不動産売却の基礎知識や知っておきたいコツを分かりやすく解説します。売却の体験談もご紹介。

富山県射水市Nさん(50代)/実家近くの約540平米の休耕田(雑種地)を相続。一戸建てには広すぎる土地を売却した作戦とは

富山県射水市Nさん(50代)/実家近くの約540平米の休耕田(雑種地)を相続。一戸建てには広すぎる土地を売却した作戦とは

実家の父親が亡くなり、富山県射水市にある土地をいくつか相続したNさん(50代)。約540m2の雑種地(休耕田)について知り合いの不動産仲介会社Aに売却を依頼しましたが、特殊な土地であることから、一般的な方法での売却が難しく、別の不動産仲介会社Bに相談。Nさん自身が不動産に精通していたこともあり、価格を見直して約半年で売却が成立しました。

不動産区分 土地(雑種地)
所在地 富山県射水市
築年数 ––––––––
間取り・面積 約540m2
ローン残高 ––––––––
査定価格 ––––––––
売り出し価格 500万円
成約価格 450万円

離れて住む親が亡くなり、休耕田(雑種地)を複数相続

2017年5月、Nさんは離れて住んでいた父親が亡くなり、富山県射水市にある土地を相続しました。相続した土地は、駅から徒歩約15分の田園地帯にあり、地目(登記簿に記載されている土地の用途や種類)は雑種地でした。広さは約540m2、以前は田んぼでしたが、10年ほど前から休耕田になっていました。

■雑種地とは

雑種地とは、不動産登記における「地目」の1つです。「地目」は、登記所の登記官が決めた土地の主な用途のことで、現況と利用状況により23種類に限定されています。雑種地は、宅地、田、畑、山林、原野、学校用地、塩田、池沼など法務省令で定められた他の22種類の用途のいずれにも該当しない土地のことです。休耕田(雑種地)の地目を宅地に変更する場合は、地方自治体の農業委員会への確認、農地法、都市計画法、建築基準法など、関連する法律の確認・許可を受けたうえで工事を行う必要があります。

「市街化区域にあり固定資産税も高いですし、土地を持っていても有効活用が難しく、そのうち草が生い茂ってくると手に負えなくなってしまいますし、手間とお金がかかるだけの土地ですから、売却しようと思いました」

売るのが難しい雑種地を2度に分けて売却

「実はこの約540m2の雑種地以外にも、同じような土地をいくつか相続していました。一度に売却すると一時的に所得が上がり、翌年の税金が高くなってしまうので、一度にではなく毎年1筆ずつ売りましょうということで、2018年、2019年と年に1筆ずつ順番に売却した、という背景があります。

今回の約540m2の雑種地も同じように売りたいと考えていたのですが500万円で売却を依頼して1年たっても問い合わせが1件もありませんでした。幹線道路から100mくらいの距離で、一方は鉄道の線路に接していた土地で、そういう意味ではあまり条件が良くなかったかもしれません。

前の2筆の土地を売却してくれた不動産仲介会社は知り合いということもあって、今回もその延長で口約束のような形でお願いしていましたが、正式な媒介契約は結んでいませんでした。問い合わせも反響もないなら、他の不動産仲介会社に変えた方がいいと思いました」

雑種地は特殊な土地のため、一般的な不動産ポータルサイトで見られる土地相場などをそのまま当てはめることができず、正確な売却価格を予想することは難しいものです。不動産仲介会社に依頼するとしても、宅地以外の土地の売却に詳しく実績がある会社、得意な会社を選ぶ必要があります。2つに分筆して宅地転用手続きを済ませてから売ることも考えましたが、宅地に転用するにはさまざまな手続きや工事が必要で時間もかかります。

宅地建物取引士の資格を持っているNさんは、ネットで周辺の土地や宅地を調べて参考に、さまざまな角度から土地の価値を考えて自分なりに値付けを検討しながら、不動産仲介会社を探していました。

不動産仲介会社を探すイメージ

知り合いの紹介で新たな不動産仲介会社に依頼。価格も50万円下げて売り出し半年弱で売却成立

2021年12月、知人に紹介してもらった不動産仲介会社Bと媒介契約を結び、新たに売却活動をスタートしました。また、新たな不動産仲介会社に依頼するに当たって価格も見直しました。

「固定資産税評価額が610万円でしたので、200万円くらい下げて売り出すと相当安い印象を与えると思いました。また相続税評価上の評価額(相続税路線価)は449万円と記載されていたので、450万円で売りに出しました」

不動産仲介会社Bからは2カ月に一度くらい連絡がありました。不動産ポータルサイトにも掲載してもらいましたが、問い合わせはありませんでした。「一戸建てを建てるには広すぎる土地だったので、個人の買主には敬遠されたのでしょう。その会社は不動産の売買以外に賃貸物件・管理なども扱っていたので、アパート、マンションを建てる投資目的の人に直接声をかけてくれたようです。対応はとても良く、売却活動の進捗報告のたびに『力を入れてやっています』と意気込みを伝えてくれました」。そして約半年後の2022年5月に買い手が現れ、450万円で売買契約が成立しました。

要望を遠慮なく伝えたことで売却活動に後悔少なし

期間よりも価格にこだわったNさん。雑種地をそのままの状態で、450万円で売却できたことで「もう少し高くても良かったかもしれないと考えると後悔がないことはありませんが、全体的に満足度は高かったです」と振り返ります。

「結局は投資家の方が買ってくれたようです。特殊な売買だったので、一般の売り主の参考になるかどうか分かりませんが、一般的に一括査定サービスや複数の会社に査定額を出してもらった場合も、査定額が一番高いところに依頼するのではなく、その査定額を出した根拠を各社に聞いて納得できる説明をしてくれる会社と契約するのが重要だと思います」と豊富な知識をもとにアドバイスをいただきました。

2017年5月 ・雑種地を複数相続する
・1年に1筆ずつ売却することを検討
・知り合いの不動産仲介会社Aに依頼
2018年 ・不動産仲介会社Aを通じて1筆を売却
2019年 ・不動産仲介会社Aを通じて1筆を売却
・540m2の雑種地の売却を不動産仲介会社Aに依頼
2021年12月 ・不動産仲介会社Bに依頼。一般媒介契約を結ぶ
・450万円で売り出す
2022年5月 ・買い手が現れ、売買契約成立
・土地を引き渡す

まとめ

  • 雑種地など特殊な条件の土地の売却は、プロと相談して立地や広さを考えて地目の変更も検討するとよい
  • 不動産仲介会社から売り出し価格の提案があった場合は、どういう根拠でその価格にするかを確認する

取材・文/佐藤由紀子 イラスト/松尾達

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