住宅購入の際、多くの人が利用する住宅ローンは、借入先や金利の種類などさまざまで、どれを選択すべきか悩むもの。ここでは住宅ローンの種類や特徴、どの金利タイプの商品が向いているのかを紹介していく。自分たちにはどの住宅ローンの種類がいいのか、長く支払っていくものだけに注意して選びたい。
住宅ローンは借入先の違いで2つに分けられる。国の機構や自治体が行っている「公的ローン」と銀行や信用金庫など民間金融機関が行っている「民間ローン」だ。
「公的ローン」の代表的な住宅ローンが、財形住宅融資、自治体融資だ。まずは財形住宅融資の特徴を簡単に紹介しよう。主な特徴としては「適用金利が相場より低いことが多い」「一般的に民間ローンより審査基準が緩やか」ということ。また、通常財形貯蓄は給与から天引きされて貯蓄されるものなので、勤め先によって利用できるかできないかは変わってくることも多い。
もうひとつの自治体融資は、その名のとおり、自治体が住宅のための融資をしてくれること。住宅ローン内容や条件は各自治体で異なるものの、通常、該当する自治体に居住または勤務していて、一定の収入以下の場合、住民税を滞納していない場合などの条件で融資を受けることができる。また、住宅融資の種類も金融機関と提携して、一般の住宅ローンより低い金利で融資をあっせんする「融資あっせん制度」や、住宅ローンの利息の一部を援助する「利子補給制度」がある自治体もある。
「民間住宅ローン」は、銀行、信用金庫、住宅ローン専門会社などが扱う住宅ローンのこと。公的ローンに比べて審査は各種用意されているものの、特徴の異なる商品が多彩にあり、融資限度額も高めになっていることが多い。
住宅ローンは金融機関などの中でもさまざまな種類があるが、金利タイプで種類を分けることが一般的だ。
代表的な金利タイプは、「変動金利型」「固定期間選択型」「全期間固定金利型」の3種類になる。
3種類の違いは金利が変わるか変わらないかがポイントになる。変動金利は半年ごとに金利が見直されるタイプ、一方、固定期間選択型は2年、3年、5年、10年など一定期間の金利が固定されるタイプ。返済完了までの金利が固定されるのが全期間固定金利型となる。
住宅ローンの返済総額は返済期間中の金利が低いほど少なくなるが、借入時の金利で比較すると、変動金利→固定期間選択型→全期間固定金利型の順に金利が高くなるのが一般的だ。
とはいえ金利の低さだけで変動型を選ぶと、金利が上昇した場合に返済額が増えるというリスクがある。金利が変動すると返済額がどのくらい変わるのか、変動金利、10年固定、固定金利で、それぞれ3000万円を35年返済で借り入れ、5年後と10年後に金利が1.0%ずつ上昇した場合の金利と返済額を比較してみた。
この場合、変動型は、最初の返済額は最も低いものの、5年後からは金利上昇に伴って返済額も上がり、10年目以降の毎月返済額は一番高くなってしまう。変動型を選ぶ場合は、金利上昇によって返済額が上がっても家計の負担が重くならないよう、無理のない借入額にしておこう。
変動型 | 固定期間選択型 (10年固定) | 全期間固定型 | ||
---|---|---|---|---|
1~5年目 | 金利 | 0.475% | 1.2% | 1.7% |
毎月返済額 | 7万7544円 | 8万7510円 | 9万4821円 | |
6~10年目 | 金利 | 1.475% | 1.2% | 1.7% |
毎月返済額 | 8万9464円 | 8万7510円 | 9万4821円 | |
11年目以降 | 金利 | 2.475% | 3.2% | 1.7% |
毎月返済額 | 10万367円 | 9万8315円 | 9万4821円 |
住宅ローンの「金利選び」でもう一つ注目したいのは、金融機関などのポスターやチラシでよく見かけるのが「-●●%優遇」というワードだ。これは、店頭金利(金融機関などが決めた住宅ローンの基準金利)よりも低い金利で住宅ローンを借りられる「優遇金利(キャンペーン金利)」というサービスで、所定の条件を満たすと利用できる。金利の優遇幅や条件、優遇期間などは金融機関によって異なるので、HPなどで詳細を調べてみよう。
半年ごとに金利が見直されるタイプ。多くの金融機関などが扱っており、利用する人も多いタイプだ。同じ金融機関などで、変動型、固定型、固定期間選択型がある場合、変動型が最も金利が低くなるケースが多い。
金利見直しのタイミングが3種類の住宅ローンの中で最も短く、半年ごとに見直されるのが通常だ。半年後に基準となる金利が上下していれば、変動金利もそれに連動して上下する。
ただ、一般的な変動金利型は、毎月の返済額がすぐに変化するわけではない。返済から5年たつと、その時点の金利とローン(元金)残高に応じて毎月返済額が見直される。返済額が跳ね上がると家計に影響するということで、増える場合はそれまでの返済額の1.25倍までというのが一般的なルールだ。つまり、それまでの毎月返済額が10万円なら、金利が急に上昇しても、5年後に見直される返済額は12万5000円が上限になる。とはいえ、適用金利次第で毎月支払いで利息分のみしか支払えなかったり、払い切れない利息分がどんどん膨らんでいくこともある。これを未払い利息といい、完済時期に利息分が残ってしまい、一括で支払うことにもなりかねない。これが変動金利型の最も大きなリスクといえるだろう。
とはいえ、金利が低い分、毎月返済額も少なく、「繰り上げ返済」をしやすいともいえる。元金(返済額のうち利息分を除いた部分)を繰り上げて返済することで、例えばボーナス時などまとまったお金が入るタイミングや、子どもが生まれる前の数年間など目標を定めて返済する。金利が低く、毎月の負担が少ない変動金利だからこそ、こうした方法も考えやすいだろう。
