地盤改良とは?かかる費用や工事の必要性、工法について徹底解説!

最終更新日 2025年02月17日

地盤改良とは?かかる費用や工事の必要性、工法について徹底解説!

家を建てるときの予算を考える際、忘れがちなのが地盤改良のための費用です。では地盤改良にはいくら必要なのでしょうか。そもそも地盤改良はどうして必要?どんな工事をするの?一級建築士の佐川さんに教えてもらいました。

地盤改良とは?必要性と重要性

地盤改良が必要なケース

どんなに耐震性能の高い家を建てたとしても、それを支える地盤が弱ければ、その上に立つ家が揺れたり歪んだり、もしも液状化してしまうことになれば、建物まで沈み込んでしまいます。そうならないためにも、家を建てる前に地盤調査を行い、必要に応じて改良を行うことが重要となります。「地盤改良の有無や、改良方法を見極めるためには、地盤の強度を調べる地盤調査が必要です。地質調査は法律で義務化されているわけではありません。ただ、住宅瑕疵担保履行法が施行されてからは、瑕疵担保保険(※)の申し込み時に、地盤調査報告書等が必要になったため、基本的に家を建てる前にはまず地盤調査が行われます」

※住宅瑕疵担保履行法によって引き渡し後10年以内に何らかの瑕疵が認められた場合、建物を建てた事業者が修理費等を負うことが義務付けられています。瑕疵担保保険は、その際の費用に備えるための保険で、事業者はこの瑕疵担保保険に加入するか、保証金を供託して資金を確保することが義務付けられています

イラスト

地盤改良が必要となる2つの条件

地盤改良が必要かどうかは主に以下の2つの条件から判断されます。

  • 1.耐震力が20〜30KN/m2の軟弱地盤と判断された場合
  • 2.敷地とその周辺が埋め立て地や盛り土で造成された土地、過去に陥没があった土地、液状化や不同沈下の可能性がある土地など、総合的な判断で地盤の強化が必要と判断された場合

つまり、地盤調査のデータや敷地周辺の情報を総合的に見て必要かどうかが決まるのです。

地盤改良のメリット

地盤改良のメリットは建築物を支える地盤の強度が増すことです。そのため地震に対する耐震性が増し、強風や振動などによる建物の揺れも抑えることが可能になります。さらに地盤沈下や液状化といった現象を防ぎ、安全性が高まります。また、地盤の強度が増すことで土地の資産価値の向上にもつながります。もちろん住んでいる人の安心感を得られることも重要なメリットと言えます。

地盤改良の前に必要な地盤調査

地盤調査の種類と方法

では地盤調査にはどんな方法があるのでしょうか。「一戸建てであればほとんど『SWS試験(旧スウェーデン式サウンディング試験)』が行われます」。これは住宅のプランが出来上がったら、建物の四隅と中央の計5カ所の強度を調査する方法です。具体的には鉄の棒を地面に立てるのですが、先端がスクリュー状になっているのが特徴です。その棒の上におもりを少しずつ載せながら地面にねじ込み、25cm貫入する重さを記録します。100kg載せても貫入しなかった場合は棒に備わっているハンドルを回転させ、やはり25cm貫入させるのに要した回転数を記録。こうして得られた重りの重量や回転数から地盤の強度(N値)を算出するのです。

「N値は数字が大きいほど強度があることを示します。一般的な一戸建てであれば少なくともN値が3以上、できればN値5以上が良いとされています。」

なお、3~4階建てなど建物の重量が重いため、もう少し詳しく地盤を調査したい場合は、分譲マンションの開発などで行うボーリング調査があります。これは地盤の強度を地質から調べる方法で、支持層と呼ばれる強固な地層に達するまでボーリング(くりぬくこと)しながらN値を測り、同時に地層のサンプリングを取ることでどの深さにどんな土の層があるか調べます。「これを行うと地盤の強度のほかに、地下の水が流れる層の位置や、地盤が横にどれだけ動くかなどがわかります。」

