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登記事項証明書の取得方法はオンライン?法務局?必要書類の書き方、全部事項証明書などの種類も目的別に解説

登記事項証明書の取得方法とは?必要書類の書き方や証明書の種類を目的別に解説

確定申告や不動産の売買・相続などで「登記事項証明書」が必要になった場合、取得のダンドリはどのようなものなのでしょうか?「登記事項証明書」とは、その不動産についての権利関係などのデータが記録された公的な書類で、実は誰でも簡単に見たり、手に入れたりできるもの。いわば不動産の履歴書とも言える「登記事項証明書」の入手方法を、司法書士の石丸大樹さんのアドバイスとともに分かりやすくご紹介します。

記事の目次

登記事項証明書はどこで手に入る?取得方法を徹底解説

登記事項証明書を手に入れるには、(1)法務局や出張所の窓口で請求する「窓口申請」、(2)オンラインで請求する「オンライン申請」、(3)郵送で請求する「郵送申請」、の3つの方法があります。また、見るだけなら(4)「オンライン閲覧」も可能です。それぞれのやり方のメリット・デメリットを知って、自分にとって便利な方法を選びましょう。

登記事項証明書を取得する3つの方法

窓口へ足を運べば、基本的にはすべての手続きをその場で終えることができます。また、オンラインの場合は、インターネットバンキングと郵送受取を選べば、自宅から一歩も出ることなく全ての手続きを行えます。

登記事項証明書取得に必要なものは手数料だけ

登記事項証明書を入手するには、認印も身分証明書も何も要りません。「不動産の情報を、誰でも気軽に確認できるのが登記事項証明書です。手数料さえ払えば、自分のものではない不動産でも登記情報を閲覧したり、証明書を発行してもらったりできるのです」(石丸さん)。
登記事項証明書の取得のために必要なものは手数料だけ。ただし、地番・家屋番号が分からなければ、登記情報提供サービスやオンラインによる送付請求は利用できません。窓口ならそこで確認できますが、オンラインの場合はまずは「地番・家屋番号」を知っておく必要があります。

まずは「地番・家屋番号」を確認しよう

「地番」と「家屋番号」は、不動産登記法に基づいて決められるもので、ふだん使っている住所と同じとは限りません。「地番」とは土地の登記上の番号のことで、「家屋番号」とは建物の登記上の番号のことを指します。
「近年では、地番と家屋番号が住所と異なるケースが増えてきました。自分が所有する不動産の地番と家屋番号は固定資産税の課税証明書や納税通知書に書かれているので、まずはそちらで確認してみましょう。確認方法を簡単な順番にあげると

1.固定資産税の課税証明書や納税通知書を見る
2.不動産の権利書(登記済証)を見る
3.土地・建物の所在地を管轄する法務局に電話して教えてもらう
4.土地・建物の所在地を管轄する法務局に備え付けられた地図で調べる
5.市区町村役場で聞く
6住居表示地番対象住宅地図(発行されていない地域もある)で調べる

になります。

1と2はほとんどの方の自宅に保管されていると思うので、自宅の地番を知るならそれでOK。見当たらないという方や、他人が所有する不動産については、法務局の窓口に行って申請するときに尋ねてもいいですし、電話でも教えてもらえます」(石丸さん)

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窓口・オンライン・郵送から、自分にとって便利な方法を選ぼう

登記事項証明書を取得するには、3つの方法があります。どれも意外に簡単にできますが、それぞれの特徴を知って、自分にとって最も使い勝手のいい方法を選びましょう。

窓口とオンラインと郵送の違い
  窓口申請 オンライン申請 郵送申請
長所 ・窓口が近くにあれば手軽
・窓口で確認しながらできる
・即日交付される
・自宅にいながら入手できる
・手数料が割安で、印紙が不要
・受付時間が長い
・自宅にいながら入手できる
・受付時間が制限されない
短所 ・受付時間が短い
・手数料が高くなる
・窓口が遠ければ不便
・パソコン環境が必要
・利用者登録が必要
・申請してから入手まで1日~長ければ1週間程度かかる
・入手まで3日~1週間かかる
・申請書をダウンロードするか、法務局で入手する必要がある
・印紙を用意する必要がある
手数料 600円 郵送/500円
窓口交付/480円
600円
取扱時間 平日の午前8時30分から午後5時15分 平日の午前8時30分から午後9時まで(午後5時15分以降に申請送信した場合は翌業務日に受付) 特になし
法務局や出張所が近くにあったり、急ぐ場合や、インターネット環境が整わない場合は窓口へ。法務局が遠かったり、仕事で平日の日中に行けない場合や、コストを抑えたい場合はオンラインがおすすめです。

