空き家の売却や活用には「解体」を要するケースもあります。しかし、空き家の解体には、数十万円から数百万円の費用がかかることから、解体費用を支払えないこともあるでしょう。
そこで本記事では、空き家の解体費用を捻出する方法と空き家を解体せず売却・活用する方法を解説します。
記事の目次
空き家の解体費用の相場
空き家の解体費用は、おもに下記のような要素によって決まります。
要素 | 具体的な要因 |
---|---|
立地 |
|
建物の構造 |
|
広さ |
|
廃棄が必要なものがあったり、下記のような廃棄に特別な費用がかかる建材が使用されていたりする場合は、追加で費用がかかります。
- アスベスト
- PCB(ポリ塩化ビフェニル) など
解体費用の目安
解体費用は物件の条件によって変わってきますが、価格に大きく影響するのは建物の構造と広さです。木造であれば坪単価は3〜5万円ほど、鉄骨造は4〜6万円ほど、RC造は6〜8万円ほどが相場です。
建物の構造 | 坪単価 | 解体費用の目安 |
---|---|---|
木造 | 3万~5万円/坪 | 30坪:90万~150万円 50坪:150万~250万円 |
鉄骨造 | 4万~6万円/坪 | 30坪:120万~180万円 50坪:200万~300万円 |
RC造 | 6万~8万円/坪 | 30坪:180万~240万円 50坪:300万~400万円 |
なお、次の見出しで説明しているように建物の構造と広さ以外にも立地条件によっては価格が大きく変わる場合があるので、注意しましょう。
追加費用がかかる例
空き家の立地や状況によっては、追加の費用がかかる可能性があります。
追加費用がかかるのは、下記のように一般的な解体作業と比べて時間や手間、人手を要する場合や廃材の処分に費用がかかる場合です。また、住宅密集地などでは厳重な防音対策が必要なため、養生にかかる費用が上乗せされる可能性もあります。
- 接道が狭く、重機やトラックが入れられない
- 建物が隣地から近いため一部、重機やトラックを入れられない
- 防音性能の高い養生シートまたは防音パネルを使用する
- 接道の交通量が多く、交通整理が必要
- すでに倒壊していて危険が状態
- 建材に特別な処分費用がかかるアスベストが含まれる
- 庭木や残置物、埋設物が多い
- 近隣施設の影響で作業可能な時間に制限がある
自力での解体はおすすめできない
費用を抑えるために、自分の家の解体を自分で行うこと自体は法的に問題ありません。しかし、重機を使用するには免許が必要です。また、手作業での解体となれば時間がかかることに加え、事故や近隣トラブルにもつながりかねません。
古い家屋には、建材に有害物質であるアスベストが使用されていることも少なくありません。アスベストが使用されている建物を解体する場合は、工事開始の14日前までに都道府県に届け出が必要です。(アスベストレベル1・2の場合、レベル3はこの限りではない。※)隔離など、正しい方法で解体作業が実施されない場合は、罰則の対象にもなります。事故やトラブル、健康被害を避けるためにも、やはり解体業者に依頼することをおすすめします。
※2024年11月8日時点
【解体する場合】空き家の解体費用を捻出・節約する方法
解体費用は、決して安いものではありません。しかし、空き家の解体費用は次のように捻出、または節約する方法ができます。
1.補助金を活用する
空き家問題は深刻化しており、老朽化した空き家や適切に管理されていない空き家は急増しています。空き家の増加は周辺地域にも悪影響を及ぼすため、一部の自治体では地域の安全や景観を守ることを目的として空き家の解体費用を助成しています。
自治体 | 主な要件(他適用要件あり) | 補助額 |
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北海道網走市 |
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補助率:補助の対象となる経費の2分の1以内(1000円未満切り捨て、税込) 補助額:補助の対象となる家屋の1に該当する場合50万円・補助の対象となる家屋の2に該当する場合、30万円 |
