新築で結露?高気密高断熱にこだわっただけではダメな理由

公開日 2024年04月16日
新築で結露?高気密高断熱にこだわっただけではダメな理由

「断熱性や気密性にこだわって建てた家なのに結露した…どうして?」といった声を聞くことがあります。結露は住宅の寿命にも影響すると聞くと「どうやったら結露を防げるの?」「そもそも結露しない家って建てられるのかな」と気になりますよね。この記事では、結露を防ぐ家づくりの工夫を、kao一級建築士事務所の越野かおるさんに伺いました。

新築で結露することがあるって本当? こだわって建てたのになぜ?

そもそも結露ってどうして起こるの?

空気中に含まれる水蒸気の量は、気温によって最大量が決まっていて、温度が高いほど多くなります。結露は屋内の暖かく湿った空気に含まれる水蒸気が、冷たい壁や窓などに触れて温度が下がり限界を超え、水に変わることで発生します。

結露の仕組み
結露は暖かい空気中の水蒸気が冷たいガラスなどに触れ、水に変わる現象を指す(イラスト/青山京子)

新築なのに結露するとき、考えられる原因は?

「断熱性や気密性を高くしたのに結露するのは、家の中にたくさんの水蒸気が発生していることが原因」と越野さんは言います。

「水蒸気と聞くと加湿器を思い浮かべますが、実は家の中には水蒸気を出すものはほかにもたくさんあります。料理をしていても水蒸気は出るし、人が呼吸するだけでも水蒸気は出ますよね。

その結果室内の湿度が高くなりすぎてしまうと、結露を防ぐのはとても難しくなります。水蒸気が充満している浴室の壁が結露するのと同じです。

これは木造の一戸建てでも、RC(鉄筋コンクリート)造のマンションでも変わりません」(越野さん/以下同)

例えば室温20度、湿度60%のときは、冷たい窓に触れた室内の空気が12度まで下がらなければ結露しません。ところが同じ室温20度でも湿度が80%の場合には、16.7度以下になると結露します。水蒸気量が多いほど露点(結露する温度)が高くなるため、結露しやすくなるのです。

室内に過剰な水蒸気が発生している様子
室内に過剰な水蒸気が発生すると、高気密高断熱で新築した家でも結露する(イラスト/青山京子)

住宅に結露は大敵っていわれるのはどうして?

「木造住宅は木でできているので水分は大敵です。結露すると木材が水分を吸い込んで、家の強度が落ちてしまうかもしれません。断熱材も、素材によっては湿気を吸い込んで劣化したり、断熱効果が落ちたりすることも考えられます。湿気を好むシロアリが来て、家の土台や柱を食い荒らしてしまう可能性もあるでしょう」

頻繁に結露すると、カビが発生してアレルギーや喘息の引き金になることもあるので、家だけでなく家族の健康にもよくありません。家のためにも家族の健康のためにも、できるだけ結露しない工夫が必要です。

知っておこう! 新築の家を結露させない対策

水蒸気を発生するものを減らす

高気密・高断熱の家を建て、換気もちゃんとしているのに結露するのは、家の中に限界を超える水蒸気が発生していることが原因だとわかりました。そのため部屋の水蒸気量を抑えることが、一番の結露対策になります。

「例えばお肌の乾燥を防ぎたい、ウイルス対策をしたいからといって、洗濯物を部屋干ししたり、加湿器を2つも3つも部屋に置いたりしていませんか?

人が快適に感じたり、健康にいいと思っていたりする湿度は、家にとってはよくない場合もあります。家にとって最適な湿度は、エリアや条件によって異なるため、一概にはいえません。結露を防ぎたいのなら、快適性とのバランスを取りながら、生活習慣を見直したり、水蒸気を出す機器の使用を控えたりしましょう」

部屋に寒い場所をつくらない

結露は寒くて湿気が多いところで発生するので、部屋の中に極端に寒い場所をつくらないことも大切です。

「例えばサーキュレーターなどを使って空気を循環させると、暖かい空気が部屋の隅々まで行き渡りやすくなりますよ」

結露を防ぐために置かれたサーキュレーター
結露を防ぐには、暖かい空気を隅々まで行き渡らせて冷たい場所をつくらないことが大切(イラスト/青山京子)

