不動産売却の基礎知識や知っておきたいコツを分かりやすく解説します。売却の体験談もご紹介。

秋田県大仙市Sさん(60代)/老後の雪下ろしの不安で、首都圏移住を決断。「査定額が安すぎない?」の指摘で、査定額550万円→980万円にアップ

秋田県大仙市Sさん(60代)/老後の雪下ろしの不安で、首都圏移住を決断。「査定額が安すぎない?」の指摘で、査定額550万円→980万円にアップ

秋田県大仙市で暮らしていたSさんは、冬場は屋根の雪下ろしがかかせず老後の管理が不安に。7人家族で暮らした家は、ひとり暮らしには広すぎることもあり、埼玉に移住を決意。買取専門の不動産会社に980万円で売却しました。

不動産区分 一戸建て
所在地 秋田県大仙市
築年数 約25年
間取り・面積 家:5LDK(約150m2) 土地:270m2
ローン残高 500万円
査定価格 550万円
売り出し価格 なし(買取)
成約価格 980万円

大家族で暮らした家は、ひとり暮らしに広すぎて売却を決める

2021年3月いっぱいでの定年退職が決まったSさんは、秋田県大仙市の5LDK(152m2)の一戸建てに今後もずっと住み続けるのか迷うようになりました。

「1996年に270m2の土地に新築した木造2階建てで、もともと7人家族で暮らしていましたが、当時はひとり暮らし。思い入れのある家でしたが、このままひとりで住むのは広すぎます。子どもたちに確認したら、実家に戻ることはないという返事でした」

一人暮らしには広すぎる家の売却を決断

家の立っていた地域は、冬は数10センチの積雪があり、屋根の雪下ろしがかかせません。今後、ひとりで管理していけるだろうかという不安もあり、退職を機に雪が積もらない地域に移住しようと決めました。

一戸建ては、静かな住宅街にあり、駅までは徒歩20分。3500万円で購入してから25年がたち、500万円のローンが残っていました。

引っ越しの期限までに確実に売りたくて、最初から買取先を探す

2021年3月いっぱいでの退職が決まっていたので、4月までに引っ越す必要がありました。移住先に選んだのは、子どもが住んでいる埼玉県です。引っ越し準備と並行して不動産会社探しをはじめますが、Sさんは最初から仲介での売却をする気はありませんでした。

「仲介だといつ売れるかわからないと思ったんです。もし、ずっと売れなければ、また冬が来て、住み替えた後、雪の管理を業者に依頼しなければいけないことを心配していました。1回10万~15万円もかかり、3回は必要なので50万円近くもかかるんです」

都内で再就職先も決まり、確実に希望する期日までに売却したいと希望していました。簡易査定をすると、1社目は仲介しかしないことがわかり、2社目、買取専門の不動産会社に訪問査定を依頼。査定結果は、550万円でした。

「買取専門の不動産会社は、『どんな中古住宅でも必ず買い取る』が売り言葉でした。テレビCMをしている大きな不動産会社で、広告もばんばん出していましたから、やる気があるのではと。家具や家電類の処分もしてもらえるというので、そこでいいかなと思っていました。大体の買取額がわかったので、埼玉での住み替え先を探し始めることにしました」

査定額は550万円だが、他社に査定を依頼したところ900万円が提示される

住み替え先探しをしているなかで、近所の人と世間話をしている際、「近隣の相場からすると、550万円は安すぎるんじゃないか。ほかにも聞いてみたら」と勧められ、Sさんの心は揺れました。そこで、追加で2社の不動産会社に査定を依頼することにしたのです。

「3社目に依頼した不動産会社が900万円の査定価格を提示してきたのです。1社目の不動産会社に断りの電話を入れ、他社から900万円の査定価格を提示されたことを伝えると、1社目の不動産会社が980万円で買うと言ってきたのです。この展開には驚きました。980万円からローンの残債500万円を引くと480万円が残り、引っ越し費用や住み替え先購入の足しにできますので、そこに決めました」

売買契約後、決定した埼玉県の住み替え先は、最寄駅から徒歩30分、築28年の一戸建てです。640万円現金一括で購入し、予定通り2月に引っ越し、旧居の引き渡しを終えました。

1社目と2社目の不動産会社が競い合い、980万円で売却できた

当初、仲介で高く売れても、700万円は越えないだろうと考えていたSさんは、当初の買取の査定価格を妥当だと考えていました。しかし、他社にも査定を依頼し、比較した結果、期待以上の買取額になりました。

なによりよかったことは、他社に査定を取り直したこと。査定価格を比較して、1社目に伝えたことで、買取額を上げることができました。

「980万円の売却額は、購入価格3500万円を下回る価格でした。不動産会社から、譲渡益は損益通算でき、課税対象額を減らすことができると教えてもらいました。そういったフォローもよかったので、不動産会社選びは成功だったと思います」

住み替え先の埼玉は、雪がほとんど降らず、降っても深く積もることはありません。敷地もひとまわり小さくなり、維持管理もずっと楽になりました。

「住み心地は最高です。夏は暑いですけどね」と笑顔を見せるSさんでした。

■譲渡益の損益通算

損益通算とは、赤字の所得を黒字の所得から差し引くことです。マイホームの売却で生じた損失については、売却(譲渡)した年に事業所得や給与所得など他の所得との損益通算をすることができ、控除しきれない損失の金額については、その年の翌年以後3年間にわたり繰り越して控除することができます。一定の要件を満たす場合に限り、マイホームの買い換えで損失(譲渡損失)が出た場合は、「マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」、住宅ローンのあるマイホームを住宅ローンの残高を下回る価額で売却して損失が出た場合は、「特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」という制度があります。

2019年ごろ ・売却を意識し始める
2019年10月 ・簡易査定を依頼する
・訪問査定を依頼し、550万円を提示される
2020年3月 ・住み替え先を探し始める
2020年12月 ・追加で2社に見積もり
・980万円での買取が決まる
2021年1月 ・売買契約を結ぶ
・住み替え先の売買契約を結ぶ
2021年2月 ・住み替え先に引っ越し
・物件の引き渡し

まとめ

  • 引っ越しの時期が決まっている場合、買取なら予定が立てやすい
  • 複数社に買取の査定を出してもらうと、適正価格の目安がつきやすい
  • 売却して赤字になった場合、確定申告の損益通算で課税対象額を減らせる

取材・文/内田優子 イラスト/石山好宏

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