家づくりに関する費用はさまざまあり、金額も大きいので正しく理解しておきたい。そこで、注文住宅を建てるに当たり知っておきたいお金の基礎知識を紹介する。費用の種類や支払い時期、住宅ローンの組み方や契約時の注意点など基本的な流れやポイントを押さえてほしい。
まず注文住宅を建てる際にかかる費用の内訳から把握しておこう。総費用は、建物本体にかかる「本体工事費」のほか「付帯工事費」「諸費用」そして「土地代」で構成される。
特に建築会社に出してもらう見積書には付帯工事費が含まれているか確認し、依頼先に諸費用はどれくらいかかりそうか早めに教えてもらおう。
○本体工事費
骨組みから内外装、屋根まで、家本体を建てる工事費用のこと。坪単価は本体工事費÷床面積(坪数)で算出できる
○付帯工事費
依頼先が、専門の工事会社となる部分の工事費。既存の建物の解体や地盤改良、エアコン工事費など。見積もりを確認してから契約しよう
○諸費用
建物の工事費以外にかかる地盤調査費や、建築確認申請費、ローン手数料、火災保険、印紙代、税金など。基本的に現金で支払うので予算枠を確保すること
○土地代
建築費とは別に支払いが発生する。通常、不動産会社に依頼して土地を購入するので、建物より先に住宅ローンを申し込む必要がある。また、地盤調査費用(5万円程度)が別途かかり、土地によっては地盤改良工事で工事費用がかかることも。工事内容にもよるが、100万円位を目安に
予算面では「住宅ローン」+「頭金(自己資金)」が総費用の金額以上確保できるようであればOKだ。
○住宅ローン
銀行などから借りるお金で、建築費用の8割程度が上限と考えておこう。ローンの毎月返済額は、現在の家賃+駐車場代と同額程度に設定すると安心
○頭金
現金で用意できる金額。家づくりのための預貯金や、親からの援助金など。これらすべてを頭金にするのではなく、不測の事態に備えて必要な分は手元に残すこと
注文住宅の場合、家を建てる・土地を買うときは、「土地の購入」「家の建築」の2段階の手続きが必要になる。このため、家を買うのに使える予算から、土地代、本体工事費用の振り分けを事前に決めておこう。
ちなみに購入諸費用は「土地代金+家の工事費用」の6%~10%が目安だが、土地の条件や建築工事のスケジュール、また、住宅ローンの借り方によってはこれ以上にかかることもある。
建築会社の中には、全体的なスケジュールや資金計画の相談ができる会社もあるので、建築会社を先に選んで相談しながら土地を選ぶとスムーズだ。
注文住宅購入に必要な費用の種類と支払時期の目安
売買契約 | 手付金(価格の5%~10%)など |
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引渡し前 | ・購入物件の残代金(物件価格-手付金等-住宅ローン借入額) ・土地の購入諸費用(土地代金の6%~10%) |
見積もり作成時 | 地盤調査費用など(必要な場合) |
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工事請負契約時 | 工事契約金(工事費用の約10%)、建築確認申請費など |
着工時 | 「着工金」(工事費用の約30%)、地鎮祭費用など |
上棟時 | 「中間金」(工事費用の約30%)、上棟式費用など |
引き渡し前 | 建築費の残代金(工事費用の約30%)、建物の登記費用など |
引越し時 | 引越し代や家具購入費用など |
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引越し後 | 不動産取得税(物件により異なる) |
〇家を買った後ずっと支払う
住宅ローン返済、家の所有者にかかる税金、メンテナンス費用など
※土地を売主(不動産会社等)から直接買う場合、仲介手数料が不要なため、購入諸費用の目安は上記より土地代金の3%程度少なくなる。なお、上記とは支払のタイミングや金額が異なるケースもある
土地と建物を購入する注文住宅の場合、住宅ローンの組み方が複雑になることがある。そこで簡単な流れを紹介しよう。
(1)ラフプラン・予算の決定
土地代+建築費を予算内に収め、なおかつ家族が満足できる内容にラフプランを組む。
(2)土地購入
住宅を建てるための土地を購入する工程。広さや立地など希望に合った土地を購入する。土地代金を住宅ローンで借りる場合、建物のラフプランと概算見積もりが必要になる。建てる家のプランが決まっていない場合は、自己資金あるいは所有財産を担保にして融資を受けるなどの方法がある。
(3)住宅ローン事前審査
銀行など金融機関によるローンの仮審査。この段階では金利比較のため2~3の銀行で申し込みをする場合が多い。審査にかかる時間は約1~3週間程度。
(4)工事請負契約
建築会社に対する契約。建物の完成を約束すると同時に、支払いも約束するという契約。ここまでに工事のプラン、設計は確定させておく必要がある。
(5)住宅ローン本審査
保証会社による審査。本審査には住宅の登記や建築確認済証(建てる建築物が建築基準法や条例に適合しているかを役所や専門機関が確認した証)、工事請負契約書が必要になる。
(6)住宅ローンの契約
注文住宅の場合、この段階で既に建築会社に対する費用は発生しているため、「つなぎ融資」などで支払いを進めておく必要がある。
(7)住宅ローンの実行
住宅ローンが実行されたら、利用したつなぎ融資の返済と、完工金の支払いを行い、そこで建物の引渡しが完了する。
・住宅ローンを申し込む際は、土地と建物セットで申し込むのが原則
土地の売買契約は済んでも、建物の計画が不明確では審査を受けることができない。なぜなら住宅ローンは、あくまで『住むための土地と建物を担保に融資をする』ローンだから。そのため、建築会社とプランを決め、役所に建築確認申請を行い、承認されていなければいけない。
・土地と建物で融資が行われるタイミングが違う
土地の融資実行は決済が終わる時点で行われるが、建物の融資実行は原則として建物が完成し、引き渡しが行われる時点になる。注文住宅では引渡しまでに数回にわたり支払いをしなければならないので、自己資金で支払うか、つなぎ融資を利用するかといった、資金計画をしっかり立てておくことが重要になる。
前述のとおり、注文住宅を建てるときには契約時に最初の支払いが発生し、その後、上棟時、中間金、完工金など3~4回を分割で支払う必要がある。
ところが、住宅ローンは家が完成してからまとめて融資が実行されるのが一般的なので、住宅の完成前に支払う代金について、準備をしておかなくてはいけない。とはいえ、それぞれの費用は大体工事代金の30%ずつなど、負担もかなりある。
そこで利用したいのがつなぎ融資。つなぎ融資とは、注文住宅を建てる時に必要な着工金や中間金などを一時的に借りられるローンのこと。借りたお金は住宅が完成して住宅ローンが実行されたらそのお金でつなぎ融資を返済する。条件を満たせば、土地の購入代金から利用できるのも特徴だ。
つなぎ融資を受けられるのは、住宅ローンを依頼する金融機関などが一般的。借入先によって異なるが、利息は住宅ローンよりも高く設定されていることが多い。多くの人は、自己資金とつなぎ融資の割合を金融機関や建築会社と相談しながら支払い計画を立てていく。詳しくは建築会社に相談してみよう。