不動産売却の基礎知識や知っておきたいコツを分かりやすく解説します。売却の体験談もご紹介。

コロナ禍で手放すことにした土地。周辺物件の相場に合わせて適正価格に値下げ/埼玉県久喜市Tさん(50代)

埼玉県久喜市Tさん(50代)/コロナ禍の収入減で手放すことにした土地。周辺物件の相場に合わせて適正価格に値下げ

埼玉県久喜市に土地を購入したTさんは、コロナの影響を受けて家づくりの計画を白紙に戻して売却することに。信用の置ける不動産会社に巡り合い、適正な価格を見定めて競合するエリアでの売却に成功しました。

不動産区分 土地
所在地 埼玉県久喜市
築年数 -
間取り・面積 約390m2
ローン残高 なし
査定価格 1380万円
売り出し価格 1380万円
成約価格 1290万円

転職先の埼玉県で土地を購入するも、収入ダウンで白紙に戻すことに

Tさん(50代)は妻と小学生・未就学児の子どもとの4人家族。もともとご夫妻の出身地である鹿児島県で暮らしていましたが、姉の営む会社に転職するのをきっかけに埼玉県の賃貸マンションに引っ越し、かねてから検討していた念願の一戸建てを埼玉県に新築しようと動き出します。
Tさんにとって土地を選ぶうえでの第一の条件は、十分なゆとり。まきストーブのある暮らしを思い描いていたため、薪割りの作業をしたり、まきをストックしたりできる面積が必要でした。
約1年かけて見つけたのは、埼玉県久喜市の分譲地。各330m2以上ある全区画の中でも約390m2の旗竿地を選びます。
真南にリビングをつくったとしても日当たりが損なわれない形状で、一般的な旗竿地より間口が広いため車の出し入れがスムーズ。通勤圏で小学校・中学校が近く、近隣には大型商業施設もありました。

2019年7月に土地を購入し、次に住宅メーカーを探しますが、そこで不測の事態に見舞われます。

「ピンとくる住宅メーカーに出合えないまま1年が経過していたのですが、2020年の春ごろからコロナが騒がれ始め、収入が下がる月が3カ月続いたんです。土地は現金で買ったものの、ローンを組んで家を建てるのは厳しいと感じてきて。
家族と話し合い、いったん、土地を売却して計画を白紙にすることに。会社に相談したところ鹿児島でリモートワークができるようになり、鹿児島の賃貸住宅に住むもとのライフスタイルに戻ることにしました」

熱意ある仕事ぶりに心を打たれ、売却を購入時の不動産会社に任せる

土地を売却することにしたTさんは、迷いなく購入したときと同じ不動産会社に媒介を依頼します。一括査定サイトなどを使って複数の不動産会社に見積もりを出してもらう方がメリットはありそうなところ、そうしなかったのはなぜでしょう。

「これまでは中古車を売却するときも、引っ越しをするときも、いくつかの会社から見積もりを取って条件のいい一社を選ぶのが自分のやり方でした。でもA社にはとても熱心に対応していただけて、心を動かされたんです」

鹿児島県にいるころから関東の数社の不動産仲介会社とコンタクトを取り、土地を探していたTさん。はるか離れた遠方からの依頼であっても、A社の営業担当だけは親身になって相談にのり、まめに情報提供をしてくれたそう。
埼玉県に越してきてからは何度か一緒に現地を訪問。すぐに売れてしまいそうな物件が出たときは、次の日が会社の定休日にもかかわらず、急きょ前日の夜に声をかけてくれるなどしたと言います。

「A社での査定価格は、買値と同じ1380万円。仮にこの値段で売却できたとしても、仲介手数料のことなどを考えると私には利益がでません。でも家族の生活を考えて巡り合った大切な土地。たとえ他社の方がお得だったとしても、人間性が感じられ、信用が置ける方に託したいと思ったのです」

