住宅ローンは全期間固定型の【フラット35】、民間金融機関による「民間ローン」、財形貯蓄をしている人対象の「財形融資」などがある。それぞれの特徴を見てみよう。
【フラット35】は、借入時の金利が返済期間中に変わらない『全期間固定型』のローン。住宅金融支援機構と民間金融機関の提携によるもので、銀行のほか信用金庫や労働金庫など多くの金融機関が窓口となっている。このため、金融機関ごとに金利や手数料が異なるのが特徴だ。
金利は、「返済期間」「融資率(物件価格に対する借入額の割合)」「借入手数料(融資手数料)」によっても異なり、1%~3%台と幅がある。実際に適用される金利は「物件の引き渡し(融資実行)時点」のもので、現在の金利とは変わる可能性がある。
【フラット35】は保証料がかからず、ローン借入費用を抑えられるのもメリットの一つ。
ただし、購入する物件の広さや品質などに一定の要件があり、要件に合う建物かどうかを検査するため、数万円~10万円台の「適合証明手数料」がかかることも。現地見学の際には、「【フラット35】が利用できるか」、また「適合証明手数料」についても確認しておこう。
【フラット35】は返済期間21年~35年が対象のローン。返済期間を15年~20年にする場合は、より低い金利の【フラット20】を利用できる。
また、【フラット20】と【フラット35】を合わせて借りて、借入額の一部を20年、残りを35年というように2種類の返済期間を設定する【ダブルフラット】という借り方もできる。この場合、借り入れ当初の返済額は【フラット35】より高くなるが20年後の返済額を減らせるため、子どもの教育費がかかる時期や老後に備えて利用するケースが多い。ただし、2種類のローンを借りる形になるため、融資手数料などは高くなる。
【フラット35】には、一定条件を満たす住宅の購入や新築を対象に、借入当初5年または10年間の金利を引き下げるメニューがある。省エネルギー性や耐震性などが高い住宅に利用できる「【フラット35】S」や中古住宅を買って一定要件を満たすリフォームをする場合に利用できる「【フラット35】リノベ」などだ。
また、子育て支援などに積極的に取り組む自治体に所在する住宅の購入や新築に利用できる「【フラット35】地域連携型」も注目。例えば「【フラット35】S(金利Aプラン)」と「【フラット35】地域連携型(子育て支援)」の両者併用できる場合は、金利の引き下げ幅の加算によって、当初10年間の金利が0.5%引き下げられる。
→より詳しく【フラット35】Sを知りたい方はこちらの記事をチェック
「【フラット35】リノベ」は、中古住宅を購入して一定条件を満たすリフォームをする場合に利用できる。購入する住宅の面積やリフォームの内容など一定の条件を満たせば、当初10年間の金利が【フラット35】より0.5%(または0.25%)引き下げられるお得なローンだ。
「【フラット35】リノベ」は、不動産会社等(住宅事業者)がリフォームした中古住宅を購入する場合も利用できる。
→より詳しく「【フラット35】リノベ」を知りたい方はこちらの記事をチェック
銀行や信用金庫など民間金融機関の住宅ローン。金利タイプは「変動型」と「固定期間選択型」が多いが、「全期間固定型」を用意する銀行もある。金利は金融機関によって異なり、店頭金利より低い金利で借りられるケースも多い。ただし 、実際に適用される金利は、【フラット35】と同じく引き渡し時(融資実行時)の金利である点に注意。このほか、ローン借入費用や借りた後のサービス内容も金融機関によって異なる。総合的にチェックして選ぼう。
不動産会社と民間金融機関の「提携ローン」は、不動産会社が窓口になるためローンの審査や借り入れの手続きを進めやすい。販売戸数の多い新築マンションなどは、物件独自の提携ローンを用意するケースが多く、金利引き下げ幅を大きくしたり、価格の100%まで融資可能にするなど条件がよいものもある。物件見学時に、提携ローンの有無や内容を確認しておこう。
共働き夫婦の住宅ローンの組み方には以下のような方法がある。(1)と(2)の方法で、夫婦の今の収入をもとに借入額を決める場合は、将来的にも今と同程度の収入をキープすることが前提。住宅ローンや借入額は将来のワークプランも考えて選ぶことが大切だ。
(1)夫と妻が別々に借りる『ペアローン』
夫と妻が別個に住宅ローンを借りる方法で、民間ローンや財形融資が対応している。ペアローンは夫婦で同じ銀行の利用が原則だが、ローンの金利タイプ(長期固定型、変動型)や返済期間などを変えて、リスク分散できる。夫婦ともに住宅の所有者となり(共有)、それぞれが住宅ローン控除を受けられる。ローンの手数料などは2本分かかる。
(2)夫婦の収入を合算して借りる『連帯債務』
夫婦の収入を合算してローンの借入額を増やす方法。ローンの手数料などは1本分で済む。また、夫婦ともに住宅の所有者となり(共有)、住宅ローン控除もそれぞれが受けられる。対応できる住宅ローンは【フラット35】が代表で、金利タイプは長期固定型のみとなる。この方法では、夫か妻のどちらかが主債務者、もう一方が連帯債務者となり、夫婦がお互いに全額の返済義務を負うことになる
