
Oさんは、義母が施設に入居してから空き家になっていた夫の実家(東京都大田区)を売却することを決意。知り合いのいる不動産仲介会社と媒介契約を結び、別の不動産会社への売却が決まりました。しかし、義父の死亡後に不動産の相続登記をしていなかったため、その手続きや準備が必要で、売買契約が成立するまで約半年の時間がかかりました。
| 不動産区分 | 古家付き土地 |
|---|---|
| 所在地 | 東京都大田区 |
| 築年数 | 約40年 |
| 間取り・面積 | 土地面積…約78m2 |
| ローン残高 | なし |
| 査定価格 | 2300万円 |
| 売り出し価格 | 2500万円 |
| 成約価格 | 2300万円 |
約1年半空き家だった夫の実家の売却を決意
東京都大田区にあるOさんの夫の実家は、義父が10年前に亡くなってから義母が1人で住んでいました。義母は高齢で要介護認定を受けており、何度か倒れたこともあり、1人住まいが難しく施設に入居しました。夫の実家は空き家になったまま1年半ほどが過ぎ、Oさん夫婦は義母が自宅に戻ることは難しいだろうと判断しました。
「誰も住まない、住む予定がない家をそのままにしておいても、固定資産税がかかります。誰かに貸すことも考えましたが、築40年の古い家を借りる人を探すのも難しく、家賃収入も期待できないでしょう。夫と夫の兄弟、義母で話をして、思いきって売ってしまうことにしました」
実家を売ることは決まりましたが、義母、夫、夫の兄弟は身動きが取りにくく、売買に関する手続きはOさんが行うことになりました。
夫の実家は、最寄駅から徒歩約15分、小さな工場などがある工業地域にあり、駅から少し離れているため、人通りが少なく静かな環境にあります。
ネット検索で相場をリサーチ後、地元の不動産仲介会社に売却を相談
築40年の古い家を解体せずに売却できるのか、気になったOさんは、売却する不動産の最寄駅にある不動産仲介会社(A社)に相談することにしました。「以前、不動産のことで相談したことがあり、親切にしてくれたベテランの担当者がいて、そのときは成約になりませんでしたが、近くのA社に転職していたことを知っていました」
インターネットで検索して、夫の実家の近くの物件がいくら位で取引されているのか調べたところ、2000万円~2400万円位とおおよその相場の検討がついていました。
担当者に現地を見てもらったところ、査定額は2300万円でほぼ予想通り。「大手ではありませんが、地場の取引に強く小回りのきく会社だと思ったので依頼を決めました。親切な知り合いもいましたし、他社で査定してもらっても、大差はないと思いました」。そして2020年7月、A社と専属専任媒介契約を結びました。
不動産仲介会社とつながりがある別の不動産会社が購入を希望
査定額は2300万円でしたが、仲介手数料がかかることを考えて、2500万円で売り出しを開始。1カ月後に購入検討者が現れましたが、初めから値引きを交渉され、交渉は成立しませんでした。「最初から2100万円でどうですかと言われて、『ちょっと難しいです』と話すと、それなら結構ですとなりました。できるだけ安く買いたい気持ちはわかりますが、最初から値引き前提で話をされると、足元を見られたのか、冷やかしかなという気持ちになりました」
「お店の前に物件情報を掲示していたようですが、正直、どのような販売活動をしていたかはわかりません。とにかく買ってくれる方を見つけてくれれば、どうやって買い手を探しているかは気になりませんでした。不動産会社同士の横のつながりがかなり強く、親しい不動産会社に話を持ちかけたようです」
翌月、担当者から「少し値引きできるなら、欲しい人がいますが、2300万円でどうですか」と相談があり、売却を決意しました。「欲しがっていたのは、個人ではなく、A社の横のつながりがある別の不動産会社(B社)でした。あまりごちゃごちゃ言って、売れなくなっても困りますし、2300万円なら、想定していた希望額に近かったので、いいかなと。ちょうどコロナ禍で経済状況が厳しくなり、現地近くの賃貸の部屋も空室が出て苦戦しているとも聞いていましたし、もっと待てば高く売れるかもなどといった欲を出してもしょうがないと思いました」
故人の名義のままだった不動産。相続登記を行いようやく売買契約が成立
売却活動そのものは、さほど時間はかかっていませんが、Oさんの場合、不動産は亡くなった義父の名義のままでした。B社が購入する意思を表明し、不動産売買契約書を受け取り、手付金を受け取ったものの、すぐには売買契約を結ぶことができませんでした。
「義父が亡くなってから約10年、不動産の名義はそのままにしてあって、相続登記(所有権の移転の登記)をしていませんでした。不動産の所有者が亡くなった場合は、不動産を売却することはできません。相続登記には、義父が生まれてから死亡するまでの戸籍、住民票の除票や相続する人の住民票、相続する人全員の印鑑登録証明書などが必要で、手続きを行うまでに、すごい手間と時間がかかってしまいました」
■不動産の相続登記とは
両親などから不動産を相続する場合は相続登記を行います。相続登記を行い、名義変更をすることで、不動産の所有権が被相続人(亡くなった方)から相続人に移り、不動産を売却することが可能になります。不動産の登記手続きを行わず名義人のものでない不動産は売却することができません。相続登記は、現在は義務化されていませんが、2024年4月1日から義務化され、過去に相続した不動産も含めて相続登記の手続きが必要です。戸籍謄本などの書類や登録免許税(印紙代)を用意して法務局に申請します。
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何から始めていいかもわからない手続きでしたが、A社の担当者が必要書類や手続きなどを丁寧に教えてくれたおかげで心強かったそうです。手続きに約半年かかりましたが、手続きが終わるまで待ってもらえたのも、買い手が不動産会社だったこともあるのではないでしょうか。

「かなり長いこと地元に根差してやってきた不動産仲介会社に依頼して、良かったと思います。誠心誠意やってもらったと思っているので、満足しています。比較サイトなども沢山ありますが、地場の不動産会社にも目を向けて、一度相談してみてもいいのでは」と、売却活動に非常に満足されているOさんでした。
| 2019年10月 | ・売却を意識し始める |
|---|---|
| 2019年12月 | ・地元の不動産仲介会社(A社)に相談する |
| 2020年7月 | ・A社と専属専任媒介契約を結ぶ ・販売活動を開始する |
| 2020年8月 | ・購入希望者が現れるが値引き交渉され、交渉が不成立になる |
| 2020年9月 | ・販売活動を再開する |
| 2020年10月 | ・購入を希望する不動産会社(B社)が現れる ・売却を決意 ・手付金を受け取る ・不動産の名義が亡くなった義父のままだったため、必要書類をそろえて相続登記手続きを行う |
| 2021年4月 | ・不動産相続登記が完了 ・売買契約が成立 ・物件を引き渡す |
まとめ
- 誰も住んでいない、住む予定がない空き家は早めに売却か活用を検討すると良い
- インターネットで周辺の似たような中古住宅の取引価格を調べておおよその査定額をつかもう
- 不動産の名義人が死亡した場合、相続登記を済ませていないと、売りたいときにすぐ売ることができない
取材・文/佐藤由紀子 イラスト/いぢちひろゆき


