自分たちの暮らしにあったベストな間取りってどんなものだろう。そもそも間取りはどんな点を重視して決めるものなのか?そこで家族タイプ別に、間取りを考える際の基礎知識を紹介しよう。2人家族、3人家族、4人家族の家族数ごとに解説していく。家づくりの中でも容易に修正できない要素だけにしっかり考えたい。
自由な間取りで家を建てられるのが注文住宅の最大の魅力。だが、家族構成と合わない間取りで建ててしまうと後悔だけが残ってしまう。
間取りを想定する上で重要なのは、そこで暮らす家族の人数や年齢層を考慮すること。例えば子どもを将来3人欲しいなら、子ども一人一人に部屋を与えるか、広い子ども部屋で共用にするなどを考える必要がある。さらに、今後親との同居を考えている場合は、親世帯が暮らす間取りや機能なども考えておかなくてはならない。
間取り決めにはどの世代が何人で暮らすという構成人員をしっかり考えることが大切なのだ。もちろん10年後や20年後まで想定することも念頭に置いておこう。
夫婦やカップルなどの場合は団らん、コミュニケーションをとれる共用空間=リビング・ダイニングに加えて、各々の趣味や時間を過ごせる居室スペースがあるとベスト。また、ライフスタイルによるが、共働きなどで家にいる時間が異なる場合は、寝る時間や休む時間をお互い邪魔しないよう、寝室を分けるなどプライベート空間があったほうがストレスなく過ごしやすいだろう。
将来子どもができることも考えている場合は、ワンフロアの子ども部屋に間仕切りをして2部屋として使えるよう、広い1部屋がある間取りを想定しておくと、部屋数が足りないということが防ぎやすくなるだろう。
主寝室+子ども部屋で2LDK以上が基本になる。子ども部屋と夫婦の寝室をそれぞれ確保しておけば、子どもが成長したときもプライバシーを守りやすくなる。また、子どもの荷物が増えても収納場所に困ることは少なくなる間取りだ。
ただ、子どもの人数が増えた場合に備えて、2部屋に分けても収納や各々出入りする扉を設けられるなど、ある程度のスペースを想定しておく必要がある。
一方3LDKは子どもが小さいうちは使わずにもったいないと考えるかもしれないが、将来的には、子ども部屋と主寝室、書斎や趣味の部屋などとして活用ができる。2人目が生まれた場合も子ども部屋を2つ確保できるので、家族全員が快適に過ごしやすくなる。
夫婦+子ども2人と想定した場合、親と子2人それぞれで3部屋が必要になるので、3LDK以上が基本になる。来客が多い人の場合は客間、趣味のモノが多い人は収納用に、家で仕事をする場合は書斎などを想定して4LDKにする場合も。4LDKの場合、普段全く使わないともったいないので、1部屋はリビングに隣接させた間取りにして、リビングと一体で使えるような間取りにすると、無駄がなく、広いリビングで開放的な空間で過ごせる。
国土交通省策定の「住生活基本計画(全国計画)」では、世帯人数に適した住宅の面積の目安「居住面積水準」について紹介しているので参考にしてみてほしい(下図参照)。
世帯人数別の面積例 | 最低居住面積水準 | 誘導居住面積水準 |
---|---|---|
2人 | 30m2 | 55m2~75m2 |
3人 | 40m2 | 75m2~100m2 |
4人 | 50m2 | 95m2~125m2 |
国土交通省「住生活基本計画における居住面積水準」。※最低居住面積とは、世帯人数に応じて、健康で文化的な住生活の基本とし、必要不可欠な住宅面積に関する水準。誘導居住面積水準とは、世帯人数に応じて、
豊かな住生活の実現の前提として、多様なライフスタイルを想定した場合に必要と考えられる住宅の面積に関する水準
一方、近年、「断捨離」や「ミニマルライフ」がブームとなっているように、モノをあまり多くしないコンパクトな生活への関心も高まっている。フリーマーケットで着なくなった衣類を売ったり、季節外のものはレンタル倉庫などのスペースに預けたり、書籍は電子書籍にしたりなどの新しいーサービスを活用するのも手だ。また、天井を高くとり、ロフトや収納スペースを設けるなど、建物面積に含まれない空間を作り、有効活用する住宅も増えてきている。あくまでも参考として、自分たちの生活に必要十分なスペースを検討したい。
注文住宅は自由に多彩な間取りを実現できるが、長く住む上では家族が心地よく過ごせるかどうかが間取りを考える基本ポイントになる。心地よさを決めるポイントは「通風採光」「使い勝手のいい収納配置」「水まわり、家事動線がスムーズかどうか」の3つだ。