24時間換気の給気口はふさがない

「一戸建てやマンションでは、主にシックハウスを防ぐことを目的として、外の空気を自然に給気し、排気を機械でおこなうタイプの24時間換気システムが多く採用されています。このタイプは外気がそのまま入ってくるので、冬だと給気口付近が寒くなります。そのため給気口をふさいでしまう人がいるようです。

そうすると室内の空気が巡回せず、湿気がたまったままになり、結露が発生しやすくなってしまいます。24時間換気の給気口は、寒くてもふさがないようにしてくださいね」

24時間換気と結露の関係
24時間換気をふさいでしまうと水蒸気が室内にこもり結露しやすくなる(イラスト/青山京子)

高気密・高断熱・通気計画が重要! 結露しにくい家づくり完全マニュアル!

結露しにくい家にするには、

  • 外気の影響を受けにくくするように断熱性を高めること
  • 通気をコントロールして室内の水蒸気を逃がすこと
  • 通気をコントロールしやすいように気密性を高めること

が大切だと越野さん。具体的にどんな工夫ができるのか、さらに詳しく伺いました。

複層ガラスや二重窓、樹脂サッシを選ぶ

「外気の影響を一番受けるのはなんといっても窓です。断熱性を高めるためには、窓ガラスに複層ガラスを使う、あるいは二重窓にするなどして、空気の層をつくりましょう。そうすると外の冷えた温度が室内に伝わりにくくなります。少し高価ですが、サッシは樹脂サッシを選ぶと、断熱性が高くなります」

断熱効果が高い窓
結露を防ぐには屋外の冷気が室内に伝わりにくい窓を選ぼう(イラスト/青山京子)

窓を小さく少なくする

「断熱性・気密性を高めるために外観にできる工夫は、窓をできるだけ小さく少なくすることです。外気の影響をもっとも受ける窓の面積を減らして、できるだけ壁量が多い外観デザインを検討しましょう」

窓の数・大きさと断熱・気密性の関係
断熱性・気密性を高めるには、窓が小さく少ない外観デザインにしよう(イラスト/青山京子)

吹き付けタイプの断熱材や漆喰(しっくい)、珪藻土などを選ぶ

壁に仕込む断熱材は、吹き付けタイプを選ぶとすき間がなくなり、ズレないので気密性が高くなります。また、壁の仕上げに調湿効果が高い木材や仕上げ材、漆喰(しっくい)、珪藻土などを選ぶと空気中の水蒸気を吸い込んでくれます。

「ただ、吸湿性が高いといっても、水蒸気を吸い込める量には限界があります。限界を超えたら結露するので過信するのは禁物です」

断熱材の吹き付け職人と左官職人
使用する断熱材や壁材の種類も結露に影響する(イラスト/青山京子)

天井を設けるなら屋根裏の換気を良くする

天井を断熱するのであれば、屋根と天井の間にできる空間に湿気がたまらないよう、換気をよくする必要があります。

「壁と同様、断熱材は吹き付けタイプだと気密性が高くなるので建築会社に相談してみましょう。一方、屋根に断熱材を仕込むなら、天井の断熱や屋根裏の換気はいりません」

屋根と天井の断熱の関係
屋根を断熱すれば天井の断熱や屋根裏の換気は必要なくなる(イラスト/青山京子)

床断熱ではなく基礎断熱にする

床は床そのものを断熱する『床断熱』より、基礎を断熱する『基礎断熱』のほうが、断熱性も気密性も高くなります。

「基礎断熱だと床下に換気口がいらないので冷気が入ってきません。さらに基礎コンクリートを断熱材で覆うので、地面から伝わる冷気をシャットアウトできることが、床断熱よりも断熱性や気密性が高くなる理由です」

床断熱と基礎断熱の仕組み
床断熱よりも基礎断熱のほうが断熱効果は高くなる(イラスト/青山京子)

換気は給気と排気のどちらも機械でおこなう

結露の原因は室内の湿度が高いことなので、結露を防ぎたいならきちんと換気をおこない家の外に湿気を逃がさなければなりません。

「24時間換気は、給気と排気のどちらも機械でおこなうと、室内に入ってくる空気の温度もコントロールできます。そのため室内が寒くなることもありません。

高価ですが、建物内の温度管理と換気をすべて自動でおこなう『全館空調』を検討してもよいでしょう」

機械による給気・換気のシステム
全熱交換器が備わった給気システムを使うと室内が寒くならない(イラスト/青山京子)

