地震に強い家を作る!構造(免振・制震・耐震)、地盤、基礎のポイント解説/注文住宅・土地探しマニュアル#28

公開日 2023年07月26日
地震に強い家を作る!構造(免振・制震・耐震)、地盤、基礎のポイント解説/注文住宅・土地探しマニュアル#28
地震に強い家を作る!構造(免振・制震・耐震)、地盤、基礎のポイント解説/注文住宅・土地探しマニュアル#28のイラスト

地震の多い日本。地震に強い家を建てたいと誰もが思うはず。地震に強い家づくりの基本を紹介していこう。ここでは耐震性を高めるポイントである「住宅の構造」「地盤」「住宅の基礎」について説明する。よく耳にする耐震・制振・免振などの住宅構造の違いも押さえておこう。

地震に強い家を建てる必要性

今は地震に強くないと建てられない

建築基準法では地震に対する建物の強度基準、いわゆる耐震基準が定められており、この基準に適合した設計でなければ家を建てることができない。耐震基準は1950年にはじめて定められ、地震の度に見直されている。1978年の宮城県沖地震をきっかけに大幅に見直された1981年の改正が、ほぼ現在の耐震基準となっている。81年の改正前の基準を旧耐震基準、以降を新耐震基準と呼ぶ。これから家を建てようとする場合は、新耐震基準に適合しなければならない。

新耐震基準では、震度5程度の地震でほとんど損傷せず、震度6強~7程度の地震でも崩壊、倒壊しないレベルの耐震性が求められている。さらに阪神淡路大震災を受けて2000年に、木造住宅については地盤に応じた基礎の設計や、構造材の接合部の金具取り付け、耐力壁の適切な配置など新耐震基準をより強化する対応が義務付けられた。

耐震性能を高めればその分コストがかかり、建築費用は高くなる。そのためどこまで耐震性能を求めるか、費用はどれくらいかかるのか、といった事前の検討が大切となる。また耐震というと家の耐震性ばかり気にする人も多いのだが、実は耐震を高めるポイントは「住宅の構造」「地盤」「住宅の基礎」の3つがある。まずは「住宅の構造」から説明していこう。

地震に強い住宅の構造

家の耐震性を高めるには主に以下の3つの方法がある。コストは一般的に耐震構造<制振構造<免震構造の順になる。

■地震対策別 家の工法・構造

1、揺れに耐える_耐震構造
2、揺れを吸収する_制振構造
3、揺れを伝えない_免震構造

耐震構造とは

耐震構造とは柱や梁、主要な壁、基礎など、建物自体を頑丈にして、地震の揺れに耐える住宅構造のこと。多くの一戸建て住宅ではこの構造が採用されている。

柱と柱の間に、筋交いと呼ばれる補強材などの入った耐力壁で建物の揺れを抑える。このように建物の構造材によって地震に耐え、抵抗できるように設計した構造を指す。

制振構造とは

制振構造とは建物の壁の中などに、揺れを吸収する装置を組み込んだ住宅構造のこと。主に3~5階建てのマンションなどで採用されることが多いほか、制振装置をオプションで用意する一戸建てもある。

家の耐震性をしっかり確保。さらに壁の中に備えた装置が建物の揺れを吸収することで、建物の損傷も防止する。

免震構造とは

免震構造とは、建物と土台の間に備えられた装置が地震の揺れを吸収して、揺れを直接建物に伝えないようにする住宅構造のこと。一戸建てでは少ないが、マンションで最近よく採用されている方法だ。

建物と基礎が直接固定されないよう、その間に免震装置をとりつける。免震装置によって建物の揺れを大幅に低減することができる。

詳しくはこちら
耐震についての基礎知識

地震に強い地盤とは

地盤調査と改良が必要

耐震性を高めるにはしっかりした地盤も重要。なぜなら、せっかく耐震性の高い家を建てても、地盤が緩ければ地震の揺れを家に伝えやすくなるどころか、沈み込んで家が傾いてしまう可能性もある。そのため、まずは家を建てる土地がどのような地盤か調査を行い、必要に応じて地盤を改良しなければならない。なお、先述のように2000年に木造住宅については地盤に応じた基礎の設計が義務付けられた。

