不動産売却の基礎知識や知っておきたいコツを分かりやすく解説します。売却の体験談もご紹介。

農地売却の4つの方法。売買条件と流れ、費用、転用まで徹底解説

農地の売却は、宅地やマンションに比べて手続きが複雑で、思うように進まないことも少なくありません。法律による制限や買い手の少なさが売却を難しくしている大きな理由ですが、どうすればいいのかわからずに農地を放置して荒廃させてしまうと、さらに状況が悪化してしまうこともあります。

この記事では、司法書士・行政書士・測量士・建築士・宅建士で染谷綜合法務事務所の染谷崇さんの解説を交えながら、農地を売却する方法や流れ、費用などについて詳しく解説します。

実家を売却する方法を相続前と相続後で解説。相続登記と税金のポイント

記事の目次

なぜ農地は売却しにくい?2つの理由

農地の売却が難しいとされる主な理由は次の2つです。前提として、とくに売却が難しいのは「市街化調整区域」にある農地です。

1.農地の売買は法律で制限されている

農地は、宅地のように自由に売買できるわけではありません。農地売買の制限は、都市計画法上、農地が「市街化区域」か「市街化調整区域」のどちらに位置するかによって変わってきます。

「市街化調整区域内の農地は、法律で売買が厳しく制限されています。原則的に農地から宅地など他の用途への変更は認められず、売買には『許可』が必要であり、買い手は原則、農家に限定されます。

一方、市街化区域の農地の売買も法律で制限されているものの、都市計画法に適合する用途で利用されるのであれば、転用が目的でも『届出』で売買が可能です(「許可」は不要です)。したがって、譲渡(売却、賃貸、贈与を含みます)が難しいのは、『市街化調整区域の農地』ということになります」(染谷さん、以下同)

2.農業従事者の減少

農業従事者は年々減少し、高齢化が進んでいます。基幹的農業従事者に占める65歳以上の割合は、2020年時点で69.6%。一方、49歳以下の若年層の割合は10.8%にとどまっています。農地を購入する人も減り、少子高齢化により後継者不足に悩む農業従事者も増加していることから、農地の売買は年々難しくなっています。

年齢階層別の農業従事者数の推移のグラフ

出典:農林水産省「変化する我が国の農業構造

農地売却を検討するべき理由

市街化調整区域の農地はとくに売却が難しいということですが、次のようなことに鑑みれば使用していない農地はできるだけ早く売却を検討すべきでしょう。

維持・管理の手間がかかる

農地の資産性を維持していくには、維持・管理が欠かせません。荒廃させてしまうと、さらに売却が困難になるおそれがあります。

「農地を適切に維持・管理していくには、一般的に年4回は草刈りが必要です。安くても年間20万円程度はかかるでしょう。近隣に迷惑をかけないためにも、定期的な除草や害虫駆除は不可欠です」

荒廃した土地のイラスト

荒廃した土地の維持・管理は大変(イラスト/杉崎アチャ)

固定資産税がかかる

使用していない農地にも毎年、固定資産税が課されます。自ら耕作せず、貸し付けの意思の表明もしない遊休農地は、通常の農地の固定資産税の1.8倍になる措置が取られることから、売却しない限り、維持・管理の負担に加え税負担も重くのしかかります。

不法投棄されるおそれがある

農地に不法投棄されたゴミは、基本的に農地の所有者が責任を持って処分しなければならず、処分費用は高額になる可能性もあります。

「不法投棄されたゴミは『産業廃棄物』に該当します。家庭ゴミのようには処分できず、専門の業者に処分を依頼しなければなりません。本来、不法投棄された被害者であるにもかかわらず、基本的に不法投棄されたゴミは土地の所有者が処分し、その費用も負担する必要があります」

相続人が増える

使わなくなった農地を所有し続けることで、相続人が増えるリスクもあります。

「2024年4月に相続登記が義務化されましたが、まだご存じない方も多く、放置している期間が長いほど加速度的に相続人が増えていく可能性があります。売却を検討したときには共有者がわからず、遡って相続登記しなければならないことにもなりかねません。行方不明の相続人や認知症になってしまった相続人がいれば、実質放置状態になってしまうおそれもあります」

