注文住宅購入をする際、ハウスメーカーや工務店などの建築会社と施主との間で建築工事請負契約を締結する。この契約は本契約ともよばれる。ここでは、注文住宅建築において重要な役割を担う建築工事請負契約について、契約を結ぶに当たり事前に知っておきたい注意点やチェックポイントを解説する。
建築工事請負契約とは、ハウスメーカーや工務店等との間で結ぶ建築工事にかかわる契約のことで、間取りやプランが決まり、本見積もりが完成した段階で結ぶものだ。この建築工事請負契約は、本契約とも呼ばれる。
契約書は「建築工事請負契約書」、「建築工事請負契約約款」、「設計図書」、「工事費見積書」で構成されており、建築工事請負契約には発注者氏名、請負者氏名、工事内容、請負代金の額、支払方法、工事着手の時期、工事完了の時期、完成引き渡しの時期等が記載されている。
本契約を結んだ後は、契約書に書かれていること以外の追加や変更が生じる場合には、追加の費用が発生するので、しっかりとポイントをおさえておきたい。
建築会社との間に何らかのトラブルが発生した場合には、契約書に記載された内容を基に話し合い、解決していくことになる。そのため、契約書に記載されている内容はしっかりと把握し、納得した上で契約を結ばなければならない。契約書は膨大な量に及ぶため、契約書類のチェックポイントを知っておくことで確認の抜け漏れを防ぎ、安心して家づくりを進められる。
工事に着手する日である「着工日」、建物が完成する日である「完成日」、完成した建物が依頼先から施主に引き渡される日である「引渡し日」といった工事のスケジュールについての記載がきちんとされているか確認を。
「○年○月○日」と日付が記載されている場合もあるが、「建築工事請負契約から○日以内」「着工後○日以内」等と記載されることもある。いずれにしても、いつまでに基礎工事が終わるか、など工程を記載した工程表など資料を見ながら、現実的なスケジュールかどうかをきちんと確認し、「未定」「要相談」などの曖昧な記載になっていないかチェックしよう。
また、工事が大幅に遅れて引き渡しが記載されている期日までに完了しなかった場合の違約金についても確認しておこう。大幅な遅延が発生した場合、金額交渉や支払いまでに時間がかかることが多いので注意しよう。
代金の支払時期と金額についてもしっかり確認を。支払時期は建築工事請負契約締結時の着手金、着工前と上棟時の中間金、引渡し時の残代金の大きく3つに分かれていることが多い。金額は契約時に代金の10%、
着工時に30%、上棟時に30%、建物の引渡し時に30%が一般的。
住宅ローンを利用する場合には、つなぎ融資を利用することになるので、契約書に記載されている内容をチェックして、それぞれのタイミングでいくら支払うのかを把握しておこう。
ローン特約とは、建物や土地の購入・新築時に結ぶ「売買契約」や「工事請負契約」で、売主と買主の合意によって定める条項のひとつ。注文住宅を建築する場合、ローン特約は金融機関へのローンの借入申請が全額または一部承認されなかった場合に契約解除することができ、着手金からそれまでにかかった費用を除いた金額が施主に返却される。
建築会社の提携金融機関のローンを利用する場合、ローン特約は盛り込まれているが、そうでない場合は契約書にローン特約を盛り込んでもらう必要がある。その際は、ローンを借り入れる金融機関名、融資額、ローン特約の期限などを契約書に明記してもらおう。
建築工事請負契約締結後のキャンセルは、たとえ翌日であっても契約解除となり、施主は損害を賠償して契約を解除することが原則となる。ただし、契約書にはそれぞれのタイミングで解除にかかる違約金を定めていることが多い。着手前の違約金の金額は建築費の10%程度が目安だが、会社によって異なるので契約書に記載されている金額を確認しておこう。
工事中にもキャンセルは可能だが、工事中でのキャンセルはそれまでにかかった建築費を施主側が負担することになるので、それぞれのタイミングでかかる違約金の定めが契約書にあるかないかについても事前に確認をしよう。
万が一工事中や引き渡し後に不具合や事故等が発生した場合の補償内容についてもしっかり確認を。
工事内容に不具合や欠陥などがあった場合の対応と保証である瑕疵担保は、注文住宅建築の場合、ハウスメーカーや工務店など施工側が最低10年の瑕疵担保責任をつけることが義務付けられている。瑕疵担保の保証内容と範囲、保証範囲外のアフターサービスを受けられる期間について確認しておくことが重要だ。
また、工事中に台風や地震などの自然災害などによる不可抗力で起こった損害への対応や、止むを得ず工事を中止しなければならない事態が発生した際の対応、工事によって第三者を負傷させてしまった場合の対応内容についても念のため確認しておくことで、トラブルを防ぐことができる。
建築工事請負契約後のプラン変更は追加コストが発生して予算オーバーしたり、場合によっては建築確認申請の再申請が発生して工事が大幅に遅延したりする可能性も。そうならないためにも、契約までに窓の位置や大きさ等構造にかかわる間取り、設備、仕様はしっかり固めておくことが重要だ。
また、見積書と図面とを照らし合わせて、内容が一致しているか、修正を依頼したプラン、金額が反映されているかもチェックを。「○○一式」というような一括りにされて曖昧になっている項目がないかどうかなども確認しておきたい。
契約書類は支払方法や完成引き渡しの時期など重要事項が多く、非常にボリュームがあるため、契約時に全ての内容を把握することは難しい。そこで、依頼先から事前に複写したものをもらって内容を確認しておくことをおすすめする。その際、契約書と約款の両方をもらい、疑問に思ったところは質問をして解消しておくことで、当日の契約手続きがスムーズに進められる。
建築工事請負契約の際にきちんと内容を決めていなかった場合や、万が一不具合が発生した場合に、依頼先とトラブルになることも。契約に関するトラブル事例を見てみよう。
なんとか3月末に入居をするためにギリギリの工期で組んでもらっていたが、工期が大幅に遅れてしまい、建物の引き渡しが遅れたことで仮住まいの期間が延びてしまった。引越しや家電の配送手配なども全てスケジュールを組み直したことで追加費用がかかってしまったが、依頼先に交渉してみたもののその部分は補償してもらえず、遅延損害金だけでは補いきれなかった。
工事中にキッチンの仕様が気になって、今から変更できるかを建築会社の担当者に相談したところ「できる」ということだったので変更してもらった。特に費用については確認していなかったが、最終的な建築費が想像していたよりも高額だったので、きちんと確認してから判断すべきだった。