不動産売却の基礎知識や知っておきたいコツを分かりやすく解説します。売却の体験談もご紹介。

海外赴任が決まり自宅マンションを賃貸に!帰国後に売却/千葉県柏市Hさん(40代)

千葉県柏市Hさん(40代)/海外赴任が決まり自宅マンションを賃貸に!帰国後に売却

海外転勤中は千葉県柏市の自宅マンションを賃貸に出していたというHさん。帰国後は、市内の別のマンションを賃貸して暮らしています。自宅マンションは、借主の転居を機に売却されました。当初、楽観的だった売却活動ですが、売却期間は1年半と予想以上に長いものに。なかなか進まない売却活動をどのように決着したのか、お話を伺いました。

不動産区分 マンション
所在地 千葉県柏市
築年数 21年
間取り・面積 2SLDK(約74m2
ローン残高 なし
査定価格 2300万円~2600万円
売り出し価格 2480万円
成約価格 2350万円

賃貸に出していた自宅マンション。借主の引っ越しを機に売却を決意

今回Hさんが売却したのは、築8年のときに購入した中古マンション。千葉県柏市にある、総戸数は40戸程度、約74m2・2SLDKのファミリータイプの物件です。購入前の住まいは、まだ子どもがいないときから夫婦で住んでいた、同じ駅を最寄りとする賃貸マンションです。マンションを購入したきっかけは、子どもの誕生で少し手狭に感じ、なんとなく家について考えていた時にチラシを見たことです。手が届く価格帯に加え、買い物に便利な駅から徒歩10分と立地も良く、早速見学に行きました。

「住戸は2階にある角部屋です。メインは東の窓で、南と西側にも窓があります。メインの窓の前は駐車場なので、前は開けていて光が良く入ります。家の中はとても明るく、気持ちいい家だなと、早い段階で心が定まりました」

その後、しばらく住んでいる間に家族は4人に増え、ローンは繰り上げ返済で早めに完済しました。Hさんの転勤で家族とともに海外に赴く際は、自宅マンションは賃貸に出すことになりました。

■マンションを売るか貸すかの判断ポイント

家の買い替えや転勤で住まなくなった家や、相続した家などは、そのまま空き家にしておくのももったいないので、多くの人は売却か賃貸かを選択すると思います。売却する場合は、売却自体には手間がかかりますが、売却できればまとまったお金が入ります(住宅ローンを完済している場合)。一方、賃貸する場合は、借り手さえつけば賃料収入が得られますし、いつか必要になったときにはまた自分が住むという選択肢も残せるのがメリットと言えます。固定資産税などの税金や管理費・修繕積立金(マンションの場合)については、売却すればナシ、賃貸であれば負担が続きますので、このあたりのデメリットと手間がそれぞれのメリットと天秤にかけて判断する必要があります。一つ念頭に置いておきたいのは、売却する場合、建物の価値は年数が経つにつれて落ちていくということです。住宅ローン減税の恩恵を受けるには、多くの場合は木造なら築20年以内、マンションなどは築25年以内が条件となりますから、買う人にとって好条件のうちのほうが売却活動はスムーズでしょう。今まとまったお金が欲しい、将来また住みたい、というような自分のライフスタイルのタイミングと、築年数など物件の売りやすさというタイミング、両方を考えながら検討するのが良いでしょう。

帰国後に借主が転居。マンションを売却することを決意

2018年4月、Hさんの帰国が決まった当時、賃貸に出していた自宅には借主が住んでいました。そこで、Hさんは同じ駅を最寄りとする4LDK・88m2のマンションに賃貸で住むことにしました。

「子どもたちも成長し、ちょうど『我が家にとって今が一番、家に広さと間数が必要』と感じていた時でした。でも、実家を見ていると、広い家は子どもが自立した後は広さを持て余してしまいもったいないと思っていました。4LDKの広い家を買い直すとなると、それなりに高額ですしね。そこで、子どもが自立するまでの10年程度は、賃貸にしようと思いました。」