地盤調査の種類
地盤調査の種類
左が「SWS試験」、右が「ボーリング調査」

地盤調査の費用相場

一般的な一戸建てで行われることが多いSWS試験(旧スウェーデン式サウンディング試験)の調査費用は5万円程度。ボーリング調査の費用は調査する深さやボーリングする箇所数に比例しますが、一般的な住宅の場合は25万円~35万円といったところです。

主な地盤改良・補強の工法とその特長

では地盤調査の結果、地盤改良が必要になった場合、具体的にどんな方法で地盤の強度を高めるのでしょうか。方法は主に表層改良工法、柱状改良工法、鋼管杭工法の3つがありますが、地盤改良と言われているのは表層改良工法です。

柱状改良工法、鋼管杭工法は杭状地盤補強になります。

表層改良工法(地盤改良) 深さ2mほどの土を掘り、 セメント系固化剤を使用して地表周辺を固める工法
柱状改良工法(杭状地盤補強) コンクリートの柱を注入して地盤を強固にする工法
鋼管杭工法(杭状地盤補強) 鋼管の杭を打って建物を支える工法

表層改良工法(地盤改良)

深さ2mほど土を掘りながら固化材を入れて、土と強固材を混ぜ合わせることで地盤を強固にする方法です。床面積20坪くらいの場合で費用は約50万円です。

表層改良工法の手順
表層改良工法の手順
家が建つ部分の土を2mほど掘り、その部分の土と固化材を混ぜ合わせ、強固な地盤にします

柱状改良工法(杭状地盤補強)

表層改良工法で強度を出すのが難しい地盤の場合、簡単にいうとコンクリートの柱を何本も注入して地盤を強固にします。家を建てる敷地に碁盤の目のように規則正しく柱を注入していきます。一戸建てはもちろん、自重の重いビルやマンションなどで多く用いられる工法です。

柱状改良工法
柱状改良工法
強固な支持層までコンクリートの柱を打ち込んで建物を支える方法と、打ち込んだ部分の土を一体化することで、地盤を強固にする方法があります

「安定した支持層まで打ち込む方法もありますが、一戸建ての場合はそこまで打たず、4mほどで済ませる方法があります。支持層まで打たなくても、地震の際に数十本の柱と土が摩擦を起こすことで、柱の注入された土の部分が一体化し、家の揺れを抑えることができます」

床面積20坪くらいの場合で50本以上を4m注入した場合で、費用の目安は約100万円。「費用は注入する深さに比例します。例えば同じ面積でも、重量のある5階建てのため支持層のある40mの深さまで打ち込むと1000万円を超えます」

鋼管杭工法(杭状地盤補強)

考え方は柱状改良工法と同じ要領で、コンクリートの柱の代わりに鋼管を使用します。

地盤改良・補強各工法のメリット・デメリット

表層改良工法

軟弱地盤層が2m以内の土地に行われ、地表面だけを固める工法なので、施工が簡単で工期が短く経済的なのがメリットです。また、地中にコンクリートや石などが混ざっていても施工できます。工事期間は建物の種類や大きさによって違いますが、一戸建て住宅の場合は1〜2日で終わります。ただ、勾配のきつい土地では施工が難しいケースがあり、地盤改良面より地下水位が高い場合は施工できないことなどがデメリットです。

柱状改良方法

比較的リーズナブルで、強固な地盤がなくても施工できる点がメリットです。デメリットは有機質土など特定の地盤ではセメントが固まらず対応できない場合があること。また一旦施工すると原状復帰が難しいため、別の建物を建てるときは工法の検討が必要になります。

鋼管杭工法

施工後の地盤強度が他の2つの工法に比べて高く、3階建てなど重量の大きい建物に対応できることがメリットです。しかし、この工法は強度な支持層がなくては施工できず、工事中の騒音や振動が大きい点などがデメリットです。

