不動産売却の基礎知識や知っておきたいコツを分かりやすく解説します。売却の体験談もご紹介。

子どもの小学校入学前に、マンションを売却して一戸建てに買い替え/神奈川県川崎市中原区Nさん(40代)

神奈川県川崎市中原区Nさん(40代)/子どもの小学校入学前に、マンションを売却して一戸建てに買い替え

Nさんが以前住んでいたのは、神奈川県川崎市の築23年3LDK・約68m2のマンション。アクセスの良さや活気ある商店街があるといった住環境は気に入っていましたが、子どもが成長するにつれ、元気に動き回る足音が階下の住人に迷惑をかけるのではと思うように。小学校入学までには一戸建てに引っ越したいと考えていました。このマンションを4400万円で売却し、さいたま市の一戸建てを購入したNさん。購入から売却までは、そのエリアをよく知るプロのサポートが心強かったといいます。

不動産区分 マンション
所在地 神奈川県川崎市中原区
築年数 約23年
間取り・面積 3LDK(約68m2
ローン残高 1180万円
査定価格 4000万円
売り出し価格 4480万円
成約価格 4400万円

階下へ響く子どもの足音を気にせず暮らせる一戸建てに住み替え

妻と5歳の子どもと三人で神奈川県川崎市のマンションに住んでいたNさん。子どもが家の中で元気に動き回っても、階下への足音を気にせず暮らせるよう、小学校に入学するまでには一戸建てに引っ越そうと考えていたそうです。住んでいた街の住み心地は気に入っていたので、近隣エリアを第一候補に、加えて妻の実家があるさいたま市を第二の候補地として物件探しを始めました。夫婦ともに都心通勤だったので、川崎市とさいたま市はどちらも通勤に便利なこと、妻の実家近くなら、いざというとき育児の手助けをお願いしやすいことから、離れた2つの地を検討することにしたのです。小学校入学は2021年4月だったのですが、間に合わないといけないので、少し早めの2019年9月から新居探しをはじめました。

「もし第二候補のさいたま市で家が見つかり、売却も済んだ状態で、新居の近くに保育園が見つからない事態が発生した場合には、それまで通っていた保育園に通い続けるため、一時的に賃貸に住むことも覚悟していまし。」

Nさんは、さまざまなリスクを念頭に置きつつ、まずは新居の情報をインターネットで探し始めました。近くの不動産会社のホームページに情報に気になる物件があったので、店舗に行きました。住んでいる沿線の物件取り扱い数が多い、大手の不動産会社です。この時、売却も依頼できるか確認し、翌月には訪問査定もしてもらい、購入と売却を並行して進めることにしました。担当者の話がわかりやすく、説明に安心感があったので、Nさんは特にほかの不動産会社と比較検討することなく依頼先を決めたといいます。
Nさんが新居に求める条件は、子育てしやすい落ち着いた環境で、駅から徒歩圏、買い物便利な立地の一戸建て。もともと在宅ワークがある職場だったので、書斎を持てるよう、間取りは4LDKを希望と伝え、情報を集めてもらいました。同時に、自分たちでも物件情報をインターネットで集めていました。

「相談していた大手不動産会社は、さいたま市にも店舗があるので、同じ会社で連携してもらった方がいいかなと川崎市とさいたま市を並行して情報収集してもらいました。でも、さいたま市のほうはインターネットで自分で見つけた物件情報に魅かれ、地場の不動産会社に相談することになりました。川崎市の物件を5件ほど、さいたま市の物件も5件ほど見学し、最終的にはさいたま市の地場の不動産会社に紹介してもらった物件に決まりました」

同年12月、Nさんは、最寄駅まで徒歩5分、土地80m2、延床面積120m2の4LDKのさいたま市の建売一戸建てを購入しました。土地と建物で6600万円。住宅ローンは、妻とペアローンで組みました。

引っ越し先が決まったので、いよいよ本腰を入れての売却活動がスタートします。

「売却するマンションは、最寄駅から徒歩10分、駅前には活気ある大きな商店街がある、買い物に便利なエリアにありました。総戸数が100戸に満たない5階建ての物件です。わが家は3階の角住戸で、東西に窓があり、北向きにルーフバルコニーがありました。購入時に水まわりや二重サッシのリフォームをしているので、7年ほど住みましたが築年数のわりにきれいな状態だったと思います。都心や横浜までのアクセスが良く、買い物便利なファミリー世帯が多い地域なので、3LDK・約68m2のファミリータイプのマンションは、自分たちと同じような家族構成の世帯から需要があるんじゃないかなと思っていました。同じ沿線の近隣の駅周辺は、坂が多いエリアであったり、大規模物件の供給が中心のエリアだったりしたので、ベビーカーを使う人で小規模物件を好む人はこちらを選んでくれるんじゃないかなと」

年内に情報公開。エリアの「動きが出やすい価格」を見据えて、4480万円で売り出す

12月に買い替え先の売買契約を締結したと同時に、本格的に売却活動を開始したNさん。新居を購入した不動産会社とは別になりましたが、初めに相談していた大手不動産会社と専属専任媒介契約を結びました。すでに10月に訪問査定を受けており、査定価格は4000万円でした。

「不動産会社の査定価格を聞いたとき、4000万円で売れたら十分だと思いました。自分たちがマンションを購入した金額にリフォーム費用を合わせても、3800万円くらい。4000万円なら、実質7年間の住居費が税金程度で済んだことになる上、利益が出るってことですから」

