理想の暮らしをつくれる注文住宅。せっかくなら何か特徴のある間取りにしたいと思う人も多いのではないだろうか。そこで、人気のある間取りの特徴やメリット・注意点をここで紹介しよう。最近注目されている平屋や2階リビングのある家など、普通の2階建て住宅とは少し違った間取りの家について、特徴を把握しておさえておこう。
どんな間取りが自分たちの理想の暮らしに合うのかを考える上で、たくさんの選択肢を知り、それぞれのメリットや注意点を比べてから選びたいもの。もちろん敷地の形状や周辺環境によって建てられる家の形は変わるが、もし建てる土地がまだ決まっていないのなら、先にある程度間取りをイメージして、それをかなえられそうな土地を探すことも一つの方法だ。
最近人気の間取りについて、どんなメリットや注意点があるかをしっかり把握しておこう。
居住空間をタテ方向に配置できるため、敷地を有効活用しやすいのが3階建ての最も大きなメリットだ。建てる地域によっては高さ制限などの規制の有無に注意が必要だが、眺望を活かした間取りを取り入れやすくなる。一方で階段の上り下りが増えるので高齢になったときなど、将来を見据えて検討したい。
●土地が狭くても居住空間を増やせる
容積率の高い土地の場合、狭くても、タテ方向に希望の部屋を配置できるので居住空間を増やすことができる。そのため土地の購入費を抑えやすくなる。
●眺望が楽しめる
周辺環境によるが、視界を遮るものがなければ3階の窓や、バルコニーから2階建てでは得られない眺望が楽しめる。
●採光や通風がしやすい
3階部分は光や風を遮るものがほとんどないため、採光や通風がしやすい。
●家族それぞれのプライバシーを守りやすい
2階はリビングで3階は家族の個室や寝室など、階を分けることで、プライベート空間とパブリック空間をはっきりと分けることができる。そのため家族それぞれのプライバシーを守りやすい。
●建ぺい率・容積率、高さ制限などの条件を確認
多くの住宅地ではエリアによって敷地に対して、建ててよい建物の面積(建ぺい率や容積率)、建物の高さなどが決められている。それによっては3階建てにすること自体ができなかったり、3階部分の一部の天井を低くしなければならなかったりするため、事前の確認が必要だ。また、3階建てを建ててもいいエリアは、周囲も同様の高さの家が多くなるため、近隣の建物との距離感や、どのくらい視線が合いそうか、プライバシーを守れるかなども設計の際に相談しておきたい。
●1階は大きな開口部が取りづらい
建物自体の重量が増える3階建ては、耐震性能を確保するために1階部分に耐力壁を増やすことになる。耐力壁には大きな開口部を取ることができないので、採光や部屋の使い方に工夫が必要になる。
●生活動線で上り下りが増える
通勤・通学や掃除、バルコニーに干す洗濯物の出し入れなどで階段の上り下りが増える。高齢になったときのことを考え、ホームエレベーターの設置など将来の間取り変更を見据えて考えたい。
●3階への重い家電等の搬入や搬出が大変
重いテレビや収納家具などを3階まで搬入する、あるいは買い替えのために降ろすのが重労働になる。3階には、どんな部屋を配置するのかは事前に検討しておきたい。
●家の中の温度差ができやすい
一般的に暖かい空気は上へ、冷たい空気は下へと流れる。そのため断熱性・気密性の高い家にしないと、家の中での温度差が激しくなりがちだ。どの部屋を何階に配置するかは温度差についても考慮する必要がある。
マンションのようにワンフロアで生活できる平屋は、最近人気がでている。一方で広い敷地が必要になるため、土地の購入費がかかりやすく、特に都心では立地の多くは駅から遠い場所になりがちだ。予算や交通利便性とのバランスを検討しよう。
●動線が短く家事がラク
ワンフロアにすべて部屋や設備がそろっているので、階段のある2階建てより動線が短くて済む。階段の上り下りもないため、掃除などの家事も2階建てよりラクになる。
●階段がないので老後も安心
階段がないので上り下りする必要がない。そのため高齢になっても比較的住み続けやすい間取りである。
●家族のコミュニケーションが取りやすい
ワンフロアに家族みんなが生活するため、顔を合わせやすく会話もうまれやすい。また、たとえ顔を合わせていなくても家族の気配を感じやすくなる。
●2階建てより建物が軽いので揺れに強い
建物の高さが低くて建物自体も軽くなるため、一般的に2階建てと比べて地震の揺れに強い形状である。
