注文住宅を購入する際に、最も悩ましいものの一つが予算の設定。今回は、実際に注文住宅を購入した人の例や年収分布などから、これから買う際、無理のないように買える購入の予算の目安を紹介。家も費用も満足の家づくりに役立ててほしい。
「頭金+住宅ローン借入可能額」の合計。これが買える金額になる。このうち、頭金は、現在の預貯金から、当面の生活費や将来にとっておきたい金額を除いた額となる。これに、住宅ローンはいくらくらい借りられそうかをチェックしてみることでおよその購入可能額がわかる。
住宅購入の際、多くの人が住宅ローンを組むが、その場合の無理なく購入できる予算の簡易チェック方法として言われているのが、「年収の5~6倍」。年収500万円の場合の目安は2500万~3000万円、年収が1000万円の場合、目安は5000万~6000万円になる。
購入予算が多ければ多いほど住宅ローンの支払額は増えるが、年収が多ければ光熱費など生活にかかる費用の負担は低くなるので、返済額が多かったとしても返済不能になる危険性は低くなる。一方、年収500万円の場合は生活費用の負担増になりがちで、手元に残るお金に余裕がなくなりやすい。
ただし、年収の5~6倍といっても、子どもの人数が多ければその分生活費がかかるので住宅費用にかけられる額は限られる。また共働きの場合なら、どちらか一方が働けなくなった場合、想定していた世帯年収はガクッと下がる。
基本的に年収が高い人に比べ、低い人は生活費に占める食費や光熱費などの固定費比率が高くなるため、年収に対する価格の倍率が高い場合の負担感は大きく、急な出費や収入ダウンがあった際に、返済が滞ってしまう可能性が高くなる。このように、一概に年収の5~6倍といっても余裕のある購入予算は変わるので注意しよう。
また、住宅ローンは長期にわたって返済していくもの。一般的にあまり高齢になってからでは、長い返済期間のローンが組みにくい、審査が通りにくいといったことも理解しておきたい。
毎月の返済額を抑えるには30年、35年といった長期のローンを組む必要があり、そのためには定年までの期間が長いほうが有利だ。いつかは買うつもりで住宅のための貯金をしているのならば、長期ローンが組めるうちに購入し、将来かかるであろう子どもの教育費などに備えたほうがいいという専門家も多い。
買える額のくわしい計算方法はここでチェックしよう
将来も安心な「購入予算」の決め方
では、頭金はいくらくらいが妥当なのだろうか。令和元年度に注文住宅を建てた人たちの購入資金(全国平均)の内訳から調べてみよう。
※データ出典:国土交通省住宅局「令和元年度住宅市場動向調査報告書」
借入金が3361万円で自己資金は1254万円。合計4615万円となっており、購入金額の3割近くを自己資金=頭金として用意しているようだ。住宅ローンで借りられる額は、一般的に価格(土地代と建築費用)の80%が上限といわれているなか、一定の余裕をもって自己資金を用意している人が多いようだ。
もちろん頭金は少しでも多いほど、毎月支払う返済がラクになる。しかし、手元貯金をすべて頭金に費やしてしまうのは少々リスクがあるという。病気による休職など、いざというときに必要なお金や、子どもの教育費など将来必要なお金を手元に残しておきたいからだ。
つまり、貯蓄からこれらの金額を引いた額が、頭金として使えることになるので、自分たちの現状と将来を見据えて考えてみよう。
無理のない住宅購入予算の目安はどうやって試算できるのか。前述のとおり人それぞれの懐具合によるが、ひとつの方法が「年収×年収倍率+自己資金」。 ためしに年収を500万円の場合。
●年収500万円。年収倍率を6倍に設定した場合
・年収×年収倍率+自己資金
・500万円×6倍=約3000万円 +自己資金(800万円)
=【3800万円】になる
※上記に加えて契約時に支払う諸費用があることも覚えておこう。工事請負契約以外にかかる費用で、現金で用意するもの。火災保険、土地の仲介手数料や登記手続き費用、住宅ローンを利用するときにかかる手数料等。(引越し費用や仮住まい費用などがかかる場合も)。金額目安は約150万円
とはいえ、近年の低い住宅ローン金利と住宅ローン減税制度などを考えて、あえて頭金を低く抑える人もいるし、共働きから専業主婦かなど夫婦の働き方や、親からの贈与があるかどうかなどで購入できる予算は変わるもの。
それに、注文住宅は建売住宅と違い、打ち合わせや工事を進めていく中で、当初考えていた予算がオーバーすることがある一方、優先順位の低い箇所の仕様を調整でき、費用をコントロールできるという特徴もある。
実際に建てる際には建築会社や、時にはファイナンシャルプランナーなどと相談しながら、無理のない予算設定をしてほしい。