
現在東京都内に暮らすYさんが売却したのは、船橋市の古家付き土地。家は3LDKで延床面積約は約115m2、築34年になる注文住宅でした。70歳を機にいろいろと整理していこうと思い立ち、それまで10数年ほど賃貸に出していた家をどうするか、本気で考えることにしたそう。自身が30代のころに宅地造成された住宅街で、購入当時はバブルの最中だったため、今の相場よりもずっと高額でしたが、ローンを完済した今は、年齢を踏まえ、金額にこだわるよりも確実な売却をしたいと思うように。賃貸に出していると、住んでいる人のタイミングもあるので、お互いに気持ち良く売却を進めることに心を砕いたといいます。
| 不動産区分 | 古家付き土地 |
|---|---|
| 所在地 | 千葉県船橋市 |
| 築年数 | 約34年 |
| 間取り・面積 | 3LDK(延床面積約115m2、敷地面積約150m2) |
| ローン残高 | なし |
| 査定価格 | 1900万円~2900万円 |
| 売り出し価格 | 2400万円 |
| 成約価格 | 2150万円 |
70歳を機に、ずっと賃貸に出していた一戸建ての売却に着手
現在は、都内の賃貸マンションに夫婦で暮らすYさん(70代)。築34年になる千葉県船橋市の一戸建ては、自身が30代のころ、当時造成されたばかりの新興住宅地に土地を買って建てた注文住宅。同じころに、同じようなファミリー層が購入したこともあり、近所付き合いのある落ち着いた住宅街だったそうです。最寄駅からは徒歩15分程度で、都心まで30~40分程度で通勤できる便利な立地です。Yさんは、子育て中の20年ほどをその家で過ごした後、転勤を機に賃貸に出しました。あちこち転勤している間は社宅に暮らし、退職後は都内で賃貸マンションに。その間、船橋の家の管理は、地元の不動産会社に依頼していました。
「船橋の家をどうしようかと、なんとなくはずっと気にかかっていたのですが、賃貸に出していると住んでいる人もいることで、声をかけるタイミングなんかも難しくて。でも、70歳になったのを機に、将来のことを考えていろいろ整理しようと思ったんです。今は自分で賃料収入を確定申告できていますけど、やがてもっと年をとれば、そういったことも難しくなると思って」
Yさんは、家を建て替えて自分たちが船橋に戻ることも検討しましたが、都内にある子どもの家との今の距離感が心地よいこともあり、船橋の家は売却することにしました。売却できたら、そのお金を元手に都内で新築マンションを買おうと決めたそうです。
「家を買った同時はバブル時代で土地が高かったのですが、売り出されていた近所の家の価格なども見ていたので、今とは相場が全然違うこともわかっていました。住宅ローンは完済していましたが、家はリフォームもせずに古いままでしたし、金額的にはそれほど期待感はありませんでした」
住まいの管理をシンプルに整理することが最大の目的だったYさん。売却に当たり最も心を砕いたのは、船橋の家を借りてくれている入居者のこと。家の管理は全て不動産会社に任せていたものの、お互いに気持ち良く売却が進められるようにしたいと考えていたそうです。
まずは仲介会社を検討。結局は長く付き合いのある地場の不動産会社に依頼
2020年に入り、まずは仲介会社を選ぼうと、不動産情報サイトの一括査定を利用してみたYさん。3~4社から返事があり、そのうちの2社とは実際に合って話を聞いたそう。
「査定は、1900万円~2900万円まで差があり、一番多かったのは2300万~2400万円の提示でした。築古の家があることが不利になり、更地にした方が高く売れるというアドバイスでしたね。軽量鉄骨の家だったので、更地にするには解体撤去費が200万円~300万円程度かかることも教えてもらいました」
情報はたくさんもらったものの、アドバイスは売ることばかりが先行。賃貸で入居している人については親身になってくれそうもない印象をもちました。入居者との間に波風を立てたくないYさんは、話を聞いた2社とは考えが合わないと判断し、長年管理をお願いしていた地元の不動産会社に仲介をお願いすることを決断しました。