2020年7月、TさんはA社と専属専任媒介契約を交わします。

近隣の物件と接戦するも、段階的な値下げで売却に成功

売り出し価格は1380万円。100万円ほど高く売り出して様子を見る案もありましたが、Tさんはよしとしませんでした。

「一帯は土地の売買の盛んな住宅地。接戦しやすく、相場に合わない金額だと売れ残ってしまうこともあると聞きました。自分は以前から投資をしているのですが、高値で売り出して買主が見つからないくらいなら、少しばかり損したとしても早めに売却し、そこで得た現金を運用に回したいと思ったんです」

A社では大手不動産情報サイトに物件情報をアップ。また、埼玉県にある同社の支店に、久喜市で土地を求める人がいたらTさんの物件を紹介するよう、呼びかけてもらいます。

「営業担当からは、メッセージアプリを使って逐一、状況を報告してもらいました。しかし興味を示してくれる人はなかなか現れません。7月から売り出して、そのまま10月になってしまいました。
翌年の春には鹿児島に帰るつもりでいたので『それまでに決まるだろうか』『そもそも売れるのか』とやきもきしていました」

Tさんは媒介契約を更新。A社から提案を受け、30万円価格を下げて1350万円にします。

「するとすぐに反響があり、年末までに10件くらいの問い合わせが。一気に視界が開けた気持ちになりました」

しかし反響はあるものの、年が明けても契約につながらず、2月にA社からアドバイスを受けます。

「営業担当が近隣の土地の動画を送ってきてくれて『この場所でこの広さだと、今はこのくらいの値段です。苦しいけれども見直しませんか』と、私にわかる形で動向を教えてくれたんです。周囲は値下げし始めていて、買主にとっては私の価格だと魅力がなく、勝算はないだろうと納得。更に60万円値引いて、1290万円にすることにしました。
そうしたら、すっと決まりましたね」

もともと反響が出始めたら、価格をどのくらい下げるかが売却の命運を分けると思っていたTさん。
価格を下げたその日に購入者が現れ、翌日、新たに2人の個人客から手が挙がったそう。結局、1人目は審査が通らずキャンセル。買主は2人目の候補者に決まりました。
2021年3月、売買契約を交わします。

■土地の売却価格相場について

土地の売却価格は相場で決まりますが、調べるにはいくつかの方法があります。代表的なものには、実際に取引された「実勢価格」がわかる「不動産取引価格情報検索」、国や各都道府県から公表された「公示価格」「基準地価」を見られる「国土交通省地価公示・都道府県地価調査」、相続税の計算に使用する「路線価図・評価倍率表」、固定資産税の計算に使う「全国地価マップ」などがあります。不動産会社から出された査定価格が適切かを判断する材料になるため、あらかじめ確認するとよいでしょう。

計画通りにいかなかったものの、売却の経験が家族の暮らしの糧に

売却活動と並行して次の住まいを探していたTさん。2021年春から鹿児島県へ戻り、今は家族4人で賃貸の平屋に住んでいます。ここでの住まいと暮らしには、今回の体験で得たことが活きているそう。

「家族が住む土地を真剣に探し、誠意ある営業担当に出会えたことで、自分たちにとって大事なものが何なのかを改めて考え直せたと思います。だからこそ、鹿児島でも納得する家を選べましたし、充実した生活を送れていると思います。
子どもが通う学校は生徒数が少ないのですが、かえってのびのび過ごせているよう。コロナによって計画が変わってしまい、今後、家を新築するかは未定ですが、妻とは『こうなってよかったね』と話しています」

かけがえのない体験をし、家族とともに実りある日々を送っているTさんです。

2020年4月 ・土地の売却を考え始める
2020年7月

・不動産会社の訪問査定を受ける

・不動産会社と専任媒介契約を結ぶ

2021年2月 ・購入希望者が現れる
2021年3月

・買主と売買契約を結ぶ

・土地を買主に引き渡す

まとめ

  • 強気の価格で売り出す場合、売却活動が長期戦になる可能性がある
  • 競合になりそうな物件の価格に注意を払い、不動産会社と相談して価格を見直そう
売却査定する

取材・文/星野 真希子 イラスト/キットデザイン

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