農地を売却する4つの方法

農地を売却するには、基本的に農地法第3条または5条の許可が必要です。

  • 農地法第3条:農地を農地のまま農地利用を目的として売買
  • 農地法第5条:農地を農地以外の宅地など他の用途にすることを目的として売買

一方、農地を農地以外の宅地などに転用する場合には農地法第4条の許可を要します。また、例外的に住宅用地や資材置き場として利用されている農地は、非農地証明を取得することで地目変更ができるケースもあります。

したがって、農地を売却する方法は以下の4つに大別されます。

  1. 農地のまま農地利用を目的として売却
  2. 農地のまま他の用途にすることを目的として売却
  3. 宅地などに地目を変更して売却
  4. 非農地証明を取得し、地目を変更して売却

ただし、いずれも許可が下りるかどうかは農地の所在や買主の属性などによるため、単純に「農家に売れば問題ない」「宅地にして売ればいい」ということではありません。

1.農地のまま農地利用を目的として売却

農地のまま、農地利用を目的とする買主に売却すれば転用の手間がかかりません。ただし、買主は原則的に農家や農地所有適格法人に限定されます。

「買い手が農業従事者でなければならないという制約があることに加え、購入希望者は詳細な営農計画を提出する必要があります。この計画には、何を栽培し、どの程度の収穫量を見込み、どこに販売するかといった具体的な内容を盛り込まなければなりません。

さらに、購入希望者の過去の農業経験や他の農地での農地法違反の有無なども審査対象となります。これらの情報は売り手側では把握できないため、契約後に許可が下りないというリスクが常に存在します」

2.農地のまま他の用途にすることを目的として売却

市街化区域にある農地は、宅地などへの転用が目的であっても、農地法第5条に基づき農業委員会に届け出れば売却が可能です。ただし、市街化調整区域の農地については、原則的に農地転用が許可されません。

3.宅地・雑地などに登記地目を変えて売却

農地法第4条に基づき、登記地目を農地から宅地などに変えれば自由に売買できます。しかし、市街化調整区域の農地の宅地への転用は非常に困難で「現実的ではない」と染谷さんは言います。

「市街化調整区域においては、都市計画法上、農地を宅地に変更することは原則として禁止されています。例外的に認められるケースとして農家分家※1や既存宅地※2などがありますが、これらは自己居住用の建物建築を前提としており、転売を目的とした開発は認められていません。仮に農家分家として許可を得た土地であっても、銀行は流動性のない不動産として担保価値を認めないため、融資がつかないのが現実です。

駐車場や資材置き場への転用という選択肢もありますが、これにも厳しい制約があります。転売を防ぐため、購入者は実際にその用途で使用する必要性を証明しなければなりません。例えば、東京都内の不動産会社が千葉県の農地を資材置き場として購入したいと申請しても、必要性が認められずに許可が下りないケースがほとんどです」

※1:農家が本家とは別の場所に居住用の建物を建築する行為
※2:市街化調整区域に編入された際にすでに宅地で、市街化区域に隣接し、概ね50戸以上の建築物が建ち並ぶ地域内の土地

4.非農地証明を取得し、地目を変更して売却

農地に住宅を建てたり資材置き場として利用したりするのは農地法違反となりますが、看過されて一定の年数が経過している場合は、非農地証明を受けることで地目変更が認められる場合があります。ただし、自治体によって非農地証明の可否や要件が異なるため注意が必要です。

「例えば、関東圏でいえば千葉県や茨城県では要件を満たせば農地法の規定に基づく許可を要さず地目変更が可能ですが、埼玉県にはこうした条例がありません。また、非農地証明を取得できたとしても、既存建築物の建築確認がない場合、銀行融資はつきません」

農地を売却する流れ

ここからは、農地を売却する流れについて説明していきます。農地の売却において重要なのは、その土地がどの区域に位置するかという点です。

まずは農地区分を知る

市街化調整区域の農地の売却には、基本的に農地法第3条の許可が必要となります。許可制度は農地法第5条に基づく届出制度と根本的に異なり、行政側に裁量権があるため、申請すれば必ず通るというものではありません。届け出であれば1〜2日程度で手続きが完了しますが、許可には通常2カ月程度の期間を要し、その間にさまざまな審査があります。

