不動産売却の基礎知識や知っておきたいコツを分かりやすく解説します。売却の体験談もご紹介。

4人目の子ども誕生をきっかけに、築28年の一戸建てを売却/千葉県松戸市Dさん(30代)

千葉県松戸市Dさん(30代)/4人目の子ども誕生をきっかけに、築28年の一戸建てを売却

4人目の子どもが生まれたのを機に、千葉県松戸市にある手狭になった一戸建て(4LDK)を売却し、新しい家を購入することにしたDさん家族。ところが築28年で痛みもところどころにあったため、売却活動は想像以上に長期戦になりました。

不動産区分 一戸建て
所在地 千葉県松戸市
築年数 約28年
間取り・面積 4LDK(約101m2
ローン残高 なし
査定価格 1655万円
売り出し価格 1680万円
成約価格 1480万円

4人目の子どもが生まれ、近くに大型ショッピング施設ができることもあり、売却を決意

Dさんが売却したのは、3人目の子どもが生まれたのを機に購入した中古の一戸建て。2012年に購入した時点で築21年の4LDKです。もともと住んでいた賃貸アパートから近く、上の子どもたちもそれまでと同じ小学校に通えることが決め手だったそうです。

「最寄駅までは徒歩25分と遠いのですが、小学校は徒歩圏内で、夫は勤め先まで車かバイクで通勤していましたから特に問題はありませんでした。また小児科や二つの大きな病院、スーパー、コンビニも歩いて行ける距離でしたからとても便利でした」

しかし2018年に4人目が生まれたことで状況が変わります。「6人家族で4LDKはさすがに厳しいかなと考えるようになりました。ちょうど一番上の子が中学生になり、そろそろ子どもに個室を与えたいと思っていたのです」

さらに近隣に大型ショッピングモールができることが売却の決め手になりました。一見、買い物が便利になり、街もにぎやかになって良いのでは?と思えますが、Dさんは違いました。「この辺りは道がとにかく狭いんです。雨の日に小学校に用事があって歩いていたら、傘が車に触れたこともあります」

大型ショッピングモールができれば、さらに交通量が増えて子どもたちの通学時の危険が増すのではないか。そう考えたDさん夫妻は、既にローンを払い終えていたこの家を売却して、別の場所で新しい家を購入しようと考えました。「できれば3人目の子が小学校に上がる前に、と考えていました」

工務店が新しい家の土地を見つけてくれ、不動産会社も紹介してくれた

まずDさん夫妻は新しい家をどうしようかと、住宅展示場を訪れました。そこでお気に入りのモデルハウスを見つけた2人は、それを建てた工務店の担当者に事情を説明。すると、新居のための土地を探してくれると言います。さらに今の家を売却するために不動産仲介会社も紹介してくれました。

紹介されたのは全国規模の大手不動産仲介会社で、2018年9月に専属専任媒介契約を結びました。紹介してもらった手前もあり、その他の不動産仲介会社に査定を依頼することは躊躇(ちゅうちょ)したそうです。そのときの査定額は1655万円。売り出し価格は少し乗せて、1680万円としました。

一方で新居のための土地探しはトントン拍子で進みます。工務店の担当者がいくつかの候補地を見つけてくれ、その内の一つの分譲地をDさんは気に入りました。小学校は徒歩3分でしたし、中学校は歩くと30分近くかかりますが、自転車通学できる学校でしたので問題はありませんでした。またスーパーが近いなど買い物にも便利で、車かバイクで通勤している夫も、通勤時間が5分ほど延びる程度でした。

松戸市の家のローンは既に支払い終えていましたし、多少の貯金はありました。しかし売却する前に住宅ローンを組むには少々心もとなかったそうです。そこでDさんは松戸市の家を売却してから安心して新しい家を建てることにしました。今後の4人の子どもたちの教育費などを考えると、できれば売却益をそのまま新居のローン返済に充てたいと考えていたのです。

「私たちと違い『大型ショッピングモールが近くにできることをメリットだと感じる人は多いでしょうから、すぐに売れるでしょう』と不動産仲介会社も、その会社を紹介してくれた工務店の担当者も言ってくれました」。そんな安心感もどこかにあり、このときは半年もあれば売却できるだろうと考えていました。

売却開始から約8ヵ月後、一般媒介に切り替えたら購入希望者が現れた

ところが売り出してからの反応はあまり良いものではありませんでした。「キッチンは数年前にリフォームしましたが、雨漏りの跡や駐車場の鉄骨にサビがあり、お風呂は割れたタイルもありましたし、屋根もそろそろ傷んできたかなという状態でしたので……」

