を建てた場合、相続税評価額は更地の場合と比べて2割程度減額されます。また毎年支払う固定資産税は、住宅一戸当たりの敷地200m2まで6分の1、同じく都市計画税は3分の1になります。固定資産税を所得税の不動産所得の計算上、必要経費として計上できる利点もあります。

●詳しくは「土地や建物の固定資産税の軽減措置とは?概要や申請手続きを完全ガイド」をチェック

相続メリットもあります。土地の相続税評価は、国税庁が相続税算出のために使う路線価が適用されるため、不動産売買時に参考にする公示価格の8割程度になります。そのため売却して現金化してから相続するより、遊休地を所有したまま相続したほうが、節税効果が大きいといわれています。

ただし、注意点もあります。「所有地の前面道路の幅が狭かったり、開口幅が狭い旗竿敷地など土地の形が悪かったりする場合は相続税評価の減価が不十分で評価額が実勢価額より高くなるケースがあります。こうした場合は相続前に売却することを推奨します」(税理士法人タクトコンサルティング)。

遊休地所有のデメリット

遊休地を所有するデメリットは、土地を利用していなくても原則として毎年固定資産税や都市計画税を納めなければならないことです。また、生い茂る雑草を刈るといった遊休地を管理する手間やコストもかかります。遠方にあると、なおさら大変です。遊休地の管理を怠れば、周辺地域に迷惑をかける危険性があります。例えば、環境保全地区の遊休地で雑草を放置していると、雑草の種が飛散し、隣地の農地の雑草繁茂を助長する恐れなどがあります。

遊休地の活用を検討する際の重要なポイント

遊休地活用のポイント

(画像/PIXTA)
遊休地の活用を検討する際、重要なポイントは主に3つあります。
  • 所有する遊休地に向く活用方法を把握
  • 活用方法ごとのメリット・デメリットを検討
  • 経営方式の検討

まずは、所有する遊休地に向く活用方法を把握することです。例えば、田舎や郊外にある遊休地の場合、賃貸アパートや駐車場として活用したとしても収益化に苦戦するかもしれません。所有する遊休地の立地や面積などから活用方法の向き・不向きを検討することが大切です。

次に活用方法ごとのメリット・デメリットを検討します。具体的には、遊休地を活用して得られる収入の見通し、活用するために必要な初期投資や毎年かかる経費、節税効果、管理やメンテナンスの手間、事業停止や売却、その他の活用方法への転用がしやすいかなどです。

最後が、経営方式の検討です。活用方法ごとに異なりますが、代表的な方式は3種類です。

一つ目は、運営事業者に土地を貸して地代をもらう借地方式です。初期投資や管理業務が不要な半面、地代しか入らないため収益性は比較的低くなることが多いでしょう。

二つ目が、自ら初期投資して土地の整備や建物を建設し、運営は業者に委託する方式です。運営業務の負担がないのがメリットなものの、稼働率が低い場合などは委託費用のほうが高くなり赤字になるリスクがあります。

三つ目がすべて自ら行う方法です。収益を最も上げられる可能性がある半面、運営業務の負担が重く、失敗した際のリスクも大きくなります。

いずれにせよ、どの活用方法においても大事なのは事業計画を慎重に検討することです。初期投資とその資金繰り、年間で得られる収入や税務効果およびランニングコストなどをよく試算し、長期的な収支がどうなるかを慎重にシミュレーションしましょう。

遊休地の活用方法例

次に遊休地の活用方法例を9つ紹介します。

賃貸アパート経営

賃貸アパート経営

(画像/PIXTA)

遊休地の活用方法のひとつに賃貸アパート経営があります。一戸建てと異なり、アパートは複数人が入居できるため、空室リスクを分散することができるのがメリットのひとつです。

節税効果もあります。更地に賃貸アパートを建てると、その土地は「貸家建付地」として評価され、相続税評価額は2割程度減額されます。さらに「小規模宅地等の特例」が適用されると評価はさらに下がります。ただし、空室が多くなれば相続税評価額の減額は小さくなるので注意も必要です。

毎年支払う固定資産税と都市計画税も200m2まで固定資産税は6分の1、都市計画税は3分の1に減額されます。さらに賃料収入から固定資産税を必要経費として計上することもできます。

また下図は遊休地のままの場合と賃貸アパートを建てた場合の相続税評価額を比較した試算例です。賃貸アパートを建てた場合の相続税評価が減額されることが分かりますが、申告時に否認される事例もあるので注意しましょう。

相続税の課税価格の比較

賃貸アパート経営を検討する場合、高額な初期投資の資金繰り、長期的な人口減少による需要の見通し、事業停止した際の転用や売却などの出口戦略などを慎重に検討する必要があるでしょう。

駐車場経営

駐車場経営

(画像/PIXTA)

駐車場経営は建物を建てる必要がないため、比較的少ない初期投資で始められます。また事業の停止も比較的手軽にできるため、他の用途への転用がしやすいのもメリットです。一方、デメリットは建物を建てないため固定資産税などの軽減措置は受けられません。

駐車場は3種類あります。「月極駐車場」「コインパーキング」「立体駐車場」です。月極駐車場はアスファルト舗装や車輪止めの設置程度で始められるため初期投資を抑えられます。コインパーキングは料金計算機やロック板などの設置も必要なため初期投資は大きくなります。立体駐車場は土地面積当たりの駐車台数が増えるため収益は期待できるものの、大がかりな工事が必要なため初期投資は膨れがちです。

借地

借地

(画像/PIXTA)

借地は、初期投資も土地を整備する程度で済み、貸すだけという活用方法です。首都圏や関西圏などの人が多く住むエリアに広大な遊休地がある場合、一戸建てやマンションを開発したいデベロッパーに貸す方法もあります。

