不動産売却の基礎知識や知っておきたいコツを分かりやすく解説します。売却の体験談もご紹介。

こだわりの注文住宅の売却。スタートは不振でも自ら不動産仲介会社を探して売却成功/東京都世田谷区Aさん(50代)

東京都世田谷区Aさん(50代)/こだわりの注文住宅の売却。スタートは不振でも自ら不動産仲介会社を探して売却成功

世田谷区にこだわりの一戸建て(4LDK)を建ててから16年が経ったAさん。そろそろリフォームをするか、それとも別の家に移り住むか考えるように。検討した末、日ごろからよく買い物や食事に出掛けていた街へ移り住むことにしました。

不動産区分 一戸建て
所在地 東京都世田谷区
築年数 16年
間取り・面積 4LDK(延床面積…約110m2、敷地面積…約82m2
ローン残高 なし
査定価格 6900万円〜7600万円
売り出し価格 7500万円
成約価格 7000万円

築16年の一戸建てをリフォームするより、新しい街で新しい生活を選択した

2001年に憧れの一戸建てを建てる際、Aさんがこだわったのが地下室でした。趣味の映画を、心おきなく迫力の大音量で満喫できる地下のシアタールームが欲しかったそう。「防音工事を行い、スイッチで昇降するスクリーンを備え、サウンドシステムにもこだわりました」

そんなシアタールームを含む4LDKの家があったのは東京都世田谷区の閑静な住宅地。夫婦二人で暮らしていました。最寄駅からは徒歩10分とそんなに離れてはいなかったのですが、「地元ではなく、2駅ほど離れたエリアに妻とよく食事や買い物へ出掛けていました」。そこは雑誌やテレビでも取り上げられる名店がひしめく、都内でも有数のグルメエリアです。「買い物するにも便利な街です。緑も多くてとても気に入っています」

タクシーでもすぐ行けるその街へ何度も通ううちに、「そろそろ壁の塗り替えなど、定期的なリフォームが必要になってきたので、どうせならこっちに移り住もうか、という気持ちが芽生えてきました」

そのエリアに気になる一戸建てが販売されていると、買うかどうかは別として、とにかく見に行くようになります。そこで真新しい家を見ると、やはり購入意欲がますます募ります。こうして新しい家を探すとともに、従来の家を売却することを決意しました。

夫婦共働きで、頭金をしっかり貯めて購入した家だったため、既にローンは完済。「あとは、なるべく新しい家に移り住むのと売却のタイミングが合うようにできればいいなと考えていました」

複数社に売却を依頼したものの納得がいかず、自ら不動産仲介会社を見つけた

まずはインターネットの一括査定を利用したAさん。「7〜8社くらいに査定してもらった結果、査定額は6900万〜7600万円。そこで絶対譲れない線を6900万円に決めました」

次に一括査定してもらった中から3社に訪問査定を依頼。その結果、その3社と一般媒介契約を結び、7500万円から売り出してもらうことにしました。「まずは7500万円、ということでお願いしました。もちろん交渉にも応じますよ、と伝えていたつもりです。6900万円までなら値下げ交渉に応じる気持ち満々でしたから(笑)」

リフォームについては、3社とも「築16年にはとても見えないほどキレイなので、必要ないでしょう」という見解でした。

すぐに5〜6組は訪れたそうですが、その後の進展がありません。「あとで知ったのですが、どうやらこちらの値下げに応じるという意思が、不動産仲介会社にうまく理解されていなかったようで……」。さらに、例えば「○○万円に下げませんか」と提案してきた不動産仲介会社に、なぜそれくらい下げれば売れるのか、と根拠を尋ねると曖昧な答えだったり、当初は週1回あった連絡も、すぐに月に1回あればいいほうになったり。「どうも信用できないな、と思い始めたのです」

ちょうど不動産仲介会社に不信感を募らせていたころ、テレビを見ていたら、ある不動産仲介会社が紹介されていました。

「その会社はまずホームページから自分で担当する営業スタッフを選ぶことができるんです。各自の紹介欄には、この仕事に就いた動機やポリシー、経験してきたことなど、人となりがわかるような背景まで書かれていました」。その中からAさんが選んだ人は「ちょっとコワモテだけど、気さくで人当たりのいい人」。Aさん自身も営業職をやっているので「話してみれば相手がどんな人か、だいたいわかります。初めて会って言葉を交わすうちに、この人はできる営業だな、と思えました」

そこでAさんは、これまでの3社との一般媒介契約を解除し、この新しい不動産仲介会社と専属専任媒介を結びました。売却活動を始めて2カ月近く経ったころです。

信頼できる不動産仲介会社の担当者と出合う

購入希望者からの値引き交渉を快諾

新しい不動産仲介会社の担当営業は、写真の撮り方も上手かったとAさん。これまでの紹介写真と比べて、インターネット広告での見た目の印象も良くなったと言います。「写真はこんな写真です、従来の写真と比べてこんな感じになります、写真をこんな風に編集して掲載しようと思いますなど、とにかくマメに連絡をくれました。またこちらからの問い合わせに対するレスポンスがとにかく早い。しかも的確でわかりやすかったです」

