不動産売却の基礎知識や知っておきたいコツを分かりやすく解説します。売却の体験談もご紹介。

「売るな」と遺言された田舎の実家、相続後に泥棒が……「もう管理しきれない」売却を決断/愛知県Kさん

愛知県にある実家を相続したKさん。両親の遺言に従って売却はしないつもりでしたが、遠方から空き家を維持管理する難しさを日々感じていました。そんな時に起きたある出来事をきっかけに古家付き土地として売ることを決意したといいます。

愛知県高浜市Kさん(60代)/「売るな」と遺言された遠方の実家、相続後に泥棒が入る!実感した「空き家管理の難しさ」

不動産区分 古家付き土地
所在地 愛知県高浜市
築年数 不明
間取り・面積 土地面積…約300m2(延床面積…約200m2
ローン残高
査定価格 3000万円
売り出し価格 5000万円
成約価格 5000万円

親の遺言は「売るな」。しかし泥棒に入られ売却を検討

首都圏在住のKさんは、父親が亡くなり愛知県高浜市の不動産を相続しました。当初、売却することはまったく考えていなかったといいます。

「相続したのは、私が生まれ育った家です。最寄駅から徒歩5分の場所にあり、土地面積約300m2、建物延床面積約200m2。一部改築していますが、昭和の初期に建てられた古い大きな家で、三州瓦の屋根が立派でした。父は私に実家に戻って住んでほしかったのでしょう。『家は売るな』という遺言でしたから、相続して2、3年は空き家の状態で活用方法を模索していました」

そのまま貸家にする、更地にして駐車場にするなど、相続した不動産の活用方法をいろいろ検討したKさん。しかし、妙案は見つからなかったそうです。

「駐車場にするには建物を解体撤去する費用がかかるうえ、田舎ですから駐車場の賃料収入はさほど見込めません。古民家として誰かに使ってもらえないかと行政などに問い合わせてみましたが、なかなか難しいという返事でした。一度は格安の家賃で貸すことにしたのですが、借り手と細かい条件が折り合わず……。どうしようかと迷っているときに、相続した家が泥棒に入られてしまったのです」

空き家の維持管理の難しさイメージ

管理を任せていた不動産会社から「雨戸が壊されている」と連絡があり、Kさんが慌てて駆けつけると家の中が荒らされていたといいます。

「幸い盗られたものはありませんでしたが、遠方にいながら空き家を管理する難しさを痛感。防犯面はもちろんのこと、台風などの自然災害も心配です。何よりご近所の方に迷惑はかけられません。このまま空き家にしておくことはできないと判断し、売却を考えることにしました」

地元の不動産仲介会社に古家付き土地として売却を依頼

2018年3月、Kさんは相続した物件の売却を地元の不動産仲介会社に相談しました。もともとKさんの両親は近隣に複数の土地を所有しており、その管理を任せていた不動産仲介会社だといいます。

「亡くなった母が信頼していた不動産仲介会社ですから、ほかの会社に相談することは考えませんでした。担当者によると、今どきは300m2もの大きな土地は売りにくく、更地にして3分割したら3000万円ぐらいで売れるのではないかということでした。しかし、それには家の解体撤去費用が500万円近くかかってしまいます。思い出の詰まった実家を自分の手で取り壊すのは忍びないという気持ちもあり、どうするべきか悩みました」

更地にして分割して売るのではなく、現状のまま古家付き土地として売りたい。そう考えたKさんは、不動産仲介会社に、ある人と交渉してほしいと伝えたそうです。

「実は父が亡くなったときに、近隣の人から『うちに売ってくれないか』と不動産仲介会社経由で問い合わせがあったのです。そのときは遺言があるので売るつもりはありませんときっぱり断ったのですが、その人なら現状のまま買ってくれる可能性があります。これまでの経緯は不動産仲介会社の担当者もよく知っているので、私の条件を提示し交渉を任せることにしました」

Kさんは、かねてから付き合いのある地元の不動仲介産会社と一般媒介契約を結び、実家の売却を依頼しました。

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近隣の購入希望者が5000万円で購入を決断

Kさんの売却希望価格は5000万円。古家付き土地として引き渡し、建物の解体と撤去は購入者が行うという条件で、不動産会社は購入希望者と交渉を行いました。

「こだわったのは価格です。本音としては手放したくなかったので、売ってもいいと思える強気の価格を提示しました。不動産仲介会社には5000万円より安く売るつもりはないと伝えておいたので、先方から値引きの交渉はありませんでした」

交渉開始から1週間後、購入希望者からKさんの提示した条件で購入したいという返事があり、5000万円で売却が決まりました。

「先方にとってはぜひ手に入れたい土地だったのでしょう。ただ、価格面ではやはり迷いがあったようです。それを説得してくれた不動産仲介会社の担当者は、よくやってくれたと思います」

2018年4月に売買契約を結び、5月に物件を引き渡したKさん。その後の段取りは予想以上に早く、もっと時間的な余裕が欲しかったといいます。

「まさか売ることになるとは思っていなかったので、遺品整理ができていなかったのです。私が遠方に住んでいることもあり、時間をかけて中身を改めることができず、あっという間に引き渡しになってしまいました。隅々まで見てから実家とお別れしたかったと、今でも心残りです」

遺言は守れなかったが希望価格で売れて満足

売却活動を振り返って、Kさんは「おおむね満足しています」と答えてくれました。

「実家を売るのはつらい経験でしたが、納得の価格で売ることができたので、父の遺言を守れなかった後ろめたさは半減しました。遠方からの売却だったので、地元に精通した信頼できる不動産仲介会社は本当に心強い存在でした。
ただ、覚悟はしていたものの税金は重かったですね。相続した空き家を売るときには3000万円特別控除が受けられると聞いていましたが、父は亡くなる数年前にケアハウスに入居し住民票を移していたため、控除の対象にならなかったのです」

売却後は固定資産税の負担がなくなり、ご近所に迷惑をかけないように定期的に入れていた庭木のメンテナンスも不要に。寂しさはあるけれど、気がかりがなくなりすっきりしたと話してくれました。

■相続した空き家の3000万円特別控除

親の自宅だった空き家を相続してそれを売る場合、譲渡所得から3000万円を控除できる税金の特例があります。これを「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」といいます。1981年5月以前に建てられ、相続する直前まで親が一人暮らしをしていた住宅で、2016年4月1日から2023年12月31日までの売却が対象。家や期間のほかにも適用要件があります。相続前に親が老人ホーム等に入所していた場合も適用の対象となりますが、一定の要件を満たしている必要があります。

空き家を売却するには?売却方法の選び方や流れ、費用・税金など注意点を解説

2018年3月 ・相続した土地・建物の売却を不動産会社に相談
・地元の不動産会社と一般媒介契約を結ぶ
・5000万円で購入希望者と交渉
2018年4月 ・売買契約を結ぶ
2018年5月 ・物件を引き渡す

まとめ

  • 遠方からの不動産売却は、信頼できる不動産会社を見つけることが大事
  • 購入検討者と交渉するときは、希望条件を明確にしておこう
  • 引き渡し時期は余裕をもって設定したい。タイミングが合わなければ購入者と交渉しよう

取材・文/小宮山悦子 イラスト/めんたまんた

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