
自身の通勤先に近い埼玉県志木市に新築マンションを購入したMさん。しかし東京都内に勤務する妻と、東京都内の私立小学校に通う可能性のあった子どものために、わずか4年後に売却することにしました。
| 不動産区分 | マンション |
|---|---|
| 所在地 | 埼玉県志木市 |
| 築年数 | 4年 |
| 間取り・面積 | 3LDK(67m2) |
| ローン残高 | 3900万円 |
| 査定価格 | 4380万円 |
| 売り出し価格 | 4380万円 |
| 成約価格 | 4280万円 |
夫の通勤のため転居して4年後。妻と娘の通勤・通学を考えて再び都内に戻ることに
2014年、妻と娘と暮らすMさんは東京都新宿区から埼玉県志木市の新築マンションに移り住みました。Mさんはそれまでにも何度か住み替えをした経験があり、志木市への転居はMさんの通勤と当時就学前だった娘の進路を考えてだったといいます。
「新宿は妻の職場に近くて便利だったものの、私の職場は埼玉県にあるため通勤に時間がかかっていました。それで今回は私の通勤時間を優先しようということで物件を探しました。志木市は私の職場にはアクセスが良く、マンション立地が小中学校の通学にも便利だったため購入を決めました」
志木市の新築マンションは最寄駅まで徒歩5分。始発駅で急行も停まり、複数の路線に乗り入れていたため、どこへ行くにも便利でした。駅前には多くの商業施設が並び、とても暮らしやすい環境だったといいます。
「マンションの近くには病院もありました。さらに購入したマンションは1フロアに住戸が2つしかなく、すべての住戸が角部屋。購入したのはその最上階でしたから資産価値も高いと考えたのです」
ところがわずか4年で、そのマンションを売却することになります。「やはり妻の通勤が負担になり、2人で話した結果、再び新宿へ戻ろうということになりました。また子どもを私立の小学校に通わせることも考えはじめ、ちょうど新宿区に条件に合う小学校を見つけたので、まだ入学は決まっていませんでしたが、なるべく早めに新宿区へ引っ越そうということになったのです」
暮らしながら内見してもらうより、家財道具も何もない状態のほうが見やすいだろうし、広告に載せる写真映えもいいだろうと考え、売却活動の直前に志木市内の賃貸住宅に引っ越しました。一気に新宿区に転居しなかったのは、まだ子どもが私立小学校への入学が決まっていなかったからです。
不動産仲介会社と一般媒介契約を結び、売却活動を開始
賃貸住宅に引っ越してすぐ、人づてで紹介してもらったA社と一般媒介契約を結び、2017年11月から売却活動を始めました。専属専任媒介や専任契約にしなかったのは、以前にもマンションを売ったことのあるMさんの経験からです。
「そのときは全国的な知名度のある大手不動産仲介会社と専属専任契約を結びました。ところが3カ月間の契約期間で内見者がわずか1組しかなかったのです。そこで一般媒介契約に切り替えたら、すぐに連絡をくれた他社が購入希望者を連れてきてくれて。あとはとんとん拍子で売却まで進みました」
それに、今回売却するマンションは資産価値があると考えていたので、一般媒介なら他社からもきっと声がかかると思ったそうです。「不動産会社選びでこだわったのは仲介手数料の値引きができるかどうかということでした」
それでも安かろう悪かろうでは困るので、仲介手数料の安い不動産仲介会社の中で、小さいながらも丁寧で誠実だと感じたA社を選んだそうです。実際A社の本社は東京都にあるのに、足しげく通ってくれ、定期的な報告義務のない一般媒介契約にもかかわらず、マメに連絡をくれたそうです。
売り出し価格はA社の査定額である4380万円。「といっても周囲に築4年で売り出しているマンションはありませんでした。いずれもウチよりも築古で、駅から遠く、正直この査定額が正しいのか自信はありませんでした。ただ、ローン残高の3900万円を考えるとこれくらいで売れてほしいなとは思っていました」
また賃貸住宅で暮らし始めたため、マンションの支払いと賃料をダブルで支払うことになったため、なるべく売却期間を短くしたいと考えていました。
■媒介契約の種類と、それぞれの特徴
不動産を売却する際、不動産仲介会社と媒介契約を結んで売却活動を行います。媒介契約には「専属専任媒介」「専任媒介」「一般媒介」の3種類があります。
まず「専属専任媒介」とは1社のみと結ぶ媒介契約で、他の不動産会社だけでなく、売主も買い手を探すことができません。一方で任された不動産仲介会社は、1週間に1回以上の頻度で売主に販売状況を報告する義務があります。一社のみの契約で報告義務も厳格なため、一般的には不動産仲介会社に積極的に活動してもらいやすくなります。