(1)法務局や出張所に出かけて「窓口申請」する

まずは、申請できる窓口を探しましょう。
「各都道府県の法務局のほか、最近では出張所が大きな駅の近くにたくさんできています。法務局が自宅から遠くても、出張所が通勤・通学先の近くにないか、探してみましょう。法務局のホームページに一覧が出ています。地番、家屋番号が分からない場合も、同じ一覧の電話番号が利用できます。
もし、法務局や出張所が近くにあれば、手数料は若干高くなりますが、行って窓口で申請するのが一番簡単で、時間もかからないのでおすすめです。以前は、その不動産を管轄する法務局や出張所でなければ、登記事項証明書を申請することができませんでしたが、今ではどこの法務局や出張所でも手続できるようになりました。窓口に行きさえすれば、手続は簡単。窓口で申請書を貰い、記入し、収入印紙を買って、申請書を一緒に提出します。不明な点があれば、『登記事項証明書が欲しいのですが』と窓口の人に聞いてみましょう」(石丸さん)。

窓口に行ったら「交付申請書」を貰い、必要事項を記入していきます。自宅でダウンロードして、記入したものを持参する方法もあります。書き方については、下の記入例で説明します。

登記事項証明書の交付申請書

窓口へ足を運べば、基本的にはすべての手続きをその場で終えることができます。また、オンラインの場合は、インターネットバンキングと郵送受取を選べば、自宅から一歩も出ることなく全ての手続きを行えます。

1.「住所・氏名欄」
申請する人の住所と名前を記入します。その人が所有する不動産でなくても構いません。本人確認や印鑑も不要です
2.「種別」
一戸建てやマンションなら「土地」と「建物」の両方にチェックしましょう。一戸建ての場合は、土地と建物それぞれに証明書が発行されますが、申請書は1通でOKです。
3.「所在欄」
知りたい不動産の所在地を記入します。地番と家屋番号については前述したとおり、日頃使用している住所とは異なることがあるので、注意しましょう。
4.「請求通数」
求める通数を記入します。
5.「共同担保目録の要・不要欄」
住宅ローンを利用する際に、複数の不動産(例えば建物とその土地)を一緒に担保に入れて、抵当権(または根抵当権)を設定することを共同抵当(きょうどうていとう)といい、それを示すものを「共同担保目録」といいます。抵当権の共同担保の不動産は何か、を確認したいときは「現に効力を有するもの」の欄にチェックを入れます。余分な費用がかかるわけではないので、特に必要がなくてもチェックを入れておくといいでしょう。「全部(抹消を含む)」を選ぶと、過去の莫大なデータが出てくることもあるので、本当に必要なときだけにしましょう。
6.「求める証明書の種類」
一般的には一番上の「登記事項証明書・謄本」(いわゆる、全部事項証明書のこと)を申請しておくといいでしょう。マンションの一室部分の登記簿を請求する場合は、『専有部分の登記事項証明書・抄本』を選択し、マンション名を記載します。以
7.「収入印紙」法務局内の売店で印紙を購入して貼ります。

書類ができたら窓口に提出しましょう。しばらく待つと証明書が発行されます。その日のうちに入手できるので、急いでいるときは窓口申請がおすすめです。

■証明書自動発行機も利用できる

法務局であれば、タッチパネル方式の証明書自動発行機が設置されているので、それを使って申請することもできます。証明書発行請求機を利用する場合の流れは、以下の通りです。
STEP1.「不動産登記」「商業・法人登記」の2種類から「不動産登記」を選ぶ
STEP2.画面の案内に従い、必要事項を入力する
STEP3.整理番号票を受け取る
STEP4.手数料分の収入印紙を売店で購入する
STEP5.整理番号票と引き換えに申請用紙を受け取る
STEP6.申請用紙に収入印紙を貼って提出する

