不動産売却の基礎知識や知っておきたいコツを分かりやすく解説します。売却の体験談もご紹介。

大阪府池田市Sさん(60代)/両親が老人ホームに入居し実家が不要に。資産整理のため父の代理になって売却活動

大阪府池田市Sさん(60代)/両親が老人ホームに入居し実家が不要に。資産整理のため父の代理になって売却活動

両親が老人ホームに入居したあと、実家の管理をしてきたSさん。父に売却を勧め、委任状をもらって代理で売却活動を行いました。解体を依頼した不動産会社から「買い取りたい」と打診され、「仲介手数料込みで5500万円なら」と条件を出しました。希望通りの買取額でしたが、後日、不動産会社がSさんが売った土地を、6700万円で売却したと知らされ愕然。もっと相場を調べてから交渉すればよかったと後悔しています。

不動産区分 古家付き土地
所在地 大阪府池田市
築年数 約52年
間取り・面積 家…6DK(100m2) 敷地面積…222m2
ローン残高 なし
査定価格 なし
売り出し価格 なし
成約価格 5500万円

高齢の両親から管理を任された実家。管理が大変で売却したいと思うように

大阪府に暮らすSさんは、体調を崩しがちの父母に代わって実家の管理をしてきました。両親を引取り、自宅介護をする予定でしたが、2016年にふたりとも老人ホームに入居が決まりました。

「両親はもう実家に戻ることはないですし、誰も住まない家を管理するのも無駄な気がして。老朽化が進んでいてご近所に迷惑をかけないかも心配でした。当時、大型台風が相次ぎ、屋根が飛んで周囲に迷惑をかけないか、火事にならないか、いつもハラハラ。私はすぐに売却したかったのですが、父を説得するのが大変でした」

大阪府池田市にある一戸建て(100m2・6LDK)は当時築52年、222m2の敷地に建っていました。

「最寄り駅からは徒歩4分、大阪国際空港まで車で5分の距離にあり、交通アクセスは良好で、築年数は50年以上あるものの、確実に売れるだろうと期待していました」

父から委任状をもらい、代理で売却活動を行う

父親に説得を試みながら不動産仲介会社を探していましたが、付き合いのあった地元の不動産仲介会社を相談に訪れたのが2018年4月。不動産仲介会社の社長や司法書士に老人ホームへ同行してもらい、建物の状況を説明したところ、父親もやっと納得してくれました。高齢の父親が売却の手続きを進めるのは難しかったため、売却活動はSさんが進めることになりました。5月には父から委任状を預かり、代理人となり、売却活動を行うことになりました。

はじめは、仲介による売却を考えていたSさん。

「5000万円位で売れたらいいかなと思っていました。5700万円位から売り出して、最終的に5500万円で売れるのではと想定していました。当時は、どちらかというと価格より早く売りたい気持ちが強かったです」

不動産会社からの買取の打診を受け入れ、5500万円で売却

相談していた不動産仲介会社には、とりあえず建物の解体だけお願いして、いずれ専属専任媒介を結ぶつもりでしたが、2019年7月、不動産仲介会社の社長から電話がありました。「Sさんと媒介契約を結ぶのではなく、自分の会社で売却したいので、買取りたい」と言われたのです。

初めから、はやく売却してすっきりしたいと考えていたSさんは、「仲介手数料込みにしてもらい、5500万円が手元に残るなら」と条件を出し、5500万円で買取が決定。売買契約を結び、解体後の2018年9月に物件を引き渡しました。

■買取とは

買取には、「即時買取」と「買取保障」があります。「即時買取」とは、土地や建物を買い取り、住宅の建築やリフォームなどをして販売するような不動産会社に不動産を直接買い取ってもらう方法をいいます。直接売買のため仲介手数料がかからず、売却期間が短くて済みます。「買取保障」は、仲介業務と買取業務を兼ねる仲介会社のサービスのひとつで、最初に仲介市場での売却活動を行い、一定期間中に売却できなかった場合に、当初約束した金額で買い取ることを保証してもらえます。いずれも、買取の場合、売却価格が市場価格より安くなる可能性が高いことがデメリットです。

もっと高く売れたことを知り後悔。交渉前に勉強しておけば

「当初は、希望通りで売れて満足していたのですが、後日談があって……」とSさん。しばらく経って不動産仲介会社の社長から、土地が6700万円で売れたと知らされたのです。

不動産売却の売却額を後悔するイメージ

「自分から5500万円という希望額を出してしまったことを後悔しました。もっとうまく交渉できたのではないかと、3年間は引きずりましたね。今は吹っ切れて、父の代わりに老朽化した危険な状態の建物を解体・売却できて、よかったと思っています」

家族の大切な財産を無事整理したSさんは、すっきりした表情でした。

2016年ごろ ・父母が老人ホームへ入居
・売却を意識し始める
2018年4月 ・地元の不動産仲介会社に相談に行く
・父から委任状を預かり、代理で売却活動を行う
2018年5月 ・地元の不動産仲介会社に解体のみ依頼する
2018年7月 ・不動産会社から買取を打診される
・5500万円で売買契約を結ぶ
2018年9月 ・解体後、物件を引き渡す

まとめ

  • 親名義の不動産を売却する場合は、委任状を用意して代理人になる必要がある
  • 買取と仲介による売却、それぞれのメリット・デメリットをよく検討して決める
  • 築年数が古い一戸建ては、管理が大変で維持費がかかるため、使わないなら売却を検討する

取材・文/内田優子 イラスト/村林タカノブ

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