東京都に住むTさんは、両親が住んでいた広島県広島市の一戸建てを相続しました。遠隔地の維持管理や固定資産税などのリスクから売却を決意。一括査定で返事があった地元不動産会社に、抱えていた相続上の不安点を相談したところ、親身に対応してくれたことから仲介を一任。東京と広島という遠距離でしたが、わずか2週間で想定価格のほぼ上限で売却することができました。
不動産区分 | 一戸建て |
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所在地 | 広島県広島市西区 |
築年数 | 約24年 |
間取り・面積 | 4LDK(延床面積…約172.76m2、敷地面積…242.82m2 |
ローン残高 | なし |
査定価格 | 2980万円〜3280万円 |
売り出し価格 | 3280万円 |
成約価格 | 3210万円 |
遠隔地の一戸建てを相続したものの、将来住む可能性もなく売却を決意
東京都在住のTさんは、2019年に父が住んでいた広島市西区の一戸建てを相続しました。
もともとTさんの実家は広島市内の別の場所だったのですが、両親が生前、土地の半分を売却し、その売却益で残り半分の土地にマンションを建設。マンションは兄が引き継ぎ、両親は広島市内の郊外に一戸建てを建てて住んでいたそうです。
両親共に亡くなり、マンションを兄が、一戸建てを弟であるTさんが相続しました。
「相続したものの私は東京に住んでおり、老後も広島に帰る可能性はほぼありません。毎年固定資産税もかかりますし、広島に住む兄に家の中を時折見てもらうのも心苦しいので、売る決心をしました」
相続した家は広島市の中心部から少し離れた山間に広がる新興住宅街。すでに引退していた父が「のんびり暮らせる」という理由で購入した一戸建てです。
「自然が豊かで静かな環境ですが、買い物施設のある駅前にはバス便で10分程度かかります。今後仮に私が広島に戻るとしても、ここに住むのは不安です。実際、最後まで住んでいた父も日々の買物などは困っていて、兄が週1回は訪れて世話をしていました。のびのび生活できる環境なので子どもがまだ小さいファミリー世帯にはいい場所だと思いますが、高齢者が住むには不便だと感じていました」
一括査定で返事のあった地元不動産仲介会社の誠実な対応に、仲介を一任
売却を考え始めたTさんが2021年2月、ネットで一括査定を行ったところ、地元不動産仲介会社1社だけから返事がありました。
「査定額は2980万円〜3280万円でした。その会社と連絡をとり、早速売却活動を進めようと思っていたのですが、実はその直後、相続に関して兄と少しトラブルになりかけたんです。そこで不動産仲介会社に相談してみたところ、その会社は税理士や弁護士に聞いてくれ、親身にアドバイスしてくれました。1円にもならないのにとても誠実に対応してくれたと思います」
幸い兄とは大きなトラブルに発展せず、丁寧に助言してくれた地元不動産仲介会社を心から信頼できると感じたといいます。知らない不動産仲介会社だったので、地元の学生時代の友人にも評判を尋ねてみたところ、特に悪い情報はありませんでした。
1年後の2022年2月、本格的に売却活動をスタートさせることになったTさん。「他の不動産会社は全く考えていなかった」ため、専属専任媒介契約を結び仲介業務を依頼。売り出し価格は3280万円からスタートしました。
「地価の状況が1年前と変わっていないので、査定額は同じということでした。数百メートル離れたバス通り沿いにある物件が2270万円で売買された実績があり、私の家はバス通りから少し奥まっているので、少し高く売れるだろうとのことでした。1年前に査定時の提案価格が2980万円〜3280万円、近隣実例からみた成約想定価格が3070万円。売り出し価格は上限からいこうということになり、3280万円で開始しました」
内見希望書が次々と現れ、2週間後に買い手が決まる
ネットに物件情報を公開すると、2週間で5件ほどの内見者がありました。
「両親の荷物がたくさん残っているので、どうしたらいいか不動産仲介会社に相談したところ、公開した瞬間に引き合いのありそうな物件なのでありのままを見てもらいましょうとアドバイスを受けました。私は東京で仕事もあるので内見に同行はしませんでしたが、2週間後に2組から購入希望の申し入れがありました。2組のうち、より高い3210万円を提示してきた方に売却することを決めました」
公開後わずか2週間で売り出し価格から70万下げた額で売却を決めたTさん。価格を下げずにもう少し売り出しを続けようとは考えなかったのでしょうか。
「個人の方や不動産会社の方が見学に来られましたが、結局、売ることにしたのは不動産会社です。『古い家は当社で取り壊し、土地を二分割してファミリー向けに売り出す』というお話でした。家の取り壊しの費用を私が負担する必要がないこと、個人よりも不動産会社の方が売却後のトラブルの心配がないだろうと考えたことから、この価格での売却を決めました。
広島から東京に出てきた同窓生で、地元の不動産を売却した経験のある友人から、長丁場を覚悟した方がいいよと言われていたことも売却を後押ししました」
信頼できる地元不動産仲介会社との出会いが遠隔地の売買の成功のポイント
東京と広島という遠隔地での売却活動を終えたTさん。想定価格のほぼ上限で、しかも家を取り壊す料金の負担もないという条件で買い手がついたことに、とても満足していると言います。
成功のポイントについて「地元の信頼できる不動産会社と知り合えたこと」を挙げました。
「大手の会社の方が信頼できるという考え方もありますが、離れた場所の物件を売却するには地元に根を張った不動産仲介会社の方がスムーズだと感じました。私の場合、たまたま知り合った会社がとても誠実でした。広島には荷物の仕分けに一度訪れましたが、それ以外は購入者との書類の受け渡しに出向いただけです。売却で得た資金は全て貯金に回し、将来最後のすみかを探すときの費用になると思います。本当に100点の売却活動でした」と笑顔で語ってくれました。
2021年1月 2021年2月 |
・売却を意識し始める ・簡易査定を受ける |
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2022年2月 | ・現地査定を受ける ・専属専任媒介契約を結ぶ ・3280万円で売り出し ・購入希望者が現れる |
2022年3月 | ・3210万円で売買契約を結ぶ |
まとめ
- 遠方からでもスムーズな不動産売却は可能。信頼できる不動産仲介会社を見つけることが成功のポイント
- 知見のない不動産仲介会社の場合、地元での評判を知人に尋ねたり、電話やメールの対応が誠実かどうかを確認するなどして信頼できる会社か、自分に合うかどうかなどを見極めよう
取材・文/浅野真由美 イラスト/杉崎アチャ