内覧に来た中には「自分たちでリフォームするから価格を下げてほしい」という購入希望者もいましたが、そう言われて値下げ額を伝えると「なるほど……」と微妙な反応をされた後に連絡が来なくなった、ということも幾度かありました。

そんな状況でしたから、不動産仲介会社も値下げを提案してきました。まず1680万円から1600万円、続いて1550万円、1520万円、1480万円と小刻みに4回値下げしてみました。しかしそれでも売却には至りません。

一方で住み替え先候補の分譲地は、工務店から「そろそろ購入するかどうか決めてください」と催促されるように。とはいえどんどん値が下がっていく状況で、新居のローンを組む決心がなかなかつきません。それが2019年5月のこと。売り出してから約8カ月もたっていました。

そこでDさんは専属専任契約をやめて、一般媒介に切り替えることにしました。「それまでの不動産仲介会社も頻繁に連絡をくれるなど、とても協力的でしたが、それでも決まらないので不安になりました。そこでもっと広く購入希望者を集めてみようと考えたのです」

しかしこれが功を奏し、その翌月には別の不動産仲介会社から連絡が入ります。親子2人の家族で、この辺で犬を飼って暮らしたいから一戸建てを探していたことと、近くに大型ショッピングモールができることを魅力に感じたそうです。内覧時には少しレトロな見た目も気に入ってくれ、リフォームについては何も言われませんでした。その2日後にはその親子から購入の意向が伝えられました。

こうして2019年7月に1480万円で売買が成立。引き渡しも同じ7月に行いました。併せて新居の売買契約を行い、プランの詳細をつめて着工。そのため引き渡し後しばらくは賃貸で暮らし、2020年3月にようやく新居に入居することができました。

■専属専任媒介、専任媒介、一般媒介それぞれの特徴とは

不動産を売却する際、不動産仲介会社と媒介契約を結びますが、媒介契約には「専属専任媒介」「専任媒介」「一般媒介」の3種類があります。「専属専任媒介」とは1社のみと結ぶ媒介契約で、売主や他の不動産会社は売却活動を行うことができません。また不動産仲介会社は、1週間に1回以上の頻度で売主に販売状況を報告する義務があります。一社のみの契約で報告義務も厳格なため、一般的には不動産仲介会社に積極的に活動してもらいやすくなります。「専任媒介」は「専属専任媒介」同様1社のみと結ぶ媒介契約ですが、売主が買い手を探してくることもできます。ただし報告義務は2週間に1回以上の頻度になります。こちらも不動産仲介会社に積極的に活動してもらいやすくなります。「一般媒介」は複数の不動産仲介会社に売却を依頼するときに結ぶ媒介契約です。広く購入希望者を探しやすく、購入希望者が何人も見つかるような人気の高い物件なら、最も良い条件の購入希望者に売却することができます。ただし不動産仲介会社には売却活動の報告義務がなく、「専属専任媒介」や「専任媒介」と比べて積極的に活動してもらえない可能性があります。

想定外の長期戦だったが、一般媒介に切り替えて道が開けた

売却期間は約10カ月と、Dさんとしては想定外の長期戦。また売り出し価格から200万円ダウンとなりました。「やはり築年数がたっていて、痛みもある中古住宅はそう簡単には売れないんですね」
新居を任せる予定の工務店から紹介してもらったという手前もあり、なかなか一般媒介に切り替えられなかったDさん。それに紹介してもらった不動産仲介会社はマメに連絡をくれ、値下げも何度か提案してくれていたので、そのたびに「次こそは」と思っていたようです。
「本当は新居への入居を2019年3月、三番目の子の小学校入学に間に合わせたかったのですが……」とDさん。ちょうど1年遅れての入居となりました。「けれど、ちょうど新型コロナ感染拡大によって学校がお休みになる直前でしたから、子どもたちに個室を与えることができて良かったです」

2018年6月 ・売却を意識し始める
2018年8月 ・モデルルームで工務店から不動産仲介会社を紹介してもらう
2018年9月 ・不動産仲介会社と専属専任媒介契約を結ぶ
2019年5月 ・一般媒介契約に切り替える
2019年6月 ・購入希望者が現れ、売買契約を結ぶ
2019年7月 ・新居の売買契約を結ぶ
・物件の引き渡し
2020年3月 ・新居に入居

まとめ

  • 築古物件でも、リフォームするかは周辺相場やニーズを考えてよく検討しよう
  • 購入希望者から値下げを希望された場合、できるだけ具体的な金額を聞いて判断するといい
  • 売却期限が決まっているなら、早めに値下げや一般媒介への切り替えを検討してみよう

取材・文/籠島康弘 イラスト/キットデザイン

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