●広い土地が必要
ワンフロアにすべてを収めるためには、その分土地の広さが必要となる。そのため土地の購入費用がかかる。
●建築費用が高くなりがち
同じ延床面積の2階建てと比べて、住宅の土台となる基礎や屋根の面積が増えるので、建築費用も高くなりがちだ。
●周辺環境に左右されやすい
例えば周囲を2階建ての建物に囲まれてしまうと、日当たりは不利になる。また隣家から家の様子が見えやすくなるので間取りを考える際には注意が必要だ。平屋の間取りに向いているかは、事前に周辺環境を確認しておこう。
親と一緒に住むことで暮らしや相続税の面でメリットがある二世帯住宅。一方で暮らしやすさのカギはお互いの距離感にある。二世帯家族それぞれの距離感があるので、家を建てる前に一緒に暮らす親と忌憚(きたん)ない話し合いをすることが大切だ。
●親に資金援助してもらいやすい
親からすると、老後を子どもの近くで暮らせることの安心感は大きい。そのため、同居する子世帯は住宅購入資金の一部を援助してもらいやすくなる。
●親に育児や家事を手伝ってもらいやすい
子世帯が共働きの場合、子どもの送り迎えや食事の用意などを親に手伝ってもらいやすくなる。
●光熱費を節約できる
電気・ガスを二世帯でまとめる場合、基本料金は一世帯分になるので光熱費の節約が可能に。
●相続時の相続税を減らせる
親と一緒に暮らしていた場合、相続が発生した際に相続税を軽減することができる。
●生活時間の違いを考慮する
子世帯の帰宅時間が遅いと、食事や入浴などの生活音が就寝の早い親世帯のストレスになることも。玄関を分けたり、水まわりの位置を親の寝室から離したりするなど、間取りの工夫が必要。
●親子関係に配慮が必要
よく嫁姑問題といわれるが、嫁姑を問わず人が増えれば自然とストレスは生まれるもの。各人の距離感を考えた上での間取りの検討が重要。ちなみに夫の家に妻が入っていた昔と違い、最近は「妻の親」との二世帯住宅も増えているようだ。
プライバシーを保ちやすく、明るく開放的な空間をつくりやすい2階リビングは最近人気。一方で、子どもとのコミュニケーションや老後の生活に注意して間取りを検討する必要がある。
●日当たりを良くしやすい
1階より2階のほうが日陰になりにくいため、1階にリビングを設けるより日当たりが良くなる。
●採光がしやすく、開放感を得やすい
2階建て住居の場合、上に部屋がないため、天井を高くしやすいので開放感のあるリビングをつくることができる。また天井が高いと窓の上下幅も大きくすることができるので、採光を重視する人にはおすすめだ。
●プライバシーを保ちやすい
1階リビングの間取りと比べて、道路からの人目を気にする必要がなくなる。あとは隣家の窓との関係を配慮すればプライバシーを保ちやすくなる。
●子どもとのコミュニケーションに注意
2階にリビングを置くと、スペースの都合上、子ども部屋が1階になることが多い。親がリビングにいると子どもが帰宅したことがわかりにくくなる。子どもとのコミュニケーションをどう取るのか、間取りに工夫が必要だ。
●階段の上り下りが増える
一般的に2階リビングの場合、ダイニングやキッチンも2階に設ける。そうなると、日常の買い物は毎回2階に持って上がることとなる。また、宅配便などは1階で受け取るのでそのたびに階段の上り下りが必要だ。1階の天井を低く抑えるなど、階段に工夫するといい。
●老後の生活に注意
年を取って足腰が弱くなると、階段の上り下りが億劫になりがち。将来はホームエレベーターをつけられるようにしておくなど、老後を見据えた間取りを考えるようにしたい。
外からの視線を一切気にする必要のない中庭のある間取りは、リビングをはじめ各部屋のプライバシーも守りやすくなる。一方で建築費用が高くなることには注意が必要。
●どの部屋も採光がしやすい
家の外側だけでなく、内側からも採光できるため、どの部屋も明るくしやすい。
●通風がしやすい
採光だけでなく、どの部屋にも風を通しやすい。
●周囲の目を気にせず安心して楽しめる
外からの視線を防ぎやすいので、子どもを中庭で安心して遊ばせることができたり、プライバシーを守れるので気ままにくつろぐことができる。また中庭側に窓を設ければ外側の窓はなくしたり減らしたりできるので、リビングなど各部屋のプライバシーを保ちやすくなる。
●土地の面積や形状に注意
