不動産売却の基礎知識や知っておきたいコツを分かりやすく解説します。売却の体験談もご紹介。

築約50年の公団住宅。途中でリフォームをして約1年半かけて売却/東京都東久留米市Nさん(40代)

東京都東久留米市Nさん(40代)/築約50年の公団住宅。途中でリフォームをして約1年半かけて売却

やんちゃ盛りの息子3人がのびのび過ごせる一戸建てへ住み替えるため、東久留米市の築50年48m2の公団住宅を売却することにしたNさん。なかなか買い手が見つからず、約1年半かけてなんとか売却にこぎつけました。

不動産区分 公団住宅
所在地 東京都東久留米市
築年数 約50年
間取り・面積 2LDK(48m2
ローン残高 700万円
査定価格 700万円
売り出し価格 720万円
成約価格 710万円

頻繁に入る不動産広告を見て、2017年ごろから住み替え先探しをスタート

子どもたちの学校区が変わらないエリアでの住み替えを検討していたNさんは、夫婦と育ち盛りの男の子3人の5人家族。2006年に900万円台で購入した公団住宅は48m2の2LDKで、子どもたちの成長とともに手狭になってきていたそうです。

「息子ばかり3人いるので、騒ぐと大変なんです! 集合住宅ではうるさくすると近所にご迷惑がかかりますし、できれば学校区の変わらないエリアで一戸建てに住み替えたいなという漠然とした思いはずっとあったんです。古い物件だからか、不動産広告がよくポスティングされているので、だいぶ以前からチェックはしていたんです。ローンの残債がありましたし、できるだけ安く購入できる方がいいので、中古の一戸建てを中心に検討していました」

3人兄弟イメージ

2017年、ポスティングされていたチラシに掲載されていた中古一戸建ての間取りが気に入って、Nさんは記載されていた不動産会社に向かいました。

「ローンの残債がまだ700万円ほど残っていると伝えると、『残債が残ったまま新たに住宅ローンを組むのはオススメしません』と言われてしまいました。どうするか考えようと思った矢先、別の不動産会社のチラシが入っていて、立地の良い建築条件付き土地の販売情報を見たんです」

■ダブルローン

原則として、住宅ローンは1世帯当たり居住している住宅1軒に対してしか組むことができません。しかし、住み替えで居住中の家を売却し、新しい家を購入する際に、一時的に二重で住宅ローンを組むことは可能です。これをダブルローンといいます。売却めどは立っていても、新居を購入するまでに売却手続きが完了しないときもダブルローンの利用は可能です。これによって売却時期に縛られることなく、新たな家を購入することができ、住み替えを滞りなく行えるというメリットがあります。ただし、ローン負担が二重になるため、負担も大きくなります。基本的には返済能力があり、返済期間の条件をクリアしていることなどが、ダブルローン利用時の条件となります。住み替えの際は、ダブルローンではなく、住み替えローンを利用するという選択肢もあります。ダブルローンの場合は2つのローンの支払い時期が重なり、二重の返済負担となりますが、住み替えローンの利用であれば、1軒目の残債の分も、新たな家の代金と一緒にまとめて借りることができます。

無事に新たなローンを組むことができ、売却前に住み替え先を購入

「その建築条件付き土地を扱っていた不動産会社では、ローンの残債が残っていると伝えても、金融機関に話を通してくれました。幸い融資審査も問題なく通り、35年返済・3200万円のローンを組むことができました。新しい住まいは、82m2の3L D Kです。学校区が変わらず、バス停がすぐそばにある立地が気に入ったんです。コンビニにも近く、買い物も便利で、車の往来が少ない静かな環境も魅力でした」

住み替え先が順調に決まり、2018年11月には新居が完成し、引っ越しが完了しました。

新居への引っ越し後に公団住宅を720万円で売り出し開始

新居に住み替えるのと同時に、それまで暮らしていた公団住宅の売却をスタートさせたNさん。住み替え先を扱っていた不動産会社が大手だったので、当初はそこで売却も一緒にお願いしたいと考えていましたが、『これまで公団住宅の取り扱い実績がなくて売り切るのは難しい』と言われてしまいます。そこで、同じ公団の他の部屋の売り出し広告を見て、記載されていた不動産会社に売却の相談をしました。

「2街区、16棟ある公団住宅で、約50年も経つ物件なので、ほかに売り出している部屋がいくつもあるんです。同じ公団内で住み替えたり、買い増ししたりする方もいるので、よくチラシが入っていて、おおよその相場はわかっていました。5階建てでエレベーターがない物件なので、普通のマンションとは違い、上階の方が査定額は低く、うちと同じ間取りで相場は400万円くらい。わが家は2階なので、階段でも問題なく上り下りしやすいということで、700万円くらいが相場でした。ちょうどローンの残債も同じくらいだったので、仲介手数料などがかかることも考えて、少し上乗せして売り出すことにしました」

2018年11月、Nさんは720万円で売り出しを開始します。
『古いけれど今は自分でリフォームをしたいと考える人も多いから』という不動産会社からのアドバイスを受け、手を加えずに720万円で売り出しを開始しました。しかし、それから半年は問い合わせがほぼゼロで、動きがないまま1年が過ぎ去ります。

最低限のリフォームをしたことで問い合わせ数が増加し、710万円で売却

1年経っても動きがほとんどなく、しびれを切らしたNさん。

「同じ公団内で他ほかにも売り出し物件が多数出ていることもあり、なかなか売れなかったのかもしれません。1年経ってもなかなか売れないので、不動産会社と話し合って簡単なリフォームをすることにしました。壁紙とフローリングを張り替え、浴室をきれいにして費用は30万円ほど。720万円で売り出していた価格は730万円に値上げしました」

リフォーム後は明らかに問い合わせ数が増えたそうで、内覧も数組あったそうです。

「2018年11月の売り出しから1年半もかかりましたが、ようやく購入者が現れました。1人暮らしのおばあさんが購入したいと言ってくださって。少し値引きできないかと打診があったので応じることにしました。売り出し当初から時間が経ち、ローンの残債も少しずつ減ってきていましたしね。ただ、新居のローン返済もありますから、20万円だけ値下げして710万円で売買契約が成立しました」

リフォーム後に10万円の値上げをしていたことで、最終的には当初の売り出し価格720万円から10万円ダウンの710万円で無事に売却を終えることとなりました。

「時間はかなりかかりましたが、最終的には売却益で残債をほぼ相殺できることができましたし、満足度は10点満点中9点というところでしょうか。ただ、リフォームして問い合わせ数が増えたとのことだったので、もっと早くしておけば良かったなとは思いましたね」と長かった売却体験を振り返るNさんでした。

2017年 ・住み替えを漠然と考え始め、チラシなどで周辺物件情報をチェック
2018年11月 ・気に入った住み替え先が見つかり、自宅の売却を決める
・住み替え先の物件の売買契約が完了
・住み替え先に引っ越し
・自宅の売却査定を依頼
・専任媒介契約を結び、自宅の売却活動をスタート
2020年1月 ・壁紙とフローリングを張り替え、浴室をリフォーム
2020年5月 ・購入検討者が現れ、売買契約を結ぶ
2020年6月 ・物件の引き渡しが完了

まとめ

  • 残債が残ったまま新たなローン契約を結ぶ際は、返済に無理のない金額なのかをよく検討しよう
  • なかなか売れない築古物件は、リフォームをすることで売りやすくなることもある
  • 値引きのタイミングは要注意。粘り強く待つことで、希望価格で売れることも
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取材・文/馬場敦子 イラスト/カワモトトモカ

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