地盤調査では地面の強度がどれくらいあるのかを調査する。費用の目安は一般的な簡易な方法で約5万円。3階建てなど重量のある家を建てる場合はマンションで採用される地盤調査方法を使って行うこともある。この場合、費用の目安は25万円~35万円といったところだ。

地盤改良が不要であれば、当然その費用をかけずにすむ。以前は沼地だったところを埋め立てた土地を避けるなど、土地を購入する前に土地の情報を収集することをおすすめする。

地盤改良は方法によって費用が異なる

地盤調査を受けて、必要に応じて地盤の改良を行う。その方法は3つ。

●表層改良工法
深さ2mほど土を掘りながら軟弱地盤の上にセメント系固化剤を混ぜ合わせることで地盤を強固にする方法。費用の目安は床面積20坪くらいの場合で約50万円。

●柱状改良方法
表層改良工法で強度を出すのが難しい地盤の場合、簡単にいうとコンクリートの柱を何本も注入して地盤を強固にする。家を建てる敷地に碁盤の目のように規則正しく柱を注入していく。一戸建てはもちろん、自重の重いビルやマンションなどで多く用いられる工法だ。

費用の目安は床面積20坪くらいの場合で約100万円。ただし注入する深さに費用は比例する。

●鋼管抗工法
柱状改良工法と同じ要領で、コンクリートの柱の代わりに鋼管を使用する。費用も柱状改良工法とほぼ同じ。

地震に強い住宅の基礎とは

家の基礎(土台)は2種類ある

家の耐震性を高めるには建物を載せる基礎(土台)が重要。住宅の基礎には「ベタ基礎」と「布基礎」の2種類があり、それぞれのメリットと注意点は下記のとおり。

●ベタ基礎
立ち上がっている部分と床一面を、鉄筋を入れたコンクリートで一体化して、大きな面で家の重みを支える。
面で建物を支えるので、荷重を分散できるため軟弱地盤で建物自体が重い場合に採用するといい。

その一方で、布基礎に比べてコンクリートと鉄筋の使用量が多くなるため、多少コストがかかる。

●布基礎
地面から立ち上がる部分で建物を支える。床もコンクリートに覆われるため一見ベタ基礎と同じように見えるが、床には鉄筋は入らず、厚さもベタ基礎と比べて薄くなる。ベタ基礎が面で建物を支えるのに対して、布基礎は点で支える構造。

特に寒冷地では地面が凍結して基礎を押し上げてしまうため、決められた深さに基礎を設置しなくてはならいが、掘る面積が広いベタ基礎の場合、コストがグンと上がってしまう。こうした場所では布基礎のほうが適している。また地盤が良好であれば布基礎で十分耐震性を確保できる。

布基礎は使用するコンクリートや鉄筋が少ないので、コストを安く抑えられるというメリットがある。コストの目安としては、1m2当たりでベタ基礎が1万円~1万4000円、布基礎は9000円~1万3000円といったところ。例えば1m2当たりベタ基礎が1万円、布基礎が9000円とするなら、施工面積が100m2(約30坪)ならその差額は10万円だ。

このように耐震性を高める家をつくる方法はいくつかある。また、耐震性を高めるには費用もかかる。地盤や地域性など、何が適切なのか建築会社などと相談しながらどのような耐震性のある家にするか検討してみよう。