中庭をつくるには建物をロの字やコの字にしなければならないが、そのためにはある程度の土地の広さが必要となる。また、土地の形状によってはロの字やコの字の建物自体が難しい場合があるため、事前に建築会社に相談が必要だ。
●中庭の排水設備には注意が必要
一般的な外に面した庭と比べて、中庭は雨が自然と外へ流れないため排水設備が必要になる。大雨が降ることを考えて少なくとも2カ所は設置したほうがよい。特に雨水をためてくれる土ではなく、タイルを敷きつめる場合は排水能力に注意が必要。また植林する場合は落ち葉が排水口を塞がないように注意しよう。
●建築費用が高くなる
内側にも壁や窓が必要になるため、その分建築費用とメンテナンス費用がかかる。
開放感があるため人気の吹抜けは、天井が高くなり採光もしやすい。一方で空間が大きいため温めたり冷やしたりした空気が流動しやすく、光熱費が高くなりがち。その分、断熱性を高くするなどの配慮がより必要になる。また吹抜けというと1階から2階に抜けた空間を想像しがちだが、2階リビングで天井を張らず吹抜けにすることも可能だ。
●開放感を生み出しやすい
頭上の空間が広がるので実際の部屋面積以上に広く感じられ、開放的な空間が生み出せる。
●部屋を明るくしやすい
1階から2階に吹抜けをつくる場合、日当たりの良い2階部分に窓を設置することで採光がしやすくなる。
●家族の気配を感じやすい
1階から2階に吹抜けをつくる場合、1階と2階の部屋を緩やかにつなぐことができるので、家族が上下階別にいても気配を感じることができる。
●2階の床面積が減る
1階から2階に抜けた部屋をつくる場合、その分2階の床面積が減る。部屋数や配置に注意が必要。
●掃除が大変
吹抜け上部の窓には手が届きにくくなるため、掃除が大変。吹抜け上部のホコリを拭いたりするのも同様。
●光熱費が高くなりがち
一般的に暖かい空気は上へ、冷たい空気は下へと流れる。そのため断熱性・気密性の高い家で、シーリングファンを備えるなどの対策をしないと光熱費が余計にかかってしまいがち。
スキップフロアとは、同じ空間の中で少しずつ段差をつけ、家の中に中二階や中三階を設ける方法。2階建てでも4~5層のフロアを生むことができる。そのため空間を有効に使えるほか、視線が変わることで視覚的に広く見えるというメリットがある。一方で、つまずきや掃除などには注意が必要だ。
●ドアなどの仕切りを使わずに空間を区切りやすい
フロアの段差や短い階段で空間を仕切ることができるので、ドアや仕切りを設ける必要がなくなり、その分の空間を有効に使える。またドアや仕切りがないため奥行きのある広い空間をつくりやすい。
●上方向にも開放感を得やすい
例えば1階・中二階・2階とつながる階段部分も空間としてつながるので、上方向の開放感も得やすくなる。また段差のつくり方次第では、一つの部屋だけ天井高を高くすることもできる。
●通風・採光がしやすい
ドアや壁で空間が仕切られないため、通風や採光がしやすくなる。
●視線のズレで家族と適度な距離をつくれる
ドアや仕切りが少ないので、離れた場所にいても家族の気配を感じやすくなる。一方で、お互いの視線の高さがズレるため、それぞれが別の空間にいるという距離感もつくりやすい。
●段差の下に収納をつくりやすい
段差の下を収納スペースとして活用することも可能。
●敷地に高低差がある場合にも有効に使える
傾斜地のように高低差がある土地に家を建てる場合も敷地を有効に活用できる。
●段差につまずきやすい
段差が多いため、つまずいてしまう可能性が高くなる。特に老後は注意が必要。スキップフロアの設計に慣れ、住んだ後のエピソードもよく理解した建築会社や設計士に依頼したい。
●光熱費が高くなりがち
空間が大きくつながるため、断熱性・気密性の高い家にしないと光熱費がかかることも。
●建築費用が高くなりがち
段差をたくさんつくるため、その分の大工の手間費用がかさみやすい。
●自治体によってはルールがある場合も
段差の下に収納をつくる場合、自治体によってはこの収納を収納として認めず床面積に加える場合がある。それにより定められている容積率を超えてしまうと、スキップフロアの段差に収納をつくることができなくなることもある。詳しくは建築会社の担当に確認してみよう。
間取りにはそれぞれメリットと注意すべき点がある。人気だからといって取り入れるのではなく、自分たちの暮らしには何が向いているのか、慎重に検討したい。