同じころ、マンション内で何件か売却情報が出たそうですが、不動産会社から「住戸ごとに方位や広さなど条件が全く違うので、そちらの価格は気にせず、個別に価格を検討しましょう」とアドバイスがあったといいます。中古物件の売却には、価格交渉がつきものということで、まずは落としどころを4000万円と決めました。不動産会社の担当者と相談する中で、「このエリアは物件価格が4500万円を下回ると売りやすい」というアドバイスもあり、最終的に売り出し価格を4480万円に決めたといいます。
また、お正月休み中に検討してもらいやすいよう、売却物件の情報は絶対に年内に公開するべきだというアドバイスもあり、年末にチラシを打ったり、不動産会社のホームページや不動産ポータルサイトに物件情報をアップしたりしました。不動産会社のオプションメニューにハウスクリーニングなどもあったのですが、「一旦そのまま売り出しをかけ、反響が少なかったら見栄えを良くするためにもハウスクリーニングを利用しよう」と決め、とにかく年内に情報を公開することを優先したそうです。

結果的にすぐ反響があったものの、ダブルローンの対策はしっかりと手を打った

購入物件の売買契約をしてから自宅の売却に着手したNさん。この「買い先行」の進め方は、売却がスムーズに進まなかった場合、購入する物件と売却予定の物件、両方のローンを並行して支払うダブルローンの期間が発生したり、その期間が長くなったりといったリスクがあります。そのため、Nさんは不動産会社のサービスにあった「売却保証システム」を利用することにしました。一定期間売却活動をしてみたものの売却できなかったとき、あらかじめ決めておいた金額で不動産会社に買い取ってもらうサービスです。Nさんの場合は、半年たっても売却できなかった場合に査定価格の8割で買い取ってもらう契約を結んだそうです。契約にはまとまった手数料が発生しますが、リスクヘッジを優先したといいます。

「売却段階でのローン残高は、1180万円ありました。資金の相談をした際、ダブルローンになった場合に貯蓄でなんとか対応できる期間は半年だと確認できました。すでに新居という大きな買い物をしているので、たとえ手数料がかかっても売却を保証してもらえるのは安心だなと思いました」

売り出しの情報をオープンにしてから過ごすお正月は、「売れるかな?」と少しドキドキした気持ちで過ごしたNさんですが、ふたを開けてみれば松の内が明けるころには購入希望者からの反響があったといいます。

「内見は1月中に4件対応しました。いずれも、自分たちと同じような小さい子のいるファミリーでしたね」

イメージ通りのファミリーから反響があり、少し価格交渉があったものの、1月末には4400万円で売買契約を結ぶことができました。Nさんは2月末に新居に引っ越し、物件の引き渡しも同時に行いました。

■ダブルローンとは

ダブルローンとは、同時に2つの住宅ローンを利用することです。住宅ローンが残っている家の買い換えなどの際に利用されることが多いものです。新居を先に購入する「買い先行」の場合、新居の引き渡しが先で売却がそれよりも後だと、売却できるまでの期間は住宅ローンが二重になってしまいます。この期間が長くなるほど、支払い額の大きさが負担となり、リスクとなります。そのため、ダブルローンになった場合の返済能力はシビアに審査されます。一方で、最初からダブルローンにすると決めることで、①新居の購入時期や売却の時期をコントロールしやすい、②「売り先行」で新居がなかなか決まらない場合に仮住まいとなる家の家賃負担が不要、という2つのメリットもあります。なお、住宅ローン控除は、売却する家と新居の両方とも控除の条件を満たす物件だった場合でも、ダブルローンの状態では、売却する方の住宅ローンには適用されず、新居の方にのみ適用されることになります。これは、住宅ローン控除が自分が住んでいる家に対しての優遇措置という性格のためです。

信頼できる仲介会社のおかげで期待以上の結果に

今回の買い先行の売却活動は、全体で約半年とスムーズだったNさん。今回の売却活動は期待以上だったと振り返ります。

「とにかく、不動産会社の力によるところが大きかったと思います。エリア特性に合った売り方のアドバイスは的確だったと思いますし、買主との価格交渉などもすべてさばいてくれて、私たちがストレスと感じることは一切ありませんでした。私たちは新居を購入した不動産会社と売却を担当してくれた不動産会社が別でしたが、売却を担当してくれた不動産会社が必要に応じて新居を購入した不動産会社に連絡を取ってくれて、手続きがスムーズになるよう手を尽くしてくれました」

新居の住宅ローンを借りるときには、ダブルローンを考慮して売却したマンションの住宅ローンの借入先と同じ銀行に相談しました。借入額を決めるときには、マンションがいくらで売れるかはまだわかっていませんでした。そのため、新居の住宅ローンの借入額は、少し多めに設定しておいたそうです。結局、マンションが予想より高く売れたので、余裕ができた分で繰り上げ返済したそう。引っ越した先の保育園や、ダブルローンのリスクヘッジなど、常に先の不安を念頭に置きながら売却を進めたNさん。それぞれのシーンで、適切なアドバイスや方法を提示してくれた不動産会社のおかげで、今回の売却活動は不安なく過ごせたと感謝を述べていました。

2019年9月 ・住み替え先を探し始める
・売却についての相談も並行して活動開始
2019年10月 ・現地査定(査定額4000万円)
2019年12月 ・住み替え先が決まる
・不動産会社と専属専任媒介契約を結ぶ
・4480万円で売り出し
2020年1月 ・購入検討者が現れ内見の対応
・4400万円で売買契約を結ぶ
2020年2月末 ・住み替え先に引っ越す
・物件を引き渡し、売却活動終了
2020年6月 ・物件を引き渡し、売却活動終了

まとめ

  • そのエリアでの売買実績が多い不動産会社を選ぶ
  • 購入希望者から交渉されることを見越して、売り出し価格を高めに設定する
  • 先のリスクを予測し、不動産会社に相談しながら対策を考える
売却査定する

取材・文/竹入はるな イラスト/カワモトトモカ

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