不動産売却の基礎知識や知っておきたいコツを分かりやすく解説します。売却の体験談もご紹介。

相続した築50年の実家。空き家になるのを防ぐため、姉妹が協力して売却。/愛知県小牧市Oさん(40代)

愛知県小牧市Oさん(40代)/相続した実家、姉と分けるため売却を決意

愛知県小牧市の実家を父から相続し、共有名義者の母、姉と所有していたOさん。母が亡くなり、売却して得たお金を姉と分けることに決定。不動産仲介会社に名義変更や特例について相談しながら、550万円で売却しました。

不動産区分 古家付き土地
所在地 愛知県小牧市
築年数 約50年
間取り・面積 5LDK(延床面積…100m2、敷地面積…190m2
ローン残高 なし
査定価格 1200万円
売り出し価格 1200万円
成約価格 550万円

姉と共有名義で実家を相続。

父が亡くなったあと、愛知県小牧市の実家を、母・姉と共有名義で所有していたOさん。

「2019年に母が亡くなり、いろんな手続きがいち段落した1カ月後に姉と家をどうするか相談しました。建て直して自分が住もうとも思ったのですが、駅から車で15分かかる不便な立地ですし、結局、売却することを決めました」

物件は190m2に建つ100m2・5LDKの平屋の一戸建てです。築50年で老朽化が進んでいました。

「まわりには工場があり、トラックの行き来による騒音もありました。本当に売れるのだろうかと心配でしたよ」

4社から最高1200万円の査定価格を提示され、1200万円で売り出す

売却活動はOさんが行うことが決まり、不動産仲介会社探しを始めました。インターネットで一括査定をすると4社から返事がありました。そのうち1200万円の査定価格を提示した不動産仲介会社と、2019年10月に専属専任媒介契約を結びました。

Oさんは「査定価格があまりにも高いのでは」とびっくりしましたが、担当者は熱意があり、『売れない土地はありません。絶対売れます!』と強気でした。そこで、査定通り、1200万円で売り出してみましたが、2カ月経っても全く反響がなく、担当者は一気に980万円に値下げすることを提案してきました。Oさんは、その頃から担当者の対応に不満をもつようになりました。

「そのほかにも、空き家の発生を抑制するための特例措置が使えると提案され、必要書類をそろえていたら、結局条件が合わず使えないことがわかりました。いろいろ話が違うなと疑問に感じてきたのです」

全く反響がなく契約満了でほかの不動産仲介会社と契約

そこで契約を更新せず、2020年6月、最初に簡易査定を行ったうちの別の不動産仲介会社に依頼することにして専属専任媒介契約を結びました。その会社が訪問査定をした結果、査定価格は、550万円でした。

「1社目とあまりに差があるのでびっくりしましたが、私も近所の売却価格から、実際の価値は500万くらいだろうと感じていました。提案通り550万円で売り出すことにしました」

すると、ほどなくして近くの工場の事業主から購入したいと連絡がありました。

「50万円の値引き交渉があったのですが、古い時代に測量された地図で、新たに測量しなおすと、実際の敷地面積が登記されている土地の面積より大きかったのです。そのため、2020年11月、値引きなしの550万円で売却が決まりました」

名義変更の手続きや特例についても相談にのってくれた不動産仲介会社に感謝

「名義変更の必要があることや手続き方法、相続した不動産を3年以内に売却すれば節税になる制度も教えてくれました。そのほか、細かいところでは、『売地の看板は売れない場合、人気がないことがわかってしまうので立てない方がいい』など経験が豊富で、説得力がありました」

■「取得費加算の特例」とは

家や土地を売却した時、売却価格から、購入時の価格や仲介手数料などの取得費を差し引いた利益に課税される譲渡所得課税。所有期間が長いほうが税率が低くなりますが、相続税の申告期限から3年以内に売却すれば、さらに税負担が軽くなります。売却価格から、取得費や譲渡費用のほかに売却した土地や建物に対する相続税額を減算できるため、課税対象になる譲渡所得を少なくすることができます。これを取得費加算の特例といいます。相続税申告期限から3年以内に売却したときの課税譲渡所得金額は、1. 売却(譲渡)価格 - 2.(取得費+譲渡費用+売却した不動産に対する相続税額)= 3. 課税譲渡所得金額。「取得費加算の特例」で1から2を差し引けるので、課税対象になる3を減らせるのです。

不動産仲介会社の担当者との打ち合わせイメージ

父母の残した荷物は姉と一緒に処分しましたが、大型家具については残置物処分業者を紹介してもらいました。12月には解体も終わり、引き渡しを終えました。

残置物の処分、解体、名義変更、仲介手数料などすべての経費は、250万円かかりました。こんなにかかるものなのかと驚きましたが、「いつまでも売れなかったらどうしよう」と思っていたOさんは、安心したそうです。売却して得たお金は、姉と分けたあと、大切に預金しています。

2019年9月 ・実家の売却を決める
・簡易査定で最高1200万円の査定額が出る
2019年10月 ・1社目の不動産仲介会社と専属専任媒介契約を結ぶ
・販売活動の開始
2020年6月 ・2社目の不動産仲介会社と専属専任媒介契約を結ぶ
・訪問査定で550万円の査定額が出る
2020年7月 ・購入者が現れる
2020年11月 ・550万円で売買契約を結ぶ
2020年12月 ・物件を引き渡す

まとめ

  • 最初に使える特例や制度について不動産仲介会社に確認しよう
  • 古い地図を元にした登記簿は、現況の面積と異なっている場合がある
  • 売却価格から残置物撤去、測量、解体の費用が引かれることを見込んでおく

取材・文/内田優子 イラスト/杉崎アチャ

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