不動産売却の基礎知識や知っておきたいコツを分かりやすく解説します。売却の体験談もご紹介。

相続した築45年の実家。「現状渡し」の条件で、姉妹で連携しながら売却/埼玉県春日部市Cさん(50代)

埼玉県春日部市Cさん(50代)/相続した築45年の実家。「現状渡し」の条件で、姉妹で連携しながら売却

両親が亡くなって相続した築45年の実家。2人姉妹の姉であるCさんと妹は、実家を手放して現金化することにしました。できればリフォームなし、家財道具もそのままで手放したいと売却活動を開始しました。

不動産区分 古家付き土地
所在地 埼玉県春日部市
築年数 45年
間取り・面積 4LDK(建築面積…62m2、敷地面積…106m2
ローン残高 なし
査定価格 580万円
売り出し価格 1920万円
成約価格 1780万円

相続した実家を現金にして、姉妹で二等分することに

2人姉妹の姉であるCさん。Cさんと妹は既に結婚して実家を離れ、それぞれの家族と暮らしていました。また2人とも実家の近くで暮らしていたため、何かあればすぐに両親が暮らす実家へ赴くことができました。

「実家は二つの駅が利用できました。駅からはどちらからも徒歩15分くらい。近くにコンビニがある程度で、閑静な住宅街です。小学校も近かったですね。駅前にスーパーがあるなど、生活するには何の不都合もなく暮らせる場所です」

母親が先に亡くなると、しばらくして父親も2020年に亡くなりました。「相続といっても、遺されたのは実家と土地くらい。築45年の4LDKで、両親が時折リフォームしていたので水漏れなどはありませんでした。けれど床はギシギシいうし、水まわり設備も古く、見た目はそれなり。もしも自分たちが暮らすなら大規模なリフォームか、建て替えが必要だと思いました」

もともと母親が亡くなった頃から、Cさんは妹と将来実家をどうするか話していたそうです。「それぞれ家族と暮らしている今の住まいがあり、実家を建て替えて暮らすという意思は2人ともありませんでした。そこで実家を売却してお金を得られたら、2人で二等分しようということになりました」

そこで父親の葬儀が済んで落ち着いた、2020年の夏頃に2人で不動産仲介会社を探すことにしました。

リフォームはせず、家財道具はそのままで売却を開始

不動産仲介会社を探すにあたり、Cさんは実家近くの駅前の不動産仲介会社に依頼しました。一方、妹は地元の不動産仲介会社に知人がいたため、その人にお願いすることに。2社に依頼するので、契約は専属専任媒介契約ではなく一般媒介契約を結びました。

姉妹それぞれが不動産仲介会社と一般媒介契約を結んだ

「何しろ初めてのことでしたし、こんな古い家が売れるのか心配だったので、間口は広いほうがいいと思い、2人それぞれが不動産仲介会社に依頼することにしました」

2社に査定してもらいましたが、周辺にあまり売買実績がなかったこともあり、具体的な査定額は出ませんでした。代わりに2社とも、以前に近くでリフォームされて売却された土地付き一戸建てが980万円で売れた例を挙げてくれました。「結局、これを参考に売り出し価格を決めましょうということになりました」

それぞれの不動産仲介会社に相談しながら、姉妹が出した結論は、リフォームせず、家財道具もそのままにする分、価格を抑えようということで580万円に。「2人ともお金を出してまで実家を高く売ろうとは考えませんでした。ですから更地化やリフォームは考えませんでした。家財道具の処分費も出したくなかったので、できればそのままの状態で売却することにしました」

なお売却を進めるために、便宜上実家の名義は父親からCさんに変更しました。

■解体費用の相場

一般的に古屋が立っている土地の売却では、建物を解体して更地にしてから売るか、建物を残したまま売るかになります。建物を解体する場合、主に建物の「構造」と「広さ」によって費用が変わります。まず構造ですが、基本的に硬い構造体ほど重機や職人の人数が必要になるため費用がかかります。建物によりますが、だいたい木造なら3万円〜5万円/坪、鉄骨造なら4万円〜6万円/坪、鉄筋コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造なら6万円〜8万円/坪といったところです。ただし木造でも複雑な構造をしていて解体に工事の手間がかかる場合はコストが上がります。
次に広さですが、基本的に広ければ広いほどコストが上がります。さらに平屋と2階建ての場合は2階建てのほうが壊す面積と手間が増え、コストがかかります。また地下室など地下階の解体費用は、地上階と同じくらいか、それ以上かかることがあります。地下階がある場合は解体費用が倍以上になると考えておいたほうがいいでしょう。

現状渡しの条件で500万円に値引きして売却成立

売却を始めて、すぐに妹が相談した不動産仲介会社から話がありましたが、購入希望額が300万円台だったため、妹さんのほうで断りました。

しばらくすると妹の不動産仲介会社から、再び購入希望者がいると連絡がありました。「しかしローンが組めない方で、現金で払うから値引きして欲しいということでした。金額は400万円。妹とどうしようかと相談していたら、さらに妹の不動産仲介会社から、もう1組の話をいただきました」

3番目に現れたのは、妹の不動産仲介会社の知り合いだという法人でした。金額は500万円。もちろん現状のまま、現金で購入してくれると言います。「購入希望者はリフォームするか建替えて、社員住宅にしたいという話でした。希望額に近い500万円ですし、ローン審査が不要で、かつ不動産仲介会社の知り合いですから、何かとスムーズだろうとその法人に売却することにしました」

こうして話がまとまったのが2021年1月。正式に売買契約を結んだのは3月でした。売却活動から約半年かかりましたが、値下げは考えなかったのでしょうか。

「妹とは途中『なかなか決まらないようなら値下げしないといけないね』と話していたのですが、不動産仲介会社から値下げを提案されたことはなかったです。こちらもいつまでに売らないといけない、というのがありませんでしたから、結局値下げを提案しないままでした」

売れるかどうかより不安だったのは、空き家のまま放置して万が一放火にあったり、傷んで崩れるなどして、周辺の住民に迷惑をかけなければ良いけれど、だったそうです。ですから無事売却できてホッとしたそうです。

売却できたことは満足しているが、一括査定サービスを使ってみればよかった

売却活動全体を振り返って、Cさんは「おおむね満足」と答えてくれました。
「リフォーム費用や家財道具の処分費用を出さずに売れたことには満足しています。商談までいかないものの、問い合わせはちょくちょくあったので不安はありませんでした。その辺は特に妹の不動産仲介会社のほうがこまめに妹に連絡をくれていて、そのたびに妹から私に連絡がありました」
売買価格についても特に不満はないと言います。
「ただ、査定額がはっきりしなかったので、他の不動産仲介会社ならどんな価格を付けたのだろうという興味はあります。今から思えば査定一括サービスを利用してもよかったなと思います」

2018年3月 ・実家の売却を意識し始める
2020年4月 ・実家を相続する
2020年8月 ・不動産仲介会社2社と一般媒介契約を結ぶ
・売り出し価格580万円で販売を開始する
2020年12月 ・購入希望者が現れる
2021年3月 ・売買契約を結ぶ

まとめ

  • 築古物件をリフォームするかや更地化するかは周辺相場やニーズを考えてよく検討しよう
  • 査定額を調べる意味でも、一括査定サービスを利用する価値はある
  • 売り出し後の反響が少なければ、売り出し価格を見直すことも必要

取材・文/籠島康弘 イラスト/松尾達

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