農用地区域内農地農振農用地区域内農地<生産性の高い優良農地> 市町村が定める農業振興地域 整備計画において農用地区域とされた区域内の農地
甲種農地甲種農地<生産性の高い優良農地> 市街化調整区域内の農業公共投資後8年以内農地・集団農地で高性能農業機械での営農可能農地
第1種農地第1種農地<生産性の高い優良農地>
  • 集団農地(10ha以上)
  • 農業公共投資対象農地
  • 生産力の高い農地

第2種農地第2種農地<小集団の未整備農地>

第2種農地<市街地近郊農地>

  • 農業公共投資の対象となっていない小集団の生産力の低い農地
  • 市街地として発展する可能性 のある農地

第3種農地第3種農地<市街地の農地>

  • 都市的整備がされた区域内の農地
  • 市街地にある農地
(イラスト/杉崎アチャ)

上記の農地区分のうち、農用地区域内農地、甲種農地、第1種農地は、原則的に農地転用の許可は下りません。ただし、甲種農地および第1種農地については農業用施設や農産加工・販売施設などの場合は例外的に許可が下りることもあります。

第2種農地は、第3種農地に立地困難な場合は許可され、第3種農地は原則許可されます。ただし、次に該当する場合はいずれの地区も農地転用の許可が下りません。

  • 他の法令の許認可見込みがないなど転用の確実性が認められない場合
  • 周辺農地への被害防除措置が適切でない場合
  • 一時転用の場合に農地への原状回復が確実と認められない場合

農業委員会事務局や自治体に問い合わせることで、所有している農地がどの区分に該当しているか確認できます。

「農地区分はご自身で判断せず、必ず問い合わせたうえで回答をもらってください。不動産会社やコンサルタントなどに聞くより、ご自身で確認したほうが確実です。ただし、ご自身で確認されたことを基に転用の可能性がないか確認したい場合は専門家に相談することをおすすめします」

農地のまま農地利用を目的として売却する流れ

農地のまま農地利用を目的として売却する流れ

ここからは、市街化調整区域の農地の現実的な売却方法の流れを解説します。まず、農地のまま農地利用を目的として売却する流れは、以下のとおりです。

1.買主を探す

農地を農地のまま農地利用目的として売却する場合は、買主は農業従事者やこれから営農する個人、法人などに限定されるため、近所や知人の農家をあたってみるのも良いでしょう。後述する「農地バンク」で買主を探してもらえることもあります。

2.売買契約

買主が見つかったら売買契約を締結します。契約後に農業委員会から許可を得るため、特約として「許可が得られなかった場合は契約を白紙に戻す」旨の記載が必要です。

3.許可申請

続いて、農地が所在する農業委員会に所有権移転の許可を申請します。先述のとおり、許可が下りるまでには2カ月程度かかります。

許可に必要な書類は、一般的に以下のとおりです。

  • 登記事項証明書
  • 公図の写し
  • 相続関係図等(相続登記が済んでいない場合)
  • 位置図
  • 見取り図
  • 営農計画書や土地利用計画図、資金計画など売買後の事業・営農計画の内容がわかるもの
  • 耕作証明書
  • 売買契約書の写し
  • 農地等権利移動許可申請書 など

農業委員会によって必要書類や申請手続き方法が異なる可能性もあるため、事前に確認しておきましょう。

4.所有権移転登記

許可が得られれば、最後に残代金の決済、所有権移転登記をして農地を買主に引き渡します。
農地の売買による所有権移転登記には、農業委員会の許可書も必要です。加えて、以下の書類を要します。

  • 登記原因証明情報
  • 登記識別情報もしくは登記済証
  • 印鑑証明書
  • 実印
  • 買主の住民票
  • 農地の売買許可証
  • 固定資産税の評価証明書 など

所有権移転登記は、司法書士に委託するのが一般的です。

「所有権移転登記後、買主は申請時の計画等に沿った運用をし、適宜、報告が求められます。申請時の計画から変更することも可能ですが、その場合は変更許可申請を要します。所有権移転登記後の運用や報告内容などは銀行融資の条件にもなります。こうしたことを理解し、実行できる人や機関に買主が絞られるという点が、市街化調整区域の農地の売却を難しくする大きな要因です」