(2)自分で申請書をつくって「郵送申請」する

申請書を郵送して、証明書を発行してもらい、自宅や勤務先等に送ってもらうことができます。収入印紙を購入する手間や手数料はかかりますが、パソコンで登録しなくてもすべてを自宅にいながら行える、というメリットがあります。

「ただし、申請から入手までかなりの日数がかかります。土日が入ると、1週間以上見ておいたほうがいいでしょう。郵送申請は、時間的に余裕があるときだけにしたほうが良さそうですね」(石丸さん)

郵送申請する場合の大まかな流れは以下の通りです。

STEP1.交付申請書を手に入れる(法務局や近くの出張所に行くか、オンラインでダウンロードする)※こちらからダウンロードできます
STEP2.必要事項を記入する(「窓口で申請する」の記入例参照)
STEP3.収入印紙を購入して貼る(収入印紙は、法務局のほか、郵便局やコンビニ等で購入できます。金額はどこで購入しても同じです)
STEP4.返送用の封筒を同封する(返信用の切手を用意し、返送用の封筒に宛先を書くか、宛先を書いたメモを同封する) 
STEP5.最寄りの法務局か出張所宛に送付する

(3)自宅や会社のパソコンから「オンライン申請」する

登記事項証明書はオンラインでも気軽に申請できます。受け取りは、法務局に行くか、郵送で届けてもらうか、の2通りから選べます。
「まずは利用者登録しないといけない上に、支払いはオンライン決済のみ。初めての人には分かりにくい点も多く、思うほど手軽ではありません。何度か利用する予定ならおすすめしますが、1回きりなら法務局や出張所に行く方が簡単です。ただし、外に出たくないときには便利です」(石丸さん)

登記・供給オンライン申請システムはこちらのサイトを利用します

登記・供給オンライン申請システム画面

登記・供託オンライン申請システム 登記ねっと 供託ねっと

オンライン申請をする場合の大まかな流れは、次の通りです。

STEP1.申請者情報を登録する
STEP2.請求書を作成して送信する
STEP3.手数料の支払い方法を選んで、納付する
STEP4.郵送か、窓口での交付か、を選ぶ

STEP 1 申請者情報を登録する

オンライン申請をするためには、まずは登録が必要です。法務局の「登記・供託オンライン申請システム」に登録すれば、登記所等の窓口に出向くことなく、自宅やオフィスなどから申請・請求や電子公文書が取得できるようになります。「登記・供託オンライン申請システム」では、Webブラウザを利用する「かんたん証明書請求」と、専用アプリをインストールして利用する「申請用総合ソフト」の2つの申請・請求方法があります。登記事項証明書の交付請求の場合は、「かんたん証明書請求」が利用できます。

トップページで「申請者情報登録」を選んで、以下の情報を登録しましょう。

●申請者ID
●パスワード
●氏名
●郵便番号、住所
●連絡先・電話番号
●メールアドレス

STEP2 請求書を作成して送信する

登録できたら、次は請求書をつくります。項目がたくさんありますが、画面の一番下にある「オンライン物件検索」で、対象となる不動産を検索すれば、登記所コードや登記所名が自動入力できて便利です。また、前述したように、地番は登記上の表記でなければなりません。普段使っている住所(住居表示)とは違うことが多いので、不動産の権利書(登記済証)や固定資産税の納税通知書で確認するか、管轄の法務局に電話して確認しておきましょう。

「オンライン物件検索」画面

記入するのは以下の項目になります。

●不動産の種別
土地、または建物のいずれかを選ぶ。オンラインの場合、一戸建てなら土地と建物を別々に申請することになります。
●不動産番号
分からなければ記入しなくてもOK。
●所在
地番の前までの住所を記入する。
●地番/家屋番号
登記簿上の表記を記入する。
●登記所コード
該当する不動産の管轄の法務局の登記所コードを調べて記入する(「オンライン物件検索」を利用すると自動的に入力される)。
●登記所名
該当する不動産の管轄の法務局の登記所名を調べて記入する(「オンライン物件検索」を利用すると自動的に入力される)。
●請求する証明書の種類
登記事項証明書を選ぶ。
●請求の対象
全部事項を選ぶ。
●共同担保目録
「除く・現在事項・全部事項」のうちのひとつを選ぶ。「現在事項」を選ぶと、現に効力のある共同担保目録の全てが添付されます。「全部事項」を選ぶと、過去の莫大なデータが出てくることもあるので注意。
●信託目録
信託による所有権移転登記がされている不動産のみ関係。一般的には関係がありません。
●通数
必要数を入力します。

