
週末にリゾート気分を味わうべく、自宅とは別にマンションを購入して夫婦で利用していたSさんは、体力的な負担を感じて手放すことに。最初の不動産仲介会社では買主が見つからず、会社を替えることで売却を達成しました。
| 不動産区分 | マンション |
|---|---|
| 所在地 | 神奈川県三浦郡 |
| 築年数 | 築19年 |
| 間取り・面積 | 3LDK(約83m2) |
| ローン残高 | なし |
| 査定価格 | 4400万円/3360万円 |
| 売り出し価格 | 4400万円/3360万円 |
| 成約価格 | 3340万円 |
購入から20年近くたち、活用し切れなくなっていたセカンドハウス
東京都世田谷区の戸建てに妻と2人で暮らすSさん(60代)は、「週末に過ごす第二の住まいがあれば」と、湘南エリアに目を向けます。
「当時は40代でしたが、うちは子どもが居ない分、生活の資金を自分たちの趣味に回せます。自然豊かな場所にマンションを構え、気軽にリゾート気分を味わえたらと思ったのです」
江の島・逗子・葉山を検討する中で、最終的に選んだのは葉山。観光地ではないだけに静かで治安も良く、海が近いのが魅力でした。 2001年1月に5290万円で3LDK・約83m2の新築マンション(当時)を入手します。
「近隣のスーパーは物価が高いものの、毎日、買うわけではないので問題はありません。
最寄駅もバスで約15分かかりますが、車で通うことを思えば難ではありませんでした。
それより何より引かれたのは、窓からの景色。私たちの部屋からは、海だけでなく小高い山や江の島・灯台が見えたのですが、一面が海というのとは違う落ち着きがあって、心を奪われたのです」
銀行と住宅金融公庫(現:住宅金融支援機構)で20年ローンを組んでいましたが、親の財産を相続したのもあり、約6年で繰り上げ返済。
しかし購入から17年ほどがたったころ、売却を考え始めます。
「自宅から現地まで、高速道路を使えば1時間弱、一般道だと休憩を挟んで2時間と少し。金曜の夜に車で向かい、日曜の夜に帰ってくるライフスタイルを続けていたのですが、年を重ねるにつれ、運転がしんどくなってきて、そのうち2~3カ月おきの訪問になりました。
『活用できないならいっそ』と、手放すことにしたのです」
不動産仲介会社と媒介契約して1年近く粘るも、手応えは見られず
Sさんの世田谷区の自宅は、4年前に住宅メーカー(A社)で建てたもの。不動産仲介会社につてのなかったSさんは、まずA社の担当者に聞いてみることにします。
「軽い気持ちで問い合わせたのですが、『じゃあグループ会社(B社)を紹介します』という話になって。早速、B社に来てもらうと、査定価格は4400万円だと言われました。
もちろんほかを当たることもできましたが、不動産の取引に慣れていませんでしたし、『どこに頼んでも同じだろう』と思ったのです。2019年2月、B社と専属専任媒介契約を結びました。
しかし、これが失敗。B社は比較的、規模の大きな不動産仲介会社だったのですが、近くの支店は横浜市だけ。もっと地元に強い会社に頼めばよかったのだと、後悔することになります」
B社は4400万円で売り出し、近隣エリアにポスティングしたり、不動産ポータルサイトに情報をアップしたり、販売活動を始めますが、思うような効果はありませんでした。
「最初から反響が薄く、すぐに担当者から『価格を変えないと売れません』と言われました。そこで200万円をダウン。すると次の1週間は問い合わせがあり、何組か内見が入るのですが、売却にはつながらず、以降はぱったりで。すると再びB社に『値下げしましょう』と提案され、同じことを繰り返すのです。
結局それが4~5回続き、約1年で1000万円ほど下げることに。このままでは値段が無くなってしまうと感じました」
たまらずSさんはB社に、ほかの営業方法を試してほしいと申し出ます。
「『内覧会などをしてもらえませんか』と聞くと、さすがに断りはしないものの、申し訳程度に週一回、物件の入口に看板を出し、たまたま通りがかった人に見てもらうだけ。いよいよ理解したのは、担当者のあるひと言です。しびれを切らせて状況を聞くと、『レインズ(不動産流通機構)に載せているのだから、もうやることはないんです』と言われたのです。