非農地証明を取得し、地目変更して売却する流れ

非農地証明を取得し地目変更して売却する流れ

一定期間、宅地やその他の用途として利用している農地を地目変更して売却する流れは、以下のとおりです。ただし、この方法で売却できるのは、先のとおり非農地証明の取得ができる自治体内にある農地に限られます。

1.非農地証明の取得

非農地証明を取得するため、農地が所在する自治体に証明願の文書等を提出します。要件や添付書類は自治体によって異なります。例えば千葉県では、申請土地の公図や現地の写真等を添付する必要があります。

2. 地目変更登記

許可が得られたら地目変更登記をします。登記に必要な書類は、以下のとおりです。

  • 地目変更登記申請書
  • 土地の案内図
  • 地目変更許可書

自分で登記することもできますが、確実かつスムーズに登記したいのであれば土地家屋調査士に依頼しましょう。

3.不動産会社に相談して売却活動をする

地目が変更できれば一般の人や法人にも売却可能です。一戸建てやマンションなどの売却と同様、不動産会社に相談しましょう。不動産会社が決まり次第、媒介契約を締結して売却活動がスタートします。

4.売買契約

買主が見つかったら売買契約を締結します。すでに地目を変更しているため「許可が得られなかった場合は契約を白紙に戻す」等の特約は不要です。

5.所有権移転登記

最後に所有権移転登記をし、土地を買主に引き渡します。所有権移転登記には、以下の書類が必要です。

  • 登記事項証明情報
  • 登記識別情報もしくは登記済証
  • 不動産登記申請書
  • 登記原因証明情報
  • 印鑑証明書
  • 買主の住民票
  • 固定資産税評価証明書
  • 本人確認書類
  • 実印 など

所有権移転登記は司法書士に委託するのが一般的です。

農地売却のハードルとなる買い手探し。有効な手段は?

農地売却の大きなハードルとなるのは、買い手が見つかるかどうかです。農家が購入してくれるのがベストですが、農業従事者は減少傾向にあり、今後ますます減っていく可能性が高いといえます。染谷さんに、農家以外の現実的な買い手や探索方法を聞きました。

太陽光発電事業者への売却

営農型太陽光発電のイメージイラスト

営農型太陽光発電のイメージイラスト(イラスト/杉崎アチャ)

10年ほど前から農地売却の一つの出口として注目されていた太陽光発電事業ですが、現在では状況が大きく変化しているといいます。

「固定価格買取制度(FIT)※1の買取価格は、大きく下落し、事業としての採算性が大幅に悪化しています。買取価格の下落に加えて、新型コロナウイルスの影響による物流の停滞や原材料価格の高騰が追い打ちをかけました。太陽光パネルやパワーコンディショナー※2などの機器価格が上昇し、想定利回りが大きく低下しています。

現在残っているのは、固定価格買取制度を使わないNon-FITの太陽光発電事業ですが、これも電力会社との直接契約による買取となるため、条件は非常に厳しいと言わざるを得ません。さらに、発電した電力を送電網に接続するための電柱設置費用が1本あたり数十万円かかるため、送電インフラから離れた農地では事業として成り立ちません。

営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)※3という新しい形態も登場していますが、農業と発電の両立という技術的な難しさに加えて、農地法と電気事業法の両方の許可が必要になるなど、手続きの複雑さが課題となっています」

※1太陽光発電など再生可能エネルギーで発電した電気を、電力会社が一定価格で一定期間買い取ることを国が約束する制度
※2太陽光発電などで発電した電気を実際に使用できる電気に変換する設備
※3一時転用許可を受け、農地に簡易な構造でかつ容易に撤去できる支柱を立て、上部空間に太陽光を電気に変換する設備を設置し、営農を継続しながら発電を行う取り組み

相続土地国庫帰属制度を活用する

2023年4月に施行された相続土地国庫帰属制度は、農地を処分する方法として新たな選択肢となっています。相続土地国庫帰属制度とは、相続によって取得した土地を国に引き取ってもらうことができる制度です。

