不動産売却の基礎知識や知っておきたいコツを分かりやすく解説します。売却の体験談もご紹介。

老朽化してきた築20年の一戸建てを、計画を立てて査定価格より約100万円高値で売却/埼玉県所沢市Kさん(50代)

埼玉県所沢市Kさん(50代)/老朽化してきた築20年の一戸建てを、計画を立てて査定価格より約100万円高値で売却

築20年の一戸建てに妻と2人で住んでいたKさん(50代)は、家が老朽化してきたこと、月々のローン返済が負担になってきたことから住み替えを決意。信頼できる不動産会社一社に絞り込み、売却活動から新居購入までを託し、3カ月で一連の計画を達成しました。

不動産区分 一戸建て
所在地 埼玉県所沢市
築年数 築20年
間取り・面積 4LDK(72m2
ローン残高 1340万円
査定価格 1300万~1350万円
売り出し価格 1580万円
成約価格 1460万円

子どもが独り立ちしたのを機に、20年住んだ家の売却を決意

2001年、妻とお子さんの3人で暮らしていたKさんは、所沢市の住宅街にある建売住宅を新築で購入しました。4LDK・72平米で、最寄駅まで徒歩約10分。すぐ近くにスーパーやホームセンター・郵便局があり、利便性は上々でした。それまでは賃貸に住んでいましたが、「子どもが成長して部屋が手狭になってきたこと」「毎月、高い家賃を払うなら、ローン返済に充てて自分の資産にした方がよい」と思ったことが購入の動機だといいます。価格は2560万円で30年の住宅ローンを組みました。

その後、不満を抱えることなく暮らしていたKさんですが、20年ほど経った2020年ごろから売却を考えるように。
それには2つの理由がありました。

「ひとつは転職したことで収入が減り、月々の返済が少しきつくなってきたこと。2つ目は住宅の劣化が目立ってきたことです。
この先、ますます老朽化が進めば、リフォームは避けられないでしょう。
丁度、子どもが独り立ちして今の場所にこだわる必要がなくなった時期でしたし、であれば修繕に費用をかけるより、郊外の手頃な中古物件に住み替え、支出を抑えるのが得策だと思ったのです」

■ローン残債がある物件を売るときの注意点

住宅ローンが残っている物件を売却する場合、引き渡し時までにローンを完済し、家の抵当権を抹消することが必須。そのため、まず「残債がいくらあるのか」「いくらで売却できそうか」を把握し、返済の見通しを立てることが重要です。仮に売却できたとき「不動産売却益」がローン残高を上回ればよいですが、下回り、ローンを完済できなければ、自己資金で賄うことに。自己資金を用意できない際は、金融機関で「住み替えローン」を利用する手などがあるものの、審査が厳しく、金利も高い傾向にあるため慎重に進める必要があります。

一括査定サービスの利用から、流れるように仲介契約まで話を進める

とはいえ、ぼんやりと思っただけで、まだ売却活動には本腰ではなかったKさん。しかし、あることをきっかけに一気に話が進み出します。

「ある日、ネットで調べものをしていると、一括査定サイトがヒットしました。興味半分で情報を入力したところ、すぐに不動産仲介会社のA社とB社から電話があり『一度、お話を聞かせてくれませんか』と。流れに任せて査定をお願いしました」

簡易査定の結果は、A社が1350万円、B社が1300万円。
Kさんは、レスポンスが早くて対応も丁寧だったA社に訪問査定を依頼します。

「その時点でローン残高が1340万円あったのですが、A社から『売却金額で全額返済することを目指して査定価格よりも高く売り出しましょう』と提案され、さらに新居探しや資金計画の相談にも乗ってもらえることになりました」

Kさんにとって、売却はまったくの未知の世界。
「安心して託せる」と感じたことから、2021年5月、A社と媒介契約を交わします。

「媒介形式にはとくにこだわりはなかったので、A社に勧められるがまま『専任媒介契約』を選びました」

査定価格より約230万円高く売り出し、気長に待ち続ける日々

Kさんが取った方法は、売却先が決まってから新居を探す「売り先行」。
「売却が決まった後、仮に住み替え先が上手く見つからなければ、賃貸住宅に仮住まいすればいい」と思ってのことでした。

