注文住宅を検討するときには、複数のハウスメーカーや工務店に相談するのが一般的です。そうすると、最後の1社に決めたときに、ほかの会社にお断りの連絡を入れる必要がありますが、「断るのは苦手だからゆううつ……」と感じる人も多いようです。できるだけ角を立てずに断るコツはあるのでしょうか? 今回は、ハウスメーカーを断るときのポイントや手段、具体的な断り方などを、SIRE代表取締役の木津雄二さんに伺いました。
まずは、ハウスメーカーの断り方のコツを5つ紹介します。
ハウスメーカーの営業担当に断りの連絡を入れるときに、負い目に感じる人が少なくありません。とくに担当者によくしてもらった実感があればあるほど、断ることを申し訳なく感じてしまいがちです。しかし「その必要はない」と木津さんはいいます。
「大前提として、ハウスメーカーの担当者は断られることに慣れています。注文住宅の営業においては、展示会で記名のアンケートを取れた方のうち、実際に成約するのは5%程度。敏腕営業担当でも多くて10%程度です。10人のうち9人に断られるのが普通なので、断る側も気にしすぎる必要はありません」(木津さん/以下同)
断られるのに慣れているとはいえ、かなり話が進み、例えば契約直前で断られるのは、担当者も期待値が高まっている分残念な気持ちが強くなります。そのためできるだけ早く断ることも大切です。
「ハウスメーカーで注文住宅を建てるときには、3~5社程度から見積もりやプランの提案を受けるのは普通のことです。ただ、そこからさらにインテリアやエクステリアをどうするかなど、いろいろな人を巻き込んで具体的な話まで進めてしまうと、どんどん断りにくくなっていきます。見積もりやプランを比較して、『ここはイメージが違う』『ここでは理想の家を実現できない』と思った会社は、早めに断るようにしましょう」
お断りするときには、明確な理由を述べましょう。そのほうが、お断りされるハウスメーカーも納得感を得られます。
「なぜお断りされたのかは、ハウスメーカー側にとってももっとも知りたい部分です。営業担当としても、会社としても、今後の営業活動に役立てられます。理由は変にぼやかさず、はっきり伝えてあげましょう」
「どの営業担当も、自社で家を建ててもらおうと、一生懸命営業しています。時間と手間をかけて見積書をつくったりプランを考えたりしてくれたことに対して、きちんと感謝を伝えるのは、人間として当たり前のことです。ここまで手間と時間をかけてくれたことへのお礼をきちんと伝えましょう」
すでにほかのハウスメーカーと契約まで済ませたなど、今後の連絡が不要な場合はそのことをはっきりと伝えましょう。
「ハウスメーカーでは、一度お断りされたとしても『その後いかがですか』といったご連絡はするものです。最近はしつこい営業をすることはなくなっていますが、それすらも不快に思うのであれば、今後の連絡は一切不要と伝えてもよいと思います。
しかしもしまだ本命のハウスメーカーと契約まで至っていない場合、再度連絡をもらったときに『実は途中で頓挫し悩んでいる』と相談し、結果的に一度断った会社に決まるケースも実は少なくありません。そのため完全に関係を断ち切るかどうかは、状況によって考えるとよいでしょう」
ハウスメーカーを断るときには、どのような理由が多いのでしょうか? 見積もり前、見積もり後、仮契約後、契約後に分けて伺いました。
「見積もり前のお断りは、本当に初期の段階ですので、いろいろ話を聞いた末に方針が決まり、それがその会社では実現できない、といった理由が多いです。例えば『考えた結果、鉄骨造にしようと決めました』と、木造の会社さんをお断りするイメージです。この段階で、3~5社程度に絞り込むのが一般的です」
「プランを決めて見積もりをもらったあとにお断りする場合、提案された内容が別の会社さんのほうがよかった、あるいは似たプランなのにもう1社がはるかに安い、といった理由が多くなります。例えばA社なら希望する広さのリビングを実現できるのにB社にはできないと言われた場合は当然A社を選びますし、どちらの会社も希望をかなえてくれるのであれば、見積もりが高い会社はお断りすることになるでしょう」
仮契約に際しては、申込金を支払うのが一般的です。申込金は10万円程度が相場で、仮契約をキャンセルすると戻ってくるお金です。しかし仮契約は本契約に進む意思を示すものであるため、仮契約後にお断りするケースはそれほど多くありません。
「仮契約に進んだということは、大まかなプランや概算の金額には納得しているケースがほとんどです。にもかかわらずお断りせざるを得ない理由としては、例えば同時並行で話をしていた別の会社がものすごい値引きを提案してくれた、あるいは夫婦では納得していたけれども、資金を出してくれる両親が別の会社に決めてしまったなどがあります」
本契約に際しては、物件価格の5~10%の契約金(手付金)を支払います。契約金を払ったあとに買主側から契約を破棄する際には、契約金を放棄しなければならず、戻ってくることはありません。
「契約金・手付金を放棄してまで解約する方はほとんどいません。つまり本契約は、意思をしっかり固めたうえで結ぶものであるともいえます。
ただ、住宅ローンが通らなかったときは話が別です。契約時には、万一住宅ローンの審査に通らなかった場合、契約がはじめからなかったことにする『住宅ローン特約』を付けるのが一般的です。住宅ローン特約が付いていれば、万一住宅ローンの審査に落ちたときには、契約を解除して契約金・手付金を返してもらえます」
