
金融関係の会社に勤めながら、複数のマンションを所有し不動産投資を手掛けていたKさん。5年前に購入した仙台市中心部のタワーマンションを、購入時より約1000万円高い価格で売却することに成功しました。
| 不動産区分 | マンション |
|---|---|
| 所在地 | 宮城県仙台市青葉区 |
| 築年数 | 約5年 |
| 間取り・面積 | 2LDK(約72m2) |
| ローン残高 | 約2300万円 |
| 査定価格 | 約4800万円 |
| 売り出し価格 | 5200万円 |
| 成約価格 | 5150万円 |
転勤先の仙台で購入したタワーマンション。完成後すぐに賃貸に出し、5年後に売却
東京在住のKさんは転勤で仙台へ移り住み、2014年に仙台市内の中心部に完成したばかりの新築のタワーマンションを購入しました。
「仙台の街がとても好きになってきたとき、仙台市内で先駆けのタワーマンションが完成したので、いずれ自分たちが住むつもりで購入しました。大手デベロッパーが手掛けた洗練されたマンションでした」
購入したのはガラス張りの角部屋。眺望が良く、仙台駅まで歩いて7、8分で、新駅に直結する利便性抜群の物件です。2人暮らしなので間取りは2LDKを選びました。
ところが、引き渡し前に岐阜県への転勤が決まり、完成直後に賃貸に出すことに。
19万円の家賃で借り手がついたといいます。家賃の額からもマンションのグレード感がうかがえますが、家賃の多くは住宅ローンの返済にあてていました。
しばらく賃貸に出しましたが、世の中がコロナ禍に突入し、2021年になって売却を決意しました。
「コロナで世の中の先行きがあやしいと感じたことと、以前よりも周辺の不動産価格が高くなっていることから、売却の時期だと考えたんです。」
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自宅マンションの売買や賃貸出しで収益を得たことがマンション投資のきっかけ
コロナ禍の不透明な先行きから売却を決めたKさんですが、前々から仙台のマンションは折を見て売ろうと考えていたといいます。
「マンション売却時にかかる譲渡所得税は築5年以内だと約40%ですが、5年超だと約20%になります。一方、マンションは日進月歩でだんだん設備の新しいものが登場します。築10年以内なら設備も古くさくならない範囲で、中古市場でも高く売れると考え、5年から10年の間に売ろうと計画していました。それに、修繕積立金が新築時より上がってきており、タワーマンションなので今後もさらに上がるのではないかと懸念したことも理由です」

不動産売買の知識が豊富なKさんですが、実は仙台のマンション購入前から複数のマンション投資を手掛けていました。
投資を始めたきっかけは30代の頃、東京都江東区に購入した自宅マンションで収益を得たことでした。3500万円で購入し10年間住んだ後、転勤で2、3年間賃貸に出しました。その後、売り出したところ購入額より400万円以上高い3920万円で売れたといいます。賃貸の家賃収入もあったので、10年間でかなりの収益を生んだことになります。
「購入、売却、賃貸の経験を経て、それらが全てうまくいき利益が出たので、マンションの不動産投資を手掛けるようになりました。最も多いときで東京、仙台、名古屋などに計6軒を所有していました。いずれも駅近、流動性の良いコンパクトタイプを選び、毎月利益を生みながら、売る際には高く売れる物件を買うよう心がけました。基本的には自分が住みたいと思うかどうかが決め手。それはポリシーとして持っています」
売り出し価格は自分で決定し、その後は不動産仲介会社に一任
売却にあたり、賃貸仲介を任せている不動産仲介会社に売却を依頼しました。
「空室ではないので査定は電話で行いました。自分自身でも常にネット等で不動産市場のチェックをしており、その時はネット査定で4800万円程度でした。不動産仲介会社の査定額も同じぐらいだったと思います。私は常々不動産仲介会社によっては安く売られることがあると考えており、マンションの売り出し価格は自分で決めることにしています。今回はそのエリアの平均的な相場より高く設定し、5200万円で売り出すことにしました」
Kさんは売り出しと同時に、賃貸で入居している住人に買う意思がないかどうか声をかけてみました。
「住人は大学生でしたので、正確には親御さんです。住んだままの売却だと高く売れないので、住人が購入してくれるのが最もいいと考えたからです。結果的にはNOだったので、売却活動を続けました」
東京と仙台という遠隔地の売却のため、売り出し価格を決めた後は全て不動産仲介会社に任せたといいます。
「売り出し価格が高いと思うかもしれないが、この価格で売り出してくださいと頼みました。見栄えのいいマンションなので、この価格で必ず売れるという自信があったからです。もし売れなければ、このまま所有して自分たちが将来住めばいいと思っていたので」
結果的に答えはNOだったため、賃貸で入居したままオーナーチェンジすることになりました。
売り出し開始から5カ月たった頃、購入希望者が現れました。
購入希望者から100万円の値引きを希望され、交渉の結果、50万円値引きした5150万円で売却することに決まりました。
「4129万円で購入し、1000万円ぐらい収益を得たいと考えたので、売り出し価格を5200万円に設定したんです。100万円までなら値下げしてもいいと考えていました。買い手は不動産投資会社でした。立地も外観も優れたマンションで、屋上に上れば仙台を一望でき、花火も見えます。やはり私の値付けは正しかったと思いました」
■オーナーチェンジとは
オーナーチェンジとは賃貸住宅の所有者が、入居者が入ったまま住宅を売却すること。入居者はそのままでオーナーが変わるという取引形態です。購入者は購入後に入居者を見つける手間が省け、すぐに賃貸料を受け取ることができるのがメリットです。
自分が住みたいと思う魅力的なマンションだったことが、売却成功の決め手
購入価格より約1000万円高い額での売却となり「大満足」と答えるKさん。成功の理由をこう語っていました。
「私は投資用であっても、自分が住みたいと思うかどうかで購入を決めます。今回は売れてうれしいけれど、手放した寂しさを感じるほど気に入ったマンションでした。マンションの価値を信じ、売り出し価格を下げなかったことが成功に繋がったのだと確信しています」
さらにマンションの売却の際、気をつけたい点を尋ねてみました。
「高額の取引なので、不動産仲介会社任せにせず、自分で勉強することが大切ですね。最近はネットに物件名と部屋番号を入力すると査定額などがメールで送られてくるサイトがあるので、そういったものを活用し、常に不動産市場をチェックするようにしています。もし私が不動産について詳しくないなら、不動産仲介会社1社に任せてしまうのはリスクが高いので、複数社に査定を依頼すると思います」
もともとは自分自身が住む予定で購入したマンションでしたが、不動産投資で得た経験や知識をフル活用して、売却に成功したKさんでした。
| 2021年4月 | ・訪問査定 ・専属専任媒介契約を結ぶ ・5200万円で売り出し |
|---|---|
| 2021年6月 | ・賃借人に買い取りを依頼 |
| 2021年9月 | ・購入検討者が現れる ・5150万円で売買契約を結ぶ |
| 2021年10月 | ・引き渡し |
まとめ
- 高額の取引なので、できる限り不動産仲介会社任せにせず、ネットなどを活用し不動産市場について勉強しよう。
- 不動産投資用マンションとはいえ、自分自身が住みたいかどうかを指針に購入物件を決めると売却もうまくいく可能性が高い。
- 査定額を決めるのは最終的には売り手自身。悔いのない売却価格の設定を。
取材・文/浅野真由美 イラスト/沼田光太郎


