不動産売却の基礎知識や知っておきたいコツを分かりやすく解説します。売却の体験談もご紹介。

不動産売却の「相場」の調べ方。インターネットで調べるときの注意点/不動産売却マニュアル#3

不動産売却の「相場」の調べ方。インターネットで調べるときの注意点/不動産売却マニュアル#3

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マンション・戸建や土地などを売却するときは、まず「いくらで売れるのか」を調べる必要がある。最終的には不動産会社に査定してもらうことになるが、その前に自分で相場を調べる方法を覚えておこう。

物件情報サイトで似たような条件の物件と比較する

最寄駅や駅からの距離、広さや築年数などが似た物件を探す

不動産の相場を調べるために最も手っ取り早い方法は、SUUMOなどインターネットの物件情報サイトで、自分が売りたい不動産と似たような条件の物件がいくらで売りに出ているかを調べることだ。「似たような条件」とは、おおむね以下の条件項目を指す。

  • 最寄駅
  • 最寄駅からの距離
  • 広さ
  • 築年数
  • 間取り

広さが異なる物件は平米単価や坪単価で比較

もちろん、条件がほぼ同じであれば言うことはないが、そんな都合のいい物件の情報はさほど多くはないだろう。特に広さが違うと、ほかの条件がほぼ同じでも物件価格は大きく変わってくる。

そこで広さの異なる物件の価格を比較するのに便利なのが「平米単価」や「坪単価」だ。これは物件価格をその広さで割った金額のこと。「坪(つぼ)」とはおよそ3.3平米のことで、日常的にはあまり耳にしないが、不動産業界では今も広く使われている。

例えば売りたいマンション(物件A)の専有面積が60平米として、似たような条件の90平米のマンション(物件B)が4500万円で売りに出ていたとする。この場合、平米単価が同じと仮定して物件Aの相場を割り出すには、以下のように計算すればいい。

物件Bの平米単価:4500万円÷90平米=50万円

物件Aの相場:50万円×60平米=3000万円

なお、ほぼ同じ条件の物件でも、広さが変わると平米単価が異なるのが通常だ。どのくらい違うのかはケースバイケースだが、一般的に面積が広くなると総額が大きくなるため平米単価は下がる傾向にある。上記の例では物件Bのほうが平米単価は低めになりがちで、その結果、物件Aの実際の相場は3000万円より高くなる場合が多いのだ。

サイトの価格どおりに売れるわけではない

記載されている価格は売主の希望価格

このように周辺で売りに出ている物件の価格を調べることである程度の相場が分かるので、自分が売りたい物件の価格の参考になるだろう。だが、その金額で売れるとは限らない場合が多いので注意が必要だと、フリーダムリンクの久谷真理子さんは以下のように話してくれた。

「物件情報サイトに出ている価格はあくまでも売主の希望価格なので、実際の成約価格は、これよりも低くなることが多いでしょう。成約価格とどのくらい差があるかは、売りに出してからどの程度の期間が経っているかなど、売主の状況によっても異なります」

リノベ物件は一般の物件より相場が高くなる

また物件情報サイトに出ているものが、一般的な中古物件なのか、不動産会社がリノベーションして売りに出している「リノベ物件」なのかによっても、価格相場は大きく異なる。

「そのため、いくらで売れるのかを調べたいときには、リノベ物件を除いた一般的な中古物件と比較するようにしましょう」(久谷さん)

成約価格の情報を知りたい場合はここをチェックする

実際の成約価格の情報が分かるサイトもある

実際の成約価格の情報が出ているサイトもある。それが国土交通省の「不動産取引価格情報検索」サイトだ。

このサイトではまず、取引の時期を2012年から四半期ごとに選ぶ。直近の情報については過去1年間か2年間分をまとめて検索することも可能だ。

次に不動産の種類について、「土地」「土地と建物」「中古マンション等」などから選ぶ。すべての種類を選択することもできる。

さらに地域の絞り込みは住所から探す方法と、路線・駅名から探す方法があり、住所から探す場合は町名まで絞ることができる。また、画面に表示された地図から駅名をクリックして検索することも可能だ。

所在地は町名までが表示される

条件を絞り込んで検索すると、取引価格(成約価格)が一覧表で現れる。一覧表には最寄駅からの距離や間取り、取引総額などが出ているが、所在地は町名までだ。具体的にどのマンションや土地かまでは分からないが、相場を知るには十分だろう。

なお、このサイトに出ているのはすべての成約事例ではなく、国土交通省が取引当事者に実施したアンケート調査に基づいている。とはいえ都心の中古マンションなどは、一つの町名で年間に数十件の情報が掲載されているなど、かなり参考にできそうだ。

地価情報を知りたいなら公的なサイトが参考になる

地価の相場を知るのに役立つ公示地価や基準地価

このほか、土地の価格相場を知るのに役立つのが公示地価や基準地価(都道府県地価調査)など地価の情報サイトだ。公示地価は毎年1月1日時点、基準地価は同7月1日時点の地価を不動産鑑定士が調査しているもので、どちらも国土交通省のサイトで検索できる。

公示地価と基準地価は、土地取引の指標として同省が位置づけているものだが、どちらも一定の地点を継続的に調査しているものなので、すべての土地の情報が分かるわけではない。地価公示は全国で2万6000地点、基準地価は2万2000地点弱に限られる。

路線価図なら売りたい物件の地価が計算できる

売りたい土地そのものの価格を知りたい場合は、路線価図を見る方法がある。路線価は相続税などの計算で地価を評価するときに利用されるもので、道路ごとにそこに面する標準的な土地の平米単価が千円単位で記されている。土地が面する道路に書かれた金額に土地面積をかければ価格が計算できるのだ。ただし、2つ以上の道路に面した土地や、特殊な形をした土地などは計算方法が異なるので注意しよう。

ちなみにこの路線価は公示地価の8割を目安に国税庁が価格を定めている。また、固定資産税を計算するときの土地の評価額は、公示地価の7割が目安だ。このように公示地価(基準地価もほぼ同水準)はさまざまな地価を計算する基となる価格だが、実際に取引される価格とは必ずしも一致しない。

「都市部の商業地など、不動産取引が過熱しているエリアでは公示地価と実際の取引価格にかい離がみられることも少なくありません」(久谷さん)

マンション価格や地価の相場を調べる場合は、元となる価格情報の意味や性質を理解したうえで参考にするようにしてほしい。

●お話を伺った方
フリーダムリンク・久谷真理子さん

相続・不動産のコンサルティングを手がけるフリーダムリンク所属。資金面を中心とした不動産売買に関する執筆やセミナーなどで活躍中。ファイナンシャル・プランナー CFP(R)認定者

構成・取材・文/大森広司

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不動産売却マニュアル

●構成・取材・文/大森広司
住宅系シンクタンク・オイコス代表。住宅ジャーナリスト。SUUMOなど多くの住宅系メディアで取材・執筆などを行う
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