
義母が介護施設に入居して空き家になった夫の実家を、不用心だと気を揉んでいたHさん(60代女性)は、早い段階で管理を引き継ぎたいと考えるように。不動産の勉強会で司法書士からアドバイスをもらい、約1年後、売却活動をはじめました。
| 不動産区分 | 古家付き土地 |
|---|---|
| 所在地 | 東京都世田谷区 |
| 築年数 | 約70年 |
| 間取り・面積 | 土地面積…約140m2 |
| ローン残高 | なし |
| 査定価格 | 8500万円 |
| 売り出し価格 | 8400万円 |
| 成約価格 | 8400万円 |
義母が介護施設に入居した後の、空き家が気がかりで売却を決意
東京都葛飾区のマンションにご夫妻で暮らすHさん(60代)。夫の実家は世田谷区の一軒家で、義父の亡き後、義母が1人で暮らしていましたが、介護施設に入居したことから2年ほど空き家になっていました。
物件は、義理の祖父母が戦後まもなくして建てた築約70年・約58m2の和風住宅。傍らに木々の茂る庭のある、昔ながらの佇まいから、通りすがりの外国人に「ビューティフル」と感嘆されたり、飲食店オーナーに「カフェの店舗として貸してほしい」と声をかけられたりすることがあったといいます。
場所は駅から徒歩約10分の閑静な住宅街で、日当たりの良い約140m2の角地。駅前にはスーパーが充実し、生活するには申し分ない条件でした。
しかしたとえ相続したとしても、住み慣れたマンションを離れるつもりはなく、かといって賃貸経営は難儀だと感じていたため、売却するしか選択肢はなかったと話します。
「誰もいない家は不用心ですし、秋になると庭に落ち葉がたまるため、万一、火事にでもなったら大変です。それが、気が気でなりませんでした。義母が再び1人暮らしをするのは難しいことが見えていましたし、何か起きる前に生前贈与をしてもらうなどして、売却しようと考えたのです」
■空き家の管理について
家は住人がいるからこそ、きれいに保たれるもの。何らかの事情で空き家になった物件を放置すると、地域にさまざまな悪影響が出ます。例えば木造住宅が経年劣化すれば、災害時に倒壊する可能性が。それにより所有者が責任を問われるケースがあります。また第三者の不法占拠が容易になるため、犯罪リスクが高まるだけでなく、ごみを不法投棄されたり雑草が伸びたりすると、異臭や害虫が発生しやすくなるでしょう。庭の手入れや・害虫の駆除・ときどき家に風を通して痛みを防ぐなど、しっかりした管理が必要です。
まずは不動産の勉強会に参加し、生前贈与に関するアドバイスを受ける
ご夫妻で事業を営み、さまざまな取引先かか関わってきたHさん。とりわけ不動産会社とは慎重につき合いたいと思っていたことから、まずは信頼できる業者を見つけるべく下調べをはじめます。

「ネットでも調べましたが、安易に見つけた不動産会社と接触すると、良いことばかり言われそうで。日ごろより知っている媒体から情報を得るのが確かだと思いました。そんなとき、いつも見ているフリーペーパーで『5社一括で査定できる』という記事を見つけたのです。時間を置いていると2カ月に1回のペースで同じ企画が載っているとわかり、常に窓口があることに安心して相談してみることにしました」
そこでHさんは、勧められた不動産の勉強会に参加することにします。
「会場で司法書士から『生前贈与だと義母に対してこまごまとした確認作業が出て、本人はもちろん私たちにとっても負担になる』とアドバイスを受けました。それで引き続き、家を空けておくしかなかったのです。 留守にしている間は週1回ほど物件を訪れ、親切心から落ち葉の掃除をしてくれているご近所に御礼を言ったり、室内の空気を入れ替えたりして管理・維持していました」
こうした経緯を挟み、Hさんは義母が他界した翌年の2019年から売却活動に入ります。
一括査定を依頼したすべての不動産仲介会社を訪ね、信頼性を見極める
Hさんは、まず一括査定サービスを利用し、5社に簡易査定してもらうことに。早速、1社目の不動産仲介会社(B社)から連絡が入ります。
「そこで出された見積もりは8500万円。残りの会社も100万円程度の開きがあったものの、すべて同等の価格でした」