東京都墨田区 | 老朽建物等が、住宅地区改良法に規定する「不良住宅」に該当する場合 | 除却工事費の2分の1で、上限50万円 (無接道敷地に存する不良住宅については上限100万円) |
神奈川県横須賀市 | 横須賀市内にある空き家で、次の項目全てに該当するもの
|
解体工事費用の2分の1(ただし上限金額35万円) |
兵庫県神戸市 | 「1981年(昭和56年)5月31日以前に着工した建物で腐朽・破損のある空き家」を解体する場合 | 解体工事に要した費用の3分の1以内かつ上限60万円(1件あたり) |
大阪府東大阪市 | 空家等対策の推進に関する特別措置法第2条第2項に規定する「特定空家等」 | (1)から(3)で算定した額のうち、最も低い額 (1)補助対象空き家の解体に要する費用【業者見積額】(税抜)×補助率(5分の4) (2)補助対象空き家の延床面積[㎡]×単価1万2000円 (3)補助限度額 50万円/棟 |
上記は、空き家の解体に補助金を交付している自治体の一例です。適用要件は自治体によって異なり、建築時期を限定している自治体もあれば、状態の悪い空き家限定としている自治体も見られます。解体の前に申請しなければならない可能性もあるため、空き家の解体をする際には事前に自治体の補助金制度を確認しましょう。各地方自治体のホームページをチェックしたり、役所の担当部署に出向いたりすることで確認できます。
2.解体ローンを利用する
解体費用をすぐに捻出できない場合は「解体ローン」を利用することも検討してみましょう。解体ローンとは、その名のとおり家屋の解体費用の融資です。
近年は空き家が増加していることもあって「空き家解体ローン」という名称の融資商品を提供している金融機関や、自治体と提携して融資している金融機関も見られます。解体ローンの多くは、住宅ローンのように担保や保証人を求められません。
3.売却益で解体する
空き家の売却が前提となる選択肢ですが、売却益を解体費用に充てるという方法もあります。
解体せずに空き家のまま売却できるのが一番ですが、老朽化していたり、築年数が古かったりする空き家は解体しなければ売れない可能性があります。売買契約後、引き渡し前に解体する「更地渡し」という売却方法を選択すれば、売却益を解体費用に充てることも可能です。
4.家具や家電を処分しておく
解体する空き家にものが残っていると、撤去費用を請求されることがあります。所有者が不用品を処分すれば一般ゴミとして排出することができますが、解体業者が処分する場合は産業廃棄物になってしまうため処分費用が割高になってしまいます。
撤去費用を抑えるためにも、解体前に家具や家電を処分しておくことをおすすめします。リサイクルショップなどを利用すれば、思いもよらない金額で買い取ってもらえるものもあるかもしれません。
【解体しない場合】空き家を解体せずに済ませる方法
活用や売却に際して、必ず空き家を解体しなければならないわけではありません。場合によっては、解体しない方法が最適な解決策となることもあります。ここでは、空き家を解体せずに活用・売却する方法を解説します。
1.建て直さずに有効活用する
土地の活用が目的の場合は、空き家を建て直さずに有効活用する方法もあります。
例えば、空き家を建て直して賃貸物件として運営することを考えているのであれば、リフォームして活用できないか検討してみましょう。建物の状態にもよりますが、解体費用よりリフォームするほうが安価になる場合もあるかもしれません。
他にも、建て直さずに活用する方法として、空き家の良さを活かした古民家カフェや民泊などが挙げられます。
2.建物を地主に買い取ってもらう
空き家のある土地が借地で、契約終了にあたり空き家を取り壊す必要がある場合は、地主に買い取ってもらえないか打診してみましょう。契約終了に至った経緯によっては「建物買取請求権」により建物を地主に買い取ってもらえることがあります。
建物買取請求権が行使できるのは、借地権の存続期間が満了し、地主が正当事由を理由に契約の更新を認めないときです。ただし、定期借地権の「一般定期借地権」と「事業用定期借地権」の借地人には買取請求権がありません。
「請求権」とはいえ、借地人が権利を行使すれば地主は買取を拒否することはできず、空き家を解体する場合も地主が費用を負担します。