STEP3 手数料の支払い方法を選んで、納付する

申請書を送付したら、「納付」ボタンをクリックし、指示に従って手数料の支払い方を選びます。オンライン請求の場合、手数料をインターネットバンキングで電子納付できるので、収入印紙を用意する必要はありません。Pay-easyに対応したATMでも納付することができます。

STEP4 証明書の受け取り方を選ぶ

次は、受取方法の選択です。郵送で受け取るか、法務局の窓口で受け取るか、のどちらかを選びます。オンラインで申請し、法務局や出張所の窓口で受け取ることにすると、郵送よりも20円安くなり、申請後3~4時間で入手できます。郵送を選べば、翌日~翌々日の受け取りになりますが、法務局に行く手間や交通費は省けます。また、送付先の住所を変更すれば、自宅以外へも郵送してもらえます。

登記事項申請書オンライン申請イメージ

オンラインで申請後、受け取り方は2通り

登記情報だけを確認したい場合は、「オンライン閲覧」もできる

登記情報は、インターネット上で閲覧することもできます(基本的には全部事項証明書)。インターネット上から印刷しても公的な証明書にはならないので注意しましょう。

閲覧したい場合は、まずは一般財団法人民事法務協会が運営する「登記情報提供サービス」にアクセスします。こちらの利用には利用料が発生し、利用者登録をして月ごとに決済する「個人利用」と、利用者登録はしないでその都度クレジットカードで即時決済できる「一時利用」の2通りがあります。個人利用の場合は、登録料として300円が必要で、登録から利用までに1週間ほどかかります。1、2回だけの利用なら、「一時利用」を選びましょう。どちらの場合も、登記簿謄本のオンライン閲覧をする度に個別の利用料金がかかります。

登記情報を見るだけなら「登記情報提供サービス」で。

登記情報提供サービス画面

登録すればオンラインで手軽に閲覧できますが、登録料や利用料がかかるので注意しましょう。

登記事項証明書を取得するときの注意点

登記事項証明書が必要になったときに、注意したいことが2つあります。 ひとつは、受付時間に気を付けること。法務局に直接行く場合は、土日祝日を除く平日 8時15分~17時15分に限られます。平日の日中に働いている人にとっては行きにくいかもしれません。その場合はオンライン請求がおすすめです。ただし、オンラインも受付時間が決まっています。平日の8時30分~21時になっていますが、17時15分以降にオンライン申請した場合は、請求情報を送信した日の翌業務日に受付されるので注意しましょう。 もうひとつは、「すでに持っていないか確認する」ということ。 「不動産会社を通して不動産を購入したときなど、司法書士が関係している場合は、たいてい登記事項証明書が用意されています。いろんな書類と一緒に渡されていることが多いので、一度確認してみましょう」(石丸さん)

登記事項証明書は、いわば「不動産の履歴書」。

土地や建物を買いたくても、誰のものか分からなければ、取引相手も分かりません。また、所有者以外の人が勝手に住みついたり、担保にされたりしても困ります。そういったことがないように、誰のものであるかを見て分かるようにしたのが「登記」というシステムです。所有者が変わったり、建物が新しくなったり、それを担保に借金をしたりすると、基本的には記録されていくものです。 法務局で発行される登記事項証明書は法的な効力を持つので、不動産取引の際に提出を求められることがよくあります。登記事項証明書とは、いわば法的に認められた履歴書のようなもの。その不動産について詳しく知りたいなら、何より確実な情報が詰まっています。上手に利用していきましょう。

登記事項証明書でわかること

登記事項証明書は、不動産の履歴書ともいえる

『登記事項証明書』には5つの種類があります。

法務局で保管されている登記簿には、その不動産の経歴や権利関係などの情報が、過去から現在まですべて記録されています。それらをすべて網羅すると膨大な量になることもあるので、その中の必要な部分だけを抜き出して証明書にすることもできます。登記事項証明書は、記載する内容によって次の5種類に分けられます。