地盤改良工事の流れと注意点

工事の基本的な流れ

まず、地盤の状況を把握するために建設地の地盤調査とデータの解析を行います。地盤調査の結果と現地の地盤・土質などを調べ、そのまま家を建てても大丈夫か、地盤改良工事が必要かを判断します。地盤改良工事が必要という結果になった場合、どの工法で行うかを費用や工期なども考慮して検討します。工法を決め、地盤改良工事を行った後、現場の検査に合格すると地盤保証書が発行されます。

施工時の注意点と近隣対策

施工時に注意したいのが周辺への影響です。重機の音や振動が発生し、粉じんが飛び散るなどの理由で、近隣からクレームが出ることが考えられるからです。トラブルを事前に防ぎ、工事をスムーズに行うために近隣対策は重要です。一般的には工事を行う工務店などが近隣住民に挨拶や工事計画のポスティングを実施するケースが多くみられます。より被害を受けやすい隣家などには施主自ら挨拶を行うと、さらにトラブル軽減になるでしょう。

地盤改良が不要な土地を見つけるには?

ハザードマップの活用法

地盤改良には少なからず工事費用がかかります。そうなるとやはり「地盤改良が不要な土地」を探したくなりますが、どうやって調べればよいのでしょうか。

防災対策などを目的にハザードマップで液状化のリスクを公表していたり、土地の調査結果を公表したりしている地域もありますから、そうした資料がないか探してみるのも1つの方法です。また周辺に暮らしている人に、以前の土地の状態や現在暮らしている家で不具合がないかなどを聞く方法もあります。

地盤の良い土地の特長

地盤の良い土地の特長を意識して土地探しをしてみるのもひとつの手です。

地層年代が古い土地は地盤が十分に締め固まっており、揺れが増幅しない特長があります。標高が高く地下水位が低い土地は液状化や地盤沈下の可能性が低いので地盤の良い土地といえます。一方、造成地の盛り土は十分に締め固められていない場合があり、地震の揺れの増幅や、不同沈下の原因にもなります。かつて周辺に川が流れていたり、田んぼや沼だったりした土地も地盤が緩い可能性があります。このように、古い地図などを利用して土地の過去を調査してみると、地盤が強いかどうかの判断の目安になります。

専門家への相談と現地調査の重要性

実際は土地の強度は100m離れるともう変わっていることがあります。そのため多くの場合、地盤調査をしてみなければわからないのです。といっても他人の土地を勝手に地盤調査するわけにはいきません。つまり、土地を買ってから地盤調査をしてみて、ようやく地盤の状態がわかります。

さらに同じ敷地内でも、地盤の強度が違うことがあります。「例えば擁壁(ようへき)をする際、その周囲を掘り返してコンクリートの擁壁を備えてから土を埋め戻すことがありますが、当然埋め戻した部分は強度が不足します」。だからといってその部分だけを地盤改良しても意味がありません。住宅の建つ土地の強度にバラツキがあっては地震で揺れた際に揺れ方が違うため、建物を歪ませることに繋がるからです。そのため一部分だけではなく、全体を均一の強度にするために地盤改良工事を行う必要があります。

このように土地によってさまざまなケースがあり、施主が自分で地盤の強い土地を見つけることは難しいのが現状です。土地を買って家を建てる場合は地盤改良のための工事費をあらかじめ用意しておくようにしましょう。その上で、建設を予定している土地の地盤がどういう状態か、地盤改良が必要かどうかなど、地盤改良の知識と経験が豊富な専門家に相談することをおすすめします。

まとめ

家を支える地盤が弱ければ倒壊や液状化の危険性があるため、地盤改良が必要になる

地盤改良が必要かどうかは地盤調査のデータや土地周辺の情報などから総合的に判断する

地盤改良・補強工法には「表層改良工法」「柱状改良工法」「鋼管杭工法」がある

地盤改良の知識と経験が豊富な専門家に相談・依頼する

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取材・文/籠島康弘、SUUMO編集部 イラスト/長岡伸行
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