3.建物を残したまま売却する
土地の売却が目的の場合は、建物を残したまま売却できる可能性も模索してみましょう。需要の高いエリアであれば、少々築年数が古くても買い手がつく可能性は十分あります。
また、そのままでは住めない状態の空き家も、不動産業者が買い取ってくれることもあります。解体せず「古家付き土地」として売り出す方法も取れるため「このままでは需要がない」「解体しないと売れない」という先入観だけで判断しないことが大切です。
解体費用を支払えないまま空き家を放置するリスク
解体費用が支払えないからといって、空き家を放置することはおすすめしません。それは、次のようなリスクがあるからです。
1.近隣トラブルが起こる
空き家を放置すると、異臭や害虫の発生により、近隣住民に迷惑がかかってしまう場合があります。また、老朽化による倒壊で、通行人や近隣の方の資産に被害を与えてしまうリスクもあります。
家屋のみならず、ブロック塀や擁壁などの崩壊も危惧されます。草木が伸びて隣地に越境してしまった場合も、トラブルの芽になりかねません。
土地や空き家が相続の対象である場合は相続放棄という選択もありますが、管理義務まで免れるかどうかは状況によるため注意が必要です。
2.維持費がかかる
近隣トラブルを避けるには、空き家を適切に維持・管理しなければなりません。空き家の劣化を防ぎ、清潔に保つには、定期的な清掃や草木の剪定(せんてい)などが必要です。
空き家が遠方にある場合は、往復の交通費も出費としてかかってしまいます。また。空き家の管理は専門業者に委託することもできますが、月に数千円から数万円の委託費が発生します。固定資産税や都市計画税もかかりつづけるため、空き家の維持・管理には相応の費用が必要です。
3.税負担が増える
住宅が立っている土地は「住宅用地の特例」の適用により、固定資産税・都市計画税が減額されている状態です。空き家であっても、基本的には住宅用地の特例が適用されます。
固定資産税課税標準額 | 都市計画税課税標準額 | |
---|---|---|
小規模住宅用地(200m2以下の部分) | 1/6 | 1/3 |
一般住宅用地(200m2超の部分) | 1/3 | 2/3 |
しかし、空き家の管理を怠ってしまうと、自治体から「特定空き家等」に指定され、住宅用地の特例の適用が除外されるというペナルティーによって税額が跳ね上がってしまうおそれがあります。
特定空き家等に指定されないようにするためにも、やはり適正な維持・管理が求められます。誰も住んでいないのであれば、できるだけ早く解体するか、手放すべきだといえるでしょう。
売却が目的なら不動産業者に相談するのがおすすめ
空き家のある土地の売却が目的の場合は、解体する前に不動産会社に相談するのがおすすめです。更地のほうが買い手がつきやすい傾向にあるものの、空き家の解体にかける費用だけ値引きすれば、そのままの状態でも売却できる可能性があります。また、不動産業者に買い取ってもらうという選択肢もあります。
独断で解体することは避け、まずは一括査定を依頼してどの不動産会社に相談するか検討しましょう。SUUMOの一括査定なら、大手から地元密着の中小まで、幅広い不動産会社に査定依頼が可能です。
空き家の解体費用が支払えないとしても、補助金やローンを活用したり、売却により費用を捻出したりすることで解体できる可能性があります。また、空き家を解体せずに売却・活用することも可能です。売却目的で解体を検討している場合は、一括査定を利用して複数の不動産会社に相談することをおすすめします。
●監修
髙野雅代/有限会社髙野興業
有限会社髙野興業の専務取締役。解体工事施工技師および一級土木施工管理技士の資格を持ち、解体業界で23年の経験を積む。また、有限会社髙野興業は創業35年以上で茨城県筑西市に会社を構える解体工事業者。納屋や木造、RC造、鉄骨造一般住宅などの解体工事や改修リフォーム工事に伴う内装解体を行う他、ダンボール・古紙回収などの資源リサイクルを行う古紙回収業も展開している。筑西市を中心に約200社と取引があり、茨城県内の現地調査は無料で行っている。
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