2019年5月、貸主の引っ越しに伴い、Hさんには①そこに戻って暮らす ②また賃貸に出す ③売却する という3つの選択肢ができました。

「結局、①は今の私たちには家のサイズが合わない、②は数年~10年程度賃貸に出した後では物件の築年数は30年前後になってしまい、売りにくくなってしまうかもという懸念がある、ということで、このタイミングで売却するのが一番良いだろうと判断しました」

築25年を過ぎた物件では住宅ローン控除が使えないことや、古い物件の管理費・修繕積立金は高くなりがちということを考えても、築20年くらいはちょうど良い売り時と感じたそうです。

Hさんのマンションの周りはマンションが多いエリア。近所に大きなマンションができた際も、すぐに住人が入った様子がうかがえたHさんは、「エリア的には人気があるんじゃないかな」と、なんとなく売却活動を楽観視していたそうです。

「自分が物件を見学してすぐ気に入ったように、よく日が入って明るい我が家は、見てもらえれば気に入ってもらえるだろうと思っていました。当時は半年くらいで売却できると考えていましたね。」

地元をよく知る、チラシで目にする不動産仲介会社に依頼

売却を決断した2019年5月、Hさんはまずはポストに良く入るチラシの仲介会社に3社にコンタクトを取りました。地元にある不動産仲介会社であれば、打ち合わせもすぐにできますし、地元の情報に強そうだと考えたからです。

「簡易査定では、2300万円~2600万円と300万円ほどの幅がありました。その中で、2480万円と比較的査定額が高めで、仲介手数料を値引きするといってくれた会社にお願いすることにしました。もちろん、担当者のレスポンスが早めで印象が良かったことも決め手のひとつです。」

2019年6月、近くに店舗のある大手不動産仲介会社に決め、専任媒介契約を結びました。
しばらくは賃貸で暮らしていくことを選択し、すでに住宅ローンも完済しているHさん。売り出し中のマンションの管理費・修繕積立金や固定資産税などは売却できるまで負担が続きますが、すぐにまとまったお金が必要というような特別急ぐ理由もなかったので、金額優先で売却活動を進めることにしました。

長引く売却活動と感染症の拡大。1年を区切りに不動産仲介会社を変更し3LDKの壁を突破

Hさんの売却活動は、WEBサイトへの掲載と、近隣へのチラシ配布でした。室内をバーチャル体験できる動画コンテンツもあったといいます。

「反響はポツポツありました。最初の内見は、活動を始めてから1~2カ月くらいです。その後、内見の希望は、月に1回あったりなかったり。不動産仲介会社の担当からは、毎週1回、電話で状況報告がありました」

半年くらい経ち段々と反響が減ってきたころ、近隣に競合する物件も多いということで、不動産仲介会社から価格の引き下げ提案があったといいます。売り出し価格の2480万円だと、2500万円を予算とする人には検討対象になりますが、もう少し下げて2450万円にしたら、予算感が2400万円前半という人の視野に入るのではないか、という話です。検索が増える連休に合わせたタイミングが良いのでは、という提案を受け11月に2450万円に値下げしました。
ただし、効果はあまり芳しくなかったといいます。

「その後、2200万円で買い取っても良いという会社を紹介できるという提案も頂きましたが、その時はまだ早く売りたいという感じでもなく、2450万円のまま価格を据え置いて様子を見ることにしました。」

不動産の売買は、年明けから3月いっぱいの引っ越しシーズンにかけてよく動きます。Hさんはこの時期は2450万円のまま様子を見ていましたが、ちょうどこの頃、新型コロナウイルスが流行。反響は大きく冷え込みました。

「世の中はステイホームの状況になりました。こうなると、価格にメリットを感じてくれる人でないと決まらないのではないかと思いました。すでに不動産がよく動く年度末のシーズンも過ぎたので、次に動きが活発になるゴールデンウイークの前に、再度価格を見直すことにしたのです。」