注文住宅・土地探しマニュアル
  1. 3-1. 家・土地の購入から入居までの基本の流れ
  2. 注文住宅と建売住宅の違い。費用・流れ・間取り・期間を比較
  3. 注文住宅を建てる流れと期間。土地探し・会社選びから完成までのポイント
  4. 注文住宅建築の情報収集のコツ。情報誌・インターネット・住宅展示場など
  5. 注文住宅の購入予算を試算する方法。年収や頭金などポイント解説
  6. 注文住宅の間取りの決め方。理想の暮らしやマネープランから考えよう
  7. 注文住宅のための土地探しのコツ。建てられる家の広さの計算方法も解説
  8. 注文住宅を建てる会社の選び方。ハウスメーカー・工務店・設計事務所の特徴
  9. 注文住宅を建てる費用と支払時期まとめ。住宅ローン、つなぎ融資も解説
  10. 3-2. 家・土地の購入にかかる費用と資金計画のたて方
  11. 土地・注文住宅を購入するのに必要な費用と支払いタイミングを解説
  12. 年収別・借りられる住宅ローン額と住宅購入金額の目安
  13. 費用別・建てられる注文住宅のプラン解説。費用を抑えたい場合のポイント
  14. 住宅購入にかかる頭金・手付金とは。金額の目安と支払いタイミング
  15. 頭金とは。目安の金額や頭金ゼロで購入する場合の注意点などを解説
  16. 3-3. 家・土地探しの前に、理想の家・暮らしを考える
  17. 注文住宅を建てる前に家族で相談すべきこと。理想の暮らしとライフプラン
  18. 家族タイプ別おすすめ間取り。通風遮光・収納・家事動線など公開しない間取りポイント
  19. 3-4. 住む場所や土地探しのポイント
  20. 後悔しない土地探しのチェックポイント。依頼先の選び方、事前準備など
  21. 土地探しの相談先の選び方。ハウスメーカー・工務店・不動産会社の特徴
  22. 土地購入の流れとは。売買契約から登記までの手続き・必要書類・注意点
  23. 土地の売買契約書のチェックポイントとは。必要書類や契約前後の流れも解説
  24. 土地の価格相場とは。4種類の土地価格の調べ方や、相場を左右する要素など
  25. 3-5. ハウスメーカーや工務店など、家を建てる会社の選び方
  26. 注文住宅の建築会社。ハウスメーカー・工務店・設計事務所それぞれの特徴
  27. 失敗しない建築会社選び。事前に決めておくことや見極めポイントとは
  28. 注文住宅の工法・構造の種類と特徴。建築会社選びの前に決めておこう
  29. 3-6. 間取りや設備など、家を設計する時のポイント
  30. 実例付き・使いやすい間取りの考え方。動線やゾーニングなどポイント解説
  31. 失敗しない間取り解説。二世帯住宅、3階建て、狭小地などケーススタディ
  32. 注文住宅の設備・オプションの選び方。後悔ポイントを知って正しく選ぼう
  33. 省エネ・エコ住宅の補助金や優遇制度とは。ZEH・高断熱・高気密なども解説
  34. 地震に強い家を作る!構造(免振・制震・耐震)、地盤、基礎のポイント解説
  35. 3-7. 注文住宅における契約の流れや注意点
  36. 注文住宅の工事請負契約とは。契約書類の確認ポイント、トラブル事例など
  37. 注文住宅の契約を解除するときの流れ。返金・違約金や注意点を解説
  38. 注文住宅購入時の契約の流れ。各段階の必要書類とダンドリを解説
  39. 住宅完成保証制度とは。保証の対象と限度額、手続き方法などを解説
  40. 3-8. 住宅ローンを決める時に知っておくべきこと
  41. 住宅ローンの種類と特徴。公的融資と民間融資の違い、金利プランなど解説
  42. 住宅ローンの借り方。銀行、ローン専門の金融機関の特徴を解説
  43. 新築購入時にかかる税金と優遇制度。住宅ローン控除やすまい給付金など解説
  44. 3-9. 着工後、家が完成するまでにやるべきこと
  45. 注文住宅の着工から完成までの流れ。各段階のポイントを解説
  46. 3-10. 新居の引き渡し後にすること
  47. 新居引き渡しの準備・必要書類と当日の流れ。トラブル防止のコツも解説
  48. 新居への入居前にやるべきこと。引越し準備や各種手続きの流れを解説
  49. 入居後にかかる税金と軽減制度とは。住宅瑕疵担保責任と保証制度も解説
注文住宅の会社を探す
土地を探す
新築一戸建てを探す
中古一戸建てを探す
カウンターで相談する
ハウスメーカーを探す
工務店を探す
賃貸物件を探す
リフォーム会社を探す
中古マンションを探す
新築マンションを探す
売却査定する
引越し見積もりをする
取材・文/籠島康弘
関連する最新記事を見る
住みたいエリアや購入価格からマンション・一戸建てを探そう!
住まいの種類
住みたいエリア
  • エリア
  • 都道府県
  • 市区郡
購入価格

お役立ち講座・個別相談のご案内無料

住まい選びで「気になること」は、人それぞれ。スーモカウンターのアドバイザーは、新築マンション選びと会社選びをサポートします。講座や個別相談を通じて、よかった!と思える安心の住まい選びをお手伝いします。
カウンターアドバイザー

住み替えサポートサービス

ページトップへ戻る