(3)どちらか1人が借りる『単独ローン』
どちらか1人が住宅ローンを借りる方法。最も一般的な住宅ローンの借り方で、当然どのローンでも対応できる。上の2つの方法より借入額は少なくなるが、例えば、子どもが誕生したらどちらかが仕事を辞めるなど、将来収入が減る可能性が高い場合は、単独ローンにしておくと安心だ。
「財形融資(財形持家転貸融資※1)」は、勤務先で財形貯蓄を1年以上行っている、残高が50万円以上ある等、一定の条件を満たす人が利用できるローン。財形貯蓄額の10倍(最高4000万円)まで借り入れできる。「借入申込時(購入契約と同時が一般的)」の金利が適用され(2023年7月1日現在は0.83%)、5年ごとに金利が見直される「5年固定型」だ。
また、18歳以下の子どもがいる人向けに当初5年間の金利が0.2%引き下げられる特例措置もある(※2)。なお、当融資の申込先は企業によって異なる。財形貯蓄を行っている人は勤務先に確認しよう。
※1 このほか、住宅金融支援機構が窓口の「財形住宅融資」がある
※2 2024年3月31日までの申し込みが対象。期間内でも申込状況などにより特例措置を終了する場合がある
住宅購入や新築、持ち家の修繕、リフォームなどを対象とした、独自の融資制度がある都道府県や市区町村もある。例えば、一定要件を満たす人が、先に述べた「【フラット35】地域連携型」を導入する自治体で住宅を購入・新築する場合、当初5年または10年の間、金利が0.25%引き下げられる。
このほか、子育て世帯が、住宅を購入または新築して親世帯と同居または近居する場合に補助金を出す自治体などもある。
住宅購入等に関する融資制度の内容は自治体によって異なり、制度がないケースもある。勤務先や購入住宅などの住所がある自治体に融資制度があるかどうか、ホームページなどで確認してみよう。
住宅金融支援機構の【リ・バース60】は、満60歳以上の人が対象の住宅ローン(※)。【フラット35】と同様、銀行や信用金庫などが取り扱っている。
【リ・バース60】のメリットは、毎月の支払いが利息分のみで、老後の生活にゆとりが持てる点だ。また、住宅の購入・新築・リフォームのほか、サービス付き高齢者向け住宅の入居一時金、子世帯の住宅取得資金の借入資金などにも利用できる。
元金(借入額)は、申込者が亡くなったとき、相続人が一括返済する仕組み。夫婦が「連帯債務」で購入すると、夫婦の両方が亡くなった時点での返済になるため安心だ。また、返済資金は、担保物件(申込者の住宅や土地)の売却代金を想定し、売却代金が元金より低かった場合、差額分の返済が免除されるタイプもある。
【リ・バース60】
※満50歳以上満60歳未満が対象の【リ・バース50】もある
リフォーム対象のローンは、「公的融資」と「銀行などの民間融資」の2種類に分けられる。それぞれの特徴を把握して、借入金額や手持ち資金、将来の返済プランに合うローンを選ぼう。
(1)公的融資
先に紹介した「財形融資」や【リバース・60】はリフォームにも利用できる。
また、所定の耐震・省エネ改修工事を伴うリフォームを行う場合は、住宅金融支援機構のローンが利用できる。いずれも全期間固定型で金利は1%台(返済期間10年以下の場合)、融資手数料や繰り上げ返済手数料は無料だ。
●リフォーム融資(耐震改修工事)
住宅のリフォームと「認定耐震改修工事」や「耐震補強工事」を併せて行う場合に利用可能。融資限度額1500万円、返済期間は最長20年(年齢等により異なる)。借入額300万円以上の場合、自宅の土地や建物に担保(抵当権)を設定する必要がある。
●グリーンリフォームローン
住宅のリフォームと一定の省エネリフォーム(断熱改修工事・省エネ設備設置等)をする場合に利用可能。融資限度額500万円、返済期間は最長10年(年齢等により異なる)。一般的な返済方法の場合、担保(抵当権)の設定は不要だ。住宅内の一部をZEH水準にする工事を行う場合は、より金利の低い「【グリーンリフォームローン】S」を利用できる。
(2)民間融資
銀行や信用金庫など民間金融機関のリフォームローン。自宅の土地や建物を担保にする「有担保」型と、担保の必要がない「無担保」型との2タイプがある。「有担保」型は金利が低いのが特徴。住宅ローンと同じ金利の商品もあり、金額が大きいリフォーム向き。「無担保」型の金利は一般の住宅ローンより高めで、金利タイプは変動型が多い(固定型を選択できる金融機関もある)。
→金利タイプについて詳しくは「金利タイプを選ぶ」を参照
フラット35は、病気やケガ、リストラなど、やむを得ない事情によって返済が困難になった場合、一定期間、返済額を減らすことが可能だ(返済方法変更の特例)。この特例は、現在、コロナ感染症の影響で収入が減少した場合についても、一定の条件の元で適用されている。ただし、返済期間の延長によって返済額を減らすため、総返済額は増加する。民間ローンの場合は、金融機関によって対応が異なるため個別に確認しておこう。