
夫の実家の敷地に家を建て、夫婦2人で暮らしていたMさん。介護していた義母が亡くなり、地方での仕事に不安を感じていたことから、土地と建物を売却し、東京近郊へ移住しようと決意しました。
| 不動産区分 | 一戸建て |
|---|---|
| 所在地 | 長野県松本市 |
| 築年数 | 約4年 |
| 間取り・面積 | 3LDK(約100m2) |
| ローン残高 | 1450万円 |
| 査定価格 | 3600万円 |
| 売り出し価格 | 3680万円 |
| 成約価格 | 3650万円 |
義理の母が亡くなったのをきっかけに、転職と都会への移住を決意
2015年、夫の実家がある長野県松本市の敷地に約100m2、3LDKの注文住宅を建て、夫と2人で住んでいたMさん。立地は、駅から徒歩15分圏内と利便性のよい場所。寒冷地ゆえ、床下エアコンから各部屋に暖気を送る空調システムを導入しており、開放的な吹き抜けでも一年中快適に過ごせていたそうです。また、晴天率が高い土地柄、単価の高い産業用太陽光発電システムを設置。多い月では売電収入が4万円ほどになったと言います。
それほど気に入っていた住まいでしたが、売却を考えたのは、夫の母が亡くなったのがきっかけでした。「高齢の義母は同じ敷地にある築50年ほどの実家にひとりで住んでいて、私たち夫婦で介護をしながら生活していました。その義母が2019年に亡くなり、自分たちのこれからのことを改めて考えたとき、地方での生活に不安を感じたのです」。 東京出身のMさんにとって松本市での暮らしは、物価は都内とさほど変わらないのに対し、収入面では厳しいと感じることが多かったと言います。「同じような仕事内容でも、地方と都内ではやはり都内の方が求人も多いし、待遇面にずいぶん差があるのです。そこで、仕事の選択肢が多い都会に移住しようと夫と決めました」
Mさんの夫はそのとき50代半ば。転職するにはタイミング的にも今しかないという結論に達しました。売却するのは、土地約250m2とMさん夫婦の家、義母が住んでいた家の計2棟。Mさんの家のローン残債は1450万円でした。

長年近所付き合いのある土地。価格や期間よりも、信頼できる人に買ってほしい
不動産情報サイトの一括査定は、勧誘の電話があるのではと思い、利用したくなかったというMさん。地元で見知った不動産会社と、友人から紹介してもらった不動産会社の2社に査定を依頼しました。
前者は会社に出向いて相場を聞いたところ、3200万円の簡易査定額がつきました。後者は訪問査定の結果、空調システムや太陽光発電の設備が評価され、査定額は3600万円。築年数の古い実家のほうはほぼ価値はないとのことでしたが、「賃貸に出すこともできるので、買い手の方の要望を聞いて進めましょう」ということに。「契約内容についても詳しく説明してくれて、とても納得できたので、後者の不動産会社に専属専任媒介でお願いしました。担当者の人柄も親しみやすく、『早く決めて』など急かされることもなく、安心できました」
2019年6月、販売活動スタート。3500万〜3800万円で売れたらいいなと考え、売り出し価格は間をとって3680万円に決めました。「時期としては、年内には決めたいと思っていました。ただそれよりも、安心できる方に売りたい。家に愛着もありますし、なにより夫の実家の土地で、昔からの近所付き合いもあります。ご近所にご迷惑をかけないためにもきちんとした人に買っていただかなくては、という責任感のようなものを感じていました」
広告掲載から10日後に早くも売却決定。そこから住み替え先を探し始める
まずは物件ポータルサイトに載せ、少ししたら地元のタウン誌にも広告を出しましょうと話していた矢先のこと。2人から問い合わせがあり、うち1人が先に内覧することに。「まだ若い方で、将来を見据えて広めの一戸建てに住みたいとのことでした。サイトには空調システムや産業用太陽光発電の件などを記載してくれたので、そこにも興味をもってくださったようです。内覧の際も、ただ見るだけではわからないので、その点はしっかりとアピールしました」。内覧後、その方からさっそく買いたいという申し出が。サイト掲載後10日ほどのことでした。
売買契約を結んだのは7月。即決してくれたことから、売却価格は30万円下げてキリよく3650万円としました。ただし、Mさん夫婦の住み替え先がまだ決まっていなかったため、ローン減税を利用したいという購入者の希望ともすり合わせ、引き渡しは12月に決めました。
「思ったより早く売却が決まったので、そのあとから本格的に新居探しを始め、10月、川崎市に希望の新築マンションが見つかりました。ただ当時は夫の仕事が決まっていなくて、ローンが組めない状態でした。実は翌年4月になれば相続で私のほうにお金が入ることになっていたので、10月に手付金を支払い、12月に東京に引っ越し、賃貸住宅での仮住まいをスタート。4月になって残金を払うことで、ローンを組まずに無事購入することができました」
■古家付き土地の売却
古家付き土地を売却する際、買主が解体を希望した場合は、売主と買主どちらが解体費用を負担するか、交渉になることがあります。買主側で解体を行う場合は、その分の費用を値引きしてほしいと言われることも。どちらが行うにしても、解体費用はその物件の広さ・構造・立地などにより異なります。予期せぬ出費やトラブルを防ぐためにも、見積もりをとるのがおすすめです。Mさんのように、買主側で再利用するケースもあるので、自分の物件にどんなニーズがありそうか、仲介会社と相談するのがよいでしょう。
仮住まいの期間は発生したものの、満足できる売却活動ができた
約4カ月間の仮住まいにも出費がかさみ、住み替えはスムーズにはいかなかったと話すMさんですが、売却活動自体はおおむね満足だったと振り返ります。「義母が住んでいた家も、取り壊したいから費用を出してくれと言われたらどうしようかと思っていたのですが、結局そのままで引き渡しました。夫が生まれ育った土地も、注文住宅で建てた家も、それぞれに思い入れがつまっていたので、私たちの気持ちまで一緒に引き渡すようなものでした。それも含めて気に入ってくださった方に住み継いでもらえて、よかったなと思っています」
お墓参りで帰省する際は、以前の住まいの前を通っては懐かしんでいるというMさん夫婦。都会での仕事も順調に決まり、充実した日々を送っているそうです。
| 2019年4月 | ・自宅の売却価格査定 |
|---|---|
| 2019年5月 | ・地元の不動産会社と専属専任媒介契約を結ぶ |
| 2019年6月 | ・3680万円で売り出し ・購入希望者が現れる |
| 2019年7月 | ・3650万円で売買契約を結ぶ |
| 2019年12月 | ・物件を引き渡し |
まとめ
- 産業用太陽光発電などの設備は、広告でも積極的にアピール
- 査定額がつかない付属の築古住宅は、賃貸に出すこともできると提案。買主の意向を聞いて考えよう
- 仮住まい期間を極力少なくすべく、引き渡し時期は交渉を
取材・文/塚田真理子 イラスト/沼田光太郎