借り入れている期間中ずっと金利が変わらないため、毎月返済額が変わらないという安心感が最大の特徴。変動型、固定期間選択型にくらべて金利が高く設定されている。一般的には、固定金利のことを「全期間固定型」と呼ぶ。
固定金利型には、民間の金融機関などが提供するものと、住宅金融支援機構と民間金融機関とが提携して扱う【フラット35】の2種類がある。
民間の金融機関などの固定金利型は、20年、25年、30年など、返済期間と金利固定期間が同一で、期間が短いほど金利が低くなるタイプなど、さまざまなラインナップがあるのが特徴だ。
【フラット35】は金利固定期間35年の代表的な住宅ローンで、民間金融機関の同タイプのローンに比べ金利は低め。ただ、取り扱い金融機関によって金利が異なる点には注意しよう。
また【フラット35】には、対象住宅が耐震や省エネなどの一定基準をクリアする場合、当初5年または10年の金利が引き下げられる【フラット35】Sという商品もある。
この場合、当初5年または10年経つと金利が上がるものの、5年または10年後の金利も借り入れ時に決まっているので当初の毎月支払い負担が軽減されるというメリットがある。
このほか、固定期間20年でより金利の低い【フラット20】という商品もあり、【フラット35】と組み合わせて借りることも可能だ(【ダブルフラット】)。
例えば、借入額の一部を20年(フラット20)、一部を35年(フラット35)に設定した場合、借り入れ当初の総返済額は多くなるが、【フラット20】の返済が早く終わるため、将来子どもの教育費がかかる時期や老後の総返済額を減らすことができる。
ただし、2種類のローンを借りる形になるため、それぞれで融資の手続きをしなくてはならず、事務手数料などがかさむので注意が必要だ。
2年、3年、5年、10年など、一定の固定期間中は金利、返済額が変わらず、期間が終わるとその時点の金利で再び固定期間を選べるのが固定期間選択型。これは変動金利に対し、一定期間が固定金利になるという特約が付いたものといえ、固定金利特約と呼ばれることもある。
選べる固定期間は金融機関により異なるが、金利上昇リスクが変動金利より少なくできるので、例えば10年固定を選んだ場合、当初10年は毎月の支払い負担が変わらず、その間に貯蓄し、固定期間終了後に貯蓄や金利によって改めて固定期間を決めるなど柔軟なマネープランが立てやすい。
一般的に固定期間選択型の金利は、固定期間が短いほど低くなるもの。しかし最近は変動金利や固定期間選択型の金利を優遇し、店頭金利よりも引き下げた優遇金利を設けるケースも多くなっているので慎重に選ぼう。
注意点は、固定期間選択型は固定期間終了時に金利が見直されるが、変動金利のような「返済額の1.25倍まで」というルールがないこと。そのため、固定期間が終わったときに金利が上昇していたら、返済額が大幅に増えるリスクがある。金利変動をつかむのは難しいため、上昇リスクを考えた貯蓄なども考えておきたい。
住宅ローンの返済方法には、大きく元利均等返済方式と元金均等返済方式の2つがある。
多く利用されているのは「元利均等返済方式」。毎回の返済額(元金と利息の合計)が同じ金額になるように返済していく方式で、多くの金融機関などで扱っている一般的な返済方式だ。もう1つは「元金均等返済方式」。借り入れた元金を返済回数で割った額に、残高に対する利息を上乗せして返済する方式。
元金均等返済方式は、毎回同じ金額ずつ元金が減っていくので、元利均等返済方式よりも支払い利息の総額は少なくてすむことが多い。だが返済当初の負担が大きくなるので、収入減がいきなり訪れたり、教育費などが思いがけずかかってしまったりする場合に毎月の家計にダメージをもたらす可能性もある。
元利均等返済方式は、毎月同じ返済額なので、返済計画が立てやすいのがメリット。借り入れ当初は利息の支払いが大きくなるため元金がなかなか減らないものの、計画的な貯蓄が前提になるが繰り上げ返済を行うことで、支払い利息を軽減することもできる。
元利均等返済方式 | |
---|---|
特徴 | 毎回の返済額が同じなので、長期の返済計画が立てやすい。 |
デメリット | 返済当初は利息の返済にあてられる割合が大きいため元金が減るペースが遅い |
向いている人 | 借り入れ当初に手持ち資金が少ない人、すぐに支出する予定がある人 |
元金均等返済方式 | |
---|---|
特徴 | 毎回、一定額の元金を返済できるので、「元利均等返済」に比べてローン残高の減少が早く、トータルで支払う利息が少なくなる。 |
デメリット | 支払い当初の返済額が大きくなることが多く、返済負担が重くなる |
向いている人 | ・借り入れ当初は手持ち資金的に返済に余裕がある ・教育費などの支出増や収入減が将来いつ訪れるか具体的にわかっている人 |
民間ローンは、各金融機関がオリジナルの商品を用意している。例えば返済期間中に2段階で金利が変わるものや、同じ金融機関などの預金に連動して金利負担が軽くなるもの、金利上昇に上限を設けた変動金利型のものなどだ。それぞれ当初金利が相場よりも高かったり、変動金利の見直しルール(5年ごとで最大1.25倍)の適用外など一長一短があったりするので、自分たちの暮らしを考えながら、セレクトするのが大切だ。
→詳しくは家を買うための住宅ローンの種類を選ぶ
→住宅ローンシミュレーションを見てみよう