不動産の売却を依頼する不動産会社には、報酬として仲介手数料を支払う。仲介手数料にはどのような意味があるのか、いついくら払うのかを知っておこう。
仲介手数料にはどんな費用が含まれるのか
仲介手数料は売却活動に対する成功報酬
媒介契約を結んで売却を依頼すると、不動産会社は売却するためにさまざまな活動を行う(「媒介契約の3つの種類と各ポイント」を参照)。例えば物件情報サイトに情報を載せたり、チラシを作成してポストに配布したり、購入検討者の物件見学に立ち会ったりといった活動だ(詳しくは「売却活動における注意点は?」を参照)。
ただし、この報酬はいわゆる「成功報酬」なので、活動が実って買い手が見つかり、売買契約を交わすまで支払う必要はない。
手数料に含まれるのは「通常の業務で発生する費用」
ただし、売れるまではなんでも無制限に不動産会社に依頼できるわけではない。仲介手数料の範囲で依頼できるのは、あくまで「通常の仲介業務で発生する費用」に限られる。例えば売主のたっての希望で遠隔地の購入希望者のところへ交渉に行ってもらう場合の出張費や、通常では行わない特別な広告宣伝をしてもらう費用などは、仲介手数料とは別に請求されるだろう。
「売却のための測量や建物の解体、荷物の保管やゴミの廃棄などについては別途費用が発生します。また、別荘や空き家になった実家など、遠隔地の物件を売りに出しているケースがありますが、そうした場合に地元の仲介会社が建物を定期的に訪問して空気を入れ替えたりするための管理費用も、別途支払いが必要になる場合があります」
そう話してくれたのは、フリーダムリンクの久谷真理子さんだ。なお、仲介手数料に含まれず別途支払う費用は、あくまで実費とされている。
仲介手数料はいくらかかるのか
手数料の上限が法律で決められている
仲介手数料の金額については、宅地建物取引業法で以下のように上限が定められている。
売買価格 | 報酬額 |
---|---|
200万円以下の部分 | 取引額の5%以内 |
200万円超400万円以下の部分 | 取引額の4%以内 |
400万円超の部分 | 取引額の3%以内 |
売買価格が400万円を超える場合は、上記をまとめて以下の計算式で求められる。
仲介手数料 = (売買価格 × 3% + 6万円)+ 消費税
消費税10%なら、具体的には以下の計算式となる。
例えば売買価格が4000万円とすると、仲介手数料は以下のとおりだ。
仲介手数料が半額やタダのケースもある
ここで注意したいのは、上記の金額はあくまで「上限額」ということだ。どんな場合でも上記の金額で固定されているわけではなく、それより低くてもかまわない。実際に仲介手数料を半額にしたり、買主には仲介手数料を請求しないケースもみられる。
しかし、それでどうやって利益を上げるのか? と疑問に思う人も多いだろう。久谷さんに教えてもらった。
「売主と買主の両方から手数料を受け取れるケースでは、一方からの手数料をタダにしても利益は上がるでしょう。最近は、企業努力によって仲介手数料の減額を積極的に行う不動産会社も増えています。あくまでも3%は上限だと視点を変えてみましょう」
手数料が安ければいいというものではない
売却を依頼する側からすると、仲介手数料ゼロは無理としても、半額にしてもらえるならおトクと感じるかもしれない。しかし、手数料が安ければいいとは一概には言えない。
「仲介手数料がタダや半額であったとしても、サービスの質が悪ければ納得のいく売却は期待しにくいかもしれません。逆に上限いっぱいの仲介手数料を請求する仲介会社だとしても、買主側としっかり交渉してもらうなどで、できるだけ高く、条件良く売却できれば、結果的に満足度もおトク度も高いでしょう」(久谷さん)
仲介手数料の安さだけで不動産会社を選ぶのは失敗のもと。やはり営業担当者とじっくり話をして、信頼できると思える会社に売却を依頼することが重要だろう。
仲介手数料はいつ支払うのか
売買契約時と引き渡し時に半額ずつ払うのが一般的
なお、仲介手数料は売買契約の成立以降に支払うが、この段階ではまだ引き渡しが済んでいないケースがほとんどだ。そのため、売買契約時に半額を支払い、引き渡し時に残りの半額を支払うのが一般的といえる。支払いのタイミングは事前に確認しよう。
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住宅系シンクタンク・オイコス代表。住宅ジャーナリスト。SUUMOなど多くの住宅系メディアで取材・執筆などを行う