離婚が決まり、財産分与のために自宅の売却を決めたMさん。ところが不動産仲介会社の査定を受けると敷地境界線が確定していないことがわかり、大手不動産仲介会社から仲介を断られてしまいました。確定させるには費用がかかります。Mさんの選択した売却方法とは……。
不動産区分 | 一戸建て |
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所在地 | 大阪府堺市南区 |
築年数 | 築6年 |
間取り・面積 | 4LDK(延床面積…約102m2、敷地面積…約150m2 |
ローン残高 | 1500万円 |
査定価格 | 2620万円 |
売り出し価格 | 2620万円 |
成約価格 | 2620万円 |
離婚が決まり、財産分与のために自宅の売却を決意
大阪府堺市に暮らしていたMさんは2019年に離婚が決まり、自宅を売却して妻と財産分与することにしました。
暮らしていたのは2013年に建てた注文住宅。駅から徒歩10分圏内の住宅街で、大阪市内まで1時間程度で行けます。病院、スーパーなど生活施設が周囲にあり、とても暮らしやすかったといいます。
「屋根に太陽光パネルを搭載したので、電気代は浮くし、売電も可能。2階にはトイレも洗面所もつけ、1階のお風呂と洗面所は、一体型でなく別々につくりました。いい住まいだったと思います」
売却を決めた当時は、すでに夫婦別居になっていました。家を売って財産分与することは話し合いで決まっていたため、特に急いで売る必要はなく、できるだけ高く売ることを重視したといいます。
売る?住みつづける?離婚時の「家の売却」はどうするべきか - 【SUUMO】住まいの売却ガイド
土地の境界線が確定していないことが判明。
ネットで一括査定を行うと数社の不動産仲介会社から返事がありました。
ところがその査定で境界線が確定していない土地であることが判明し、仲介はできないという答えが返ってきたそうです。
「土地を購入したときには境界線のことは全く知りませんでした。大手不動産仲介会社はどこも仲介はできないという答えでした。会社から専門家を紹介するので、境界線の確定を自分で済ませた後であれば受けるといいます。確定するには数十万円の手数料がかかるそうでしたが、そんな費用は払いたくないと思いました」
そんな中、現状のままでも仲介するという不動産仲介会社が1社ありました。
一括査定で返事があった地元不動産仲介会社です。
「境界が確定していないことを明示して買い手を探すので、そのまま引き受けるとの返事でした。それなら手数料もかからないことだし、この会社に依頼しようと決めました。売却後にトラブルがあっては困るので、こちらの責任は問わないと一筆書くことも約束してくれました」
一般的に、土地や一戸建てを売却する場合、土地の境界線が確定されているかどうかが査定のポイントとなります。境界線が曖昧な場合は売却前に測量し、確定する必要があります。
ただし、測量を絶対にしなくてはいけないという決まりはありません。その場合、確定測量図がなくても買う、という買い主を見つけなければならず、時間がかかったり価格が下がったりすることが多くなってしまいます。
そういう買い主を自社で探してくれるという地元不動産仲介会社だったため、Mさんは専属専任媒介契約を結びました。
「ほとんどが無理という答え一辺倒でしたが、この会社は私の希望を聞き、フレキシブルに対応してくれたので、とてもありがたかったです」
リスクのある物件ながら、スタートから1カ月後に買い手が決まる
訪問査定は約2620万円。この査定額は周辺の相場よりかなり安い額だとMさんは言います。
「実はこの土地はもともと事故物件だったため、私も土地と建物で2875万円と相場より安く購入しました。売却にあたり不動産仲介会社にもそのことは伝えていました。私自身は購入以前に何があったかは全く気にしないので、安く購入できて良かったと思っています。私と同じような考えの人もきっといるだろうと思いました」
「境界線が確定していない」「もともと事故物件」というデメリットはあるものの、相場より安い価格の上、築浅の注文住宅で太陽光パネルがついた一戸建てです。Mさんはこの価格なら絶対売れると確信し、査定額と同じ2620万円で売り出すことに決めました。
「売り急いでいないので、2620万円から1円も下げずに売ってほしい」と、不動産仲介会社にもしっかり伝えたと言います。
売り出し開始直後、3組の内見者があり、2組が購入を希望しました。
「相場より安い価格設定が功を奏したのかもしれません」とMさんは言います。
Mさんは、購入希望が特に強かった1組と話を進めました。
「ところが、決まりかけたときに、『元事故物件なら、所有者はもっともっと安く買ったのでは』などと言ってきました。私は全て正直に話しているので、不信感があるなら契約できないと不動産仲介会社を通じて伝えました。すると相手も納得して購入を決めたようです」
不安材料を抱えた物件でしたが、交渉事はすべて不動産仲介会社が執り行い、売り出しを開始してからわずか1カ月で希望通り2620万円で売却が決まりました。
不安要素を全て不動産仲介会社に伝えた結果、希望通りの売却に結びつく
「不動産仲介会社が事情をよく理解してくれたことが良かったですね。価格は下げないでほしいと強く希望したので、しっかり対応してくれました。もちろん境界線などの件も、全て引き受けてくれたので安心して任せられました」とMさんは振り返ります。
さらに、Mさんがこだわりを持って建てた注文住宅だったことも、売却活動でぶれない姿勢を通すことができた要素だったようです。
「売り手と買い手は同等の立場です。売り手は自分の強い希望があれば、交渉すべきだと思います。私自身、絶対に価格は下げないという思いを貫いて本当に良かったと思っています」と最後に語ってくれました。
2019年2月頃 | ・売り出しを考える ・一括査定を実施 境界線が確定していないことが判明 ・訪問査定を実施 ・専属専任媒介契約を結ぶ |
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2019年3月 | ・2620万円で売り出し ・購入検討者が現れる ・3組が見学 |
2019年4月 | ・購入者が決定 ・売買契約を結ぶ |
2019年7月 | ・引き渡し |
まとめ
- 後々のトラブルを回避するためにも、売却したい物件の問題点や不安要素は不動産仲介会社に正直に伝えよう。
- 売り出し価格や売却期間など、希望は不動産仲介会社にしっかり伝えることが重要。
- 事故物件であっても売却は可能。不動産仲介会社とよく相談しよう。
取材・文/浅野真由美 イラスト/沼田光太郎