(1)全部事項証明書
(2)現在事項証明書
(3)一部事項証明書
(4)所有者事項証明書
(5)閉鎖事項証明書

「登記事項証明書と言えば、全部事項証明書を指すことがほとんど。不動産取引の際に使われるのも、ほぼ全部事項証明書になります。基本的に全部事項証明書を取得しておけば、利用目的に叶わない、ということはないと思います」(石丸さん)

(1)『全部事項証明書』は、登記の過去から現在までがすべて記載されたもの。

登記情報のほぼすべてが記載されているのが、全部事項証明書です。所有権の登録や移転など、権利関係の過去の変更履歴やその他登記の記録が網羅されています。その不動産がどのように所有され、使用されてきたのかが分かります。申請時に「全部事項」を選んで取得しましょう。

全部事項証明書サンプル(土地の例)

全部事項証明書サンプル(土地の例)

全部事項証明書サンプル(土地の例)(出典:法務省ホームページ)

1.土地と建物のどちらの登記事項証明書であるか
2.不動産番号(不動産を区別するために付与された番号。土地一筆、建物一戸に対して必ずつけられている)
3.所在(市町村字まで)
4.地番
5.地目(用途や種類のこと)
6.土地の地積(面積のこと。単位は平方メートル) 
7.分筆や合筆、地目変更など、登記された原因
8.現在の所有者や、過去の所有者の住所と氏名
9.所有権以外の権利
※住宅ローンを利用すると、抵当権設定登記がされるので、ここに詳細が記載される
10.共同担保目録
※ほかにも担保として設定されている不動産があればここに記載される。住宅ローンを利用して一戸建てを購入する場合、土地と建物をまとめて担保にするのが一般的なため共同担保として記載される
11.共同担保になっている不動産(土地・建物)
12.証明印
いつの時点の登記記録であるかを、法務局の登記官の名前で証明。これにより証明書となる
13.QRコード
令和2年1月14日から、法務局で取得できる不動産登記事項証明書(通称、登記簿謄本)の様式が変更され、QRコードが追加された。2回目に取得することがあれば、このQRコードから情報を読み取ることができる

▼各項目について詳しく読む

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(2)『現在事項証明書』は、今の登記状況だけが記載されたもの。

不動産の権利は人から人へと移り変わります。全部事項証明書にはその経緯がすべて記されますが、「今誰が持っているのか」だけを知りたいときは、「現在事項証明書」を使いましょう。また、全部事項証明書には完済したローンの履歴も記載されるので、それを記載したくない場合は現在事項証明書を使うとよいでしょう。申請時に「現在事項」を選んで取得します。

(3)『一部事項証明書』は、登記情報の一部だけが抜き出されたもの。

不動産の特定部分の権利関係だけを確認したい場合は、「一部事項証明書」を使います。一般的にはあまり使われません。
「たとえば、何十軒の一戸建てで私道を共有している場合に全部事項証明書を取得すると、書類の数が膨大になることがあります。そのような特別な場合は、必要な部分だけを抜粋できる一部事項証明書を使うことが多いです」(石丸さん)

(4)『所有者事項証明書』は、「誰の持ち物か」だけが分かるもの。

不動産の所有者だけを確認したい場合は「所有者事項証明書」を使います。「現在の所有者の住所」と「持分(2人以上所有者が存在する場合)」に関する情報が記載されています。「一般的にはあまり使われませんが、『担保が付いているかどうかなどの情報は必要なく、所有者だけを確認したい』といったときには、これを使うこともあります」(石丸さん)。申請時に「所有者事項証明書」を選んで取得します。

(5)『閉鎖事項証明書』は、過去の情報だけが記載されたもの。

すでに閉鎖された土地や、取り壊した建物などの記録も、法務局の登記簿には記載されていますが、全部事項証明書には出てきません。これらの昔の登記情報を知りたいときは、「閉鎖事項証明書」を利用します。 「登記情報がデータ化される以前の、手書き時代の所有者を知りたい時や、建物を取り壊したことを証明したい時などに使われます」(石丸さん)。申請時に「閉鎖登記簿」を選んで取得します。

【コラム】「登記簿謄本」と「登記事項証明書」の違いは何?