とくにリミットがなかったこともあり、A社はKさんに次のようなアドバイスをします。

「物件は所沢市の中でも人気エリアにあるので確実に売れるはず。であれば、後々値下げすることにして、最初は高値を狙って強気の価格でいきましょう」

そこで査定価格より約230万円高い、1580万円で売り出しをスタート。
A社では自社のホームページと不動産ポータルサイトに物件情報をアップします。

しかしメールで2週間に1度、A社から「営業活動報告書」を受け取るようになったものの、問い合わせが数件あっただけで、目立った動きはありません。

「『最悪、売れなければこのまま住み続けてもいい。ダメでもともとかな』と思っていたため、焦ることはありませんでした」

販売スタートから4週間後、気長に待っていたKさんのもとにA社から連絡が入ります。

「内見の希望者が、個人と業者で各1組、現れたとのこと。長期戦になると思っていたので驚きました」

2カ月以内の退去と120万円の値下げに応じ、買取再販目的の業者に売却

そして迎えた内見当日、個人客には断られたものの、業者の方は、「20年住んでいた割には状態がいい。多少のリフォームで買取再販できるだろう」と好感触。
数日後、A社経由で購入の意思が示されました。
ただ、2つの条件があったと言います。

「価格を120万円値下げし、かつ2カ月以内に退去して欲しいとのこと。
正直、それまで売れるか半信半疑だったので、手放すのが寂しくもありましたが、当初の査定価格より約110万円も高く売れるのは、願ってもないこと。
2つ返事でOKしました」

Kさんは1カ月で新居を見つけ、7月に退去しました。
2021年8月に買主と1460万円で売買契約を交わし、同月に物件を引き渡します。

新居はのどかな郊外にある広々とした家。月々の返済額も減って大満足

Kさんの新居は、同じ埼玉県所沢市にある築25年・1100万円・4LDK・88平米の物件。
リフォームを入れるため、一時、賃貸住宅に仮住まいしましたが、2021年10月に無事、引っ越しを済ませました。

「不動産売却益でローンを完済できた一方で、リフォーム代の360万円をプラスした1460万円で新たにローンを組むことになりました。
金額的には以前のローン残高より高くなりましたが、かつての家をリフォームして住むよりは価格を抑えられたでしょう。月々の返済額も3万円下げられ、負担が減ったので満足しています。
今は最寄り駅まで車で約30分かかりますが、マイカー通勤なので不便はありません。
周辺に家が少ないため、近所に気を使うことなくゆったりと過ごせていますね」

嬉しそうに話すKさんは、売却活動をこう振り返ります。

「A社は些細な質問でも迅速に答え、事あるごとに状況を教えてくれました。そして狙い通り、相場より高値で売却。
上手くいかなかったときの事態をもっと考えるべきだったかもしれませんが、結果オーライです。
余計な口出しをしなかったことも今回良かったのかなと。ともあれA社と出会えたことが、一番の秘訣だったと言えるでしょう」

「点数をつけるなら10点中10点」。そう言って満面の笑みを見せるKさんです。

住み替え先の一戸建てで充実した生活を送るイメージ

2021年4月 ・一戸建ての売却を考え始める
2021年5月 ・A社・B社で簡易査定をする
・A社で訪問査定をする
・A社と専任媒介契約を結ぶ
・物件を1580万円で売り出す
2021年6月 ・購入者が現れる
2021年7月 ・住み替え先を決める
・賃貸住宅に仮住まいする
2021年8月 ・買主と1460万円で売買契約を交わす
・一戸建てを買主に引き渡す
2021年10月 ・住み替え先に引っ越す

まとめ

  • 媒介契約をする不動産会社は、レスポンスが早くて対応が丁寧なところを見極めること
  • 住み替えを伴う場合、「売り先行」で進めた方が、資金計画が立てやすい
  • 時間に余裕があるときは、ゆくゆくは値下げすることも想定して相場より高く売り出すのが得策

取材・文/星野 真希子 イラスト/杉崎アチャ

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