
建物を解体した場合は「建物滅失登記」が必要です。建物滅失登記を怠ると過料に処されるなどのデメリットがあるため、速やかに登記手続きをする必要があります。自分で建物滅失登記をすることも可能ですが、スムーズかつ確実に登記したい場合は土地家屋調査士に依頼しましょう。
この記事では、自分で建物滅失登記をする場合と土地家屋調査士に依頼する場合の費用相場や手順などを解説します。
記事の目次
建物滅失登記にかかる費用の相場
建物の滅失登記を土地家屋調査士に依頼する場合の費用相場は、4~5万円程度です。日本土地家屋調査士会連合会の令和4年度事務所形態及び報酬に関する実態調査によると、エリア別の平均値は以下のとおりとなっています。
| エリア | 建物滅失登記報酬額の平均値 |
|---|---|
| 全国 | 48,098円 |
| 関東 | 48,628円 |
| 近畿 | 47,065円 |
| 中部 | 48,247円 |
| 中国 | 45,997円 |
| 九州 | 48,882円 |
| 東北 | 49,013円 |
| 北海道 | 43,605円 |
| 四国 | 46,191円 |
ただし、上記はあくまで平均値です。土地の広さや登記の状況などによっては、次のような追加費用が発生する可能性があります。
| ケース | 追加となる費用 |
|---|---|
| 土地が広大 | 建物図面などで取り壊し建物の位置の特定ができる場合、追加費用は基本的には発生しません。ただし、建物図面もなく、土地が借地で借地人が多く建物が密集しているケースで、現地立会人の案内がない場合は、住宅地図や建物謄本ならびに建物図面を取得するため実費がかかることもあります |
| 解体証明書がない場合 | 解体証明書がないことについての上申書などの作成費用が発生します。 |
| 抵当権が残っている場合 | 金融機関などからの建物滅失登記承諾書作成などの費用が発生します。 |
| 相続発生時で戸籍調査などが必要 | 戸籍などの取付を含んだ場合は戸籍などの実費および取付報酬が発生します。 |
| 登記上の住所変更が必要 | 住所遍歴を称する書面(登記簿上住所記載の住民票、戸籍の附票など)があれば、登記簿上住所を変更する必要はないため基本的に追加費用は発生しません。 |
| 分合筆により所在変更 | 土地謄本で分合筆がわかるので追加費用は基本的に発生しません。 |
| 土地家屋調査士の出張を伴う | 実費(交通費・宿泊費など) |
土地家屋調査士は平成15年より報酬規定がなくなり、報酬を自由に定めることができるようになりました。依頼する土地家屋調査士によって金額は異なるため、依頼する前に見積もりを取るようにしましょう。なお 、建物滅失登記に登録免許税やその他の税金が課されることはありません。
建物滅失登記を自分でしたときの費用相場
自分で建物滅失登記をする場合、かかる費用は書類の取得費や交通費などの実費のみです。書類の取得費用や手数料合わせても、1000円~3000円程度に抑えられます。具体的な費用の内訳は、以下のとおりです。
| 書類等 | 窓口請求 | オンライン請求 |
|---|---|---|
| 登記簿謄本(登記事項証明) | 600円 | 480円 |
| 建物図面 | 450円 | 請求した証明書を郵送で受け取るとき:450円 請求した証明書を窓口で受け取るとき:430円 |
| 公図(地図証明書) | 450円 | 請求した証明書を郵送で受け取るとき:450円 請求した証明書を窓口で受け取るとき:430円 (1筆の土地または1個の建物) |
| 住民票(要否は状況による) | 200円〜300円程度(自治体・取得方法による) | |
| 戸籍謄本(要否は状況による) | 450円 | |
| 除籍謄本(要否は状況による) | 750円 | |
そもそも建物滅失登記とは?