ちょうどそのころ、それまで一般媒介で依頼していた不動産仲介会社の1社から「以前内見した方が、もう一度見たいそうです」と連絡がありました。そこで新しい不動産仲介会社と、以前の不動産仲介会社、Aさんと購入希望者の4組で内見会を行いました。同じ不動産仲介会社が売主と買い主の双方を仲介する「両手仲介」ではなく、売却依頼を受けた会社と、購入依頼を受けた会社が異なる「片手仲介」です。

再び内見したいと言った購入希望者は、愛犬を何頭か飼われている老夫婦。愛犬のために地下室を使いたいと考えていたそうです。

「その時にわかったのですが、老夫婦は最初の内見時にこの家のことを気に入ってくれたそうです。7500万円という価格がネックになっていたのですが、なぜか値引きには応じる意思が伝わっていなかったとか」

もちろん、最低限と決めていた6900万円より上ならいつでも値引きに応じるつもりだったAさん。購入希望者からの「7000万円では無理でしょうか?」という問いに、その場で「いいですよ」と即答したそうです。

あとは新しい不動産仲介会社が「何もかもとてもスムーズに」進めてくれたそう。また新しい住まいは、約2カ月前に目をつけていた所がまだ購入できるとわかり、そちらの契約も進めたAさん。「引っ越しのタイミングがほんの少しズレて、2週間ほどホテル暮らしをしましたが」無事売却と新居への引っ越しとなりました。

■両手仲介と片手仲介

不動産取引には、売主と買主双方の仲介を同じ会社が担う「両手仲介」取引と、別々の会社が担う「片手仲介」取引があります。売主や買主が支払う仲介手数料額は同じですが、それぞれ注意点があります。まず「両手仲介」は「なるべく高く売りたい」と思う売主と「なるべく安く買いたい」という買主を同じ会社が担当するため、双方の利益を両立させることが難しく、時に売主への値下げ要求が強くなることもあります。ただし、1社で双方をやりとりするので、交渉がスムーズになりやすくなります。一方の「片手仲介」とは売主と買主にそれぞれ1社ずつ不動産仲介会社がついて売却取引をしますから、両手仲介と比べて、売主と買主双方の利益を最大化しやすくなります。一方で不動産仲介会社の立場で言うと、両手仲介なら売主と買主双方から手数料を得られるのに、片手仲介は片方だけの手数料になるため、営業姿勢が消極的になることがあります。また間に2社が入ることで、買主と売主の間のコミュニケーションが取りにくくなり、交渉がなかなか進まないこともあります。

専属専任媒介をした不動産仲介会社のおかげでスムーズだった

売却活動全体を振り返って、Aさんは「とても満足しています」と答えてくれました。 「とにかく専属専任媒介契約を結んだ不動産仲介会社の担当営業が、こちらの立場に立ってスムーズに進めてくれた」ことが売却活動の満足度を高めたそうです。「例えば今回の購入者から、検討時に庭の大きな木を伐採してほしいと依頼がありました。担当営業が調べてみると、根を引き抜くには重機が必要になるとわかりました。しかし隣家の迫る住宅街ですから『重機を使うと家の壁を壊す危険があります。ここは重機を使わず、薬剤の散布で自然と枯れて土に還すことをあちらに提案してみましょう』と言ってくれ、この説明に購入希望者も納得してくれました」 新居での生活は「食事も買い物も歩いて行けます。引っ越したばかりのころは週に何回も夫婦2人で出掛けていました。今はコロナ禍であまり出掛けられませんが、まだ行ってみたいお店がたくさんあります」。コロナ禍が収束すれば、再び2人で休日を楽しみたいそうです。

2017年3月 ・売却を意識し始める
・住み替え先の物件を探し始める
2017年4月 ・7〜8社に簡易査定をしてもらう
2017年5月 ・3社と一般媒介契約を結ぶ
2017年7月 ・もう1社を探して専属専任契約を結ぶ
2017年8月 ・購入希望者が現れる
2017年10月 ・売買契約を結ぶ
2017年11月 ・従来の家を引き渡し、新居に引っ越す

まとめ

  • ここまでなら値引きできるという金額を、あらかじめ不動産仲介会社の担当者に伝えておく
  • 担当営業と良好な関係を築けると、売却活動がスムーズに進みやすい
  • 購入希望者が現れたのに売却に至らなかった場合、不動産仲介会社にその理由を確認したほうがいい
売却査定する

取材・文/籠島康弘 イラスト/めんたまんた

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