通風採光のうち通風は、開口部の位置とサイズにこだわりたい。通常、風は大きな開口部から入り、狭い開口部に向けて抜けるため、リビングから庭など外に向けた開口部を大きく取り、LDKに風を取り込んだのち、リビングの一面や隣接するダイニング、キッチンなどの小窓に抜けさせることで風通しがよくなる。少なくとも部屋の三方向に開口部を設けることで、より通風ルートが確保され、風の抜けがよくなるだろう。
また吹抜けを設けることもおすすめだ。これは暖かい空気は上に行き、冷たい空気は下に下がる空気の流れを考えたもの。取り込んだ風の上下の動きを利用した開口プランを考えれば、1階だけでなく2階や3階など、上層階の通風も確保しやすい。
採光も基本的に開口部のつくり方がポイントになる。最も重視するのは南や東など太陽光を採り込みやすい方角に開口部を設けること。また高台立地などでは、2階にリビングを設けることで、隣家など周辺環境の影響を軽減しながら光を採り込みやすい場合もある。また、四方を家などに囲まれた立地の場合は、上に開口部を設けることもおすすめ。トップライトが代表例で、屋根や天井に開口部を設けることで、方角を気にすることなく、光を採り込むことができる。暗くなりがちな階段や玄関などに設けるケースが多い。ほかには、「中庭」も同様な効果があり、周囲の家や道路からの視線は入らない開口部を作ることができる。
収納配置では、やたらと収納スペースをもうけるのではなく、使い勝手を考えた配置にしたい。例えば掃除用具など普段使うものをしまう小さな収納スペースは、過ごす時間の多いリビングに設ける。また、家族が普段の暮らしで必ず通る動線上に着替えもできる大型収納をもうけると、生活しながら片づけもはかどり、効率もいい。季節物などを普段使わないものの収納は、居住スペース内に設けず屋根裏や階段下、または床下などを活用した収納計画を立てれば、暮らすスペースを圧迫せずにすむだろう。
水まわり含む、家事動線も心地よい暮らしの大切なポイント。家事は毎日のことなので効率的にこなしたい。例えば、キッチン、洗面浴室と一つながりの動線をリビングとはべつに用意して、回遊性をもたせられれば、より負担が少なく料理、洗濯などを一度に済ませられやすい。同じ考え方で、洗濯機を配置する洗面浴室と洗濯物を干すバルコニーとのつながりを確保すれば、洗う、干す、しまうという工程が一連で済ませられるので、家事がラクになり、時間にも心にも余裕をもった暮らしがしやすい。
注文住宅購入検討者の多くが気になるのが子育てしやすい間取り。嗜好や子どもの年齢にもよるが、子育て世代の家づくりで大切なキーワードは「コミュニケーション量」をどう増やすか。子どもの成長には、親子間のコミュニケーションが必須だからだ。
そこで、例えばリビングに向いたカウンター、アイランドキッチンであれば、家事をしながらでも子どもの様子が見やすく会話もはずみやすい。また、成長して家事を手伝うといった気持ちが芽生えてきたときにも参加しやすい設計にすれば、スムーズに実現しやすいだろう。
加えてコミュニケーションの量を増やすのが「顔を合わせる動線」の間取り。代表的な間取りがリビングイン階段だ。玄関から必ずリビングを通って居室に向かうので、大きくなってからも顔を合わせやすい。
最近定番になっているのがリビング学習だ。リビングやキッチンなど家族が集う空間にスタディスペースを設けることで、勉強も親の目があるからと集中したり、学校などで何かあった際も子どもの表情を常に見ることができたりするので、コミュニケーションをとれ、子どもの成長を見守りやすい。大きめのカウンターを配せば、親子で学習もでき、よりコミュニケーションが深まる。
また、空間に可変性をもたせることもポイント。子どもが小さいうちは主寝室で親子一緒に寝ることが多いが、子ども部屋はプレイスペースとして広々使わせてあげると、家の中での暮らしが楽しくなる。そしてある程度成長したり、子どもが増えたりした際には、仕切りで子ども部屋を分割できると子ども同士のプライベートも守りやすく心地よく暮らせるだろう。
こうした空間をつくるには、ある程度リビングを広く取ったり、必要な配線を工夫したりするなどの設備も考えて置きたい。どんな親子生活を送りたいのか、そのために必要なことを相談しながら間取りを考えるといいだろう。