次に「専任媒介」は、「専属専任媒介」同様1社のみと結ぶ媒介契約ですが、売主が買い手を探すこともできます。ただし報告義務は2週間に1回以上の頻度になります。こちらも他社にお願いしない分、契約した不動産仲介会社が積極的に活動してくれやすくなります。また、知人や親せきなどが買い手となる可能性がある売主にとってはメリットのある媒介契約です。
最後の「一般媒介」は複数の不動産仲介会社に売却を依頼できる媒介契約です。広く購入希望者を探しやすくなるため、購入希望者が何人も見つかるような人気の高い物件なら、最もよい条件の購入希望者に売却することができます。ただし不動産仲介会社には売却活動の報告義務がなく、「専属専任媒介」や「専任媒介」と比べて積極的に活動してもらえない可能性があります。
売出から3カ月後、100万円の値下げで無事売却
A社と契約して1カ月ほど後に連絡をくれたB社とも一般媒介契約を結びました。「B社は全国規模で展開している大手の不動産仲介会社でした。仲介手数料はA社より少し高かったのですが、許容範囲でしたので契約することにしました。ただ、どちらも状況はあまり芳しくなく、売り出してから2カ月後、私のほうから100万円値下げしようと提案しました」
以前の売却経験から「一度くらい値下げは必要」という心づもりがあったMさんゆえ、ここまでは想定内だったそうです。販売価格が4380万円から4280万円になったことで、思惑どおり、内見者が増えましたが、Mさんが思ったほどまで増えなかったそうです。
「せっかく我々が引っ越しているので、『土日のオープンルーム見学会』など積極的に空いている住戸を活用してください、と両社に依頼しました。A社はそこまで手が回らなかったようですが、最寄りに営業所のあるB社は何度もオープンルーム見学会を開催していました」
こうして売り出してから3カ月後、2018年2月に購入希望者が現れました。「オープンルームが功を奏したようで、B社から紹介されました。市内に住んでいたご家族だそうで、とんとん拍子に話が進みました」。2018年3月に売買契約・引き渡しと順調に運び、無事売却活動を終えました。
一方、売却後も子どものために志木市内で賃貸生活を続けていたMさんはというと、無事に娘が希望の私立小学校に入学できることになり、急きょ新宿区の賃貸住宅へ。その後同区内で理想の中古マンションを見つけ2020年2月に購入することができました。
ローンと家賃のダブルの支払いは大変だったが、売却活動自体は満足
売却活動全体を振り返って、Mさんは「ローンと家賃のダブルの支払いは4カ月ほどかかりましたが、おおむね満足しています。10点満点で8点です」と答えてくれました。
「私のケースでは、一般媒介契約にして複数社に活動してもらって正解だったと思います。思っていたよりは少し時間がかかってしまったので、マイナス2点ですが、両社とも対応自体はとても丁寧で、積極的に活動してくれたと思います」
新宿区に購入したマンションは築40年の低層ビンテージマンション。「志木市のマンションで少し利益は出ましたが、それは今後の教育費などに充てようと考え、新宿区のマンション購入は全額ローンで支払うことにしました」
購入したのは2020年ですが、2年後の現在、売りに出されている同じマンションの別住戸のチラシを見ると物件価格は購入時よりかなり上がっているそう。資産価値の高い物件を購入できたと満足そうでした。
| 2017年11月 | ・マンションの売却価格査定 ・人づてで見つけた不動産仲介会社A社と一般媒介契約を結ぶ ・4380万円で売り出す |
|---|---|
| 2017年12月 | ・連絡をくれた不動産仲介会社B社と一般媒介契約を結ぶ |
| 2018年1月 | ・売却価格を4280万円に変更 |
| 2018年2月 | ・購入検討者が現れる |
| 2018年3月 | ・売買契約を結び、引き渡す |
まとめ
- 築浅など周囲に同条件がないときは、インターネットの一括査定サービス等を利用して複数社から査定してもらうと便利
- 売り出しと同時に賃貸や新居に引っ越しできるなら、オープンルーム化や広告の写真映えが良くなるなど販促しやすくなる
- ローンの残っている物件の売却活動時に賃貸住宅に引っ越すと、ローンと家賃の両方を支払うことになるので注意が必要
イラスト/いぢちひろゆき
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