さらにHさんは直接、各社の営業所を訪ね、担当者と面会したといいます。
「不動産の売却は、数千万単位の大きな取引です。たとえ大手だとしても、最後に明暗を分けるのは担当者でしょう。信用できる人かを入口の段階で見極めることが、一番、大事だと思ったのです。 判断のポイントは、何か聞いたときの対応力。すぐに返答できないような方は、どうしても頼りなさを感じ、お断りしました。
その点B社は、一番乗りで連絡をしてきた迅速性はさることながら、一つひとつの疑問に速やかに受け答えできるところや、一貫して落ち着いた態度であったことから誠実な担当者だと感じ、心が定まりました」
その後、B社に促されて土地と建物の名義変更をしたHさん。2019年6月に一般媒介契約を交わします。
「以前の住まいもマンションで、売却した経験があるのですが、そのとき依頼した不動産仲介会社から『専属専任媒介契約でないと力を注げません』などと言われ、関係性に不自由さを覚えたことがあります。そのため今回は一般媒介契約にしたのです」
すぐに見込み客が名乗りをあげ、値下げ交渉もなくスムーズに売却
「一般媒介契約だと『営業活動報告書』が義務づけられていないデメリットがありますが、媒介契約をする前に、担当者にとことん質問をぶつけて『この人なら大丈夫』と見定めていたので、心配はなかったです。一旦、契約したら細かいことは言わず、すべてをお任せしました。
この姿勢だと逆に責任を感じるのか、担当者は折に触れて連絡をしてきたり、何度も家に足を運んでくれたり。熱心に対応していただきました」
はじめは9000万円と強気に設定するのも手だと聞いたHさんですが、早期の売却を望んでいたため、家財を残したままにする代わりに査定額から100万円を下げた8400万円で売り出します。
「価格が決まってすぐB社から『不動産ポータルサイトで情報をオープンにする前に、思いあたる買主候補がいるので声をかけていいですか』と言われました。
そして2週間ほど経ったある日『決まりそうです』と電話が。1週間後に内見してもらうことになりました」
その後、内見を終えた買主の候補者から購入したいと申し出があります。
「もともと親の遺産ですし、高値を狙うつもりは一切ありません。ただ、ひたすら気がかりだったのは、長く空き家にして、お世話になった近隣の皆さんに不利益を被らせないかということ。そうした中、本来なら解体費用分を値引き交渉されてもおかしくないのに、売り出し価格のまま買い取ってもらえて、すぐに管理を引き継げるのです。
『これ以上の条件はないでしょう』と担当者から太鼓判を押されましたし、迷うことはありませんでした」
Hさんは2019年6月、売買契約を結びます。
最初の担当者選びが成功の秘訣。ご近所への責任を果たせて満足
一連の売却活動をHさんはこう振り返ります。
「『この条件なら売れないことはないでしょう』と最初に各社から聞いていたものの『こんなに早く売れるのか』と信じられない気持ちでした。3年以上、誰も住んでいない物件を気にかけていたので、売却できたときは、やっと終わったと心から安堵。『立つ鳥跡を濁さず』ではないですが、トラブルが起きないうちにスムーズに引き渡せて本当に良かったです。
これもすべてにおいて誠実に対応してくれた、B社の担当者のおかげでしょう」
ご近所への責任を果たせて安心したと、笑うHさんでした。
| 2017年5月 | ・古家付き土地の売却を考えはじめる |
|---|---|
| 2017年11月 | ・不動産の勉強会に参加する |
| 2019年2月 | ・一括査定サービスを使って簡易査定をする ・B社で訪問査定をする ・土地と建物の名義変更に取りかかる |
| 2019年6月 | ・B社と一般媒介契約を結ぶ ・購入者が現れる ・買主と売買契約を結ぶ ・古家付き土地を買主に引き渡す |
まとめ
- 売却について不明点がある場合は、不動産会社の担当者に確認するのはもちろん、勉強会に参加したり、司法書士など専門家からのアドバイスも参考にしよう
- 売却の明暗を分けるのは不動産仲介会社の担当者。媒介契約をする前に信頼を見極めよう
- 家財の処分が困難な場合、荷物を残したままにする代わりに、価格を下げて売り出すのも手
取材・文/星野 真希子 イラスト/石山好宏


