
大田区にある築33年のマンション(3LDK)を賃貸に出していたOさん。貸借人がいるオーナーチェンジ物件のため売却活動はうまくいかず、一度は売ることを諦めたそうです。しかし、老朽化による漏水事故などのトラブル対応などに嫌気がさして、買い取りの申し出があった不動産会社へ売却しました。想定より2割ほど安い価格での売却になりましたが、数年来の悩みを解決して第二の人生を歩み始めることができました。
| 不動産区分 | マンション |
|---|---|
| 所在地 | 東京都大田区 |
| 築年数 | 約33年 |
| 間取り・面積 | 3LDK・約70m2 |
| ローン残高 | なし |
| 査定価格 | 3000万円 |
| 売り出し価格(一回目売却活動時) | 3000万円 |
| 成約価格(二回目売却活動時買取価格) | 2400万円 |
貸借人との退去交渉に失敗。一回目の売却活動はうまくいかず活動を休止
定年退職を数年後に控え、財産の整理を始めたいと考えたOさん。所有していた築33年の約70m2・3LDKのマンションは、30代に3500万円で購入したもの。管理会社に任せて賃貸をしており、長年同じ貸借人が住んでいましたが、再々、不動産会社からのアプローチを受けていたといいます。
最初に売却しようと動き始めたのは、2018年夏ごろ。しかし売却活動を始めるに当たりり、貸借人に退去をお願いしたのですが、断られてしまいました。貸借人がいるため、訪問査定はできず、書面や資料で3000万円の査定価格を出してもらいました。2018年8月ごろ、大手不動産会社と専属専任媒介契約を結び、査定価格で販売を開始したのです。 「貸借人には、いろいろ提案し、退去をお願いしたのですが、拒否されました。ならば賃貸ではなく物件を購入してほしいともお願いしましたが断られてしまい、どうすればいいかわからず、困惑しました。『賃借人がいなければ買う』という人はいたんですが。一回目の売却活動はうまくいきませんでした。そうこうするうちに、大手不動産仲介会社は手を引いてしまったんです」
数々のトラブルに見舞われ、買取を視野に入れて活動を再開
月10万円以上の賃料が入っていたので、売却を急がず、いったん、休止することにしました。元々管理会社に任せて賃貸をしていましたが、管理会社が閉業し、自分で管理することに。ところが、折悪しくも物件の老朽化により漏水が起きてしまい、貸借人からの苦情や修理などへの対応に追われることになりました。勤めながらの対応に限界を感じ、新しい管理会社に任せたものの、たびたびのトラブルに疲れたOさんは、物件を売りたいと強く考えるようになりました。

不動産会社からのアプローチを受け、2400万円の買取価格で即決
売却活動を再開しようにも、貸借人がいる状態は続き、打つ手がなく、困り果てていたOさん。2020年7月に、不動産会社から電話があり、買取の申し出がありました。
「電話で『2400万円ならすぐに買取します』と言われ、その場で即決しました。値上げも相談したのですが、営業担当者に無理だと言われたので仕方ないかなと。その後、電話で話したのは数回のみで、担当者と会ったのは売買契約のときだけ。あまりにもスムーズで早い展開だったので、約束を反故にされるのではないかという不安はありました」
お互いの信頼関係を損なわないように、隠し事はせず、これまでのトラブルを全て伝え、腐食や雨漏りの状況を記す物件状況報告書にも漏水事故があったことを明記しました。
■オーナーチェンジ物件とは
オーナーチェンジとは、賃借人が居住したままの状態で不動産を売買することをいいます。賃貸契約はそのままにオーナーのみが変わるという特殊な取引形態になります。通常の売却と比べてオーナーチェンジは、買い手が購入時に住宅ローンが使えない、購入前の内見ができないなど、買い手にとって自由度が低いため、売却価格を低く抑える傾向があります。
ノウハウのある不動産会社なら、問題のある物件でも買い取ってもらえる
2017年に売却を考え始めてから、3年と活動は長期にわたりました。売却価格は、不動産会社のチラシなどを見て想定していた価格から2割減の2400万円。売却価格に不満はありましたが、売却活動を通じ、問題のある物件の売却が厳しいことを痛感したといいます。
「契約時に同席した司法書士の方からは、買い取った不動産会社は、賃借付き物件の販売に長けている不動産会社だと聞きました。その後、貸借人とどのような交渉をしたのかわかりませんが、不動産会社のノウハウがあるのでしょう。いったんトラブルになると素人では対応が難しい。プロに任せることができて良かったです。とにかく売れてほっとしましたよ」
今は定年退職して、第二の人生を始めたOさん。数年来の悩みを解決し、安堵の表情を浮かべていました。
| 2017年8月 | ・売却を意識し始める |
|---|---|
| 2018年8月 | ・大手の不動産会社と専属専任媒介契約を結ぶ ・売却活動を開始するが、賃借人がいたため、売れず ・最初の不動産会社が撤退 ・売却活動をいったん休止する |
| 2019年8月 | ・マンションで漏水事故が発生 |
| 2020年7月 | ・買取希望の不動産会社が現れる |
| 2020年8月 | ・2400万円の買取価格で売買契約を結ぶ |
| 2020年10月 | ・物件を引き渡す |
まとめ
- 賃借人がいる物件の売却活動は、タイミングを逃さないようにしよう。
- オーナーチェンジ物件の売却に長けている会社に依頼することが大切。
- 売却時には隠し事をせず、過去のトラブルや物件の不具合を伝え、お互い信用のできる取引を。
取材・文/内田優子 イラスト/キットデザイン


