
千葉県・銚子市に24年前に住まいを新築したNさんは、同じ町内に理想の日当たりの敷地を見つけ、もう一度、家を建てることを決意。地元の不動産会社の仲介で、愛着をもって住んでくれる買主に売却することができました。
| 不動産区分 | 一戸建て |
|---|---|
| 所在地 | 千葉県銚子市 |
| 築年数 | 24年 |
| 間取り・面積 | 5LDK(延床面積…116m2、敷地面積…390m2) |
| ローン残高 | なし |
| 査定価格 | 680万円 |
| 売り出し価格 | 680万円 |
| 成約価格 | 580万円 |
相続で得た資金をもとに、住み慣れた町内で2度目の新築を決める
千葉県銚子市の住まいを2020年3月に売却したNさん(50代女性)。売却した住まいは、当時築24年・5LDK の2階建てで、約40年前に宅地造成して分譲された高台の住宅地にありました。結婚後ほどなくして土地購入・新築した住まいで、2区画分を購入したため、敷地は390m2の広さがありました。スーパーや駅までは徒歩約25分かかりますが、車を使うのが当たり前の生活だったため、苦ではありませんでした。 ただ、ずっとあることが気がかりだったといいます。
「購入当時、希望する広さでほかに空いているところがなかったため、北側道路で南側に隣家があるこの敷地を購入。建物自体はすごく気に入っていたのですが、1階をLDKとしたため、いつもいるリビングに冬は11時くらいまで光が差さなかったんです」
安い買いものではないため、このまま住み続けるだろうと思っていたNさんですが、ある日の散歩中、町内で売地の看板を見つけます。
「今と同じ広さの土地で、南と西の道路に面した角地のため日当たりは上々。しかも1996年に私たちが買ったときより土地の価格がぐんと下がっていました」
幸いにも既にローンを完済し、数年前には親の遺産を相続して資金を持ち合わせていたNさん。もともとこのエリアを選んだのは夫の通勤圏内であるのに加え、「郊外でのびのび暮らしたい」という理想のライフスタイルがあったから。
「お金は生きているうちに有効に使わないと意味がない」と、慣れ親しんだ町内でもう一度、住まいを新築することを決断、今の家を手放すことにします。
■地価の変遷について
地価は「一物五価」といわれていて、売却価格や固定資産税の算出など目的に応じて「実勢価格」「公示価格」「基準値標準価格」「相続税評価額」「固定資産税評価額」の基準があります。郊外の住宅地は値下がり傾向にあるため、購入時より下落している可能性が否めません。災害・再開発・需要と供給のバランスなども影響するため、より正確な価格を知りたい場合は不動産会社に査定してもらうと良いでしょう。
予想外の査定に落胆するも、最善を尽くすべく地元の仲介会社に託す
2019年6月に無事、新しい住まいが完成。引っ越しを済ませて7月からNさんは売却活動をはじめます。
相場を調べようと手始めに利用したのが、一括査定サイト。郊外かつ、駅から離れている土地柄、見てもらえる不動産会社は1社だけでしたが、早速A社から査定価格が届きます。 しかしそこで、衝撃の事実がわかりました。
「売却する家には太陽光発電を設置していましたし、バブル崩壊後だったとはいえ購入当時の土地の価格は今よりずっと高く、感覚的には1500万円くらいで売れるような気がしていたのです」
しかしA社から出された査定価格は、予想を大幅に下回る500万円でした。
「『ちょっとした高級車より安いのか。私たちの家ってそのくらいだったんだ』と本当にショックで。
A社の営業担当に2区画分もあることや、太陽光発電をつけているメリットを伝えたのですが、『売却査定価格にはそうしたことはあまり関係ないんですよ』と言われました。
しかし考えてみれば、新しく入手した土地も24年前の約3分の1になっていたわけです。安く見積もったところで不動産会社が得することはないでしょうし、これが相場なのかなと理解しました」

A社は全国展開の不動産会社で、かつ最寄りの店舗が遠く離れていたため、Nさんは地元に密着した不動産会社として名の知られたB社にも相談してみることにしました。
「他社での数字が影響してはいけないと思い、A社の見積もりを伏せたうえで相談。現地に来てもらったところ、今度は680万円の査定価格が出ました。この時は既に現実を受け入れていたので『A社より180万円も上がった』とうれしかったですね(笑)。地元で信用されている会社でしたし、お願いすることにしました」
2019年8月、NさんはB社と専属専任媒介契約を結びます。
媒介契約を更新し、5カ月待った末に現れた買主は偶然にも友人の友人
売り出し価格は査定と同じ680万円。B社では地元で物件を探している人をターゲットに見定め、銚子市内の住宅を中心にポスティング。同時に不動産サイトでも情報を公開します。
「新しい家は手持ちの資金で賄え、ローンを払わなければいけない負担はなかったため、焦らず構えていました。でも売るなら500万円の大台は切りたくありません。諸経費を考えると550万円が最低ライン。
しかし最も気にしていたのは、『どんな方に買っていただけるか』ということ。新居が目と鼻の先だったので、もし買主がルールを守れないような人だとご近所に申し訳が立たないでしょう。地域になじめる方であることを願っていました」
しかし思いとは裏腹に、買主はなかなか現れませんでした。ついに問い合わせが入ったのは、2019年11月のこと。社宅として検討しているという法人でしたが、結局、現地を見ただけで売買には至りませんでした。
Nさんは媒介契約を更新。B社に任せるほかないと考え、ひたすら待ちながら翌年を迎えます。
「売れなければ一生、所有することになっても仕方ないかと思っていた矢先、2020年1月にB社から連絡が。銚子市内の賃貸マンションに住んでいた一家に購入してもらえることになりました」
後にわかったのは、偶然にも買主はNさんの友人の友人だったということ。
「成人したお子さんとの3人家族で、広い敷地に車を3台置けることなどをメリットに感じていただけたようです。物件をとても気に入っていただけたうえに、友人と親交のある方なので信頼も置けます。査定価格の一件は残念でしたが、それを吹き飛ばすほどの吉報でした」
売却する家に家具の一部を残していたNさんは、現状渡しとするのを条件に100万円を値引きし、580万円で売買契約を交わします。
よい買主に出会えたのが何よりの幸運。新居でやすらぎを感じる日々
新築した家は年齢を重ねても安心して住めるよう平屋に。日当たりも良く心置きなく暮らせているそう。
「今、思えば太陽光発電があるため設備がないよりは月いくらかお得になります。強気で売り出して徐々に値下げすれば良かったかなと。また『現状渡し』にするために100万円値引きするなら自分で業者に頼んで処分すれば良かったかなとも思います。欲張ると色々あるのですが、お金より何より愛着のあった住まいを良い方に買ってもらえて、喜んでいただけたのが一番でしょう。結果に満足しています」
これからの暮らしに期待を膨らませ、笑顔で語るNさんでした。
| 2019年6月 | ・一戸建ての売却を考えはじめる |
|---|---|
| 2019年7月 | ・一括査定サービスでA社に査定を依頼 |
| 2019年8月 | ・B社に査定を依頼し、専属専任媒介契約を結ぶ |
| 2020年1月 | ・買主が現れる |
| 2020年3月 | ・買主と売買契約を結ぶ |
| 2020年3月 | ・売却した土地を買主に引き渡す |
まとめ
- 地元に強い不動産会社では、地域の特性に合う営業スタイルを取ってもらえることも
- 複数の不動産会社に査定を依頼する場合でも、他社の査定金額を伝える必要はない
- 現状渡ししたい場合は、売主から値下げ交渉が入る場合もある
取材・文/星野 真希子 イラスト/キットデザイン