すき間風が入りにくい部材を選ぶ

「室内の湿気を排出しやすくするために、家の中への空気の出入りをコントロールするには、できるだけすき間をつくらず気密性を高める工夫が必要です。すき間風が入ってしまうと、ねらったとおりに空気が巡回せずに、湿気がたまってしまう可能性があるためです。

吹き付けタイプの断熱材を選ぶほか、例えば窓はすき間ができやすい引き違い窓はできるだけ減らし、エアタイト仕様の窓(すき間を防ぎ気密性を高める工夫がされた窓)にする。玄関も引き戸にするなら片開きにするとよいでしょう」

すき間風が入りにくい部材
部材はすき間風が入りにくいかどうかを考慮して選ぶとよい(イラスト/青山京子)

結露しない家を建てるときのポイントと注意点は?

結露しない家を建てるときには、どのようなポイントや注意点があるのでしょうか?

補助金・助成金制度を活用しよう

いま国は省エネに力を入れているので、高断熱を含む省エネ性能が高い家づくりへ多くの補助金・助成金制度を用意しています。活用するとコストを抑えて結露しにくい家づくりができるので、調べてみましょう。

例えば2023年度には、以下のような補助金・助成金制度が提供されました。

制度名 内容
こどもエコすまい支援事業 子育て世帯または若者夫婦世帯が高い省エネ性能がある家を新築・購入した場合に、一戸あたり100万円が補助される制度
ZEH支援事業 ZEH住宅(高断熱、太陽光発電システム、省エネ設備を導入し、エネルギー収支がゼロになる住宅)を新築したときに、一戸あたり55万円+αが補助される制度。より省エネ性能が高い戸建てに対しては、一戸あたり100万円+αが補助されるZEH+もある。

なお2024年には、こどもエコすまい支援事業の後継として子育て世帯または若者夫婦世帯が高い省エネ性能がある家を新築・取得した場合に、長期優良住宅には100万円、ZEH住宅には80万円を補助する「子育てエコホーム支援事業」の創設が予定されています。またZEH支援事業も継続が見込まれています。

高気密・高断熱の家づくりが得意な建築会社に依頼しよう

結露を防ぐために欠かせない高気密・高断熱の家づくりは高い技術力が必要なので、経験値に左右されます。気密測定までしてくれる会社なら、信頼性は高くなります。

「気密測定していない建築会社さんで家を建てる場合でも、外部の建材メーカーさんや測定事業者さんに依頼すると測定してもらえますよ。そのときには、気密測定するつもりであることを、はじめから建築会社さんに伝えておきましょう」

気密測定する作業員
気密測定までしてもらえるなら安心できる(イラスト/青山京子)

結露しにくい家にするときにできる工夫まとめ(チェックリスト)

越野さんに伺った、結露しにくい家にしたいときにできる工夫をまとめました。これから家づくりをするときに役立ててくださいね。

対策箇所・内容 できる工夫
窓(気密) 複層ガラスや二重窓にする
樹脂サッシにする
引き違い窓は減らす
エアタイトのサッシにする
吹き付けタイプの断熱材にする
調湿性がある仕上げ材にする(塗り壁、板張りなど)
天井・屋根 吹き付けタイプの断熱材で天井か屋根を断熱する
床断熱よりも基礎断熱を選ぶ
外観 窓は小さく・少なくして壁量を増やす
換気 給気・排気共に機械でおこない、給気には全熱交換器を採用する

新築時に結露を防ぎたいなら過剰な加湿を避けることがもっとも重要

最後にあらためて越野さんに、結露しにくい家を建てたい方に向けて、アドバイスを伺いました。

「どれだけ高気密・高断熱で通気コントロールが完璧な家を建てても、家の中の水蒸気が多くなりすぎると、結露を防ぐことはできません。かといって空気が乾燥しすぎるのも、人にとっては快適な環境とはいえないでしょう。

快適な湿度というのは、人によっても違います。結露するときには、不快にならない程度に湿度を下げられないかを確認してみてくださいね」

まとめ

高断熱・高気密の家でも結露するのは、家の中に過剰に水蒸気が発生しているから

結露を防ぐには高断熱・高気密で通風をコントロールして、湿気を家の外に出すことが大切

補助金や助成金を活用すれば、コストを抑えて高断熱・高気密な家づくりができる

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取材・文/佐藤カイ(りんかく) イラスト/青山京子
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