建物滅失登記とは、家屋を解体した事実を登記簿に反映させることを指します。建物滅失登記が必要なのは、次のようなケースです。
- 家屋の解体
- 建て替え
- 火災や自然災害により建物が焼失・倒壊
建物の滅失を登記すると、その建物の登記簿は「閉鎖登記簿」となります。閉鎖登記簿とは、すでに存在しない不動産の登記記録のことです。公開されず、一般的な登記簿とは別に保管されます。
建物滅失登記の申請は、自分でするか土地家屋調査士に依頼します。「登記の専門家」といえば司法書士を思い浮かべる人も多いでしょうが、司法書士に依頼できるのは所有権の移転や抵当権の設定など権利部の登記に限られます。建物滅失登記は表題部に該当するため、司法書士には依頼できません。
建物滅失登記の必要書類
建物滅失登記に必要な書類と入手方法は、次のとおりです。
| 書類 | 入手方法 |
|---|---|
| 建物滅失登記申請書 | 法務局で取得。法務局サイトからダウンロードも可能 |
| 登記簿謄本(登記事項証明書) | 法務局で取得。オンライン手続きも可能 |
| 建物図面(各階平面図) | 法務局で取得。オンライン手続きも可能 |
| 公図(地図証明書) | 法務局で取得。オンライン手続きも可能 |
| 建物滅失証明書 | 解体業者に用意してもらう |
| 解体事業者の代表事項証明書と印鑑証明書 | 解体業者に用意してもらう |
| 委任状(土地家屋調査士に委託する場合) | 土地家屋調査士に用意してもらう |
相続人が建物滅失登記をする場合は、別途、建物と所有者と相続関係を証明するための戸籍謄本や除籍謄本、相続人の戸籍謄本や住民票などが必要です。登記簿謄本や建物図面は、新たに発行しなくてもお手元にある可能性があります。すでに手元にある書類は、追加で取得する必要はありません。

登記事項証明書の取得方法の詳細については、以下の記事をご参照ください。
不動産登記簿謄本(登記事項証明書)とは?取得方法、持ち家や土地の所有権移転や名義変更手続きもわかりやすく解説!
登記事項証明書の取得方法はオンライン?法務局?必要書類の書き方、全部事項証明書などの種類も目的別に解説
【土地家屋調査士・自分】建物滅失登記を申請する手順

建物滅失登記の申請は、土地家屋調査士に依頼するか自分で行うかのいずれかです。それぞれの手順について詳しく見ていきましょう。
土地家屋調査士に建物滅失登記を依頼する手順
土地家屋調査士に委任して建物滅失登記をする手順は、以下のとおりです。
- 土地家屋調査士を探す
- 見積もりを取る
- 住民票と印鑑証明を取得する
- 土地家屋調査士が用意した委任状に必要事項を記載する
- 土地家屋調査士が代理で登記手続きをする
- 登記完了証・閉鎖事項全部証明書を受領する
まず、インターネットなどを活用して建物滅失登記を依頼する土地家屋調査士を探します。報酬額は土地家屋調査士によって異なるため、相見積もりを取るのもいいでしょう。
登記手続きに必要な書類は基本的に土地家屋調査士が取得してくれますが、住民票や委任に必要な印鑑証明書は自身で取得します。委任後、通常は2〜3週間程度で手続きが完了し、登記完了証と閉鎖事項全部証明書を受領します。申請方法にかかわらず、建物滅失登記に登録免許税が課されることはありません。
自分で建物滅失登記をする手順
自分で建物滅失登記をする場合の手順は、以下のとおりです。
- 必要な書類を取得する
- 建物滅失登記申請書に必要事項を記入する
- 法務局へ申請書類を提出する
- 登記完了証・閉鎖事項全部証明書を受領する
まずは、法務局などで必要な書類を取得します。続いて法務局で取得した建物滅失登記申請書に必要事項を記入して申請します。登記手続きが終わり次第、登記完了証と閉鎖事項全部証明書を受領して完了です。
申請方法は窓口、郵送、インターネットがありますが、不備があると二度手間になってしまうため、できれば窓口に行って申請することをおすすめします 。
