不動産売却の基礎知識や知っておきたいコツを分かりやすく解説します。売却の体験談もご紹介。

愛知県岡崎市Sさん(50代)/50代夫婦それぞれの「実家じまい」。先に売却した夫が妻の実家売却をサポート

 

愛知県岡崎市Sさん(50代)/妻が共有名義で相続した義理の実家。妻とそのきょうだいを手伝って早期売却に成功

Sさんの妻の父親が亡くなり、妻とそのきょうだいの3人が実家を相続することに。3人の話し合いの結果、Sさんの妻が主導で実家を売却することになり、Sさんは妻を手伝って売却活動を行うことになりました。

不動産区分 一戸建て
所在地 愛知県岡崎市
築年数 約9年
間取り・面積 建物3DK(96m2)、土地398m2
ローン残高 なし
査定価格 3600万円
売り出し価格 3600万円
成約価格 3600万円

妻と義理のきょうだいの3人が実家を相続し、妻主導で売却することに

愛知県岡崎市に一人で暮らしていた妻の父親が亡くなったのは2016年。妻はSさんと愛知県内の別の市に、妻の2人の兄弟はともに関東圏にそれぞれの家族と暮らしていました。そのため3人とも実家に戻るという選択肢を選ばず、話し合いの結果、実家に近い妻が主導で売却して現金化し、3等分することになりました。そう決まったのが2020年夏のことです。

実家は約9年前に、元は大工だったという妻の父親が自ら2階建てを取り壊し、新たに平屋に建て替えたそうです。建物以外には庭と畑、2台分の駐車場がありました。近くに学校やスーパーなどがある住宅地ですが、最寄り駅までは徒歩20分。車がないと不便な場所だったそうです。

実はSさんの親も2017年に亡くなり、妻の3兄弟が話し合いをしている最中、先に実家を売却しました。

「私の実家は現在暮らしている市の近くにあり、9月に売り出して12月には売却が決まりました。数社に査定を依頼した中から、大手の不動産仲介会社を選びました。その不動産仲介会社からは、売り出し価格は1900万〜2100万円でどうですか、と言われたのですが、私は強気に2500万円で売り出したんです。すると2500万円で売ることができました」

そんな近々の成功体験があったため、妻の実家の売却でも、Sさんが売却活動を手伝うことになりました。

離れて暮らす2人のきょうだいとのやりとりに時間がかかり、査定から先に進まず

Sさんの妻が主導して実家を売却することに決まったのが2020年8月。Sさんはまず、自らの実家を売却してくれた大手の不動産仲介会社に連絡を取りました。早速査定してもらうと、査定額は3600万円。「ただし、この金額は更地にして売却した場合という金額です。個人的にはまだ築9年でしたから少し惜しい気もしましたが、大きなリビングのない3DKですから、確かに間取りは今の人には合わないだろうなとは思いました」

それに建物があると売却に時間がかかりやすいと、不動産仲介会社からアドバイスを受けます。妻たち3人は早く現金化することを望んでいたので、売買契約を結んだ後、売却額から費用を出して取り壊すという、更地渡しの条件で売ることに決めました。

ところが、取り壊し業者に見積もりを出してもらうと、思っていた以上の解体費用がかかることが分かりました。その分、相続する金額が減るわけですから「これでは2人のきょうだいに話ができない、と妻がいうので、取り壊す業者探しも探すことになりました」

そのほかにも妻ときょうだいとで相続に関するやりとりがいくつも残っていて、実家を査定してもらったものの、なかなか媒介契約に進むことができずにいました。

■相続税の納付期限

親が亡くなったら、葬儀の手続きから携帯電話の解約など、さまざまなことを行わないとなりませんが、忘れてはならないのが相続税の納付です。相続税は、被相続人が死亡したことを知った日(通常の場合は、被相続人の死亡の日)の翌日から10か月以内に現金で支払うことになっています。今回のSさんの妻のケースでは相続税が発生しませんでしたが、相続財産のうち不動産の占める割合が大きい場合は、まずはその不動産の相続税評価額を調べたほうがいいでしょう。その結果、相続税が必要で、かつ手元の資金に余裕がないため不動産を売却するのだとしたら、早めに売却活動を始めましょう。不動産は売り出しても、なかなか売却ができないこともあるからです。納付が期限に間に合わない場合は、延滞税が課せられるので注意しましょう。

不動産仲介会社から「土地を探している不動産会社がある」と言われ、契約&売却

そうこうしているうちに2020年の12月になりました。すると査定した不動産仲介会社から「土地を探している不動産会社が、3600万円なら購入したいと言っています」と話を持ってきました。

折しも当初より安く取り壊してくれる業者を見つけたばかり。また妻たちも早く処分したがっていたので、早速その不動産仲介会社と仲介契約を結び、購入を希望している不動産会社の話を聞くことにしました。その不動産会社は、土地を分割して分譲販売したいと考えていたようです。

あとはトントン拍子で話がまとまり、2021年1月にはその不動産会社と3600万円で売買契約が成立。その後見つけていた解体業者に依頼して実家を取り壊し、更地にして2021年3月に引き渡しました。

「取り壊し費用や仲介手数料を除いても、1人あたり1000万円ちょっとでしたから、3人とも特に不満はなかったようです」

こうして査定してもらってから仲介契約まで、妻ときょうだいの事情もあって3カ月ちょっとかかってしまいましたが、あとはスムーズに売却することができました。

相続した実家を売却するイメージ

すぐに売買契約が成立したが、少し急ぎ過ぎたかもしれない!?

媒介契約を結ぶ前に、不動産仲介会社から購入希望者がいることを教えてもらい、契約後はスムーズに売買が成立したSさんの妻の実家。相続人の3人も金額について不満はなさそうですが、売却活動を手伝ったSさんは少し残念そう。
「個人的にはちょっと急ぎすぎたんじゃないかと思います。自分の実家の時は売り出し価格を強気で設定して、その金額で売ることができました。それを考えると、今回も査定額に少し金額を乗せてから売り出すとか、購入希望者と値段交渉するとか、もう少しやり方があったのではと思います。ただ今回は3人が現金化を急いでいましたし、私は当事者ではないので……」
もちろん値段交渉したからといって、必ずしも価格が上がるわけではありませんが、やれることはやっておきたかったと振り返るSさんでした。

2020年8月 ・不動産仲介会社に査定してもらう
2020年12月 ・査定した不動産仲介会社から購入希望者がいることを伝えられる
・不動産仲介会社と仲介契約を結ぶ
2021年1月 ・売買契約を結ぶ
・建物を取り壊す工事を始める
2021年3月 ・土地を引き渡す

まとめ

  • 築古でなくても、間取りが今の時流にそぐわないのであれば更地にすることも検討しよう
  • 建物を取り壊す場合、数社の解体業者に見積もりを依頼して選定した方がいい
  • 売却を急ぐと「もっとこうすればよかった」など後悔することもあるので、焦らず慎重に

イラスト/沼田光太郎

●構成・取材・文/籠島康弘
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