「この制度を利用するためには厳格な要件を満たす必要があります。境界が明確に確定していること、建物などの工作物がないこと、土壌汚染がないことなど、多くの条件をクリアしなければなりません。また、申請時に審査手数料を支払い、承認後には10年分の土地管理費用を一括で納付する必要があります。

この制度の登場により、民間でも類似のサービスを提供する業者が現れていますが、中には管理費用だけを受け取って適切な管理を行わない悪質な業者も存在するため、注意が必要です」

適切な専門家に相談する

農地売却を成功させるためには、適切な専門家の選択が不可欠です。しかし、農地法に精通した専門家は非常に少ないのが現状だと言います。

「行政書士の中には農地転用に必要な図面作成や面積計算などの理系的な知識に不慣れな方もいます。また、農地売却を謳う業者の中には、適切な資格を持たない人や実績のない人も見られます。依頼する際には、必ず宅地建物取引業の免許番号や行政書士の登録番号を確認し、国土交通省の『建設業者・宅建業者等企業情報検索システム』や日本行政書士会連合会のウェブサイトなどで照会することが重要です」

「農地バンク」の活用も選択肢のひとつ

農地バンクのイメージ図式

農地バンクのイメージ(SUUMO編集部作成)

信頼性の高い方法は、各市町村の農業委員会が運営する農地バンクへの登録です。農地バンクとは、農地の貸し付けや売買を希望する人と借りたい・買いたい人を繋げる機関です。2025年4月以降は原則、農地の貸し借り・売買は農地バンク経由になっています。

「農地バンクは公的機関が運営しているため信頼性が高く、農地法の手続きも適切に行われます。ただし、積極的な営業活動は行われないため、買い手が現れるまで長期間待つ必要がある場合もあります」

自ら買い手を探すことも可能

より積極的なアプローチとして、移住や田舎暮らしを希望する人々をターゲットとして自ら買主を探す方法があります。

「インターネット上には『田舎暮らし』や『移住』をテーマにしたサイトが多数存在し、これらを活用して直接買い手を見つけることも可能です。この場合、まず買い手候補を見つけてから、その人を農業従事者として育成するという逆転の発想も有効。週末農業学校などを利用して都市部の会社員などを兼業農家として育成し、農地の買い手として育てるという手法も実際に行われています」

農地法改正による農地売買の変更点

農地法は2023年4月に改正され、農地の売買が一部自由化されました。改正後も農地の売買が法律で厳しく規制されている点には変わりありませんが、一部の農地は販路が広がったといえるでしょう。

耕作面積の下限撤廃

農地法改正によって、第3条に定められていた「下限面積」が撤廃されました。耕作面積の下限は北海道が2万m2、その他の都府県は5000m2と規定されていましたが、2023年4月にこの要件が廃止され、現在は地域の実情に応じて自由に設定することが可能になっています。

条件を満たす個人・一般法人も農地購入が可能に

先のとおり農地を売買できるのは原則、農業従事者のみです。しかし、農地法改正で以下の条件を満たす個人も農地の購入が可能に。また、賃借であれば法人の参入も可能になりました。

■個人が農地を取得して参入する要件

  • すべてを効率的に利用すること
  • 一定の面積を経営
  • 周辺の農業に支障がない

■法人が農地を賃借して参入する要件

  • 貸借契約に解除条件を付す
  • 地域における適切な役割分担
  • 役員のうち1人は農業に常時従事

改正農地法による農地購入可能者の概要まとめ

出典:農林水産省「改正農地法の概要

農地の売却にかかる諸費用

農地の売却には、次のような諸費用がかかります。

仲介手数料

不動産会社の仲介で農地を売却する場合、仲介手数料がかかります。マンションや戸建て、宅地の売買にかかる仲介手数料の上限は、宅地建物取引業法で以下のように定められていますが、農地は宅地にも建物にも該当しないことから、地目が農地のままで農地として利用することを目的とした売買の場合、法的には仲介手数料の上限がありません。

売買金額 仲介手数料の上限(税別)
200万円 売買金額の5%
200万円超 400万円以下 売買金額の4%+2万円
400万円超 売買金額の3%+6万円

一方、宅地などに地目変更した後の売買、あるいはそれを目的とした売買では宅地建物取引業法が適用となり、仲介手数料の上限額も上記のとおりになります。ただし、取引価格が800万円以下の低廉な土地は、仲介手数料の上限額が30万円(税別)となります。