「登記簿謄本という名称は聞いたことがあるけれども、登記事項証明書は聞いたことがない」という人も多いのではないでしょうか。実は違いは情報が電子化されているかどうか、ということだけ。電子化される以前の、手書きの登記簿の写しであれば「登記簿謄本」に、電子化された登記簿の内容を印刷したものが「登記事項証明書」です。どちらも記載されている内容はまったく同じです。

登記事項証明書はどんなときに必要?目的別に必要な証明書は違う?

登記事項証明書は、家や土地を売り買いする時、住宅ローンを使う時には必要不可欠なもの。どのような場面で必要とされて、どのように使われるか、また、どんなときにあれば便利なのかを知っておきましょう。 「いずれの場合も、基本的には『全部事項証明書』を取得しておけば間違いないでしょう」(石丸さん)

登記事項証明書イメージ3

登記事項証明書があれば、どんな不動産であるかを説明できる、理解できる!

購入を検討している不動産の情報を調べたいとき

購入を検討している不動産があれば、登記事項証明書を取得すれば、過去から現在の権利関係まで知ることができます。「市役所や区役所で自分の住民票を取るときでも、印鑑や身分証明書が必要とされますが、登記事項証明書は、不動産取引の安全性を確保するために、いつでもだれでも簡単に取得できるようになっているのです」(石丸さん)。購入を検討している土地や建物があれば、その周辺の土地や建物の登記事項証明書を取得して、状況を確認してみることも可能です。

住宅ローンを利用するとき

土地や建物を購入したり、住み替えをするときには、住宅ローンを利用することが多いもの。住宅ローンは融資金額が大きく、返済が長期にわたるので、銀行はその不動産を担保に設定します。その際、銀行から登記事項証明書が求められます。ただし、銀行側が用意する場合もあるようなので、自ら取得する必要があるか、確認しながら進めていきましょう。」

確定申告で住宅ローン控除を申請するとき

住宅ローンを利用して新築住宅や中古住宅を購入したときには、一定の要件を満たしていれば住宅ローン控除という減税措置が受けられます。
住宅ローン控除の申請は住宅を購入した翌年に行いますが、その際には登記事項証明書の提出が求められます。「この場合も、購入を担当した司法書士が用意してくれるはずなので、登記完了書類の中に含まれていないか、確認しておきましょう」(石丸さん)

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不動産を売却するとき

家や土地を売却するときは、登記事項証明書を購入検討者に見せることになります。「不動産会社を間にはさむ場合は不動産会社側で用意してくれることもあるので、自分で取得する前に確認してみましょう」(石丸さん)

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不動産を相続するとき

「登記事項証明書を自分で取得するケースで一番多いのが、不動産を相続するときではないでしょうか。相続する際の登記などを司法書士に依頼する場合は、自分で動く必要はありませんが、自分でもできないことはありません。また、正式な相続手続きをする前に、登記事項証明書を取得して、名義が誰になっているか、住宅ローンの抵当権が残っていないかなど、権利関係を確認しておくのもいいでしょう」(石丸さん)

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ここまで詳しく説明してきましたが、一番簡単で間違いがない取り方は「法務局に行って全部事項証明書を取る」こと。また、オンライン申請や郵送申請で失敗しないコツは「地番を先に調べておくこと」。それさえ間違わなければ、誰でも簡単に取得でき、費用も数百円しかかかりません。登記事項証明書には、不動産に関する大切な情報がいっぱい詰まっています。名前のイメージだけを見て「難しそう」と敬遠せず、積極的に活用してみませんか?

まとめ

  • 登記事項証明書の取得方法は「窓口申請」「オンライン申請」「郵送申請」の3つがある。
  • 登記事項を見るだけなら「オンライン閲覧」も可能だが、公的な証明書にはならない。
  • 登記事項証明書は、取得方法によって手数料が異なる。
  • 取得する際は手数料しか要らないが、住所と異なることが多い「地番」は知っておく必要がある。
  • 『登記事項証明書』には5つの種類があるが、「全部事項証明書」を取得すればほぼOK。
イラスト/峰村友美
●取材協力・監修/石丸大樹さん
2004年司法書士試験合格。2005年より上條司法書士事務所にて司法書士として活躍中。
●構成・取材・文/伊東美佳
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