あの手この手で働きかけるのが営業のはずなのに、『もうだめだ』と見切りをつけました」
■不動産仲介会社との契約期間について
媒介契約の契約期間は、契約の種類で異なります。「専属専任媒介契約」「専任媒介契約」は上限が3カ月で、契約期間が過ぎても自動更新されることはありません。もし会社が契約の義務を果たしていない場合、契約満了前でも解除することが可能ですが、自己都合での解除だと、違約金や販売活動費用を請求される可能性があるため注意が必要。一方、「一般媒介契約」は契約期間の上限も、自動更新もありませんが、多くの不動産仲介会社が契約期間を3カ月以内に定めています。いずれにしても事前に契約書を確認するようにしましょう。
不動産仲介会社を切り替え、地元の会社と二度目の媒介契約
B社の支店は横浜市。「そもそも物件から支店が遠いことが問題なのでは」と考えたSさんは、別の不動産仲介会社にコンタクトを取ります。
「大手だと販売力があるでしょうし、連絡を頻繁によこす会社ほど積極的なはず。これまで『マンションを売りませんか』とDMで誘いをかけてくる地元の会社が4社ほどあったのですが、中でも最もDM数が多く、名が知られていて、かつ逗子に支店のあるC社に声をかけることにしました」
Sさんは、C社の担当者と現地で会います。
「既にレインズに載せているので、今さら値上げはできません。今までの経緯と現状の価格を伝えました。すると担当者は確信をもって『周囲に高い建物の建つ可能性の無いエリアですし、その価格ならすぐに売れますよ』とのこと。『やっときちんと対応してもらえる人に出会えた』と安心し、その場で専属専任媒介契約を交わしました」
販売網を生かした積極的な販売活動のなか、1カ月後に買主が決まる
売り出し価格は3360万円に設定。C社で販売活動が進められます。
「『最低でも3000万円は切りたくない』と心配していたのですが、そんな気持ちをよそに、頼もしい動きが見られました。
都心から地方に至るまでの細やかな自社のネットワークを活かし、お客さんに呼びかけ、こちらが催促しなくても毎日のように内覧会を開き、精力的にチラシを打ってくれたのです。
1週間に一回、『営業活動報告書』が郵送されてきましたが、B社と比べると反響は明らかに違いました」
C社に一切を任せていたSさん。約1カ月したころ、担当者から連絡が入ります。
「『購入者が決まりそうなのですが、20万円だけ下げさせてもらえませんか』と言われました。こちらとしては毎回200万円を下げさせられていた身なので、『そのくらいなら、いくらでもどうぞ』と、もう二つ返事(笑)。
その後、追加で条件をつけられることなく、すんなり買ってもらえることになりました」
2020年3月、Sさんは買主と売買契約。同月にマンションを引き渡します。
無事に売れて心から安堵。学びを糧に新しい暮らし方を検討
買主はちょうど、この辺りで住まいを探していたリタイア後のご夫妻でした。
「実は売却した翌月から、コロナ禍の影響で二拠点生活が注目されるようになり、近隣の相場が上昇。『もう少しタイミングが遅ければ』と惜しい気持ちになりました。
でも予測はできませんでしたし、葉山の地にしっくりなじむ、温厚そうなご夫妻に引き継げて何より。無事に売れてほっとしています」
今後は物件を所有するより負担の少ない、会員制のリゾートホテルを利用したいと話すSさん。「いい経験になった」と晴れ晴れとした笑顔を見せてくれました。

| 2018年3月 | ・マンションの売却を考えはじめる |
|---|---|
| 2019年2月 | ・B社で簡易査定を受ける ・B社で訪問査定を受ける ・B社と専属専任媒介契約を結ぶ |
| 2020年2月 | ・C社で訪問査定を受ける ・C社と専属専任媒介契約を結ぶ |
| 2020年3月 | ・購入者が現れる ・買主と売買契約をする ・売却した土地を買主に引き渡す |
まとめ
- エリアの特性を踏まえたアドバイスをしてもらうなら、地元に支店のある不動産仲介会社がベター
- 不動産仲介会社がいかに販売活動に熱心かで反響は変わる。期待できない会社は早めに切り替えよう
- 都市部だけでなく地方にも支店を持つ会社だと、ネットワークを生かして買主を見つけられる強みがある
取材・文/星野 真希子 イラスト/杉崎アチャ