土地家屋調査士への報酬

土地家屋調査士に地目変更登記を委託する場合は、委託費がかかります。報酬の相場は、5万円前後です。なお、地目変更登記に登録免許税は課されません。

農地の売却にかかる税金

農地の売却には、次のような税金が課されることもあります。

印紙税

不動産売買契約書は、印紙税が課される文書です。税額は、売買金額によって次のように異なります。

契約金額 本則税率 軽減税率
10万円を超え 50万円以下のもの 400円 200円
50万円を超え 100万円以下のもの 1千円 500円
100万円を超え 500万円以下のもの 2千円 1千円
500万円を超え1千万円以下のもの 1万円 5千円
1千万円を超え5千万円以下のもの 2万円 1万円
5千万円を超え 1億円以下のもの 6万円 3万円
1億円を超え 5億円以下のもの 10万円 6万円
5億円を超え 10億円以下のもの 20万円 16万円
10億円を超え 50億円以下のもの 40万円 32万円
50億円を超えるもの 60万円 48万円
出典:国税庁

2027年3月31日までに作成される売買契約書は、表右の軽減税率が適用されます。なお、電子契約の場合、印紙税は非課税です。

登録免許税

相続登記や所有者の転居や結婚などによる変更登記が済んでいない場合は、登記費用がかかります。相続登記にかかる登録免許税は土地の価額に対して0.4%ですが、2027年3月31日まで免税措置がとられています。住所・氏名の変更登記にかかる登録免許税は、不動産1筆につき1000円です。登記手続きを司法書士に依頼する場合は、数万円程度の司法書士報酬が別途必要です。

譲渡所得税

農地の売却で譲渡所得が出た場合、譲渡所得税(所得税・住民税・復興特別所得税)が課されます。譲渡所得とは、簡単にいえば売却益を指し、以下の計算式で算出します。

譲渡所得=農地の売却額−(農地の取得費+農地売却にかかった費用)

譲渡所得にかかる税率は、農地を所有していた期間によって次のように異なります。

所有期間 所得税 住民税 復興特別所得税 合計
短期譲渡所得(所有期間5年以下) 30% 9% 0.63% 39.63%
長期譲渡所得(所有期間5年超) 15% 5% 0.315% 20.315%

農地売却の譲渡所得税を節税できる控除特例

農地の売却で出た譲渡所得は、次のような特例を適用することで控除できます。農地利用や転用など、売却の目的によって利用できる控除特例が異なり、細かな適用要件があるため、事前に農業委員会や税理士などに確認しておきましょう。

■農地利用目的の譲渡(売却)

  • 農地売買による800万円控除:農用地区域内の農地を農用地利用集積等促進計画又は農業委員会のあっせん等により譲渡した場合・農用地区域内の農地を農地中間管理機構又は農地利用集積円滑化 団体に譲渡した場合
  • 農地売買による1500万円控除:農用地区域内の農地等を農業経営基盤強化促進法の買入協議により 農地中間管理機構に譲渡した場合

■転用目的の譲渡(売却)

  • 農地売買による5000万円控除:農地が土地収用法等により買い取られる場合 等

引用:農林水産省「農地を売った場合の税金

まとめ

農地の売却は農地法による制限や複雑な手続きがあり、一般的な不動産売却とは大きく異なります。放置すると管理費用や税金が負担となり、農業従事者の減少により今後はさらに売却が困難になる可能性があります。

まずは所有する農地の区分を把握し、農地バンクへの登録や専門家への相談を検討しましょう。農地法に精通した士業や実績のある不動産会社など、信頼できる専門家のサポートを受けることが農地売却への近道です。

取材・文/亀梨奈美(realwave)

染谷崇さん

●取材協力
染谷崇
行政書士・測量士・宅建士・ファイナンシャルプランナー
染谷綜合法務事務所
33歳にて行政書士事務所「染谷綜合法律事務所」を開業。相続手続きや農地転用許可申請、建設業許可申請など、通算800件以上の多くの法律に関わる悩みや相談事に携わる。また、事務所には様々な有資格者が所属し、相談事をワンストップで解決に導く。

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