不動産売却の基礎知識や知っておきたいコツを分かりやすく解説します。売却の体験談もご紹介。

東京都練馬区Tさん(60代)/「売主募集・一戸建てを探しています」のチラシで自宅の売却を決意。しかし反響はいまひとつ……

東京都練馬区Tさん(60代)/投げ込みチラシの「購入希望者あり!」の言葉で自宅の売却を決意。反響はいまひとつで価格を下げて売却

子どもが独立し夫婦二人暮らしになったTさん。ポストに入っていた「このエリアの一戸建てを探しています。6500万円で購入希望!」という不動産会社のチラシを見て、「そんな値段で売れるなら、家を売却してマンションを買おう」と決意しました。ところが6200万円で売り出したのに、反響はいまひとつ……。

不動産区分 一戸建て
所在地 東京都練馬区
築年数 築6年
間取り・面積 3LDK(延床面積…99m2、敷地面積…100m2
ローン残高 なし
査定価格 査定なし
売り出し価格 6200万円
成約価格 5890万円

子どもの独立を機に売却を決意

Tさんは妻と子どもの3人で都内の一戸建てに住んでいましたが、子どもが横浜の会社に転勤になったことから独立。夫婦二人暮らしになりました。
そんなとき、「このエリアの一戸建てを探しています。6500万円で購入希望」と書いた不動産会社のチラシを発見しました。

「この家を買いたい人がいるのかな、と思うほど条件がぴったりでした。子どもも独立して広い家は必要ないので、この値段で売れるなら売却してマンションを買い直そうと、妻と相談して決めました」

都内練馬区にあるTさんの住まいは、駅徒歩約10分の3LDKの一戸建て。2012年に建売住宅として7300万円で販売されていた物件を、販売開始から1年ほどたったころ6180万円で購入しました。

「向かいに公園があり、川にも近く、春は満開の桜が美しい、とてもいい環境の住宅街です。都心に出勤するのに便利で、埼玉や横浜へのアクセスも良好。販売開始後1年経って売れ残っていた物件で、販売会社が売り急いでいたようで、この価格で買えました。隣は角地だったためすぐ売れましたが、この家は両隣を家にはさまれていたのでなかなか売れなかったようです。私としては満足できる買い物でした」

6年前の購入金額や相場をもとに、6200万円での売り出しを希望

2017年、売却を考えはじめたTさんは、まずポストに入っていたチラシの大手不動産会社に連絡をとってみました。

「ところが対応が悪く、相場も査定のことも何も答えてくれなかったんですよ」とTさん。

不動産会社の対応が悪いイメージ

そこで自分で周辺相場を知るためにネット検索して問い合わせしたところ、不動産仲介会社5社からメールで返事が返ってきました。
おおむねの相場を知ったTさんは、次に大手不動産仲介会社をあたってみました。
「担当者が我が家を見に来て、『いくらで売りたいですか』と尋ねました。査定額を提示するのでなく、まずこちらの希望を聞いてきたんです。チラシが6500万円だったことが頭にあり、また、6年前の購入金額が6180万円だったので、それ以上の金額で売りたいという気持ちもありました。ネット検索して得た相場感を加味して6200万円を希望しました」

すると、担当者から「では6200万円で売り出しましょう」と返事があり、納得したTさんは専属専任媒介契約を結びました。

■適正な売り出し価格

不動産の売却活動をする際、まず売り出し価格をいくらに設定するか悩むところです。
一般に不動産価格は売り出しのタイミングや、周辺の相場変動に大きく左右されます。特に一戸建ての場合、建物の築年数や構造、間取り、土地の立地や接道状況などにより、マンションよりも物件によって価格の幅が大きく変わりやすいのが特徴です。
チラシやネットにより相場の目安をつかむことはできますが、自分の家の適正な売り出し価格を知るには、不動産仲介会社の訪問査定を受けて、適正な評価額をつかむことが重要です。

見学者はあるが成約に結びつかず、価格を6000万円に引き下げることに

2017年10月に6200万円で売り出しを開始しました。
10月中に見学者は3組あったといいます。

「家は人生で一番高い買い物。自分が死ぬまで住むかも知れないと思っていたので、きれいに住んでいました。だから、見学者の印象は悪くなかったと思います。しかし、うちより駅に近い一戸建てが5900万円で売り出されていたからか、契約には結びつきませんでした」

11月になり、不動産仲介会社から「少し値下げをしませんか」と提案がありました。
そこで、年内はこのままの価格で売り出し、年明けに価格を下げることにしました。

「不動産仲介会社からは5980万円で出しては、と言われましたが、私としては最初に見たチラシの6500万円が頭から離れず、6000万円を切った価格を出すことに抵抗がありました。その旨を伝えると、6000万円で売り出して、購入希望者との相談で少し引き下げも可能、という線でいくことにしました」

2月下旬になり、購入希望者が現れました。
ピアノを弾くので1室に防音工事が必要とのこと。工事費用分の価格を引き下げてほしいと希望され、5890万円で売却することを決めました。

「当初の希望の6200万円より310万円引き下げた価格です。もともとチラシの6500万円を見て、こんなに高く売れるのかなと驚いたぐらいなので、この価格でもまずまず満足。購入して6年間住んだ家賃分を考えると決して損していないし、妥当な価格だったと思っています」

売却資金で1LDKマンション購入を果たし、新しい生活をスタート

売却後、Tさんはしばらく社宅に住んでいましたが、残りの資金で都内にマンションを購入し、新生活をスタートしました。

「一戸建てを売るのは結構大変だったので、今度は売るときのことを考えて、駅近のマンションにしました。便利だし公園も近くにあるし、とても快適です。将来は売ってもいいし、子どもに譲ってもいいと考えています。一戸建てを売却した資金があったおかげで、今の生活をスタートすることができました」

2017年10月 ・チラシを見て売却を考える
・大手不動産会社と専属専任媒介契約を結ぶ
・6200万円で売り出し
2018年1月 ・6000万円に価格を引き下げる
2018年2月 ・購入検討者が現れる
2018年4月 ・5890万円で売買契約を結ぶ

まとめ

  • ネットを使った情報収集や、近所の物件の売り出し価格などをチェックして相場観を身につける。
  • 必ずしも不動産会社の査定を受けなくても、自分の希望する価格で売り出すことも可能。
  • 売り出し後の反響が少なければ、売り出し価格を見直すことも必要。

イラスト/石山好宏

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●構成・取材・文/浅野真由美
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