2020年3月にずっと付き合いのある不動産会社と売却の仲介についての契約を交わし、賃貸の更新時のルールにのっとって入居者に次回の更新はできないことを伝えてもらいました。併せて、まずは入居者に最初の購入検討者になってもらおうと、2400万円で売却の意思があることも伝えてもらいました。1~2カ月かけてじっくり買い取りの検討をしてもらいましたが、結局契約には至りませんでした。その後、2020年5月くらいから、本格的な売却活動をスタートすることになりました。
古家あり、現況渡しを条件に値下げ交渉を織り込んだ価格で売却活動
不動産会社のアドバイスに従い、情報は広告チラシや地元向けのサイトで公開してもらいつつ、不動産会社の顧客への声掛けを中心に進めていきました。
「更地のほうが高く売れるし、売りやすいこともわかっていましたが、不動産会社と相談した結果、建物をどうするかは買う人に判断してもらいましょうということになり、古家ありの状態で売り出しました。更地にするための金額程度は値引き交渉されるかもしれないと見越して、売り出し価格は2400万円に設定しました。2000万円以上では売りたいと考えていて。古い家なので、例えばシロアリとか雨漏りとか、今気がついていないことに対して後から金銭の負担が増えないようアドバイスをもらい、現況渡しを条件に盛り込みました」
情報をオープンにしてからは、コンスタントに月に2~3件程度の反響があったそうです。まだ入居者がいたので、現地を紹介する際は外から見てもらうだけの案内となりました。半年程度は大きな動きはなかったのですが、年末から2021年の年明けにかけて本気の購入検討者が見つかり、先方のリフォームの見積もりなどもあったので2~3カ月かけてじっくり検討してもらいました。価格交渉を経て、2021年5月に2150万円で売買契約を結びました。
■古家付き土地の売却の注意点
土地が更地の状態ではなく、古家が残ったままになっている土地のことを「古家付き土地」といいます。古家の築年数に厳密な決まりはありませんが、おおむね築20年以上なら古家付き土地として売買されることが多くなります。更地にするために解体撤去費がかかるため、売買価格は更地よりも安くなります。古家をどうするかは購入者の判断になりますが、売却後に瑕疵責任を問われないよう、現況渡しを条件に売却するのがオススメです。なお、古家付き土地を買う場合には、古家を活かしてリノベーションしたほうがいいのか、解体したほうがいいのか、購入前に不動産仲介会社と相談してから決めましょう。

難しいと言われた賃貸物件の売却も円満に活動を終えられて満足
今回の売却活動は、入居者がいる賃貸という難しさがあったものの、全体的に満足している様子のYさん。
「仲介先を選ぶときに、最初は紹介できる顧客が多そうな大手がいいのかな、とも考えました。でも話を聞くと、いずれも賃貸物件の売却は難しいという話になって。そんな中、今回トラブルなく円満に退去してもらえたのは、長年賃貸の管理で双方の顔が見えていた地元の仲介会社にお願いできたからだと思います」
と満足そうに語ります。
売却が決まってから、新居となる都内の新築マンションを探し始めたYさん。次は子ども世帯と程よい距離にあり、便利な駅に近い立地で探したいと物件探しを進めています。
| 2020年1月 | ・売却を思い立ち不動産仲介会社を検討 ・訪問査定(査定額1900万円~2900万円) |
|---|---|
| 2020年3月 | ・不動産仲介会社と専属専任媒介契約を結ぶ ・入居中の賃借人に次回更新しないことを伝え2400万円での買取を打診 |
| 2020年5月 | ・2400万円で売り出し |
| 2020年12月 | ・購入検討者が現れる |
| 2021年1月 | ・現地を案内し具体的な相談が進む |
| 2021年5月 | ・売買契約 |
| 2021年6月 | ・物件を引き渡し売却活動終了 |
まとめ
- 入居者がいる賃貸中の物件は、賃借人との交渉もできる不動産仲介会社を選ぶと心強い
- 購入希望者から交渉されることを見越して、売り出し価格を高めに設定する
- 古家がある場合は、後から負担が増えないためには現況渡しを条件に入れたほうがいい
取材・文/竹入はるな イラスト/カワモトトモカ