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お断りに際しては、面と向かって伝えるのは抵抗がある方や、引き止められるのではと心配になる方も多いでしょう。お断りの連絡は対面で直接伝える必要はないので、電話やメール、LINEなど、普段担当者とやり取りしているツールでビジネスライクに済ませて問題ありません。
ここでは電話でお断りする場合と、メール・ラインでお断りする場合の伝え方を、例文付きで紹介します。
電話でお断りするときには、感謝の気持ちを声音に乗せて、お礼の言葉を伝えましょう。
<電話でお断りするときの例文>
「家族で話し合いましたが、家族みんなA社のプランが気に入りましたので、あちらと契約することにしました。これまで親身に相談に乗っていただいて感謝しています。本当にありがとうございました」
感謝の気持ちを伝えつつ、理由を明確に、さらにお断りする意思もはっきりと伝えることが大切です。
メールやLINEは表情が見えないため、普段はカジュアルな言葉でやり取りしている場合でも、ていねいな言葉でお断りすることがポイントです。
<メールやLINEでお断りするときの例文>
「検討しました結果、今回は家族全員がA社に提案されたプランが気に入りましたので、A社と契約することにいたしました。これまで親身に相談に乗っていただいたこと、心より感謝しています。本当にありがとうございました」
「なおメールやLINEでお断りをした場合でも、担当者から詳しく話を聞かせてほしいと電話が来るケースがほとんどです。どうしても話したくない理由がある場合をのぞき、無視せず応対するのが誠実です。
お断りの理由を伝えると、よりよい提案を受けられる可能性もあります。LINEのあとに電話が来ることを考えると、はじめから電話でお話することも検討しましょう」
ハウスメーカーをお断りするときに、お互い不快な気持ちにならないために押さえておきたいポイントを紹介します。
「すでに他社と契約を済ませたなど、今後考えが覆ることがないのであれば、お断りするためだけに直接会う必要はありません。ただ、もしまだ心のどこかで迷いがあるのであれば、お断りする前に直接会ってお話することをおすすめします。
例えばお断りを考えている理由が『他社のほうが安い』など、条件次第では考え直してもいいのであれば、率直にその点を相談すると検討してもらえる可能性があります。お断りするのはその後でもよいでしょう」
何かをお断りするのは心理的に負担が大きく、誰しもが「できればやりたくない」と思うものです。その結果「明日にしよう」「週明けに電話しよう」と、ずるずると先延ばしにしてしまう人がいます。
しかし先延ばしにすればするほど、断りにくくなるものです。また断ると決めているのにそれを伝えないでいると、担当者がほかの営業にかける時間を奪うことになります。お断りの意思は、先延ばしせず早めに伝えましょう。
お断りに際して、嘘をつくのはやめましょう。例えば「家を建てるのはやめました」といった嘘は、担当者に「時期が来れば検討してもらえる」と、いらぬ期待を持たせてしまいます。
「ほかにも、他社にも相談しているにもかかわらず、その会社としかやり取りしていないように振る舞うのも避けましょう。あとになって『実はほかの会社ともやり取りしていて、そちらに決めました』というのは不誠実です。
複数のハウスメーカーに、平行して話を聞くのは一般的なことです。ほかにどの会社を検討しているのか、どのような点で比較しているのかなどは、正直に話したほうが結果的にいい提案を引き出せる可能性もあります」
「最初にお伝えしたように、営業担当はお断りされるのがある意味当たり前だと思っています。ですので『お断りするのは本当に申し訳ない』『親身にしてもらったのに断りにくい』など、過度に気に病む必要はありません。
なかなかドライになれないかもしれませんが、営業担当もビジネスとしてやっていることなので、思い悩まず早めに伝えるほうが親切です」
「お断りするのが苦手な方は、お断りの連絡を代行してくれるスーモカウンターのようなサービスをはじめから利用するのもおすすめです」
スーモカウンターでは、お客さまのご希望にお応えできる複数の工務店を紹介したうえで、最終的にお断りしなければならなくなった会社には、お客さまの代わりにお断りの連絡をしています。断るのが苦手な方は、ぜひ利用をご検討ください。
最後にあらためて木津さんに、ハウスメーカーの断り方についてアドバイスをいただきました。
「ハウスメーカーの担当者は断られることに慣れてはいますが、嘘をつかれていたとあとから分かると悲しい気持ちになるものです。ですので『ほかにもA社を検討しています』『この点に関してB社と迷っています』など、現在何を考え、何を軸に進めようとしているのかを、はじめから正直に伝えながら進めていくと、お断りされても納得感を得られます。そのうえで、お断りするときは明確に、そして正直に理由を伝えるようにしてください」
ハウスメーカーの営業担当は断られることに慣れているので気に病む必要はない
断るときにはハッキリと、明確な理由を伝えることが何よりも大切
断ることが苦手な場合は、はじめからお断りを代行してくれるサービスを利用するのもおすすめ
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