借地には、後々のトラブル回避のためにも賃借期間を定められる「定期借地権」※があります。賃借契約期間は「一般定期借地権」は50年以上、「事業用定期借地権」は10年以上50年未満です。

「地代の受け取りは『前払地代方式』を活用するのがお勧めです。この方式だと、契約時に地代として土地の時価の7割程度を一括で受け取ることができます。その一方、固定資産税や都市計画税を毎年納めます」(税理士法人タクトコンサルティング)。

※国土交通省「定期借地権

コンビニなどの店舗(テナント)経営

コンビニ経営

(画像/PIXTA)

遊休地にコンビニエンスストアなどの店舗を建設する方法もあります。居住用と比較すると事業用の賃料は高く設定できます。要件を満たせば、貸付事業用宅地等の「小規模宅地等の特例」が適用されて、相続税評価が減額される可能性があります。

医療・福祉・介護施設経営

介護施設経営

(画像/PIXTA)

医療・福祉・介護施設のメリットのひとつは固定資産税などの軽減措置が受けられること。自治体によっては補助金が支給されるケースもあります。一方、デメリットは施設を建築する初期投資もかかることです。介護報酬の引き下げなどの政策に影響を受ける場合もあります。

トランクルーム経営

トランクルーム経営

(画像/PIXTA)

トランクルーム経営は、コンテナを収納スペースとして貸し、賃料を収入として得ます。比較的少ない初期投資で始めることができますが、日当たりが悪かったり周辺に工場があったりするなど住宅に不人気の立地ができる場合があります。

コンテナの利用客は比較的長期にわたるため賃料は継続的に得やすいものの、集客や高稼働を維持するにはノウハウや工夫が必要で簡単ではありません。また、周辺に競合施設ができると競争が激しくなり、稼働率が低下するリスクがあります。

コインランドリー経営

コインランドリー経営

(画像/PIXTA)

コインランドリー経営は、コインランドリー用の建物を建設し、そこに洗濯用の設備などを導入し、利用者に使ってもらい収入を得るという方法です。他の活用方法と比べて土地面積が比較的小さくてもできたり、無人経営も可能なため管理の手間が少なかったりするのもメリットといえるでしょう。

デメリットは初期費用がかかることです。また一回当たりの客単価が比較的低いため、集客方法の知識も必要になります。

資材置き場

資材置き場

(画像/PIXTA)※写真はイメージです

賃貸住宅や駐車場の需要が少ない田舎や郊外、工業地などで検討できる活用方法が資材置き場です。ほぼ更地のままで貸せるため、初期投資が比較的かからず始められます。

デメリットは固定資産税などの軽減措置が受けられないことです。また、住宅街など立地によっては騒音トラブルなどに発展する可能性があるなどの注意が必要です。

太陽光発電

太陽光発電

(画像/PIXTA)

政府は太陽光発電などの再生可能エネルギーの普及を推進するため、「再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT制度)」※を設けています。これは再生可能エネルギーで発電した電気を、電力会社が一定価格で一定期間買い取ることを国が約束する制度です。太陽光パネルを設置し、発電した電力を電力会社に売却することで収入を得る仕組みです。

太陽光発電のメリットは、田舎や郊外などの土地でも利用しやすいことです。太陽光パネル設置後は専門業者が定期的に点検やメンテナンスを行うため、管理の手間が比較的かからないのも利点です。

デメリットは発電量が天候によって左右されること、FITの買取価格が下落傾向にあることです。建物を建てないため、固定資産税などの節税効果はありません。自然災害による太陽光パネル破損などのリスクもあります。

※資源エネルギー庁「FIT制度

遊休地を活用するか売却するかの判断ポイント

土地の売却

(画像/PIXTA)※写真はイメージです

遊休地の売却を検討したほうが良い場合は主に3つあります。

1つ目が、所有する遊休地に向く活用法がなかったり、活用する資金やそれを手当てする目処が立たなかったりする場合です。特に初期投資やランニングコストが多くかかる場合、資金繰りは極めて重要です。無理な借り入れを行う必要があったり、収益の見通しが厳しかったりする場合は活用を諦めて、売却を検討すべきでしょう。

2つ目が、活用して得られる収入の見通しが少なく、毎年納める固定資産税などの税金と管理費用を賄えない場合です。思い入れがあり手放したくない、将来相続するなどの理由があれば別ですが、そうでない場合は売却したほうが余計な出費をせずに済むでしょう。

3つ目が、相続税の節税効果が期待できない場合です。前述のとおり、土地の立地や形状が悪い場合、相続税評価額の減額が不十分となり、実際の土地の価格以上に相続税評価額が高くなってしまう場合があります。その際は相続するより、相続前に売却するほうがいいでしょう。

まとめスーモ

  • 遊休地とは活用されていない土地。放置していると固定資産税などの税金や管理コストがかかりもったいない
  • 遊休地の活用方法は土地ごとに向き不向きがある。土地の立地や面積などに合った活用法を選びたい
  • 遊休地の活用方法を検討する際は事業計画を立てて長期的な収支をシミュレーションしよう
  • 固定資産税や管理コストを活用の収益で賄えない、相続税の節税効果を期待できない場合は売却を検討
●取材監修/税理士法人タクトコンサルティング
資産税コンサルティングの草分けとして、長年にわたり、個人の相続・譲渡や贈与など、法人の事業承継、組織再編、M&Aなど、個人・法人の資産税に関わるコンサルティングを手がけている。

●取材・文/冨丸 幸太
●構成/サクラサクマーケティング株式会社

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