2020年4月、価格を2380万円に引き下げました。そろそろ売却活動も1年に近づき、Hさんは「思ったより売却活動は難航している」と感じるように。「早く売れてほしい」と価格よりもスピードが気になるようになってきたといいます。
不動産仲介会社とは、3カ月ごとに契約更新がありました。売却活動中も、たまに他の不動産仲介会社から連絡があり、営業を受けることがあったそうです。Hさんは、それまでお世話になった営業担当の方に不満があったわけではありません。でも、別の不動産仲介会社の「一度、当社を試してみてほしい」という働きかけに自信がありそうな印象をうけ、別の会社と契約してみようという気持ちになりました。売却活動開始から一年を機に、不動産仲介会社を変えたのです。

不動産仲介会社を変更するイメージ

「不動産仲介会社が変わったことで、劇的に反響が増えた感じではありませんでしたが、最初に売却活動をスタートしたときと同じくらいには反響が出てきた印象です。」

実は、Hさんのマンションは2SLDKという間取りが、売却活動の可能性を狭めていました。Sというのはサービスルーム。実際には居室として使える場合が多くありますが、床面積に対して窓のサイズが少し小さいなど、居室としての法的な規定を満たしていない場合にはSという表記になります。3LDKと同様に使えても、表記はできないため、3LDKを条件に検索するとヒットしません。実際に見えてもらえれば気に入ってもらえる物件も、視野に入らなければ検討すらしてもらえない。Hさんのマンションは、まさにそんな物件でした。

「新たな担当者は、3LDKを希望して別の物件の問い合わせをしてきた方に、2SLDKの我が家を紹介してくれるようになりました。おかげで、滞っていた売却活動に、内見などの動きが出てきたのです」

2020年8月に内見をした近隣に住む老夫婦が、Hさんのマンションを気に入ってくれました。2350万円であればすぐに決めたいと申し出があり、受けることに。10月末に売買契約を結びました。

売却活動に迷いが生じたことも。売却ができた今は一安心

今回の1年半という長い売却活動を振り返り、「今は区切りがついてよかった、と安心している」というHさん。なかなか売却先が決まらない中、「自分たちが住んだり、再び賃貸に出したり、といった別の選択をするべきだったのかな」と迷いが頭をかすめることもあったといいます。同時に、Hさんは自分でできることは少ないものだなとも感じたそうです。
「できることといえば、内見があったときに少しでもきれいに見えるよう、窓を拭きに行くくらいでしたね」

そんな中、不動産仲介会社を変えてみたHさん。担当が変わればアプローチの仕方も変わりますし、情報を見せる相手も変わるでしょう。担当者に対して不満がなくとも、売却のパートナーを変えることは膠着状態を打開する一手としては有効だったようです。

現在は賃貸住まいのHさん。子どもが成長し、独立した後、老後の住まいは夫婦2人にちょうど良いサイズの家を購入したいと考えているそう。その時は、経済性を考えて、価格の評価が落ち着いた中古マンションから選びたい、と教えてくれました。

2019年5月 ・貸主の引っ越しを機に売却を思い立つ
・チラシで目にした不動産仲介会社3社に査定依頼
2019年6月 ・不動産仲介会社と専任媒介契約
・2480万円で売却活動スタート
2019年8月 ・初めての内見希望者が現れる
2019年11月 ・2450万円に値下げ
2020年4月 ・2380万円に値下げ
2020年6月 ・別の不動産仲介会社と専任媒介契約
2020年8月 ・購入希望者が内見
2020年10月 ・2350万円で売買契約締結
2020年12月 ・引き渡し、売却活動終了

まとめ

  • 物件の売却時期の判断は住宅ローン控除の恩恵が受けられる築25年以前のほうが有利
  • 実際には3LDKと同様に使える2SLDKは、3LDK希望者に検討してもらえるような工夫が必要
  • 売却活動が膠着(こうちゃく)した場合、不動産仲介会社を変えてみるのも手

取材・文/竹入はるな イラスト/いぢちひろゆき

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