不動産売却の基礎知識や知っておきたいコツを分かりやすく解説します。売却の体験談もご紹介。

不動産売却時の譲渡費用とは。譲渡所得の計算方法をポイント解説/不動産売却マニュアル#20

不動産売却時の譲渡費用とは。譲渡所得の計算方法をポイント解説/不動産売却マニュアル#20

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不動産の売却で得た売却益(譲渡所得)の計算には、その不動産を手に入れるときにかかった費用=取得費と、売るときにかかった費用=譲渡費用を知る必要がある。「譲渡費用」にはどんなものが含まれるのか確認しよう。

譲渡費用って何? どんな費用が含まれる?

不動産を売って手にした売却益は「譲渡所得」として税金が発生する。売却益(譲渡所得)はあくまで利益なので、売却価格から不動産を手に入れるときにかかった費用=「取得費」と、売るのにかかった費用=「譲渡費用」を差し引いて計算することになる。

譲渡所得の求め方

譲渡所得=収入金額 -(取得費+譲渡費用)

ここでは、譲渡費用について解説しよう。そもそも売るときの経費が多くかかって、利益(譲渡所得)が少なければ、支払う税金も少なくなる。そのため、譲渡費用はもれなく計上したいところ。

ただし、売るときにかかった経費がなんでも譲渡費用と認められるわけではない。譲渡費用は不動産を売るときに「直接」要した費用で、所得税基本通達等では次のように例示している。

取得費については「取得費の計算方法」を参照してほしい。基本は購入時の価格を指すのだが、建物がある場合は経年変化の影響をとりいれたり、購入時価格が不明な場合は法律で決められた計算方法があったりと、こちらも注意が必要だ。

【譲渡費用になるもの】
(1)土地や建物を売るために支払った仲介手数料など
(2)印紙税で売主が負担したもの
(3)貸家を売るため、借家人に家屋を明け渡してもらうために支払った立退料
(4)土地などを売るための建物の取壊し費用とその建物の損失額
(5)売買契約締結後、さらに有利な条件で売るために最初の契約者に支払った違約金
※土地などを売る契約をした後、その土地などをより高い価額で他に売却するために既契約者との契約解除に伴い支出した違約金
(6)借地権を売るときに地主の承諾をもらうために支払った名義書換料など

参考:国税庁HP「譲渡費用となるもの」

維持・管理の費用は譲渡費用にならない

売主が負担した仲介手数料と印紙代は、譲渡費用として認められており、確定申告書にも記入欄が設けられている。そのほか、売却のために借家人を立ち退かせるために支払った費用や、土地を譲渡するために建物を取り壊す費用など、不動産の譲渡価額を増加させるために支出した費用が該当する。

譲渡費用はあくまで売るときに「直接」要した費用であるため、修繕費や固定資産税など、所有期間中の維持・管理のために支払った費用は該当しない。ただし、買主からの要請で売るために行ったリフォーム費用は譲渡費用と認められるケースもある。

譲渡費用にならなくても取得費になるものがある

ほかに、 住宅ローンの抵当権抹消のためにかかった費用や売主の引越し代、売却代金を取り立てる際にかかった費用なども譲渡費用には当たらない。測量費なども、売却のために行った費用であれば認められるが、売却時期よりもずっと以前に行った測量の場合は、売買とは無関係とみなされ譲渡費用には該当しないと判断される。測量は譲渡することが決まったことを受けてから行ったほうが賢明だ。

少しまぎらわしいのは、土地を売るために行った造成費用。これは、譲渡費用ではなく取得費に含められる。造成費用のように、譲渡費用にならなくても取得費として認められるものもあるので、不動産会社や税理士に相談し、サポートしてもらおう。

●監修
税理士法人タクトコンサルティング

構成・取材・文/大森広司

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不動産売却マニュアル

●構成・取材・文/大森広司
住宅系シンクタンク・オイコス代表。住宅ジャーナリスト。SUUMOなど多くの住宅系メディアで取材・執筆などを行う
●監修/税理士法人タクトコンサルティング
資産税コンサルティングの草分けとして、長年にわたり、個人の相続・譲渡や贈与など、法人の事業承継、組織再編、M&Aなど、個人・法人の資産税に関わるコンサルティングを手がけている。
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