建物滅失登記を自分でする場合の注意点
不動産登記法では、建物が滅失した日から1カ月以内に建物滅失登記をしなければならないと規定されています。自分で登記する場合も、滞りなく手続きできれば1カ月以内の登記が可能ですが、書類の取得に手間取ったり不備があったりすると1カ月を超えてしまうおそれがあります。
また、役所や法務局は平日しか開いていません。必要書類の取得や申請のため、会社を休まなければならないこともあるかもしれません。自分で登記すれば費用を抑えられますが、スムーズかつ確実に滅失登記をしたいという人は土地家屋調査士へ依頼することも検討してみましょう。
建物滅失登記を怠ることの5つのデメリット

建物滅失登記を怠ると、次のようなデメリットが生じるおそれがあります。建物を解体したら、速やかに登記手続きをしましょう。
過料が課せられる可能性がある
不動産登記法第57条および第164条では、建物の滅失から1カ月以内に滅失登記を行わない場合は10万円以下の過料に処すると規定されています。自ら解体した場合に限らず、自然災害などにより焼失、倒壊した場合も同様です。
存在しない家に固定資産税が発生する
建物を解体しても建物滅失登記を申請しない場合、登記上では建物が存在したままの状態となります。その結果、すでに存在しない建物に対して固定資産税を支払い続けることになってしまいます。市街化区域内の土地は、固定資産税に加えて都市計画税も課され続けます。
固定資産税は毎年1月1日時点の所有状況に基づいて課税されるため、年度の途中で建物を解体しても、その年度の税金は全額支払う必要があります。しかし、翌年度以降も建物滅失登記をしていないと、引き続き建物分の固定資産税が課されてしまいます。
ただし、滅失した建物が住宅だった場合「住宅用地の特例 」の適用がなくなり、土地の固定資産税が上がるため注意が必要です。詳しくは、以下の記事をご参照ください。
空き家を解体・更地にしたら固定資産税が6倍に?税金を安くする方法は?更地のメリット・デメリットを解説
更地の土地でも売却できない
建物滅失登記は、その土地が建物のない更地であることの証明にもなります。建物を解体して更地にしたにもかかわらず建物滅失登記をしていないと、登記簿上はまだ建物が存在することになります。
このため、土地の購入希望者が現れたとしても、現状と登記の状況が異なるため売却できない、あるいは売却手続きに支障が出る可能性があります。また、建物滅失登記の手続きには時間がかかるため、売却のスケジュールが遅れる可能性もあります。
建て替えができない
古い建物を解体してから新規に建て替える場合、旧建物の滅失登記が済んでいないと、新しい建物の建築確認申請が通らない可能性があります。建築確認申請の際には、その土地の登記簿謄本の提出が求められるケースもありますが古い建物が登記簿に残ったままだと更地であることの確認ができません。
このため、建て替えを予定している場合は、解体後速やかに建物滅失登記を行うことが大切です。登記が遅れると、建築計画全体のスケジュールに影響を及ぼすおそれもあります。
建物の所有者が死亡したあとの手続きが煩雑になる
建物の所有者が亡くなっている場合は、相続人が建物滅失登記することもできます。しかし、相続人による登記手続きでは、建物の所有者との相続関係がわかる書類が必要です。建物滅失登記に必要な書類に加え、被相続人の戸籍謄本や除籍謄本、相続人の戸籍謄本などを取得しなければならず、手続きが煩雑になります。土地家屋調査士に委託する場合も、追加費用が発生します 。
まとめ
建物を解体したら、速やかに建物滅失登記をする必要があります。自分で登記することで費用は抑えられますが、早く、確実に登記しなければならない場合や平日の昼間に時間を取れない場合は、土地家屋調査士に委託することも検討しましょう。


